無線周波数干渉(あるいは高級レストランで昼食をご馳走になる方法)

質問:

RF(無線周波数)は低周波回路に異常を招くことがあると聞きましたが、どういうことでしょうか?

RAQ:  Issue 1

回答:

以前、AD654というアナログ・デバイセズのVFC(電圧/周波数コンバータ)に「許容できない精度の乱れ」があるという理由でフランスまで呼び出されたことがあります。私は問題のデバイスを自分の研究室で測定しましたが、仕様の範囲内に収まっており、安定していることがわかりました。ところが、お客さんの方では私と同じ結果になりません。私と同じ試験装置を使ってもそうでした。そこでお客さんは、こちらに来て問題を私自身に見てもらえないかと頼んできたのです。


イスーダンは、イギリス南西部のミッドサマー・ノートンにある私の家からはずいぶん遠いところです。そこで、丁重にお断りしようと思いました。ところが、そこにはミシュラン・ガイドの三つ星レストラン、ラ・コニェットがあり、メートル・キュイジニエ・ド・フランスの称号(めったなことではもらえない肩書き)を持ったシェフがいるということを知りました。このお客さんを訪ねることは願ってもないことでした。

2つのハム、ハンディトーキーと高周波
アマチュア無線仲間でボーイング社のヘルマン・ゲルバッハが当時イギリスにいて、協力を申し出てくれました。技術的に興味深い問題だと言うのですが、その前に私は彼がミシュラン・ガイドを熱心に調べているところを目撃していました。

イスーダンまでは6時間のドライブ、6時間のイギリス海峡フェリーの旅で、おまけに左側通行から右側通行への道路変更が伴いました。もうすぐ顧客の研究室というところで、ラジオ・フランス・アンテルナショナル(別名RFI!)の巨大な短波送信アンテナのそばを通過したと思ったら、また次々と同じようなものの前を通り過ぎました。私たちには、何が問題なのかだんだんわかってきました。私は、携帯型の2メートルのハム用トランシーバ(HTまたは「ハンディトーキー」)を上着のポケットにすべり込ませました。

AD654の動作は、お客さんの主張したとおり不規則に乱れていました。出力周波数は、数分間に数十mVのオフセット変化に相当するほど変動していました

私はそっとポケットに手を滑り込ませ、HTの送信ボタンを押しました。途端に出力周波数が大きく跳ね上がったので、少なくとも高周波の混入が問題の一部になっていることが明らかになりました。きちんと測定すると、そこの研究室では私たちが見かけた送信機によって数十~数百mV/m規模の高周波(HF)電界強度が生じていることがわかりました。適切なRFIフィルタリングによってVFCの問題は解決しました。感謝してくれたお客さんはお祝いに私たちをラ・コニェットへ招待してくれました。

著者

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James Bryant

James Bryantは、1982年から2009年に定年退職するまで、アナログ・デバイセズの欧州地区アプリケーション・マネージャを務めていました。現在も当社の顧問を務めると共に、様々な記事の執筆に携わっています。リーズ大学で物理学と哲学の学位を取得しただけでなく、C.Eng.、Eur.Eng.、MIEE、FBISの資格を有しています。エンジニアリングに情熱を傾けるかたわら、アマチュア無線家としても活動しています(コールサインはG4CLF)。