どれくらいの大きさ?

質問:

振幅が大きく変化する信号はどう扱えばよいでしょうか?

RAQ:  Issue 40

回答:

ログアンプで対応します。

世界最小の哺乳類はコビトジャコウネズミであり、体長約3センチ(尾の長さを除く)、体重は1.5グラム(1/20オンス、マウスの1/10)にもなりません。最大の哺乳類はシロナガスクジラであり、体長30メートル、体重は150トン(象の30倍)を超えることもあります。これは、コビトジャコウネズミの体長の1000倍、体重は1億倍以上に相当します。

小さなものは簡単に測ることができますし、大きなものを測るのもやはり簡単です。しかし、その両方を計測しなければならないとなると、問題は複雑になります。システムが処理できる最小の信号と最大の信号の比は「ダイナミック・レンジ」と呼ばれ、通常dB単位で表されます。最大の電圧または電流が最小値の1000倍になるシステムは、ダイナミック・レンジが60dBであり、100万倍の場合は120dBになります。

LSBがMSBの1億分の1より小さくなる場合は、28ビット・デジタル・システムが必要です。つまり、このような変動に対応しなければならないデジタル・システムは非常に分解能が高いか、複雑な信号処理が可能なものでなければなりません。

しかし、アナログ回路でも、非常に大きいダイナミック・レンジを簡単に扱うことのできるものもあります。それが「ログアンプ」と呼ばれるものです。あるいは、あまり一般的ではありませんが「ログコンバータ」といったほうが適切かもしれません。ログアンプの出力は、入力の対数に比例します。場合によっては、160dBを超えるダイナミック・レンジに対応できるものもあります。 ログアンプにはいろいろなアーキテクチャがあります。シリコン接合の対数特性を利用するタイプは、非常に大きいダイナミック・レンジを持ちますが、低速です。カスケード接続したディテクタ/アンプを使用してログ応答を生成するタイプ(逐次検出型ログアンプ)は、数ギガヘルツの帯域幅で作成しても60~90dBのダイナミック・レンジで正確なログ応答が可能です。

いずれのタイプも集積回路として作成できます。そのさまざまな構造や特性については、リンク先の記事をご覧ください。ログアンプは理解しやすく使いやすいのですが、基礎的なテキストブックでは取り上げられないことが多いため、経験の浅いアナログ設計者はつい見過ごしてしまいます。

非常に広いアナログ信号レンジに対応しなければならないシステムの場合、エンジニアはログアンプの使用を検討するとよいでしょう。単純で、手頃で、しかもとても役に立つものです。


 

著者

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James Bryant

James Bryantは、1982年から2009年に定年退職するまで、アナログ・デバイセズの欧州地区アプリケーション・マネージャを務めていました。現在も当社の顧問を務めると共に、様々な記事の執筆に携わっています。リーズ大学で物理学と哲学の学位を取得しただけでなく、C.Eng.、Eur.Eng.、MIEE、FBISの資格を有しています。エンジニアリングに情熱を傾けるかたわら、アマチュア無線家としても活動しています(コールサインはG4CLF)。