ナノパワーのDC/DCコンバータを利用して、バッテリの効率と寿命を改善する
要約
本稿では、ナノパワー(極めて消費電力が少ない)のDC/DCコンバータをシステムに追加することにより、バッテリの寿命を延ばす方法を紹介します。その方法を採用すれば、機器の稼働時間を最大20%延ばせる可能性があります。
バッテリ駆動の機器では、長い稼働時間を実現するために内部回路のエネルギー効率を高めなければなりません。そのためには、システムに組み込むコンポーネントとして、エネルギー効率の高いものを選択する必要があります。一概には言えませんが、電気回路の構成要素が少ないほど、システム全体のエネルギー効率は高くなる可能性があります。図1に示したのは、バッテリ駆動の水道メータの構成例です。このシステムでは、マイクロコントローラ「MAX32662」を単一の電源で動作させます。同ICが対応可能な電源電圧範囲は1.71V~3.63Vですが、固定電圧を生成するレギュレータを内蔵しています。
MAX32662には、温度と充電状態に応じてバッテリから2V~3.6Vの電圧を直接供給することができます。回路に必要なコンポーネントの数はわずか数個なので、システム全体の効率は非常に高くなります。ただ、MAX32662の消費電流は、供給される電源電圧にはほとんど依存しません。マイクロコントローラが2Vで動作しようと、3.6Vで動作しようと、ほとんど変わらないということです。
このようなシステムでは、新たなナノパワーのDC/DCコンバータ(スイッチング・レギュレータ)の使用を検討するとよいでしょう。図2に示したのは、ナノパワー/高効率のDC/DCコンバータ「MAX38650」を追加した場合の回路例です。この構成であれば、バッテリの電圧を基に、2Vといった低い電圧を効率的に生成することができます。ナノパワーのDC/DCコンバータは、マイクロコントローラに必要な電流を供給しますが、バッテリ側の電圧が高いので、同コンバータはわずかな電流しか必要としません。
このようにMAX38650を追加することで、バッテリの寿命を大幅に延ばすことができます。実際、20%以上寿命を延ばすことは難しくありません。どれだけ寿命を延長できるかは、状況に応じて異なります。その効果は、温度、ピーク電流、センサーの周期的なオン/オフ動作など、数多くのパラメータの影響を受けるからです。いずれにせよ、追加したDC/DCコンバータの自己消費電流が決定的な影響を及ぼすことには間違いありません。多くのエネルギーを消費するDC/DCコンバータを追加した場合、期待される効果は得られません。
図3に示したのは、MAX38650を使用する場合に必要となる周辺回路です。ナノパワーという表現のとおり、同ICの自己消費電流はnAのレベルに抑えられています。動作時の自己消費電流は390nA程度です。しかも、同ICの動作をオフにした期間には、わずか5nAのシャットダウン電流しか流れません。このことから、同ICは図1のようなシステムの消費電力を削減したい場合に最適な製品だと言えます。
図3を見ればわかるように、必要な外付け受動部品の数はわずか数個です。MAX38650では、抵抗分圧器ではなく、RSELピンに接続した1個の抵抗によって出力電圧を設定します。一般的なDC/DCコンバータで使用される抵抗分圧器はかなりの電流を消費します。電圧と抵抗値によっては、MAX38650の自己消費電流をはるかに上回る電流を消費してしまう可能性があります。そこで、同ICでは回路がオンのときだけ機能する可変抵抗を使用する手法を採用しました。同ICは、オンになっている短い時間だけ、その可変抵抗に200µAの電流を流すことによって出力電圧の設定値を検出します。この処理の結果生じる電圧を測定し、ICの内部に保存します。つまり、従来の分圧器を使用する方法とは異なり、同ICの動作中に、出力電圧を設定するための抵抗でエネルギー損失が生じることはありません。
本稿では、ナノパワーのDC/DCコンバータの活用例を示しました。本稿で示したようなシステムであれば、それによって電力効率を高めつつ、1回の充電による稼働時間を延ばすことが可能になります。
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