コンパレータとオペアンプ ともに相交わることなかれ(あるいはパンチ君からのアドバイス)

質問:

オペアンプで間に合うのに、なぜ高価なコンパレータを買うのでしょうか?

RAQ:  Issue 11

回答:

なぜなら、それでは十分ではないからです。オペアンプコンパレータとして使用しようと考えている人には、結婚しようと考えている人たちに人形劇のパンチ君(イギリスの人形劇「パンチ劇場」の主人公)が言うように「お止しよ!」と言いましょう。しかし、私の忠告はパンチ君の忠告と同じ程度にしか聞いてもらえないでしょうから、ここでは、それでもとにかくやってしまう人たちのために忠告しましょう。

コンパレータには差動入力とレールtoレール出力があり、オペアンプも同じです。コンパレータのオフセットは低く、高いゲインと同相ノイズ除去比(CMRR)がありますが、この点もオペアンプと同じです。しかし、コンパレータは開ループで動作し、デジタル回路を駆動し、オーバードライブ時でも高速で動作し、大きな差動入力電圧を受け入れるように設計されていますが、オペアンプのほうは閉ループで動作し、簡単な抵抗やリアクタンス負荷を駆動することを目的としており、オーバードライブから短時間で回復することはできません。ただ、オペアンプのほうが安価で、同等価格で4個か6個セット(大概1つはスペアで、使用待ちの状態)が入手できるものさえあり、大部分のコンパレータに比べてオフセット仕様とバイアス電流仕様が優れています。

しかし、オペアンプをコンパレータとして使用すると、主に速度、ロジック駆動機能、入力構造のさまざまな影響という3つの面で問題が生じることがあります。

コンパレータは大きな差動入力で動作するものであるのに対し、オペアンプはほぼ同じ電位の2つの入力による閉ループ動作になります。たとえ数ミリボルトでも差動入力電圧を受けると、オペアンプの内部回路が飽和してしまうことがあります。回復は非常に遅く、オーバードライブのレベルやデバイスごとに回復時間はかなり異なります。このようなばらつきや速度の低下は、コンパレータには望ましいものではありません。

オペアンプがレールtoレール出力で駆動するロジック(CMOSまたはTTL)と同じ電源で動作させる場合は、インターフェースはそう難しくありません。しかし、オペアンプとロジックの電源が異なる場合は、正しいレベルにするためにインターフェース回路が必要になり、しかも、それはかなり複雑なものになる可能性があります。

最後に、オペアンプ入力は一般に高インピーダンスで低バイアス電流ですが、数百ミリボルト以上の差動入力電圧が印加された場合は、そうはいきません。理想的なものからは程遠いさまざまな挙動が出てくることがあります。高いレベルのオーバードライブによってオペアンプの入力段にごくわずかなダメージが発生することがあり、長期的な性能の変化が徐々に蓄積されていく可能性があります。こうした現象は、研究室の中の開発作業では見落とされることがあります。

著者

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James Bryant

James Bryantは、1982年から2009年に定年退職するまで、アナログ・デバイセズの欧州地区アプリケーション・マネージャを務めていました。現在も当社の顧問を務めると共に、様々な記事の執筆に携わっています。リーズ大学で物理学と哲学の学位を取得しただけでなく、C.Eng.、Eur.Eng.、MIEE、FBISの資格を有しています。エンジニアリングに情熱を傾けるかたわら、アマチュア無線家としても活動しています(コールサインはG4CLF)。