質問:
アンプを減衰器として 使用することができますか?

回答:
これは、面白い質問ですね。一見するとあり得ないという気がしますが、実はそういう使い方をしたくなるのももっともと思われる理由がいくつかあります。オペアンプには、インピーダンス変換という非常に有益な機能があります。オペアンプの前段に受動の減衰回路を使用したり、あるい はアンプそのものを減衰器として使用するときには、この機能を存分に活用できます。ただし、いくつか注意点があります。
アンプを減衰器として使用するとき、アンプのゲインはユニティ・ゲインより小さくなります(G<1)。したがって、アンプをインバータ(反転回路)として構成することが前提となります。これは、反転ゲインの式がG =-RF/RG、非反転のゲイン式はG=(RF/RG)+1になるからです。こうなると、アンプ/減衰器の可能な構成は反転構成しかないと思われます。もちろん、必ずしもそうではありません。前述したように、非反転アンプの前段に受動減衰器を置いても有効に機能し、非反転出力が得られます。また、差動アンプやディファレンス・アンプを使用してもよいでしょう。どちらもゲイン式G = RF/RGを使用します。つまり、減衰器として、あるいはアンプとしてといったほうがよいかもしれませんが、反転オペアンプ構成でも非反転オペアンプ構成でもどちらも使用できるのです。
前述したように、アンプを減衰器として使用するときにはいくつかの注意点があります。まず、かなり大きい値の帰還抵抗を使用する場合は、システム・ノイズの増大、オフセット電圧の増大、安定性の問題が出てきます。大きい帰還抵抗にアンプの入力容量や浮遊容量が加わることで、アンプの帰還応答に極が生じます。そのため、位相シフトが生じ、アンプの位相余裕が低下して、不安定性を招きます。
もっと重要なのはノイズ・ゲインを考慮することで、これがアンプの安定性にどう影響するかを考える必要があります。ちなみに、アンプの安定性を決めるのは信号ゲインではなく、ノイズ・ゲインです。反転アンプ構成でも非反転アンプ構成でも同じですが、ノイズ・ゲインは非反転ゲインの式に等しくなります。たとえば、反転アンプの信号ゲインが-0.5の場合、そのノイズ・ゲインは1.5になります。ノイズ・ゲインがわかれば、それをオープン・ループ・ゲイン&位相プロットに変換して、位相余裕と安定性を確認することができます。選択したノイズ・ゲインで最低45°の位相余裕があれば、アンプは正しく機能しますが、45°未満になると問題が生じます。
信号ゲインを低くしたままノイズ・ゲインを増大させるには、ほかにも方法があります。しかし、こ
れについては別のRAQでご説明しましょう。