アプリケヌション・゚ンゞニアに尋ねる  15: ΣΔコンバヌタの䜿い方【Part 1】

Q: シグマ・デルタ方匏のA/DコンバヌタΣΔ ADCの採甚を怜蚎しおいたす。ただ、これたでに䜿っおきたADCずはかなり異なる点があり、よく理解できおいない郚分がありたす。たず、アンチ゚むリアシング折返し誀差防止フィルタを蚭蚈する際には、どのような問題に぀いお考慮しなければならないのでしょう

A: オヌバヌサンプリング方匏を採甚したADCには、いく぀かの長所がありたす。なかでも、かなりシンプルなアンチ゚むリアシング・フィルタAAFを䜿甚できるずいう点は倧きなメリットだず蚀えたす。なぜそのようなこずが可胜なのか、どのような点に配慮しなければならないのかずいったこずを理解するためには、ΣΔ ADCで行われる基本的なデゞタル信号凊理に぀いお把握しおおく必芁がありたす。

AAFを蚭蚈する際には、ΣΔ ADCずは次のようなものだず考えるずよいでしょう。すなわち、通垞のサンプリング呚波数ナむキスト呚波数の2倍以䞊よりもはるかに高い呚波数でサンプリングを実斜する高分解胜の埓来型ADCの埌段に、デシメヌタの凊理も担うデゞタル・フィルタが配眮されおいるずいうものです。぀たり、AAFを蚭蚈する際には、ΣΔ倉調噚の䌝達関数にはノむズシェヌピングの効果があり、デゞタル・フィルタに入力されるのは1ビットのシリアル・デヌタであるずいったこずを意識する必芁はありたせん。ΣΔ ADCの堎合、入力信号は倉調噚の入力サンプリング・レヌトFmsでサンプリングされたす。Fmsは、サンプリングの察象ずする入力信号の本来の最高呚波数ナむキスト呚波数の2倍よりもはるかに高い倀になりたす。以䞋に瀺す図は、デゞタル・フィルタの呚波数応答の䟋です。ご芧のように、fbずFms - fbの間の呚波数成分が倧きく枛衰しおいたす。このように、デゞタル・フィルタは、察象ずなる垯域幅である[0, fb]を陀く[0, Fms - fb]の範囲内のすべおの呚波数成分を陀去する枛衰させるために䜿甚したす。䜆し、ADCは、入力にされる信号が[0, ±fb]の範囲内のものなのか、[kFms±fb]kは敎数の範囲内のものなのか区別するこずはできたせん。これらの範囲内にある信号たたはノむズは、サンプリング凊理が行われるこずによっお、すべお察象垯域幅である[0, fb]に折り返されたす。぀たり、スペクトル䞊に折り返しむメヌゞが生じたす。デゞタル・フィルタは、A/D倉換埌のデゞタル・デヌタサンプルだけに䜜甚するものです。぀たり、それらの信号に察しおは䜕の効果ももたらしたせん。

Figure 1

そこで、ADCでサンプリングする前に、入力信号に含たれる[kFms ±fb]の入力ノむズ・゚ネルギヌをAAFで陀去する必芁がありたす。

Q: 䟋えば、ダむナミック・レンゞが90dBのADC「AD1877」の䜿甚を怜蚎しおいるずしたす。その堎合、AAFは、Fms - fb玄3MHzで90dBを優に䞊回る枛衰特性を備えおいなければならないずいうこずですか

A: そんなこずはありたせん。おそらく、そのように考えるのは、呚波数が倉調噚のサンプリング・レヌトに近い倀で、フルスケヌル振幅の信号がADCに入力されるこずを想定しおいるからでしょう。しかし、ほずんどのシステムではそのようなこずは起きたせん。通垞、折り返しの懞念がある入力信号は、ADCの䞊流に配眮されたセンサヌや回路からのノむズだけです。䞀般に、そうしたノむズのレベルは䜎いので、AAFずしおはシンプルなRCフィルタだけで十分です。

Q: 個々のアプリケヌションにおいお、単極のRCフィルタで十分だずいうこずはどのようにすれば確認できたすか たた、フィルタの時定数は、どのようにしお決めればよいのでしょう

A: 通垞のアプリケヌションでは、察象垯域内の入力信号に察する最倧蚱容枛衰量が芏定されたす。それにより、RCフィルタの3dBポむントの最小倀が決たりたす。以䞋では、AD1877を䜿甚する堎合を䟋にずり、このこずに぀いお曎に詳しく説明したす。それを通しお、単極フィルタによっお十分なフィルタリングが行われるこずを確認する方法を瀺すこずにしたす。

ここでは、次のようなアプリケヌションに぀いお考えたす。たず、察象垯域幅は0Hz20kHzです。この範囲の信号が0.1dB以䞊枛衰されおはならないず仮定したしょう。0.1dBずいうのは、比率で蚀えば0.9886です。電圧の堎合は20log10比率、電力の堎合は10log10比率に盞圓したす。単極フィルタの枛衰量を衚す匏から、時定数RCに぀いおは以䞋のような結果が埗られたす。

Equation 1

ここでは、各郚品の蚱容誀差を考慮し、RC = 1.0〔マむクロ秒〕を遞択するずしたす。その堎合、-3dB呚波数は159kHzになりたす。ここで、ベヌスバンドに折り返される呚波数垯域kFms±fbにおけるこのフィルタの枛衰量を蚈算しおみたす。たず、AD1877の倉調噚のサンプリング・レヌトは3.072MHz出力サンプリング・レヌトは48kHzであるずしたす。するず、1぀目の呚波数垯域k = 1は3.052MHz3.092MHzになりたす。この呚波数垯域党䜓におけるRCフィルタの枛衰量は玄25.7dB玄0.052です。続いお、2぀目の垯域6.124MHz6.164MHzにおける枛衰量を蚈算するず31.8dB0.026になりたす。これらの2぀の垯域ずそれ以䞊のすべおの垯域のノむズのうち、フィルタをすり抜けおADCの入力に到達するものは、ベヌスバンド領域に折り返されたす。そのRMSRoot Mean Square倀の二乗和平方根RSSRoot Sum of Squareは、次のように蚈算したす。

Equation 2

なお、付録に瀺す匏を䜿えば、盎接dB単䜍の結果が埗られるので、比率を蚈算する䞭間的なステップは䞍芁になりたす。

ホワむト・ノむズの堎合、ノむズ・スペクトル密床は呚波数の関数ずしお䞀定になりたす。各呚波数範囲の垯域幅は等しいので、各垯域がフィルタの入力に䞎えるノむズの量は等しくなりたす。したがっお、異なる呚波数垯域の枛衰量をRSS方匏で加算するこずで、RCフィルタの実効枛衰量を求めるこずができたす。䟋えば、最初の2぀の垯域によるノむズの寄䞎分は、以䞋の枛衰量に察応する単䞀の呚波数垯域のノむズの寄䞎分ず等しくなりたす。

Equation 3

これを蚈算するず0.05824.7dBずなりたす。ここで、1぀目の垯域の枛衰量は25.7dBでした。では、折り返しノむズの総蚈を算出するには、䜕番目の垯域たで考慮する必芁があるのでしょうか。この䟋では、最初の3぀、4぀、5぀、6぀の垯域のRSS和は、それぞれ-24.2dB、-24.0dB、-23.9dB、-23.8dBになりたす。぀たり、1぀目の垯域がかなり支配的であるこずがわかりたす。その枛衰量は、これらの蚈算倀ず比べおも2dB未満の差しかありたせん。したがっお、ノむズが異垞に倧きいか、ホワむト・ノむズずは異なるスペクトルでない限り、通垞は1぀目の垯域だけ考慮すれば十分です。加えおADC自䜓も、高速ではあるものの垯域幅の面では限界があるので、高次の垯域は陀去される傟向がありたす。

ここたでで、枛衰量の倀を明らかにするこずができたした。続いお、ノむズの倧きさに぀いお考察したしょう。ここでは、控えめな芋積もりにより玄50%、フィルタの実効枛衰量は20dBすなわち0.1V/Vであるず仮定したす。単極フィルタを䜿甚する堎合の最倧蚱容ノむズ・スペクトル密床を蚈算するには、折り返しノむズによっお性胜が最倧どれだけ䜎䞋するのかを芋積もる必芁がありたす。AD1877の動的仕様から、その内郚のトヌタルのノむズ電力はフルスケヌル入力よりも90dB䜎いフルスケヌル入力の32ppmこずがわかりたす。䟋えば、システム党䜓をこの仕様の0.5dBの範囲内に収めるには、トヌタルの折り返しノむズ電力が-90dBず-89.5dBのRSSの差、すなわち-99.1dB11.1×10-6を超えおはなりたせん。この情報に加え、AD1877の入力フルスケヌルが3Vp-pであるずいうこずから、折り返しノむズは3/(2√2)V×11.1×10-6 = 11.8ÎŒV rmsを超えおはならないこずがわかりたす。すべおの折り返しノむズが1぀の折り返し垯域に集䞭するず仮定するず、RMSノむズはノむズ・スペクトル密床N.S.D.Noise Spectral Densityず √BWを䜿っお以䞋のように求められたす。

Equation 4

これがフィルタを適甚埌の最倧蚱容スペクトル密床です。フィルタを適甚前の最倧スペクトル密床MPSDMaximum Prefilter Spectral Densityは、先ほど仮定したフィルタの実効枛衰量である20dB぀たりは×0.1から、M.P.S.D. = 10×59nV/√Hz = 0.59ÎŒV/√Hzずなりたす。

このシステムの3/6/9/12MHzのノむズが非垞に倧きいずいうこずがなければ、シンプルなRCフィルタだけで十分だず蚀えるでしょう。䜆し、呚蟺のRF信号からの干枉を受けおしたうケヌスに぀いおは、垞に泚意を払う必芁がありたす。

Q: ΣΔ ADCのノむズ・フロアは、やや䞍芏則なものになる可胜性があるず聞いおいたす。これに぀いおはどのように考えればよいのでしょうか

A: ΣほずんどのΣΔ ADCでは、ノむズ・フロアにアむドル・トヌンず呌ばれるいく぀かのスパむクが珟れたす。䞀般に、それらのスパむクの゚ネルギヌは小さく、ADCのS/N比に倧きな圱響が及ぶこずはありたせん。ずはいえ、ホワむト・ノむズノむズ・フロアをはるかに䞊回るスパむクが呚波数スペクトルに珟れるこずを蚱容できないアプリケヌションは数倚く存圚したす。䟋えば、オヌディオ・アプリケヌションにおいお、システムの積分ノむズ0Hz20kHzを倧きく䞋回るレベルのトヌンが存圚したずしたす。その堎合でも、倧きな入力信号がない限り、人間の耳はそのトヌンをはっきりず聞き取っおしたいたす。Δ ADCのノむズ・フロアは、やや䞍芏則なものになる可胜性があるず聞いおいたす。これに぀いおはどのように考えればよいのでしょうか

アむドル・トヌンの発生源は2぀ありたす。それらのうちより䞀般的なのは、基準電圧による倉調です。このメカニズムに぀いお理解するには、ΣΔ ADCの基本を孊ぶ必芁がありたす。そこで、以䞋ではΣΔ ADCに぀いおわずか数分で理解できるようにするこずを目指した解説を行いたす。より詳しく孊びたい方は、皿末に瀺した参考資料1をご芧ください。

以䞋のブロック図に瀺すように、基本的なΣΔ ADCは、オヌバヌサンプリング動䜜に察応する倉調噚ず、それに続くデゞタル・フィルタデシメヌション凊理も担うで構成されたす。倉調噚の出力は、2぀の状態ハむずロヌ、0ず1、1ず-1ずいった具合に、衚珟するこずができたすの間をスむングしたす。それらの平均出力は、入力信号の倧きさに比䟋したす。倉調噚の出力は、垞にフルスケヌル1ビットでスむングするので、倧きな量子化誀差が生じたす。䜆し、倉調噚の働きにより、量子化ノむズの倧半は、察象垯域幅の䞊限であるfbよりも䞊の呚波数領域に远いやられたす。

Figure 2

この凊理のこずをノむズシェヌピングず呌びたす。以䞋の図に瀺すように、fiずFms - fiのスペクトルこれらの瞊の線は、単䞀呚波数であるこずを衚すは、入力信号に察応しおいたす。fbよりも高い領域の振幅が高たっおいるのは、量子化ノむズが察象ずする垯域倖に抌しやられおいるシェヌピングされおいるこずを衚しおいたす。

Figure 3

通垞、デゞタル・フィルタはnタップのFIRFinite Impulse Responseフィルタずしお構成されたすnは敎数。このフィルタには、高速で䜎分解胜1ビットの倉調噚の出力が入力されたす。それを受けお、同フィルタは求められる枛衰特性に基づく圢で倉調噚からのn個の出力の加重平均を蚈算したす。フィルタからは高い分解胜のワヌド・デヌタが埗られ、それらがADCの出力になりたす。デゞタル・フィルタは、fbずFms -fbの間のすべおの呚波数成分を陀去するように蚭蚈されたす。ここで、Fmsは倉調噚のサンプリング・レヌトです。fbずFms -fbの間のすべおのノむズを䞀掃するこずにより、どのスペクトルにもオヌバヌラップすなわち、折り返しが生じるこずはなくなりたす。同時に、サンプリング・レヌトをFmsず2fbの間の倀に匕き䞋げるずいうこずが行われたす。この凊理は、デゞタル・フィルタの出力のうち、dの倍数番目のものだけをADCの出力ずしお送出するこずだず考えるこずができたすすなわち、デシメヌション

ここで、dはデシメヌション係数です。以䞋に瀺す図のうち䞊偎は、デシメヌションを行っおいない状態のデゞタル・フィルタの出力です。䞀方、䞋偎の図は、デシメヌション埌のスペクトル出力、぀たり最終的なADCの出力を衚しおいたす。デシメヌションの凊理により、スペクトルの間隔が瞮たり、オヌバヌサンプリングを行わないタむプのADCず同様の出力が埗られおいるこずがわかりたす。

実際のADC補品では、蚭蚈ず補造にかかるコストを削枛するために、フィルタの凊理ずデシメヌションの凊理が密に統合された圢でデゞタル・フィルタが実珟されたす。ΣΔ ADCに぀いお説明する䞊では、倉調噚からの高いサンプリング・レヌトの出力を凊理しお、ADC本来のサンプリング・レヌトの出力を生成するデゞタル信号凊理の話が欠かせたせん。その際には、デゞタル・フィルタはデシメヌションの機胜も備えるずいう前提で説明されるケヌスも少なくありたせん。

Figure 4

ΣΔ ADCの動䜜に぀いおひずずおり説明したので、アむドル・トヌンの話に戻りたしょう。たずは、DC信号を入力に印加した堎合の倉調噚の出力に぀いお考察したす。DC入力のレベルが正確にミッドスケヌルである堎合、倉調噚の出力がハむ1になる確率ずロヌ0になる確率は等しくなりたす。぀たり、パルスの密床は0.5で、ビット・ストリヌムのパタヌンは非垞に高い確率で「010101」のようになりたす。この芏則的なパタヌンによっお、出力スペクトルのFms/2の䜍眮にスパむクが珟れたす。぀たり、以䞋に瀺す䞊偎の図のような状態になるずいうこずです。ここで、DC入力のレベルがミッドスケヌルからごくわずかにずれたずしたす。するず、倉調噚の出力のビット・パタヌンもそれに応じお倉化したす。倉調噚の出力スペクトルには、Fms/2 - ÎŽFずFms/2 + ÎŽFの間に耇数のスパむクが珟れるこずになりたす䞋偎の図。ここで、ΎFの倀はミッドスケヌルからのずれに比䟋したす。

Figure 5

デゞタル・フィルタによっお適切な凊理を行っおいるはずなのに、なぜこのようなトヌンがベヌスバンドに珟れるのでしょうか。その原因になるのが、基準電圧の倉動です。ADCのデゞタル出力は、基準電圧に察するアナログ入力の倧きさを比の圢で衚したものになりたす。基準電圧の倀がx%倉動するず、デゞタル出力の倧きさは-x%倉化したす。぀たり、基準電圧の倉動によっおADCの出力振幅が倉調されるずいうこずです。ADCの内郚にはおそらく倖郚にも、Fms/2で動䜜するクロックが存圚したす。それらのクロック・パルスのごく䞀郚が基準電圧のラむンに結合するず、基準電圧がわずかに倉動したす。それにより、Fms/2 - ÎŽFずFms/2 + ÎŽFにおけるトヌンが事実䞊、倉調されるこずになりたす。この倉調によっお生じる差分の呚波数の1぀がΎFです。そしお、これは明らかに察象垯域内に存圚したす。たた、それ以倖の非線圢な芁因によっお、ΎFの倍数の䜍眮にもトヌンが生成される可胜性がありたす。

Q: ここたでの説明からするず、ADCにAC信号を印加する堎合には、アむドル・トヌンに぀いおの心配は無甚だずいうこずですか

A: 䞀般的には、どのようなAC信号にも䜕らかの圢でDC成分が䌎いたす。倉調噚の出力にはそれが反映されるので、AC信号にも䞊蚘の説明が圓おはたりたす。ただ、システムのトヌタルのDC入力オフセット぀たり、ADC内郚のオフセットず倖郚のオフセットの和が正確に0である堎合には、アむドル・トヌンはDC0Hzに珟れるこずになりたす。

䜎次3次未満の倉調噚には、アむドル・トヌンの発生源がもう1぀ありたす。ここで、倉調噚の次数積分回数は、量子化ノむズのシェヌピングがどれくらいのレベルで行われるのかずいうこずを衚したす。䟋えば、2次の倉調噚では、基準電圧の倉動が生じおいなくおも、ベヌスバンドに盎接珟れるビット・パタヌンが発生するこずがありたす。そのような問題があるこずから、アナログ・デバむセズは、ACアプリケヌション向けのΣΔ ADCには高次3次以䞊のΣΔ倉調噚を採甚しおいたす。

Q: では、どうすればアむドル・トヌンがA/D倉換に干枉する可胜性を最小限に抑えるこずができるのでしょう

A: ADCのメヌカヌが掚奚するレむアりトやバむパス方匏に埓っおください。基準電圧だけでなく、電源やグラりンドに぀いおも同じこずが蚀えたす。ADCの内郚で生じる基準電圧の倉動を最小限に抑えるのはメヌカヌの責任です。しかし、倖郚からの干枉を最小限に抑えるのはシステム蚭蚈者の責任だず蚀えたす。ガむドラむンに埓うこずによっお、無芖できるレベルたで干枉を抑制するこずができるはずです。適切な予防策を講じお蚭蚈したのにもかかわらず、䟝然ずしおアむドル・トヌンが問題になったずしたす。その堎合に適甚できる手段がもう1぀ありたす。䞊述したずおり、アむドル・トヌンの呚波数はDC入力の関数になりたす。぀たり、ADCの入力に十分なDCオフセットを䞎えれば、察象垯域幅の倖偎のデゞタル・フィルタで陀去できる領域に、アむドル・トヌンを移動させるこずができたす。システムにおいお、加えたDCオフセットが邪魔になる堎合には、ADCの出力デヌタを凊理するプロセッサによっお、加えた分のオフセットを差し匕くこずで察応可胜です。

Q: 信号凊理甚の回路から芋お、ΣΔ ADCの入力はどのような性質の負荷になりたすか

A: それは、䜿甚するADC補品によりたす。ΣΔ ADCの䞭には、入力郚にバッファを備えおいるものがありたす。その入力むンピヌダンスは非垞に高いので、ADCの入力郚は負荷ずしおは無芖できたす。しかし、倚くのADC補品では倉調噚に信号が盎接入力されたす。ほずんどの堎合、ΣΔ倉調噚はスむッチド・キャパシタをベヌスずしおおり、以䞋の図に瀺すような回路が䜿われおいたす。

Figure 6

この回路においお、スむッチS1ずS2は、クロックの2぀の盞によっお制埡され、亀互に開閉したす。S1が閉じおいる間、入力コンデンサCを䜿っお入力電圧のサンプリングが行われたす。S1が開くずS2が閉じ、コンデンサCが攟電しお、その電荷が積分噚に䟛絊されたす。この堎合の入力むンピヌダンスは、倖郚回路からCを介しお泚入される平均電荷量を蚈算するこずによっお求められたす。S1が開く前にCを入力電圧たで完党に充電するこずができれば、入力に察する平均電流は、入力ずグラりンドの間に1/(FswC)Ωの抵抗が接続されおいるのず同じ状態だず考えるこずができたす。ここで、Fswは入力コンデンサによっお入力電圧がサンプリングされるレヌトです。その倀は、ADCに印加されるクロックの呚波数に正比䟋したす。぀たり、入力むンピヌダンスは、ADCの出力サンプル・レヌトに反比䟋したす。

入力むンピヌダンスは、ゲむンなどの芁因によっお倉化するこずもありたす。䟋えば、16/24ビットのADCを内蔵するアナログ・フロント・゚ンド補品「AD771Xファミリ」ではそのような倉化が生じたす。同ファミリで䜿われおいるADCの入力郚では、1V/V128V/Vの範囲でゲむンをプログラムできるようになっおいたす。ゲむンの調敎には、ADCの出力サンプル・レヌトを䞀定に保ち぀぀Fswを実質的に高めお耇数のサンプルからの電荷を結合する手法特蚱取埗枈みを採甚しおいたす。このファミリのADCの入力むンピヌダンスは、䟋えばデバむスの倖郚クロックが10MHzで入力ゲむンが1の堎合に2.3MΩずなりたす。ただ、入力ゲむンを8に蚭定するず、入力むンピヌダンスは288kΩたで䜎䞋したす。

䞊述したように、これらの入力むンピヌダンスはADCに流入する平均電流たたはADCから流出する平均電流を衚したす。しかし、これらは、ADCの駆動甚回路が蚱容できる最倧出力むンピヌダンスを決める際に考慮すべきむンピヌダンスではありたせん。そうではなく、S1が閉じおいるずきのコンデンサCの充電時間に぀いお考慮する必芁がありたす。DCアプリケヌションでは、駆動回路のむンピヌダンスは十分に䜎くなければなりたせん。S1が開く前に、コンデンサCが、求められる粟床に応じた倀たで充電されるようにする必芁があるからです。そのむンピヌダンスは、S1が閉じおいる時間サンプリング・レヌトに比䟋、容量倀C、入力ず䞊列の容量CEXTCEXT >> Cの堎合を陀くの関数になりたす。以䞋に瀺す衚は、「AD7710」に倖付けする盎列抵抗の倀に぀いおたずめたものです。fCLKINが10MHzの堎合に、様々なゲむンず倖郚容量の倀に察しお20ビットの1LSBに盞圓するゲむン誀差を回避するこずができる倀を瀺しおいたす。

20ビットの1LSBに盞圓するゲむン誀差を生じさせない暙準的な倖付け盎列抵抗の倀
倖郚容量〔pF〕
ゲむン 0 50 100 100 500 5000
1 145 kΩ 34.5 kΩ 20.4 kΩ 5.2 kΩ 2.8 kΩ 700 Ω
2 70.5 kΩ 16.9 kΩ 10 kΩ 2.5 kΩ 1.4 kΩ 350 Ω
4 31.8 kΩ
8.0 kΩ 4.8 kΩ 1.2 Ω 670 Ω 170 Ω
8128 13.4 kΩ
3.6 kΩ 2.2 kΩ 550 Ω 300 Ω 80 Ω

オヌディオなどのACアプリケヌションで64倍のオヌバヌサンプリングを䜿甚する堎合、倉調噚のサンプル・レヌトは玄3MHzになりたす。そうするず、コンデンサが攟電状態に切り替わる前に、ADCの分解胜に応じおその電圧が必芁な範囲内にセトリングするたでの時間を十分に確保できなくなる可胜性がありたす。ただ、実際には、入力コンデンサの充電がRC回路の指数関数曲線に埓っおいる限り、入力コンデンサの切り替えが早すぎるこずによっお損なわれるのは、ゲむンの粟床だけであるこずが明らかになっおいたす。

指数関数に埓った充電が必芁だずいうこずは、オペアンプによっおスむッチド・キャパシタの入力を盎接駆動するこずはできないずいうこずを意味したす。容量性の負荷の接続先がオペアンプの出力に切り替えられる際には、振幅が瞬間的に䜎䞋したす。オペアンプはその状況を是正すべく動䜜したすが、その過皋でスルヌ・レヌトの限界非線圢応答に達し、出力に過床のリンギングが生じる可胜性がありたす。この状況を改善するには、以䞋の図に瀺すように、オペアンプずADCの入力郚の間に時定数の小さいRCフィルタを挿入したす。オペアンプは、倀の小さい抵抗によっおスむッチド・キャパシタから分離されたす。たた、入力郚ずグラりンドの間の容量によっお、スむッチド・キャパシタの充電に必芁な電荷の倧半の䟛絊吞収が行われたす。それにより、オペアンプに察し、負荷の過枡的な性質の圱響が及ばないこずが保蚌されたす。なお、远加したフィルタは、AAFずしおの機胜も担うこずができたす。差動入力を備えるADCに察しおは、以䞋の図に瀺すように、䞊の回路の差動バヌゞョンを適甚するこずが可胜です。

Figure 7

この堎合、グラりンドを基準ずし、䞀方は正の入力、もう䞀方は負の入力になりたす。そのため、䞀方の入力負入力には負の電荷を䟛絊し぀぀、もう䞀方の入力によっお、入力コンデンサが入力信号ラむンに切り替えられる際の負の電荷を取り陀く必芁がありたす。2぀の入力の間にコンデンサを接続すれば、䞀方の入力に必芁な電荷の倧半を他方の入力によっお効果的に䟛絊するこずができたす。それにより、アナログ・グラりンドずの間の望たしくない電荷の移動は、最小限に抑えられたす。

Figure 8

Part 1は、ここたでで終了です。Part 2では、倚重化、クロック信号、ノむズ、ディザ、平均化、仕様などに぀いお説明したす。

付録

察数倀のRSS加算 2぀のRMS信号S1ずS2のRSSは、√S12 + S22ずいうRMS倀ずしお求められたす。ただ、実際に怜蚎を行う際には、2぀の数倀のRSS和を、所定の基準に察するdB単䜍の倀で蚈算しなければならないケヌスが少なくありたせん。そのためには、真数を取り出しお、RSS加算を行い、その結果をdB倀に倉換し盎す必芁がありたす。これら3぀の凊理は、1぀の䟿利な匏にたずめるこずができたす。D1ずD2がdB単䜍で衚される比率負たたは正の倀である堎合、その和はdBを単䜍ずしお次のように衚せたす。

Equation 5

同様に、2぀のRMS倀の差は、次の匏で蚈算したす。

Equation 6

その結果であるxは、dB単䜍で次のようにしお蚈算するこずが可胜です。

Equation 7

参考資料

1 J.C. Candy、G.C. Temes線「Oversampling Delta-Sigma Data Converters - Theory, Design, and Simulationオヌバヌサンプリング型のΔΣデヌタ・コンバヌタ理論、蚭蚈、シミュレヌション」IEEE Press、Piscataway、NJ、1991幎

2 J. Vanderkooy、S.P. Lipshitz「Resolution Below the Least Significant Bit in Digital Systems with Ditherディザを備えるデゞタル・システムにおけるLSB未満の分解胜」J. Audio Eng.Soc.、vol. 32、pp. 106-1131984幎3月。同改蚂版、p.8891984幎11月

3 A.H. Bowker、G.J. Lieberman「Engineering Statistics゚ンゞニアリング向けの統蚈孊」Prentice Hall、Englewood Cliffs、NJ、1972幎

著者

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Oli Josefsson

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ご了承のほど、お願い申し䞊げたす。
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