こうすれば成功間違いなし:サーミスタを用いた液面レベルの検出

サーミスタ、測温抵抗体(RTD)、あるいは他の抵抗温度センサを使用した精密温度計測のアプリケーションにおいては、励起電流によって引き起こされるセンサ自身の自己発熱の影響に十分注意しなければなりません。しかし、アプリケーションによっては、自己発熱の影響をそれほど考慮しなくても良い場合があります。以下に、サーミスタを液面計へ応用しようとしている例をご紹介します。

サーミスタを電圧源で駆動すると通常発熱を伴いますが、液体中にある場合、液体の温度がほぼ一定である限り、サーミスタの温度と抵抗値にも大きな変化はなく、ほぼ一定のままです。しかし、液面が下がりサーミスタが空気中に出てしまうと、液体による放熱効果が失われてサーミスタの温度が上昇します。素子がPTC型の場合は抵抗値が増加します。ここで、低価格の半二重型、RS-485/422差動ライン・トランシーバADM4850を用いると、フラグを立てることでこの状態を容易に検出することができます。LEDなどのリモート警報器に液面レベルのアラート信号を送信する場合は、差動出力が非常に有効です。ADM4850トランシーバの主な用途はマルチポイントのデータ通信であり、その出力は短絡保護、サーマル・シャットダウン、そしてEMI低減のためのスルーレート制限などさまざまな機能を提供します。

ここでは、容器内の液面レベルが一定の高さを越えたかどうかを検出することを考えています。図1に示すように、サーミスタは液体中のあるレベルに位置しています。サーミスタの抵抗値は、液体の中では比較的小さくなります。ドライバ入力の電圧がロジック0になるようにRt/RA比を選びます。サーミスタが液中から外へ出てしまうと、入力電圧は急激に上昇し、入力しきい値電圧に達してロジック1とみなされます。ヒステリシスが必要な場合は、抵抗RBを介してレシーバ出力をドライバ入力に接続できます。

Figure 1
図1. 液面レベルがある一定値を越えたかどうかをサーミスタによって検出する例

この回路動作の信頼性は、ADM4850のデータシートに規定されていない入力しきい値の安定性に依存し、また液面レベルが規定値をクロスする際にRtとRAによって生じる電圧のばらつきに依存します。ADM4850の特性評価結果(電源電圧範囲:4.75V~5.25V、温度範囲:-40℃~+85℃、異なる複数ロットにおいて実施)によると、入力電圧が1.15V以下の場合はロジック0とみなされ、反対に1.42V以上の場合はロジック1とみなされます。

このアプリケーションでは、サーミスタとして液面レベルセンサ用のEPCOS型D1010セラミックPTCデバイスを想定しており、これにより、周囲媒体の熱伝導に対し、正確に追従した抵抗値を得ることができます。このサーミスタ・タイプの温度-抵抗曲線は、ある一定の温度に達すると抵抗値が急激に上昇します。ステンレス・ケース入りの場合は、燃料、溶剤、そして他の厳しい環境下にある液体に対して耐腐食性があります。RAの値は、液温と周囲の外気温度に依存し、液体が熱く外気が冷たい場合に、RA値はワースト・ケースとなります。D1010データシートによれば、RAの909Ωという標準値は、液温が最大+50℃まで、外気温度が最低-25℃までの範囲内で使用するのに適しています。なお、D1010のサンプルの測定値は、室温、励起なしの状態で約149Ωになります。

産業用アプリケーションでは、何らかの障害によってRAまたはRtが致命的な高電圧にさらされる可能性があります。このような場合は、ADM4850の絶縁タイプであるADM2483トランシーバをご検討ください。この半二重型の差動バス・トランシーバは、2.5kVrmsの高電圧に1分間耐えられる(UL1577規格)絶縁インターフェースを集積しています。このデバイスのハイサイド側を駆動するには、絶縁電源が必要となります。

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John Wynne