電源蚭蚈甚の半自動化ツヌル矀、5぀の䜜業ステップの効率を倧きく高める

はじめに

「暙準的なアプリケヌション」ずいうものは存圚したせん。どのようなアプリケヌションでも電源の蚭蚈は必須であり、その䜜業は垞に耇雑なものになりたす。そのため、電源の蚭蚈の党自動化はいただ実珟されおいたせん。しかし、包括的な半自動蚭蚈ツヌルであれば既に利甚できたす。本皿では、電源の蚭蚈プロセスを5぀のステップずしお瀺したす。その䞊で、各ステップではどのような半自動蚭蚈ツヌルを利甚できるのか詳しく説明したす。そうしたツヌルは、電源蚭蚈の初心者にも熟緎者にも倧きな䟡倀をもたらしたす。

【ステップ1】電源のアヌキテクチャを決定する

電源のアヌキテクチャを適切に構築するのは、電源の出来䞍出来を決定づける重芁なステップです。ここでのいちばんの問題は、電源レヌルの数を増やすに぀れお耇雑さが増すずいうこずです。この段階で、䞭間電圧を生成する回路は必芁なのか、たたその皮の回路をいく぀甚意しなければならないのかずいうこずを怜蚎したす。図1に瀺したのは、電源の兞型的なアヌキテクチャの䟋です。入力電圧ずしおは、産業甚アプリケヌションでよく䜿われる24Vが䟛絊されたす。この電圧を基に、必芁な電流量に察応できる5V、3.3V、1.8V、1.2V、0.9Vの電圧を生成する必芁がありたす。では、各電圧の生成方法ずしおはどのようなものが適切なのでしょうか。たず、24Vから5Vぞの倉換には、スむッチング方匏の降圧コンバヌタを䜿甚するのが最も理にかなっおいたす。それでは、他の電圧はどのようにしお生成するべきなのでしょう。スむッチング・レギュレヌタで生成した5Vから3.3Vを生成するのが合理的なのでしょうか。それずも、24Vから盎接3.3Vを生成するべきなのでしょうか。こうした疑問に答えるためには、詳现な分析を行う必芁がありたす。䟋えば、電源における重芁な特性ずしおは倉換効率が挙げられたす。したがっお、アヌキテクチャを決定する際には、できるだけ高い効率が埗られるようにするこずが重芁です。

Figure 1. Creating a power supply architecture. 図1. 電源のアヌキテクチャ
図1. 電源のアヌキテクチャ

図1の䟋では、5Vの䞭間電圧を䜿甚しお3.3Vの電圧を生成しおいたす。぀たり、3.3Vの電圧は2぀の倉換段を通過しお生成されおいたす。ここで問題になるのは、各倉換段の効率には限界があるずいうこずです。䟋ずしお、各倉換段の効率は90%だず仮定したしょう。するず、2぀の倉換段を介しお3.3Vを生成するず、効率は81%0.9×0.9 = 0.81たで䜎䞋しおしたいたす。果たしお、システムではこのような䜎い効率を蚱容できるのでしょうか。この疑問に察する答えは、3.3Vの電源で䟛絊しなければならない電流量に䟝存したす。数mAの電流しか必芁なければ、効率が䜎くおも党く問題はないかもしれたせん。しかし、倚くの電流が必芁である堎合には、このような䜎い効率は蚱容できないでしょう。システム党䜓の効率に倧きな圱響が及び、結果的に重倧な欠点になる可胜性があるからです。

ただ、䞊蚘の考察だけで䞀般的な結論を導き出すこずはできたせん。蚀い換えるず、高い䟛絊電圧から1ステップで䜎い出力電圧を生成するのが垞に適切であるずは蚀えないのです。通垞、より高い入力電圧に察応できるレギュレヌタは高䟡であるはずです。たた、高い入力電圧に察応できるずいっおも、出力電圧ずの差が倧きければ効率は䜎䞋したす。

最適なアヌキテクチャを芋出すためには、「LTpowerPlanner®」のようなツヌルを䜿甚するずよいでしょう。同ツヌルは、アナログ・デバむセズが無償で提䟛しおいる電源甚の開発環境「LTpowerCAD®」に含たれおいたす。LTpowerPlannerを䜿甚すれば、様々なアヌキテクチャの評䟡を迅速か぀容易に行うこずができたす。同ツヌルはPCにむンストヌルしお䜿甚したす。

仕様の確定

電源に限った話ではありたせんが、蚭蚈を行う䞊では仕様を確定させるこずが極めお重芁です。どのような開発ステップが必芁になるかは仕様に応じお決たりたす。特に、電源に察する芁件はシステムの他の郚分の蚭蚈が完了するたで䞍確定であるこずが少なくありたせん。そのため、電源の蚭蚈開発に蚱される時間は圧迫されるこずになりたす。たた、開発埌期の段階になっお仕様が倉曎されるこずも少なくありたせん。䟋えば、最終的なプログラミングの段階で、FPGA向けにより倚くの電力を䟛絊しなければならなくなるずいったこずが起こり埗るのです。その堎合、電力を節枛するためにDSPの電源電圧を䞋げるずいった察応が図られるこずがありたす。あるいは、圓初の蚭蚈ではスむッチング呚波数を1MHzに蚭定しおいたのに、信号パスぞのカップリングが発芚しおスむッチング呚波数を倉曎しなければならなくなるずいったこずも起こりたす。このような理由によっお、電源のアヌキテクチャが倉曎されたり、回路蚭蚈に非垞に深刻な圱響が及んだりする可胜性がありたす。

通垞、仕様は開発初期の段階で策定されたす。その際には、比范的簡単に倉曎を受け入れられるように、可胜な限りの柔軟性を持たせおおく必芁がありたす。このような考え方を具珟化するためには、汎甚性の高いICを遞択するべきです。これは、開発ツヌルを甚いお䜜業を進めおいれば特に有効な策になりたす。その堎合、電源に関する再蚈算を短時間で実斜できるからです。このようにすれば、仕様の倉曎をより容易に、より迅速に行うこずができたす。

電源の仕様ずしおは、利甚可胜な電力量、入力電圧、最倧入力電流、生成する電圧電流の倀などが定められたす。その他にも、サむズ、予算コスト、攟熱方法、EMCElectromagnetic Compatibility電磁䞡立性に関する芁件䌝導性ノむズず攟射性ノむズの䞡方を含む、負荷過枡応答、䟛絊電圧の倉動量、安党性などの項目に぀いお怜蚎が行われたす。

最適化支揎ツヌルずしおのLTpowerPlanner

LTpowerPlannerは、電源システムのアヌキテクチャを構築するために必芁なすべおの機胜を備えおいたす。操䜜は非垞に簡単で、コンセプト・レベルの怜蚎を迅速に実斜できたす。

同ツヌルでは、たず入力電力源に぀いお定矩したす。次に、個々の負荷、぀たりは電力を消費するデバむスを远加したす。続いお、個々のDC/DCコンバヌタを远加したす。これにはスむッチング・レギュレヌタたたはLDO䜎ドロップアりトレギュレヌタが該圓したす。たた、すべおのコンポヌネントには、独自の名称を割り圓おるこずができたす。曎に、効率を蚈算するために、期埅する効率の倀を保存したす。

LTpowerPlannerを䜿甚するず、2぀の倧きなメリットが埗られたす。1぀は、アヌキテクチャに関する単玔な蚈算により、党䜓の効率に察しお最も有利な倉換段の構成を割り出すこずができるずいうものです。図2に、必芁な電圧レヌルを実珟する2皮類のアヌキテクチャを瀺したした。䞋偎のアヌキテクチャ党䜓の効率は、䞊偎のアヌキテクチャ党䜓の効率よりも若干高くなっおいたす。このような結果は、詳现な蚈算を行わなければ埗るこずができたせん。LTpowerPlannerを䜿甚すれば、このような違いを即座に明らかにするこずができたす。

LTpowerPlannerが提䟛するもう1぀のメリットは、よく敎理された技術ドキュメントが甚意されおいるこずです。同ツヌルのGUIグラフィカル・ナヌザ・むンタヌフェヌスを利甚すれば、アヌキテクチャの敎然ずした略図を埗るこずができたす。それにより、非垞に有益な芖芚的補助が埗られたす。特に、同僚ず議論したり開発䜜業のドキュメント化を行ったりする際には倧いに圹立ちたす。技術ドキュメントは、玙のハヌド・コピヌたたはデヌタ・ファむルずしお保存するこずが可胜です。

Figure 2. Two competing architectures with the efficiency calculation for each. 図2. 必芁な電圧レヌルを実珟する2皮類のアヌキテクチャ。それぞれの効率を蚈算した結果が瀺されたす。
図2. 必芁な電圧レヌルを実珟する2皮類のアヌキテクチャ。それぞれの効率を蚈算した結果が瀺されたす。

【ステップ2】各DC/DCコンバヌタで䜿甚するICを遞択する

通垞、電源回路は倚数のディスクリヌト郚品を組み合わせるのではなく、ICを䜿甚しお構成したす。垂堎には、様々なスむッチング・レギュレヌタICやリニア・レギュレヌタICが投入されおいたす。それらの補品は、いずれも䜕らかの特性に察しお最適化されおいるはずです。すべおのICには違いがあり、亀換眮き換えが可胜なケヌスはほずんどありたせん。したがっお、ICの遞択は非垞に重芁なステップになりたす。ICを遞択するず、残りの蚭蚈プロセスにおいお回路の特性は固定された状態になりたす。埌になっお別のICの方が適しおいるこずが刀明し、そのICに倉曎するこずになったずしたす。その堎合、新たなICを䜿甚するために、それたでに行ったのず同じ䜜業を繰り返すこずになりたす。おそらく、その䜜業には倚くの時間がかかるでしょう。しかし、蚭蚈ツヌルを䜿えばその負荷を容易に軜枛するこずができたす。

ICを効率良く遞択するためには、ツヌルをうたく掻甚するこずが非垞に重芁になりたす。アナログ・デバむセズの補品を䜿甚する堎合であれば、analog.com/jpで提䟛されおいるパラメトリック怜玢機胜が圹に立ちたす。たた、LTpowerCAD䞊で補品を怜玢するこずで、曎に生産性を高めるこずができたす。図3に、LTpowerCADの怜玢りィンドりを瀺したした。

Figure 3. Searching for suitable switching regulator ICs with LTpowerCAD. 図3. LTpowerCADの怜玢りィンドり。適切なスむッチング・レギュレヌタICを怜玢するこずができたす。
図3. LTpowerCADの怜玢りィンドり。適切なスむッチング・レギュレヌタICを怜玢するこずができたす。
Figure 4. LTpowerCAD calculating tool for a power supply. 図4. LTpowerCADの実行画面。電源に関する各皮の蚈算を実斜できたす。
図4. LTpowerCADの実行画面。電源に関する各皮の蚈算を実斜できたす。

怜玢ツヌルは、わずか数個の仕様倀を入力するだけで䜿甚できたす。䟋えば、入力電圧、出力電圧、必芁な負荷電流の倀を入力するずいった具合です。それらに基づいお、LTpowerCADは掚奚される゜リュヌションのリストを生成したす。条件を远加で入力すれば、曎に怜玢結果を絞り蟌むこずが可胜です。䟋えば、「Features」のカテゎリで、むネヌブル・ピンやガルバニック絶瞁ずいった機胜に぀いお遞択を行えば、より適切なDC/DCコンバヌタICを探し出すこずができたす。

【ステップ3】個々のDC/DCコンバヌタの回路を蚭蚈する

次のステップでは回路の蚭蚈を行いたす。具䜓的には、遞択したスむッチング・レギュレヌタICず組み合わせる倖付け受動郚品を決定するずいった䜜業が必芁になりたす。このステップにおいお、回路の最適化を図るこずになりたす。通垞、そのためにはデヌタシヌトを培底的に読み蟌み、必芁なすべおの蚈算を実斜しなければなりたせん。ただ、このステップは、包括的な蚭蚈ツヌルであるLTpowerCADを䜿甚すれば倧幅に簡玠化できたす。しかも、曎なる最適化を図った結果を埗るこずが可胜です。

匷力な蚈算ツヌルずしおのLTpowerCAD

LTpowerCADは、回路蚭蚈の䜜業を倧幅に簡玠化するためにアナログ・デバむセズが開発したツヌルです。これは、シミュレヌション・ツヌルずいうよりも蚈算ツヌルず呌ぶ方が適切でしょう。仕様の倀を入力するず、それに基づいお非垞に短い時間で最適な倖付け郚品が提瀺されたす。たた、倉換効率を最適化するこずも可胜です。曎に、制埡ルヌプの䌝達関数を蚈算するこずもできたす。そのため、最適な制埡垯域幅ず安定性を簡単に埗るこずが可胜です。

図4に瀺したのは、「LTC3310S」を遞択した堎合に衚瀺される画面です。このように、LTpowerCADでスむッチング・レギュレヌタICを遞択するず、メむンの画面に必芁な倖付け郚品をすべお備えた暙準的な回路が衚瀺されたす。この䟋の堎合、降圧型のスむッチング・レギュレヌタが構成されおいたす。この回路により、最高5MHzのスむッチング呚波数で最倧10Aの出力電流を埗るこずができたす。

画面䞊の黄色のフィヌルドには、仕様の倀たたは蚈算の結果埗られた倀が衚瀺されおいたす。青色のフィヌルドを䜿うこずで、各皮の蚭定が行えたす。

倖付け郚品の遞択

LTpowerCADでは、理想的な倀だけを䜿うのではなく、倖付け郚品の詳现なモデルに基づいお蚈算が行われたす。぀たり、実際の回路の動䜜を確実にシミュレヌションするこずができたす。LTpowerCADでは、他瀟補ICのモデルの情報も栌玍した倧芏暡なデヌタベヌスを䜿甚したす。たた、コンデンサの等䟡盎列抵抗ESRやコむルのコアにおける損倱なども考慮されたす。倖付け郚品を遞択するには、図4の画面䞊で青色の倖付け郚品をクリックしたす。するず、新たにりィンドりが開き、䜿甚できる可胜性のある郚品のリストが衚瀺されたす。図5のリストはその䞀䟋であり、出力コンデンサずしお掚奚される補品が䞀芧衚瀺されおいたす。この䟋では、様々なメヌカヌの88皮のコンデンサがピックアップされおいたす。なお、「Show All」を遞択すれば、4660皮以䞊のコンデンサ補品の䞭から任意のものを遞ぶこずが可胜になりたす。

デヌタベヌスは継続的に拡匵曎新されおいたす。LTpowerCADはオフラむン・ツヌルなので、その機胜を䜿甚する際にむンタヌネットにアクセスする必芁はありたせん。ただ、アップデヌト機胜を䜿甚するこずで、スむッチング・レギュレヌタICず倖付け郚品の情報を栌玍したデヌタベヌスを最新の状態に曎新するこずができたす。

Figure 5. List box for different output capacitors for the LTC3310S. 図5. 様々なコンデンサのリスト。LTC3310Sに付加する出力コンデンサの候補が䞀芧衚瀺されおいたす。
図5. 様々なコンデンサのリスト。LTC3310Sに付加する出力コンデンサの候補が䞀芧衚瀺されおいたす。

倉換効率の確認

最適な倖付け郚品を遞択したら、「Loss Estimate & Break Down」ボタンをクリックしおスむッチング・レギュレヌタの倉換効率を確認したす。

図6に、倉換効率ず熱に察する特性倉動を確認するためのペヌゞを瀺したした。ご芧のように、効率ず損倱を瀺す正確な図が衚瀺されたす。ハりゞングの熱抵抗に基づいおICの接合枩床を蚈算するこずも可胜です。

回路の応答が満足できるものになったら、次の䞀連の蚈算に進みたす。十分な効率が埗られない堎合には、スむッチング・レギュレヌタのスむッチング呚波数を倉曎するか図6の巊偎を参照、倖付けのコむルを別のものに倉曎するずよいでしょう。そのようにしお、満足できる結果が埗られるたで効率を再蚈算したす。

制埡垯域幅の最適化、安定性の確認

倖付け郚品を遞択しお効率を蚈算したら、制埡ルヌプの最適化を実斜したす。制埡ルヌプは、回路が確実に安定し、発振や䞍安定性が発生しないように構成しなければなりたせん。同時に、広い垯域幅に察応できるようにする必芁もありたす。぀たり、入力電圧の倉化、特に負荷過枡応答に察応できるように構成しなければならないずいうこずです。LTpowerCADでは、安定性に関連しお考慮すべき事柄は「Loop Comp. & Load Transient」タブで確認するこずができたす。負荷過枡応答に䟝存した出力電圧のプロットやボヌド線図などが埗られるだけでなく、倚くの蚭定オプションを適甚するこずが可胜です。

Figure 6. Efficiency calculation and thermal response of the circuit. 図6. 回路の効率ず熱応答の蚈算
図6. 回路の効率ず熱応答の蚈算
Figure 7. Setting the control loop with LTpowerCAD. 図7. LTpowerCADによる制埡ルヌプの蚭定
図7. LTpowerCADによる制埡ルヌプの蚭定

ここで、非垞に重芁な機胜ずしお「Use Suggested Compensation」を玹介したす。これを䜿甚すれば、最適な補償方法に぀いおの怜蚎が行えたす。同機胜を利甚すれば、制埡工孊に習熟しおいなくおもパラメヌタを調敎するこずができたす。図7に瀺したLTpowerCADの画面によっお制埡ルヌプの蚭定を行いたす。

LTpowerCADを䜿えば、安定性に関する蚈算を実斜できたす。埗られた結果は、そのアヌキテクチャにおいお非垞に重芁なポむントになりたす。その蚈算は呚波数領域で実行され、時間領域でのシミュレヌションよりもはるかに高速に結果が埗られたす。そのため、詊行的にパラメヌタの倀を倉曎するこずが可胜であり、ボヌド線図を数秒で曎新するこずができたす。時間領域でシミュレヌションを行った堎合、結果が出るたでに数分から数時間もかかるこずがありたす。

EMC性胜の確認、フィルタの远加

スむッチング・レギュレヌタの仕様によっおは、その入力郚出力郚にフィルタを远加しなければならないこずがありたす。電源の開発経隓が少ない堎合には、この郚分が倧きな課題になるこずが少なくないでしょう。䟋えば、次のような疑問が生じるはずです。出力の電圧リップルを䞀定のレベルに抑えるには、フィルタ郚品ずしおどのようなものを遞択する必芁があるのでしょうか。たた、入力フィルタは必芁なものなのでしょうか。必芁であるずしたら、䌝導性゚ミッションを䞀定の芏栌倀未満に抑えるために、そのフィルタをどのように蚭蚈する必芁があるのでしょうか。いずれにせよ、スむッチング・レギュレヌタずフィルタの盞互䜜甚によっお、䜕らかの状況䞋で動䜜が䞍安定になっおしたうこずも蚱されないはずです。

図8に瀺したのは、LTpowerCADのサブツヌルの操䜜画面です。同サブツヌルは、EMI電磁干枉察策ずしお適甚する入力フィルタの蚭蚈に䜿甚したす。このツヌルには、倖付け郚品の最適化を行う際に䜿甚する最初のペヌゞからアクセスするこずができたす。このツヌルを䜿甚するず、受動郚品を䜿ったフィルタの蚭蚈が行えたす。たた、そのフィルタを適甚した堎合のEMC性胜を衚すグラフを確認できたす。グラフずしおは、入力フィルタを付加した堎合ず付加しおいない堎合の䌝導性゚ミッションのプロットが埗られたす。それらのグラフを芋れば、CISPR 25、CISPR 22、MIL-STD-461Gなど、様々なEMC芏栌で定められた芏栌倀ずの関係を確認するこずができたす。

入力偎の䌝導性゚ミッションに察する応答だけでなく、呚波数領域におけるフィルタの特性やむンピヌダンスをグラフ衚瀺するこずも可胜です。フィルタに぀いおは、党高調波歪みが高くなりすぎないようにする必芁がありたす。たた、フィルタのむンピヌダンスがスむッチング・レギュレヌタのむンピヌダンスにマッチするようにしなければなりたせん。各グラフは、これらに぀いお確認する際に圹立ちたす。むンピヌダンス・マッチングに問題があるず、レギュレヌタずフィルタの間で䞍安定な状態が生じる可胜性がありたす。

LTpowerCADを䜿えば、高床な専門知識がなくおも、䞊蚘のような詳现な怜蚎が行えたす。なお、「Use Suggested Values」ボタンを䜿えば、フィルタの蚭蚈が自動的に行われたす。

LTpowerCADは、スむッチング・レギュレヌタの出力フィルタの蚭蚈機胜も提䟛しおいたす。この皮のフィルタは、出力電圧のリップルを非垞に小さく抑えなければならない堎合に䜿甚したす。出力電圧のパスにフィルタを远加するには、「Loop Comp. & Load Transient」のペヌゞでLCフィルタのアむコンをクリックしたす。するず、図9のような新たなりィンドりにフィルタ回路が衚瀺されたす。フィルタのパラメヌタは、このりィンドり䞊で簡単に遞択するこずができたす。远加したフィルタの前たたは埌ろには、垰還ルヌプを接続できるようになっおいたす。このような手順により、出力電圧に぀いお非垞に良奜なDC粟床を実珟し぀぀、あらゆる動䜜モヌドにおいお安定した応答を埗るこずが可胜になりたす。

Figure 8. The filter designer in LTpowerCAD for minimizing conducted interference at the input of a switching regulator. 図8. LTpowerCADのフィルタ蚭蚈ツヌル。このフィルタにより、スむッチング・レギュレヌタの入力郚における䌝導性゚ミッションの圱響を最小限に抑えたす。
図8. LTpowerCADのフィルタ蚭蚈ツヌル。このフィルタにより、スむッチング・レギュレヌタの入力郚における䌝導性゚ミッションの圱響を最小限に抑えたす。
Figure 9. Selecting an LC filter at the output of a switching controller to reduce voltage ripple. 図9. スむッチング・レギュレヌタの出力フィルタの蚭蚈。電圧リップルを䜎枛するためのLCフィルタを構築したす。
図9. スむッチング・レギュレヌタの出力フィルタの蚭蚈。電圧リップルを䜎枛するためのLCフィルタを構築したす。

【ステップ4】時間領域で回路シミュレヌションを実斜する

LTpowerCADによる蚭蚈が完了したら、その回路のシミュレヌションを実斜したす。通垞は、時間領域のシミュレヌションによっお個々の信号の確認を行うこずになるでしょう。たた、プリント回路基板䞊における様々な回路ずの盞互䜜甚を確認するこずもできたす。぀たり、寄生玠子による効果もシミュレヌションに組み蟌めるずいうこずです。そうするず、シミュレヌション時間は長くなりたすが、非垞に正確な結果が埗られたす。

䞀般に、シミュレヌションは、ハヌドりェアを実装する前に情報を収集するこずを目的ずしお実斜されたす。ただ、回路シミュレヌションに぀いおは、その可胜性ず限界を把握しおおくこずが重芁です。䟋えば、シミュレヌションだけで最適な回路を芋いだすのは難しいこずがありたす。シミュレヌションでは、その実行䞭にパラメヌタの倀を倉曎しお再開するずいったこずが行えたす。しかし、回路蚭蚈の専門家でなければ、パラメヌタの適切な倀を決定しお回路の最適化を図るのは容易ではないでしょう。䟋えば、回路蚭蚈に習熟しおいない堎合、シミュレヌションにおいお回路が既に最適な状態に達しおいるのかどうかがわからないずいったこずが起こり埗るのです。このような堎合には、LTpowerCADのような蚈算ツヌルを利甚する方が適しおいたす。

LTspiceによる電源のシミュレヌション

アナログ・デバむセズの「LTspice®」は、電気電子回路向けの匷力なシミュレヌション・ツヌルです。同ツヌルは、䜿いやすさ、広範なナヌザ・サポヌト・ネットワヌク、最適化甚のオプション、高粟床で信頌性の高いシミュレヌション性胜ずいった特城を備えおいたす。そのため、䞖界䞭のハヌドりェア開発者に䜿われおいたす。たた、LTspiceは無償のツヌルであり、PCに簡単にむンストヌルしお䜿甚するこずができたす。

LTspiceは、SPICESimulation Program with Integrated Circuit Emphasisをベヌスずしおいたす。SPICEは、カリフォルニア倧孊バヌクレヌ校の電気工孊コンピュヌタ科孊郚で開発されたプログラムです。これをベヌスずする倚くの商甚゜フトりェアが提䟛されおいたす。LTspiceはバヌクレヌ版のSPICEに基づいたものですが、収束性ずシミュレヌション速床が倧幅に高められおいたす。たた、LTspiceには、回路図゚ディタず波圢ビュヌワの機胜が远加されおいたす。これらの機胜は、初心者でも盎感的に操䜜するこずが可胜です。もちろん、経隓豊富な技術者にも倚倧な柔軟性を提䟛しおくれたす。

LTspiceは、シンプルさず䜿いやすさを提䟛できるように蚭蚈されおいたす。analog.com/jpでダりンロヌドするこずが可胜であり、非垞に倧芏暡なデヌタベヌスず関連づけられおいたす。このデヌタベヌスには、アナログ・デバむセズのほがすべおの電源ICず倖付け受動郚品のシミュレヌション・モデルが含たれおいたす。先述したように、LTspiceは、PCにむンストヌルすればオフラむンで動䜜したす。ただ、アップデヌトを実斜するこずで、スむッチング・レギュレヌタず倖付け郚品の最新のモデルを読み蟌むこずができたす。

シミュレヌションを開始するには、analog.com/jpにアクセスし、電源補品の補品フォルダ䟋えば、評䟡甚ボヌド「LT8650S」でLTspice甚の回路デヌタを遞択したす。通垞、その回路デヌタは、評䟡甚ボヌドの回路を察象ずしお䜜成されおいたす。analog.com/jpの特定の補品フォルダにおいお、LTspiceに関連するリンクをダブルクリックするず、PC䞊でLTspiceが起動し、回路の情報が衚瀺されたす。その情報には、シミュレヌションを実行するために必芁なすべおの倖付け回路ず事前の蚭定が盛り蟌たれおいたす。図10で赀色の矢印で瀺したランナヌのアむコンをクリックするず、シミュレヌションが実行されたす。

LTspiceでは、波圢ビュヌワを䜿甚するこずにより、回路のすべおの電圧ず電流を確認するこずができたす。図11に瀺したシミュレヌション結果は、図10の電源回路における入出力電圧を衚しおいたす。

SPICEシミュレヌションを利甚すれば、電源回路の詳现を把握するこずができたす。たた、ハヌドりェアを構築する際に予期せぬ事態が起きないように事前に確認が行えたす。加えお、LTspiceを䜿甚すれば、回路の倉曎最適化を実斜するこずも可胜です。曎に、スむッチング・レギュレヌタずプリント回路基板䞊の回路ずの盞互䜜甚をシミュレヌションするこずもできたす。䟋えば、耇数のスむッチング・レギュレヌタを同時に動䜜させた状況のシミュレヌションを実斜するこずも可胜です。そうすれば、シミュレヌション時間は長くなるものの、それらの盞互䜜甚に぀いお確認するこずができたす。

LTspiceは、ICの開発者が䜿甚しおいる極めお匷力で信頌性の高いツヌルです。アナログ・デバむセズの倚くのIC補品は、このツヌルを䜿甚しお開発されおいたす。

Figure 10. Simulation circuit of an LTC3310S using LTspice. 図10. LTspiceによるシミュレヌションの察象ずなる回路。LTC3310Sを䜿っお電源を構成しおいたす。
図10. LTspiceによるシミュレヌションの察象ずなる回路。LTC3310Sを䜿っお電源を構成しおいたす。
Figure 11. Simulation result of an LTC3310S circuit using LTspice. 図11. 図10の回路のシミュレヌション結果
図11. 図10の回路のシミュレヌション結果

【ステップ5】ハヌドりェアのテストを実斜する

ここたでに説明したように、自動化ツヌルは電源の蚭蚈においお重芁な圹割を果たしたす。次のステップで行うべきこずは、ハヌドりェアの基本的な評䟡です。スむッチング・レギュレヌタでは、非垞に速いレヌトで電流のスむッチングが行われたす。特にプリント回路基板のレむアりトに䟝存する寄生成分の効果により、電流のスむッチングに䌎う電圧オフセットが生じ、攟射性゚ミッションが発生したす。このような効果も、LTspiceを䜿甚すればシミュレヌションで確認できたす。䜆し、そのためには寄生成分に関する正確な情報が必芁になりたす。ほずんどの堎合、そのような情報を入手するこずはできたせん。結果ずしお、倚くの仮定が必芁になり、シミュレヌション結果の䟡倀が䜎䞋しおしたいたす。そのような意味からも、珟実のハヌドりェアに察する培底的な評䟡は必須です。

プリント回路基板のレむアりトは、回路の重芁な芁玠

プリント回路基板のレむアりトは回路の構成芁玠の1぀ずしお知られおいたす。䟋えば、回路の動䜜確認を行うために、ブレッドボヌドでゞャンパ線を䜿甚しお回路を構成するこずがありたす。しかし、スむッチング・レギュレヌタに぀いおは、そのような回路でテストを実斜するこずに意味はありたせん。これは非垞に重芁な事実です。䟋えば、スむッチング電流のパスに存圚する寄生むンダクタンスは電圧オフセットの原因になりたす。そのオフセットが原因でレギュレヌタは動䜜しなくなるかもしれたせん。たた、回路によっおは、過電圧によっお損傷が生じおしたうこずもありたす。

アナログ・デバむセズは、プリント回路基板のレむアりトを最適化できるよう支揎しおいたす。通垞、スむッチング・レギュレヌタICのデヌタシヌトには、プリント回路基板のレむアりトのリファレンスずなる情報が蚘茉されおいたす。ほずんどのアプリケヌションでは、その掚奚レむアりトを䜿甚するこずができたす。

動䜜枩床範囲におけるハヌドりェアの評䟡

電源の蚭蚈プロセスでは、スむッチング・レギュレヌタICの動䜜枩床の党範囲における倉換効率がどのようになるかずいうこずが考慮されたす。ハヌドりェアのテストは、想定される限界の枩床を察象ずしお実斜するこずが重芁です。スむッチング・レギュレヌタICや倖付け郚品の特性倀は、動䜜枩床の範囲内で倉化したす。LTspiceによるシミュレヌションでも、そうした枩床の圱響を加味するのは難しくありたせん。しかし、そのようなシミュレヌション結果の䟡倀は䜿甚するパラメヌタの質に応じお決たりたす。珟実的な倀のパラメヌタを䜿甚できる堎合には、LTspiceにおいおモンテ・カルロ解析を実行し、必芁な結果を埗るこずができたす。ただ、物理的なテストによっおハヌドりェアを評䟡する方がより実甚的であるこずがほずんどです。

EMI/EMCに぀いおの怜蚎

システムを構築する堎合、最終的にはEMI/EMCのテストに合栌する必芁がありたす。それらのテストは珟実のハヌドりェアを察象ずしお実斜されたすが、知芋を集める䞊ではシミュレヌション・ツヌルや蚈算ツヌルが非垞に圹立ちたす。ハヌドりェアのテストに先立ち、様々なシナリオで評䟡を実斜するこずができるからです。シミュレヌションによっお正確な結果を埗るためには、通垞はモデル化されおいない寄生成分を反映させる必芁がありたす。そこたではできない堎合でも、各皮のパラメヌタに察する䞀般的な性胜の傟向は芋おずれたす。たた、EMI/EMCのテストに合栌しなかった堎合、シミュレヌションによっお埗られたデヌタを利甚するこずで、ハヌドりェアを迅速に修正するために必芁な知芋が埗られる可胜性がありたす。EMI/EMCのテストには倚くのコストず時間がかかりたす。それに察し、蚭蚈の初期段階でLTspiceやLTpowerCADを利甚すれば、実際のテストに先立っお有意矩な結果を埗るこずができたす。それらを利甚するこずにより、電源の蚭蚈プロセス党䜓を効率化し、コストを削枛するこずが可胜になりたす。

たずめ

電源蚭蚈甚のツヌルは非垞に高機胜になりたした。珟圚では、耇雑な芁求を満たすために圹立぀十分に匷力な存圚になっおいたす。なかでも、LTpowerCADずLTspiceは高い性胜を備えるだけでなく、䜿いやすいむンタヌフェヌスも備えおいたす。そのため、これらのツヌルは、あらゆる熟緎床の蚭蚈者に察しお倧きなメリットをもたらしたす。蚭蚈経隓が豊富であるか吊かにかかわらず、これらのツヌルを䜿甚しお日垞的に電源の開発に携わるこずができたす。

シミュレヌタがこれほどたでに進化しおいるこずに驚かれる方もいるでしょう。適切なツヌルを䜿甚すれば、信頌性が高く高機胜な電源をより迅速に構築するこずが可胜になりたす。

アナログ・デバむセズが提䟛する無償の蚭蚈ツヌル

本皿では、以䞋に瀺す3぀のツヌルを玹介したした。

  • LTpowerPlanner最適化ツヌル
  • LTpowerCAD蚈算ツヌル
  • LTspiceシミュレヌション・ツヌル

ぜひ、これらのツヌルをご掻甚ください。

著者

Frederik Dostal

Frederik Dostal

Frederik Dostalは、アナログ・デバむセズドむツ ミュンヘンのパワヌ・マネヌゞメント担圓゚キスパヌトです。20幎以䞊にわたっお蓄積した蚭蚈アプリケヌションに関する知識を掻かし、パワヌ・マネヌゞメント分野の゚キスパヌトずしお掻躍しおいたす。ドむツの゚アランゲン倧孊でマむクロ゚レクトロニクスに぀いお孊んだ埌、2001幎にNational Semiconductorに入瀟。お客様のプロゞェクトを支揎するフィヌルド・アプリケヌション・゚ンゞニアずしお、パワヌ・マネヌゞメント・゜リュヌションの導入に携わりたした。その間、アリゟナ州フェニックス米囜で4幎間にわたりスむッチング電源に取り組んだ経隓も有しおいたす。2009幎にはアナログ・デバむセズに入瀟。補品ラむンや欧州のテクニカル・サポヌトを担圓するなど、様々なポゞションで業務に携わっおきたした。