質問:
A/Dコンバータ(ADC)がデータシートで仕様化されたフルスケールを 実現できないのですが、どうしてでしょうか?

回答:
ADコンバータ(ADC)のデータシートは、アナログ入力のコモンモード電圧条件を仕様化しています。これについてはあまり詳細な情報がありませんが、フルスケールで定格性能を実現するには正しいフロントエンド・バイアスを維持しなければなりません。
バッファが内蔵されているADコンバータには、一般に電源電圧の半分の電圧にダイオード・ドロップ電圧を加えた内部バイアスのコモンモード・レベル(AVDD/2+0.7V)があります。この回路をバイアスするのに外付け回路は要りませんが、コンバータを正しく使用するにはバイアスを維持する必要があります。スイッチド・キャパシタ入力のようなバッファが内蔵されていないコンバータの場合、一般にコモンモード・バイアスはアナログ電源の半分、つまりAVDD/2になります。これらのバイアスは、さまざまな方法で外部から供給することができます。コンバータによっては専用のピンがあり、設計者はアナログ入力にいくつか抵抗を接続してバイアスを実現できます。あるいは、内部バイアス電圧をトランスのセンター・タップに接続したり、アナログ電源からの抵抗分圧器(AVDDとグラウンド間を抵抗分圧して各アナログ入力に繋ぐ)を使用することも可能です。多くの場合リファレンスによって、外部バッファなしでコモンモード・バイアスを供給することができないため、VREFピンを使用する前には、メーカーのデータシートを調べるか、アプリケーション・サポート・グループに確認してください。
コモンモード・バイアスを提供できないか維持できない場合、コンバータには、計測全体に影響を与えるゲイン/オフセット誤差が生じます。コンバータは早く「クリップ」してしまうか、フルスケールに達することができないためにまったくクリップしなくなってしまいます。コンバータの前にアンプを接続するときは、特にアプリケーションがDC結合を必要としている場合(DCまたは超低周波信号のサンプリングが必要な場合)、コモンモード・バイアスが特に重要になります。アンプのデータシート仕様を調べて、そのアンプがコンバータの振幅やコモンモード電源条件を満たしているか確認してください。コンバータは微細プロセスへ、より低い電源電圧へと進化しています。コンバータが1.8Vの電源電圧の場合、アンプによって0.9Vのコモンモード電圧を必要とします。3.3~5Vの電源電圧のアンプではレベルをそれほど低く維持できないことがありますが、新しいタイプの低電圧アンプなら可能です。
コンバータのコモンモード入力電圧仕様をよく確認しないと、どんな設計でも大混乱に陥ることがあります。複数段を使用する場合は、2つの部品が互いに「戦闘」状態にならないようにコモンモード・レベルを同一に保つ必要があります。たいていは、片方が勝ってしまい、ひどい測定結果を出すことになります。AC結合アプリケーションでは、2つの段の間にカップリング・コンデンサを使用し、コモンモード・ミスマッチが生じないようにします。このようにして、アンプ出力とADC入力の両方のバイアスを最適化する設計が可能になります。