コントローラ・エリア・ネットワーク(CAN)シリアル・バス・トポロジーは、ホスト・コンピュータなしにデバイスとマイクロコントローラの相互通信を提供します。アービトレーション不要の通信機能により、コントローラとホスト・プロセッサをそれぞれのデバイス・ノードに配置したままで良く、デバイスとホスト・コンピュータを接続するための複雑なワイヤ・ハーネスも不要になります。
CANバスはCANHワイヤとCANLワイヤの信号を使って、リセッシブまたはドミナントの2種類のレベル状態をとります。差動電圧が0.9Vを上回る場合はドミナント、0.5Vを下回る場合はリセッシブの状態になります。CANコントローラは、ADM3051などのCANトランシーバによって物理層バスに接続します。

CANトランシーバは、自動試験装置(ATE)やテスト・ベンチを用いて特性評価ができます。図2に示す回路では、波形発生器の矩形波信号がCAN信号調整回路ブロックを通りトランシーバに供給されています。高速差動アンプのAD8138を選択したのは、広帯域幅と低歪みのためです。出力側のDCレベル・シフタによって、出力信号の差動レベルを調整しながら、ピーク間レベルを維持することができます。振幅と周波数は、信号発生器によって調整します。

5V単電源で動作するこの回路は、コモンモードを電源中央値とするユニティ・ゲインのシングルエンド to 差動変換アンプ構成です。R1、R2、R3は、出力信号をCANレベルにスケーリングするDCバイアス回路を形成しています。R2に比べてR4とR5を小さくすることによって、ポテンショメータが2つの出力信号のそれぞれの振幅を大きく変化させずに信号間の差を簡単に調整して、可変同相レベルのCAN信号をDUTに供給します。R1とR3が等しいため、R2を調整しても出力のACコモンモードに影響しません。R2とともに、R4とR5は、AD8138アンプの出力側の分圧器の一部を構成します。R4とR5には可能な限り小さい値を選び、出力の減衰と、R2の調整が各出力のピーク間レベルに与える影響を最小限に抑えます。R2が短絡した場合、R4とR5のわずかな負荷によってアンプの出力を保護します。コンデンサC1とC2は、アンプの出力コモンモードに対してDCバイアスを絶縁します。これらのコンデンサも、抵抗バイアス・ネットワークとともにハイパス・フィルタを形成します。そのカットオフ周波数は次のとおりです。

ここで、C=C1=C2です。RLは、負荷またはDUTの入力抵抗であり、一般に20 ~ 30kΩ程度です。
矩形波出力信号に歪みが生じないように、C1とC2は可能な限り大きい値を選んで、入力信号周波数が最悪時カットオフ周波数の10倍になるようにします。この場合、R2||RL は最小です。たとえば、図3(a) に示すレベルを持つVCANH信号とVCANL信号を実現するには、出力(DUT)負荷効果を考慮しないとすると、R2を最小700Ωにする必要があります。0.1μFまたは1μFのカップリング・コンデンサは、1MHz の信号に対応できます。図3(b) は、R2による差動出力レベルの調整方法を示しています。
これらの出力信号をトランシーバへのVCANHおよびVCANL入力として使用すれば、ベンチ・スコープ測定でレシーバのパラメータ(必要な周波数での伝搬遅延、立ち上がり時間、スレッショールド)の特性評価ができます。

EngineerZoneのAnalog Dialogue Communityに掲載している“adjustable CAN-level signals”のブログ記事(英語)へのコメントもお待ちしております。