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A woman with blue sound waves coming from her mouth as she presenting during a meeting and a pair of biam speakers detecting her voice.
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A2Bを活用した会議室向けオーディオ・システム、ハイブリッド勤務者間でより快適なWeb会議を実現


Web会議は、時差を越えて世界各地に分散したメンバーから成るチームを結び付ける普遍的な手段になりました。多くの従業員は、たとえ自宅が会社に近くても、リモート勤務やハイブリッド勤務が可能なポジションで柔軟に働くことを求めています。そうした傾向は今後も続く見込みです1

一方で、職場には変化にまだ適応できていない場所も存在します。その一つが会議室です。新しいAV機器を導入するには多大な時間と設備投資が必要です。また、オフィスの再構成は従業員の生産性を妨げる可能性があります。そうしたことを避けるため、多くの企業は時代遅れの機器やアナログ・ケーブル、物足りない設備などに依存し続けています。

プロ用AV機器のメーカーであるBiampは、長年のパートナーであるアナログ・デバイセズと連携し、新たなソリューションを開発しました。そのソリューションがWeb会議用システム「Parlé」です。このシステムでは、アナログ・デバイセズのA2B®(オーディオ・バス)技術を活用しています。具体的には、1本のワイヤを使うことで、会議室内に分散された複数のマイクのノードを中央のプロセッサに接続します。A2Bによって、ワイヤ1本だけでデジタル・オーディオならではの卓越した品質が手に入るということです。また、BiampはA2Bを採用することで、接続性に関するボトルネックを解消し、Web会議用の新たなアプリケーションを実現することができました。

本事例の概要

顧客企業の概要

Biampはプロ用AV機器の製造/販売企業。優れたコミュニケーションを実現するためのソリューションを45年以上にわたり提供してきた。Web会議用の個室ブースから最大規模の会場まで、Biampはあらゆる空間で人と人の真のつながりを実現できるようにすることを目指している。

課題

会議室で使用する技術を刷新するには、コストと時間がかかり、混乱が生じる可能性もある。これらの課題が、Web会議において最新のオーディオ体験を得られるようにしたい企業にとっての障壁になる。その障壁を低くすることができる理想的なソリューションを提供しなければならない。

目標

リモート勤務やハイブリッド勤務が可能なポジションで働く新世代の従業員のために、デジタル・オーディオの卓越した能力を活用し、会議室のオーディオ体験を快適なものにアップグレードする。

ソリューション

アナログ・デバイセズは、BiampがParléにA2B(オーディオ・バス)ソリューションを適用できるように支援を提供する。それによって、会議室のテーブルに、単一ケーブルによる優雅さ(エレガンス)、マルチチャンネルならではの機能/性能、リアルタイムの構成可能性(コンフィギュラビリティ)をもたらす。

オーディオ機器の誤った選択によって生じる隠れたコスト

Web会議に使用されるAV機器は、現代の職場でチームのメンバーを結びつけ、生産性を高めることに貢献します。但し、それはAV機器が意図したとおりに機能する場合に限られます。意図したとおりに機能しない場合には、大きな損失を被る可能性があります。特に問題が大きくなるのは、ビデオ機器が意図したとおりに機能しない場合ではなく、オーディオ機器が意図したとおりに機能しない場合です。なぜなら、会議は映像がなくても進められますが、会話を理解できない状態で進めることはできないからです。

4万米ドル
従業員が100人以上の企業で、Web 会議の品質の問題によって生じる年間コスト(世界的な調査会社IPSOSによる推定値2

Web会議システムの音質が悪いと、平均的な従業員は1週間あたり30分ほどの時間を浪費することになります。それにストレスの増大と生産性の低下を合わせると、年間で約3日間に相当する労働時間が無駄になり、企業の損失は年間数万米ドルに達すると言います3。更には、Web会議の音質が悪いことがその企業の評価に影響を及ぼし、ビジネス上の関係が始まる前にダメージを受けてしまうかもしれません4。従って、快適なWeb会議のための機器を導入しておくことは、長期的な投資になると考えてよいでしょう。

Parléが掲げるビジョン

Biampは、会議室のAV機器を本格的に刷新するというのは、必ずしも実現可能とは限らないと理解していました。より優れたAV技術が簡単に入手できるようになっても、その導入には負担が伴います。そのことは依然として、企業がAV機器の刷新に踏み切るのを阻む理由になっているのです。

そこでBiampは、次に挙げる2つの特長の両方を実現するWeb会議ソリューションを開発しようと考えました。1つ目の特長としては、自然かつ卓越したオーディオ体験を提供できるようにします。もう1つの特長として、プログラミング/設置/試運転に関する障壁を減らせるようにします。アナログ・デバイセズのA2B技術は、Biampがそれら2つの特長の両方を実現する上で役立ちました。

A woman with blue sound waves coming from her mouth as she's teaching a college course and a of biam speakers detecting her voice.

ソリューションの開発に向けた両社の連携

Biampは10年以上にわたりアナログ・デバイセズのDSP製品を使用してきており、特にSHARC® DSPを活用しています。同社は、次世代のオーディオ・システムであるParléにおいて、複数の信号チャンネルと高度なビームフォーミングのアルゴリズムをサポートしようと考えていました。ビームフォーミングは、会議の最中に誰が話しているのかを特定し、その人が会議室内で動いても、それを追尾できるようにするために使用します。

ただ、Biampにとってボトルネックになっていたのは接続性でした。従来の接続技術としてはUSBやAoIP(Audio over IP)がありますが、どれにも限界があります。この課題を把握したアナログ・デバイセズのフィールド・アプリケーション・エンジニアは、それを解決可能なソリューションとしてA2Bを提案しました。それを受けたBiampは、A2Bならば自社製品の柔軟性を高め、将来も有効に使い続けられるようにできると考えました。A2Bを採用すれば、構成が可能なデジタル相互接続技術によって、高品質のオーディオ機能を実現できるからです。


接続用のソリューションの比較

An icon that represents bluetooth.
USB
  • プロトコル・メンテナンスのための重要なソフトウェア・スタックによって、スケーラビリティが制限されます。
  • ノードを追加するたびに、そのためのケーブル接続が必要になります。それにより、柔軟性が制限されます。
An icon to represent Audio over IP (AoIP).
AoIP
  • 各ノードに個別のソフトウェアを配置することにより、導入と保守のコストが増大します。また、複雑さも増します。
  • 互換性を備えるネットワーク、スピーカ、アンプのエコシステムが必要です。
An icon that has the text A2B.
A2B
  • ハードウェアが完全に同期します。
  • スリムなサブノードと無駄のないソフトウェア・スタックにより、柔軟性と拡張性が得られます。

アナログ・デバイセズのフィールド・アプリケーション・エンジニアはBiampと密接に連携しながら、評価キット、デバッグのサポート、設計に関する洞察、メインのノードで実行するソフトウェア・スタックを提供しました。Biampは、アナログ・デバイセズから入手可能な、既に認知度のあるユニファイド・コミュニケーション技術とツールを活用することで、カスタム回路/ボードの構築に伴うコストのかかる長い開発サイクルを回避することができました。

A2Bの進化 - 自動車から会議室まで

An image of the biamps conferencing hub, Devio SCR 25T.

A2Bでは、UTP(Unshielded Twisted Pair)ケーブルとデイジーチェーン接続のアーキテクチャを使用します。それにより、ケーブル配線の冗長な引き回しを最小限に抑えます。その結果、配線の量を削減し、設置に伴う課題を緩和し、関連するコストを低減することが可能になります。A2Bは、車載オーディオ・アプリケーションの配線の複雑さと重量を軽減する技術として広く認知されています。

A2Bが車載分野にもたらす主要なメリットは、かさばるケーブルの量を最小限に抑えられることです。それにより、サイズ、重量、消費電力を削減できます。それだけでなく、設計の柔軟性と拡張性も得られます。Biampにとっては、A2Bを採用することにより、対応可能な距離を延ばせることが最も重要でした。ただ、同社がA2Bによって享受したメリットはそれだけではありません。例えば、以下に挙げるようなメリットももたらされました。

会議室で使用する従来のオーディオ設備と
A2Bを適用したオーディオ設備の比較5

An image comparing traditional conferencing hubs with A2B conferencing hub.

配線の削減: Parléでは、A2Bに対応するトランシーバーと3~4個のマイクのノードを使用します。それにより、会議室内で最長15mにわたってサービスを提供することができます。しかも、配線としては単一/双方向のUTPワイヤを使用するだけで、マイク用の配線、電力の供給、コマンドの伝送と制御、ビームフォーミングのアルゴリズムの実行、接続性の向上が実現されます。

極めて小さい確定的遅延: オーディオのデータは、A2Bを介してやり取りされます。その際の遅延は、一貫して既知の値になります。この確定的遅延が極めて小さいことから、音声処理のためのアルゴリズムの卓越した性能を引き出すことができます。また、Biampが自社開発したオーディオ用のアルゴリズムを有効に機能させたり、信号の完全性を確保したりすることも可能になります。

複数の信号チャンネル: Biampは、Web会議向けの新たなアプリケーションを実現するために、A2Bの32の信号チャンネルを活用しています。例えば、1つのチャンネルで人が理解できるようにするための信号、別のチャンネルで装置が理解できるようにするための信号をそれぞれ受信するようにすることで、音声をテキスト・データに変換する機能を追加できます。

スリムなサブノード:Parléのマイクはビームフォーミングを利用した追跡機能を備えています。具体的には、発言者をインテリジェントに識別し、その人が会議室内を動き回った場合にも継続的に追尾します。A2Bは、すべてのノードを中央の1つのプロセッサに接続します。つまり、エッジでの処理やローカルのビームフォーミングを実行するために、各ノードにDSPを実装する必要はありません。

高い忠実度:A2Bでは、最適化されたバス電源によって、忠実度の高いオーディオ性能を実現します。特殊なケーブルは、ほとんど、または全く必要ありません。それとは対照的に、従来のケーブル接続ではシステムの柔軟性が制限されます。また、10m程度の短い距離でもノイズの干渉が生じて性能が低下したりする可能性があります。

高い柔軟性:A2Bは、堅牢性の高いプラグ&プレイ用のスタックを提供します。それにより、ホットプラグなどの機能を実現できます。システムの使用中にノードを接続して再構成できるようにすれば、トラブルシューティングのためにシステムをシャットダウンする必要はなくなり、保守性が向上します。

アナログ・デバイセズとBiampが実現する未来の会議室

Web会議向けの技術は、地理的に離れたチームのメンバーを透過的かつ自然な方法で結びつける上でますます重要になっています。アナログ・デバイセズとの共創により、BiampはParléにおいて自然かつ卓越したオーディオ体験を実現しました。Parléであれば、企業が会議室環境の改善に乗り出すのを阻む障壁を減らすことができます。また、32の信号チャンネルを利用できるA2Bは、Web会議アプリケーションという領域において更なる可能性を切り拓く力を秘めています。

A diverse group of people happily talking in a conferencing room.
参考資料

1 Nicholas Bloom、Jose Maria Barrero、Steven Davis、Brent Meyer、 Emil Mihaylov「Survey: Remote Work Isn’t Going Away - and Executives Know It(調査結果:リモートワークはなくならない - 経営陣もそれを認識済み)」Harvard Business Review、2023年8月
2 「IPSOS Research (Press Release)(IPSOSによる調査結果(プレス・リリース))」EPOS Group、2020年4月
3 「IPSOS Research (Press Release)(IPSOSによる調査結果(プレス・リリース))」EPOS Group、2020年4月
4 「Understanding Sound Experiences (Full Report)(サウンド体験について理解する(レポート完全版))」IPSOS (EPOS Groupの委託を受けて編纂)、2021年
5 Carlos Martins「Using A2B for Audio-Conferencing Systems(A2Bを活用してWeb会議システムを構築する)」Analog Devices、2020年8月