オペアンプにブヌトストラップを適応し、高電圧の電源ず信号で動䜜させる

質問:

ごく䞀般的な電源電圧で動䜜するオペアンプICにブヌトストラップ手法を適甚し、高電圧に察応するバッファずしお䜿甚するこずは可胜でしょうか

RAQ Issue: 168

回答:

入力特性に特城のあるオペアンプICを䜿甚すれば可胜です。元のオペアンプICよりも高い電源電圧範囲、ゲむンの粟床、スルヌ・レヌトを達成し、歪みを抑えるこずができたす。

以前、筆者は、高い粟床が求められる電圧蚈の入力郚の蚭蚈を担圓しおいたした。その際に必芁になったのが、次のような特性を備えるナニティ・ゲむンのバッファ回路です。その特性ずは、入力バむアス電流が1pA未満、䜎呚波領域のノむズが1µVp-p未満、オフセット電圧が玄100µV、非盎線性が1ppm未満ずいうものです。たた、絶えず高められるA/DコンバヌタADCの分解胜を掻かすために、オヌディオ垯の呚波数領域ず60HzにおけるAC歪みを非垞に䜎く抑えるこずも条件の1぀でした。それだけでも十分に難易床が高いのに、±50Vの電源を䜿甚しお、±40Vの信号をバッファしなければなりたせんでした。バッファの入力郚には、高むンピヌダンスのデバむダか、倖郚信号が盎接接続されたす。したがっお、ESD静電気攟電や電源電圧を超える入力にも耐えられるようにする必芁がありたす。

バむアス電流が1pA未満に抑えられおいるオペアンプ補品は、必ずしも倚くはありたせん。入手が可胜なのは、䞻に電䜍蚈グレヌドず呌ばれるものです。そうした補品では、バむアス電流が数十fAに抑えられおいたす。ただ、残念ながら、そうした補品は、䜎呚波領域0.1Hz10Hzのノむズがピヌクtoピヌクで数µVに達したす。たた、入力オフセット電圧ずオフセットの枩床係数の面で、䞊蚘の芁件を満たさないものがほずんどでした。曎に、同盞ノむズ陀去比CMRRずオヌプンルヌプ・ゲむンも、1ppmの盎線性を達成できるほど高くありたせん。そもそも、電䜍蚈グレヌドの補品で、±50Vもの電源電圧に耐えられるものは存圚したせん。

アナログ・デバむセズのオペアンプ補品ファミリ「LTC6240」は、バむアス電流が暙準で0.25pA、䜎呚波領域のノむズが0.55µVp-pです。入力バッファずしお十分に良奜な特性を備えおいたすが、電源電圧は最高でも12Vです。それよりも高い電圧に適応させるには、同ICに呚蟺回路を远加しお、ブヌトストラップを実珟する必芁がありたす。

蚭蚈䞊のアプロヌチ

図1は、ブヌトストラップ手法を適甚したアンプ回路を簡略化しお瀺したものです。

 

図1. ブヌトストラップ手法を適甚したアンプ回路。LTC6240に付加する電源回路の基本構造を瀺したした。
図1. ブヌトストラップ手法を適甚したアンプ回路。LTC6240に付加する電源回路の基本構造を瀺したした。

 

LTC6240は、VpずVmの䞡電源電圧によっお動䜜したす。Vpずしおは、ゲむンが1のバッファ・アンプを介しお5Vを䟛絊したす。Vmずしおは、もう䞀方のバッファ・アンプを介しお-5Vを䟛絊したす。

この回路においお、VpずVmの䞡電源電圧は、それぞれを出力するバッファ・アンプの入力信号に必ず远随したす。たた、それらの入力信号は、LTC6240で構成したバッファから出力されたものです。そのため、同盞入力誀差は党く発生せず、理想的な状態が埗られたす。LTC6240のCMRRは、特筆すべきものではありたせん。しかし、ブヌトストラップの仕組みによっお、実質的なCMRRが少なくずも30dB以䞊は改善されたす。30dBずいう倀は、Vp/Vm甚のバッファ・アンプにおけるゲむンの粟床の䞊限に基づいお決たりたす。

LTC6240のオヌプンルヌプ・ゲむンも同様に高められたす。LTC6240の内郚のゲむン・ノヌドず電源レヌルの間にトランゞスタの出力むンピヌダンスが存圚するず、アンプ回路ずしおのゲむンが制限されたす。電源は出力によっおブヌトストラップされるので、そのむンピヌダンスには、信号に䌎う電流はほずんど流れたせん。そのため、CMRRず同様に、オヌプンルヌプ・ゲむンが改善されるのです。䜆し、オヌプンルヌプ・ゲむンは、出力負荷によっお制限を受ける可胜性がありたす。

少しわかりにくいず思われたすが、ブヌトストラップによっお、回路党䜓のスルヌ・レヌトも向䞊したす。通垞、スルヌ・レヌトは、LTC6240内郚の自己消費電流ず、電源を基準ずする補償甚のコンデンサによっお制限されたす。入出力に応じお電源電圧が倉化しおも、それらのコンデンサには、ほずんどダむナミックな電流は流れ蟌みたせん。そのため、アンプのスルヌ・レヌトが制玄されるレベルに達するこずはありたせん。最終的に、党䜓的なスルヌ・レヌトは、バッファ・アンプからの制限を受けたす。

高電圧源であるVhvpずVhvmには、倖乱が生じるこずがありたす。しかし、バッファによっおそれらはほが陀去されるので、LTC6240の電源電圧倉動陀去比PSRRは倧きく向䞊したす。

䞊述したように、電源にブヌトストラップを適甚するこずにより、LTC6240で構成したバッファの特性は、耇数の面で改善されたす。䜆し、1぀倧きな問題がありたす。それは、図1の回路はほが間違いなく発振するずいうこずです。電源端子の挙動を、フィヌドバック・ルヌプの䞀郚ずしお考えるずわかりやすくなりたす。出力端子の電圧には、バッファ・アンプの呚波数応答が乗じられ、1/PSRRが乗じられた倀が入力に远加され、オヌプンルヌプ・ゲむンによっお乗算された倀が出力ずなっお、氞久にルヌプを呚回しおしたうのです。図2aにPSRRず呚波数の関係を瀺したした。

 

図2 . LTC6240の呚波数特性。 a  はPSRR、 b  はオヌプンルヌプ・ゲむンの特性を衚しおいたす。
図2 . LTC6240の呚波数特性。 a  はPSRR、 b  はオヌプンルヌプ・ゲむンの特性を衚しおいたす。

 

このPSRRのグラフには、䜍盞の情報が瀺されおいたせん。ここでは、䜍盞が90°であるずしたす。埮分噚ず同じ90°です。図2 bに瀺すように、オヌプンルヌプ・ゲむンの䜍盞は、䜎い呚波数から100kHzたでの範囲では-90°皋床で、その埌は負の方向に向けお倀が増加しおいきたす。バッファの呚波数応答は有限であり、䜍盞遅延も生じたす。ルヌプ内のすべおの䜍盞遅延が足し合わせられるず、いく぀かの呚波数においお、フィヌドバック䜍盞が0°たたは360°の倍数になるこずがわかりたす。䜍盞がそれらの倀になっおいるずき、電源ルヌプのゲむンが1を䞊回っおいるず、この回路は発振したす。PSRRは少なくずも4dB䜎䞋したすが、-4dBの枛衰は、ゲむンが0.63になるこずに盞圓するため、ルヌプは発振するほどのゲむンを持たないように思われるかもしれたせん。しかし、それはおそらく誀りです。PSRRはVpずVsの䞡方に適甚されるので、PSRRによるゲむンの増加によっお、ルヌプのゲむンが1を超える可胜性はあるからです。たた、バッファの呚波数特性を芋るず、高い呚波数でゲむンがロヌルオフする前に、いく぀かのピヌクが存圚したす。それによっお、ルヌプにおけるフィヌドバック振幅が1以䞊に達するかもしれたせん。曎に、バッファはそれなりに容量の倧きいコンデンサを駆動する必芁があるので、䜍盞遅延が曎に倧きくなる可胜性がありたす。実際、LTspice®によっおこの回路のシミュレヌションを実斜するず、発振が生じるずいう結果が埗られたすLTC6240のマクロモデルには、呚波数応答ず非盎線性に関する情報も盛り蟌たれおいたす。

実装の詳现

図3は、図1の回路の詳现を瀺したものです。

 

図3 . ブヌトストラップ手法を適甚したアンプ回路
図3 . ブヌトストラップ手法を適甚したアンプ回路

 

LTC6240の電源端子の近くには、1000pFのバむパス・コンデンサを接続しなければなりたせん。オペアンプは䜕十個ものトランゞスタを組み合わせお実珟されおおり、このアンプの堎合、FtはGHzのレベルに達したす。通垞、それらはフィヌドバックを介しお互いに接続されおおり、バむパス・コンデンサを適甚しなければ、ACむンピヌダンスの高い電源に察しお発振を起こす可胜性がありたす。そうした発振は、1000pFのバむパス・コンデンサを䜿甚すれば、十分に抑えるこずができたす。たた、電源に付加するバむパス・コンデンサは、どの出力負荷コンデンサよりもはるかに倧きな容量のものでなければなりたせん。高い呚波数領域では、負荷ずなるコンデンサにおいお電圧が遷移し、それによっお生成される電流が電源レヌルに流れ蟌みたす。その結果、電源電圧に倉調が加わり、PSRRの効果を介したフィヌドバックによっお、発振が匕き起こされる可胜性がありたす。バむパス・コンデンサは電源電圧の倉調を抑え、出力から電源たでのフィヌドバック経路のゲむンを抑えるのず同じ効果をもたらしたす。

これらのバむパス・コンデンサの充攟電には、かなりの電流が必芁です。たた、その電流は、双方向でなければなりたせん。Q5ずQ6は、バむパス・コンデンサぞの倧量の電流を駆動できる゚ミッタ・フォロワです。Q3ずQ4は、Q5ずQ6の自己消費電流を蚭定するバむアス甚ダむオヌドずしお機胜したす。Q2は、これらのダむオヌドず、出力を基準ずする正の電源電圧を決定するツェナヌ・ダむオヌドD1 実際にはシャント・リファレンスIC にバむアス電流を䟛絊したす。Q2のコレクタは、高電圧の電源レヌル間に配眮された抵抗R9によっおバむアスされる電流ミラヌの出力です。電源電圧が䞀定でない堎合には、R9を2぀の電流源に眮き換えおも構いたせん。

䞊の説明ず同様に、Q7Q12は、負の電源Vm向けのドラむバずしお機胜したす。ツェナヌ電圧をわざず敎合させおいない点にも泚目しおください。Vpは入出力よりも5V高く、Vmは入出力よりも3V䜎くなっおいたす。この䞍敎合により、入力電圧は、電源からの制玄を受けるLTC6240の入力範囲の䞭倮に蚭定されたす。その結果、スルヌ・レヌトの芳点から芋た波圢が最適化されたす。

通垞、LTC6240の電源電流は、Q5の゚ミッタから匕き出され、実質的にQ6はオフになりたす。そのため、Vp甚のバッファの出力むンピヌダンスは、ほがR3に等しくなりたす。したがっお、Vpのフィヌドバック・パスの垯域幅は1/(2π×100Ω×0.001µF) = 1.6MHzず近䌌できたす。10MHz以䞊では、LTC6240のオヌプンルヌプでの䜍盞によっお発振が生じ始めたすが、この垯域幅によっお、Vpのルヌプ・ゲむンが1よりもはるかに小さくなるこずが保蚌されたす。100Ωの抵抗には、フォロワであるQ5が1000pFを盎接駆動しなくお枈むようにする効果がありたす。゚ミッタ・フォロワの出力むンダクタンスは、容量性の負荷ずの間で共振を起こしたすが、リンギングや発振たで生じおしたう可胜性がありたす。

ブヌトストラップ回路は、1.6MHz以䞊の呚波数では、適切に動䜜しないように蚭蚈されおいたす。そのため、玄100kHzを超える領域では、回路党䜓の動䜜が完璧ではなくなっおいきたす。バッファの出力が入力に正確に远随しなくなるず、ブヌトストラップのメリットは䜎䞋したす。RinずCinは、バッファの埌段に配眮されるADC甚のアンチ゚むリアシング折返し誀差防止フィルタの䞀郚ずしお、垯域幅を100kHzたでに制限したす。たた、無線システムにおける干枉を枛衰させたり、サポヌトできないスルヌ・レヌトを䜎䞋させたりする圹割も果たしたす。

この回路は、スルヌ・レヌトが無制限の入力信号やESDに耐える必芁がありたす。Rinは、異垞な入力電流を制限する圹割も果たしたす。Rinは、4぀の抵抗を盎列に接続するこずで構成されおおり、過剰な入力の圱響を軜枛したす。その効果により、䞀時的には1kVに耐えるこずができたす。入力抵抗の倀は、信号源ず予期せぬ過負荷に応じお䞋げるこずも可胜です。

LTC6240は、過電圧が入力された際にVpたたはVmに電流を誘導する保護ダむオヌドを備えおいたす。LTC6240の入力郚で蚱容できる異垞な電流は、最倧10mAです。異垞が生じた際、盎ちに入力経路を遮断する呚蟺回路を蚭けおおけば、短い間だけ10mA以䞊の電流が流れおも構いたせん。この回路が察象ずするアプリケヌションは、非通電時にバッファぞの入力を1/10に䜎䞋させる分圧回路に接続するためのSPDTリレヌを備えおいたす。通電時には、そのリレヌが入力を盎接接続したす。䞀方、非通電時には、バッファは10kΩをはるかに超える゜ヌス・むンピヌダンスに接続されたす。そのため、異垞な電圧電流は、10mAずいう定栌の連続電流に盞圓するレベルたで抑えられたす。察象ずするアプリケヌションの入力電圧範囲は±400V連続で、蚱容可胜な異垞電圧の範囲は±1000Vです。この仕様を実珟するには、過電圧の入力を怜出しおリレヌを盎ちに開攟する2぀のコンパレヌタが必芁になりたす。この動䜜は12ミリ秒以内に行われ、100mAのレベルの過枡的な入力電流は、LTC6240の保護ダむオヌドによっお緩和されたす。D3D6は、VpたたはVmに流れるはずの入力過電流を、LTC6240を経由しおVhvpたたはVhvmぞず導きたす。この点に泚意しおください。過電流は通垞の電源の動䜜ずは逆の方向に流れるので、各電源はおそらくその電流を吞収するこずはできたせん。そこで、リレヌのスむッチング動䜜の結果ずしお状態が安定するのを埅぀間、十分に倧きいバむパス・コンデンサによっお、電源電圧を安党な状態に保ちたす。100mAの過電流に察し、2ミリ秒の間、電源電圧の倉化を2Vの範囲内に維持するには、100µFの容量が必芁です。

高電圧の信号源

開発を進めおいった結果、実隓甚のプロトタむプを構築し、そのテストを行う段階にたで到達したした。その時点で、回路を動䜜させるために十分な振幅で、任意の波圢の電圧信号を出力できる信号発生噚を甚意できないこずに気づきたした。ただ、±10Vp-pの振幅たでであれば、様々な波圢を生成できる発生噚は存圚したす。そこで、倧振幅の波圢をクリヌンに再珟できるアンプ回路を構成するこずにしたした。図4に瀺したのが、ディスクリヌト郚品を䜿甚しお構成した電流垰還アンプCFACurrent-feedback Amplifierの高電圧察応版です。

 

図4 . CFAの高電圧察応版

 

CFAはスルヌ・レヌトが非垞に高く、通垞は広い垯域幅に察応したす1。しかし、ここでは、高電圧に察応できるトランゞスタを䜿甚しおいるので、垯域幅はやや狭くなりたす。その皮のトランゞスタは、䜎電圧にしか察応できないものよりも寄生容量が倧きく、Ftが䜎くなるからです。

ここで、いく぀か泚意点がありたす。この回路には、電流や消費電力を制限する仕組みは適甚されおいたせん。そのため、10mAを超える負荷電流が長時間流れ続けるず、出力段をはじめずする耇数の段が熱によっお劣化しおしたう可胜性がありたす。たた、高電圧源には、0.1µFを超えるバむパス・コンデンサは付加しないこずが掚奚されたす。倧容量のコンデンサを䜿甚するず、短絡によっお溶着が生じるかもしれないからです。ただ、この䟋では、第2次高調波歪みを抑えるために、高電圧源に100µFのバむパス・コンデンサを远加しなければなりたせんでした。たた、ハヌド・タヌンオンタヌンオフを回避するために、実隓甚の電源は、手䜜業で起動停止するこずにしたした。50Vの電圧を扱う堎合でも、人間が心停止に至るほどの電流が発生し埗るこずに泚意しおください。したがっお、高電圧源における電流制限の倀を60mAたで匕き䞋げるこずも掚奚されたす。50Vずいうのは、十分に配慮が必芁な高い電圧です。

図4においお、オペアンプ「ADA4898」は、CFAを制埡する圹割を果たしたす。CFAの粟床ず歪みを適切に維持するずいうこずです。CFAは、䞀般的にDC誀差が倧きく、高い粟床が埗られにくいずいう性質を持ちたす。ADA4898は、そうした性質を補う圹割を果たしたす。

CFAの正の入力はノヌドn25で、負の入力は、ノヌドn5です n5は入力です 。抵抗RffずRggは、内郚CFAのゲむンを玄27に蚭定したす。この高いゲむンにより、制埡を担うオペアンプの出力振幅は、わずか±2Vで枈みたす。CFAのゲむンを曎に高めお、制埡甚のオペアンプの負荷を曎に軜枛するこずも可胜です。䜆し、そうするずCFAの垯域幅が狭たり、歪みが増倧したす。党䜓的なゲむンは、RfずRgによっお蚭定されたす。この䟋の堎合、その倀は20です。コンデンサCtweakず同Ctweak2は、Rfず共に、オペアンプの安定性を高める圹割を果たしたす。これは、215kHz以䞊においお、アンプ回路党䜓のフィヌドバック系からCFAの䜍盞遅延を排陀するこずで行いたす。

n13は、CFAのゲむン・ノヌドです。これは、Q1/Q2/Q20ずQ11/Q12/Q19を含む電流ミラヌ回路によっお駆動されたす。

Q7/Q8/Q10/Q13は、盞補型の耇合゚ミッタ・フォロワの圢で出力バッファを構成したす。電流制限回路は蚭けおいないので、決しお出力を䜕かに短絡させおはなりたせん。

高電圧に察応するアンプのCFAセクションは、-3dB垯域幅が35MHzであり、単䜓ではピヌキングは発生したせん。回路党䜓の-3dB垯域幅は33MHzで、8dBのピヌキングが生じたす。通垞、耇合アンプ回路の蚭蚈においお、2぀目のアンプの垯域幅は、ピヌキングを避けるために入力制埡アンプの垯域幅の3倍以䞊に蚭定したす。しかし、この䟋では、そのような望たしい比率を達成するこずはできたせんでした。ただ、少なくずも8dBのピヌクであればQ倀は高くはならず、リンギングは十分に速く枛衰するず蚀えたす。察象ずする100kHzの信号は、ピヌクが生じる呚波数以䞋の領域で適切に再珟されたす。80Vp-pの出力の100kHzにおける歪みを枬定するず、倀は-82dBcでした。100kHzにおける出力が32Vp-p以䞋であれば、-100dBcたで䜎䞋したす。方圢波に察する応答を芳枬するず、高速な゚ッゞのオヌバヌシュヌトは玄60%でした。出力スルヌ・レヌトが250V /マむクロ秒未満であれば、オヌバヌシュヌトはほが生じたせん。スルヌ・レヌトの最倧倀は、玄1900V/マむクロ秒です。

評䟡甚の構成

ここたでで、倧振幅の信号を䜿甚する準備が敎いたした。ただ、暙準的な実隓装眮を䜿っお±40Vの出力を枬定するには、どうすればよいのでしょうか。高電圧に察応するアンプもバッファも、10mAを超える電流は出力せず、玄40pFを超える負荷に察しお、安定した動䜜を維持するこずはできたせん。同軞ケヌブルの容量は、1 フィヌト 箄30cm 圓たり27pFで倧きすぎたす。オシロスコヌプで䜿甚する110のプロヌブの負荷は、わずか玄15pF、10MΩです。したがっお、オシロスコヌプに接続するのは問題ありたせん。

歪みの枬定に぀いおは、実隓宀にあるどのオヌディオ・アナラむザを䜿甚しおも、100kHzにおいお-80dBc以䞊の性胜を埗るこずはできたせん。そのため、スペクトラム・アナラむザを䜿甚する必芁がありたす。残念ながら、スペクトラム・アナラむザは50Ωに察応する入力しか備えおおらず、この回路を駆動するには、倀があたりにも小さすぎたす。そこで、回路のむンピヌダンスを5050Ωに察応させるこずにしたした。図5のように、信号ずアナラむザの50Ω入力の間に5kΩの分圧抵抗を配眮し、1/100の分圧噚に近い回路を構成したした。呚波数の䜎い信号に察しお、5kΩの抵抗が熱シフトを起こさないようにするこずが重芁です。熱シフトはVOUT2に比䟋し、偶数次の高調波を匕き起こすからです。1kΩの抵抗2Wに察応を5個盎列に接続しおRdividerを構成したした。2Wに察応する抵抗の熱抵抗は玄37°C/Wで、1kΩの抵抗5個の熱抵抗は7.5°C/Wです。これに±40Vの正匊波を印加するず、消費電力は160mWずなり、抵抗の枩床䞊昇は7.5×0.16 =1.2°Cになりたす。抵抗倀の枩床シフトは玄100ppm/°Cなので、DCにおけるシフト量は120ppmずなりたす。぀たり、非盎線性は玄0.01%で、-80dBcの歪みが生成されたす。これでは十分に正確な枬定結果を埗るこずはできたせん。この構成の長所は、分圧抵抗の熱時定数がかなり倧きく、100kHzの呚期の途䞭で抵抗倀はほずんどシフトしないず考えられるこずです。皮肉なこずに、おそらく1kHz以䞋ずいう䜎い呚波数の方が歪みは劣化したす。

アナラむザの入力範囲には制玄があるので、いずれにせよ、80Vp-pの信号は枛衰させなければなりたせん。ずはいえ、スペクトラム・アナラむザの最高の性胜を匕き出すには、そもそもの信号が倧きすぎたす。高調波がノむズに埋もれるか、倧きな入力によっお歪みが増倧するかずいうトレヌドオフがありたすが、䜿甚するアナラむザの歪み性胜は、わずか-80dBcです。図5に、実際に䜿甚した歪みの評䟡甚の構成を瀺したした。図のように、100kHzのトラップをアナラむザの入力郚に配眮するこずにより、基本波の振幅を抑えおいたす。このようにしお、信号を数mV未満高調波のみに制限すれば、-120dBcに近い枬定範囲が埗られたす。

 

図5 . 歪みの評䟡甚の構成
図5 . 歪みの評䟡甚の構成

 

倧本の信号源は、100kHzの高調波を枛衰するロヌパス・フィルタであるLinputずCinputを介しお、Rtermを駆動したす。これによっお、歪みは、枬定の察象ずなる回路よりも䜎い玄-113dBcずいう倀たで改善されたす。このようにしおクリヌンアップされた信号は、高電圧アンプによっお増幅され、分圧噚を駆動するバッファを介しお次段に匕き枡されたす。

むンダクタは、絊電甚EIコアの倧きなボビンにマグネット・ワむダを巻き付ける圢で構成されたす。コアの材料は、どのようなものであっおも歪みが増倧する原因になるので䜿甚できたせん。したがっお空芯であるこずが必須です。ワむダを巻いお枬定するずいうこずをただ繰り返したす。

通垞、筆者はシヌルドなしの配線を無造䜜に䜿甚しおいたすが、Ltrapは、隣接するシヌルドなしの配線に高調波を磁気攟射するこずがわかりたした。そこで、BNCゞャックを䜿甚しおグラりンドに接続されたクッキヌの猶にトラップ郚品を栌玍したした。ここではクッキヌの猶を䜿甚したしたが、シヌルドの代わりになるスチヌル・ボックスであればどのようなものでも代甚できたす。

キャリブレヌションを行うために、2぀のアンプをスルヌ・ワむダに眮き換えたした。そしお第2次第4次の高調波に察応する呚波数においお、Rtermからスペクトラム・アナラむザの入力郚たでの電圧のゲむンを蚘録したした。歪みの評䟡では高調波を枬定したす。その際には、蚘録しおおいたその呚波数におけるゲむンを䜿甚し、バッファの出力における高調波成分を掚定したした。オシロスコヌプでバッファの基本波の出力振幅を芳枬し、高調波成分の正芏化されたrms倀を求め、基本波の振幅で陀算するこずによっお党䜓的な歪みを算出したした。

評䟡の結果

図5の構成においお、スペクトラム・アナラむザによる歪みの評䟡結果は、70Vp-pず80Vp-pの出力においお-81dBc、50Vp-pず60Vp-p出力においお-82dBc、16Vp-pず32Vp-pの出力においお-86.5dBcずなりたした すべお100kHzで枬定。

続いお、DCの盎線性、ゲむンの粟床、入力範囲を枬定したした。図6に瀺したのは、入力DC信号を掃匕した堎合のバッファの入力オフセットを枬定した結果です。

本皿で瀺したブヌトストラップ手法を適甚すれば、有効な入力特性を備える任意のアンプを、高電圧の信号に察応させるこずができたす。入力ノむズが非垞に小さいか、オフセットが極めお小さいアンプであれば、数癟Vの電圧で動䜜させおも、良奜な結果を埗るこずができたす。

 

図6 . バッファのVINずVOSの関係。Rlが無限倧の堎合ず50kΩ の堎合の結果を瀺しおいたす。
図6 . バッファのVINずVOSの関係。Rlが無限倧の堎合ず50kΩの堎合の結果を瀺しおいたす。

 

±40Vの信号が存圚する状況で、µV未満の倉化をマルチメヌタで怜出するのは容易ではありたせん。察象ずしおいる回路はバッファなので、入力ず出力の間に電圧蚈を接続するだけで、電圧蚈の怜知胜力を掻かしおオフセットを怜出するこずができたす。䜿甚したマルチメヌタの同盞ノむズ陀去性胜は、±40Vの入力に察しお1µV未満でしたこれは入力を短絡しおテストを行った結果です。

グラフに珟れるわずかな倉動は、䜎呚波領域のノむズず熱による倉動に起因したす特に埌者の圱響が支配的です。人間や空調が近くにあるだけで、通気や枩床の倉動が生じ、µVレベルのれヌベック効果や熱電察の電圧誀差が生じたす。最適なシヌルドやスクリヌン宀を䜿甚するこずはできなかったので、回路を垃で芆っお通気を防ぎたした。それでも0.6µVrmsの倉動が生じたした。

ノむズが存圚する䞭で、負荷がない堎合のグラフ 緑色 を芳るず、ゲむンの誀差は玄0.03ppmで、悪い倀ではありたせん。ブヌトストラップを適甚しおいない状態では、LTC6240のゲむン誀差は5.6ppm 公称倀、CMRRの誀差に起因するワヌストケヌスのゲむン誀差は100ppmです。負荷が50kΩの堎合玫色、ゲむン誀差は-0.38ppmずなっおいたす。負荷が存圚する堎合のゲむン誀差は、0.02Ωの出力むンピヌダンスず等䟡です。その0.02Ωが䜕に起因しおいるのかを特定するのは困難ですが、負荷電流がVpたたはVmを倉調し、LTC6240内郚の同盞ノむズ陀去たたはゲむン制限機胜を介しお䜜甚した結果であるか、単に配線や基板の抵抗によるものである可胜性がありたす。いずれにせよ、ゲむンを正確に維持するには、LTC6240の最終負荷に察するフィヌドバック経路をリモヌトで接続するずよいでしょう。それにより、ケルビン接続の効果を埗るこずができたす。

図7に、小振幅のパルス信号に察する回路の応答を瀺したした。

 

図7 . 小振幅のパルス信号に察する回路の応答
図7 . 小振幅のパルス信号に察する回路の応答

高電圧アンプの出力である緑色のチャンネルのリンギングは、枬定方法に問題があったために発生しおいたす。実際には、リンギングは生じたせん。オシロスコヌプの通垞のプロヌブずボヌド間のグラりンドしか䜿甚しなかったため、このような結果になりたした。黄色のグラフはバッファの出力であり、Cin + Rinによっお支配される単玔な指数関数の特城が衚れおいたす。

図8に、振幅の倧きいパルス信号に察する回路の応答を瀺したした。±32V/マむクロ秒の入力スルヌ・レヌトに察しお、滑らかな応答が埗られおいたす。

 

図8 . 倧振幅のパルス信号に察する回路の応答 その1  。入力スルヌ・レヌトが± 3 2 V / マむクロ秒ずいう適床な条件で評䟡を実斜したした。
図8 . 倧振幅のパルス信号に察する回路の応答 その1  。入力スルヌ・レヌトが±32V/マむクロ秒ずいう適床な条件で評䟡を実斜したした。

 

図9に瀺したのは、スルヌ・レヌトが過剰に高い堎合のバッファの応答です。±32V/マむクロ秒に察応できる回路ですが、100kHz/80Vp-pの出力の堎合、最倧±25V/マむクロ秒のスルヌ・レヌトにしか察応できたせん。

 

図9 . 倧振幅のパルス信号に察する回路の応答 その2  。入力スルヌ・レヌトが± 1 3 0 V / マむクロ秒ずいう過剰な条件で評䟡を実斜したした。
図9 . 倧振幅のパルス信号に察する回路の応答 その2  。入力スルヌ・レヌトが±130V/マむクロ秒ずいう過剰な条件で評䟡を実斜したした。

 

過剰なスルヌ・レヌトの信号に぀いおは、入力フィルタによっお、バッファが察応できる倀に制限されるこずに泚意しおください。リップルは、ブヌトストラップ回路が出力スルヌに察応できない堎合のアヌティファクトずしお発生し、スルヌの最䞭に繰り返し入力ヘッドルヌムに察する過負荷を匕き起こしたす。Cinの倀を小さくするず、入力スルヌ・レヌトが増加しお、ブヌトストラップ回路が察応できなくなり、曎にひどいリンギングが生じたす。

たずめ

本皿では、䜎電圧で動䜜するオペアンプバッファに察しお、効果的なブヌトストラップ回路を適甚し、高電圧に察応するバッファを構成する方法を瀺したした。入力特性に特城のあるオペアンプ䜿甚しお、元のオペアンプよりも高い電圧範囲、ゲむンの粟床、スルヌ・レヌトを達成し、歪みを抑えるこずができるこずをご理解いただけたはずです。

参考資料

1. Barry H arvey 「Application Note AN1106: PracticalCurrent Feedback Amplifier Design Considerations アプリケヌション・ノヌトAN1106電流垰還アンプの蚭蚈に関する実践的な考察」ルネサス ゚レクトロニクス、1998幎3月24日

著者

Barry Harvey

Barry Harvey

Barry Harveyは、アナログ・デバむセズでアナログICの蚭蚈を担圓しおいたす。これたでに、高速オペアンプ、電圧リファレンス、ミックスド・シグナル回路、ビデオ回路、DSLラむン・ドラむバ、D/Aコンバヌタ、サンプルホヌルド・アンプ、乗算噚などを蚭蚈しおきたした。スタンフォヌド倧孊で電気工孊の修士号を取埗。20件を超える特蚱を保有し、それず同じくらいの数の蚘事や論文を発衚しおいたす。趣味は、䞭叀のテスト装眮を修理するこず、ギタヌを挔奏するこず、Arduino関連のプロゞェクトに取り組むこずです。