質問:
最近、デジタル・ダウンコンバータ(DDC) 機能を搭載したアナログ・デバイセズの 高速 ADC で出力スペクトルを評価 していたら、奇妙な現象が発生しました。 謎のスパーの存在を解明してください。

回答:
DDC にはデシメーション・フィルタが組み込まれており、従来の入力アンチエイリアシング(折返し誤差防止)フィルタを必要とせずに、対象のベースバンド信号をデジタルで抽出し、処理すべきデータのペイロードを小さくすることができます。質問頂いている方は、周波数プランをテストして、DDC の通過帯域と遷移帯域の外にある入力周波数が実際に 100 dB 以上減衰されるか確認しようとしました(下の図を参照)。デシメーション・フィルタをイネーブルして A/Dコンバータ(ADC)の出力データの FFT を実行した結果、その出力スペクトルにスパーが見られ、減衰は期待した 100 dB 以上ではなく、わずか 90 dBだった。そして、入力信号を除去したら、スパーは消えてしまった。このスパーはどこから来ているのか?とお聞きになりたいのでしょう。 なぜ、阻止帯域に十分入っている信号が通過帯域内にスパーを発生させるのでしょうか?

ADC に搭載されている DSP オプションについて考えるとき、ADCがどのように動作するか考えるのを忘れてしまいがちです。上の図では、ベースバンドのナイキスト領域のデシメーション・フィルタの応答を正確に表していますが、コンバータの他のナイキスト領域で起きることはカバーしていません。この場合、フィルタ応答は他の全ての高次ナイキスト領域にエイリアスを生じます。下の図では、最初の 5 つのナイキスト領域の応答を見ることができます。また、謎のスパーも確認できます。これは、帯域外の入力トーンの 2 次高調波がエイリアスを生じたものです。

質問者のテスト構成には、アナログ入力のアンチエイリアシング・フィルタはなかったということでした。したがって、謎のスパーの根本原因についての回答は、デジタル・フィルタはアナログ側のスペクトル成分を除去することはできないということになります。これは、高いサンプル・レートのコンバータを使えばアナログ入力のフィルタリング要件を緩和できますが、それでもサンプリング・システムのエイリアシングの法則を無視することはできないことがわかります。高いサンプリング・レートと DDC により、フロント・エンドに強力なアナログ・フィルタがなくても、fS/4 と fS/2 の間のブロッカを処理できました。もっと弱いフィルタでも、3f S/4 以降のスプリアスを除去できるでしょう。
アナログ・デバイセズの EEngineerZone® コミュニティ のブログ:
Examining DDCs in Wideband GSPS ADCs—Part 1
Examining DDCs in Wideband GSPS ADCs—Part 2
Examining DDCs in Wideband GSPS ADCs—Part 3
Examining DDCs in Wideband GSPS ADCs—Part 4
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Examining DDCs in Wideband GSPS ADCs—Part 6
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