水道メーターを21世紀に対応させる

2016年04月19日
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要約

水。それは地球上で最も貴重な管理資源です。実際、すべての人に清潔な水を届けることは、生死に関わる問題にもなります。水資源の管理は、現代の重大な課題です。水は、浄化にコストがかかり、必要な場所への輸送に困難が伴います。事実、人々ときれいな水をつなぐことは、21世紀の大きな課題の1つです。

その重要な状況において、モノのインターネット(IoT)とスマートユーティリティグリッドは、高精度、高信頼性の水流測定技術を配備することによって世界をより良くする可能性を備えています。供給会社各社は、必要な水の量を予測するために、水がどのように消費されているかを理解および監視する必要がありますが、現在使用されている水道メーターは、無駄遣いを発見する目的にはあまり役立ちません。水資源の不足が進行しているため、きれいな水の1滴1滴がどこで消費されているかを、我々全員が知る必要があります。端的に言うと、遍在的な、スマート水道メーターのネットワークが必要です。

水道メーターを21世紀に対応させる。

ポタ。ポタ。ポタ。気付かないかも知れませんが、恐らく今あなたの家のどこかで、この音がしているはずです。

水。それは地球上で最も貴重な管理資源です。実際、すべての人に清潔な水を届けることは、生死に関わる問題にもなります。水資源の管理は、現代の重大な課題です。水は、浄化にコストがかかり、必要な場所への輸送に困難が伴います。事実、人々ときれいな水をつなぐことは、21世紀の大きな課題の1つです。

その重要な状況において、モノのインターネット(IoT)1とスマートユーティリティグリッドは、高精度、高信頼性の水流測定技術を配備することによって世界をより良くする可能性を備えています。供給会社各社は、必要な水の量を予測するために、水がどのように消費されているかを理解および監視する必要がありますが2、現在使用されている水道メーターは、無駄遣いを発見する目的にはあまり役立ちません。水資源の不足が進行しているため、きれいな水の1滴1滴がどこで消費されているかを、我々全員が知る必要があります。端的に言うと、遍在的な、スマート水道メーターのネットワークが必要です。

これまで、スマート水道メーター技術は通信ネットワーク(使用データを供給会社に送ること)に重点を置いてきました。一方で、それらの水道メーターの精度は非常に疑わしいものでした。実際、高信頼性のソリッドステート水流測定技術は、つい最近まで、ニッチな、超高精度市場からメインストリームへと進出することができませんでした。その結果、今日の水道メーターは不正確で、高コストなものになっており、新たに台頭するIoTが水の管理にメリットを提供するには程遠く、きれいな水がどこに消費されているかを人類が本当に理解し始めるにも程遠い状況です。幸い、その状況は変わろうとしています。従来の機械式メーターより高精度で高信頼性の、ソリッドステート水流メーター用の新しい技術があります。この新しい超音波、ソリッドステート設計は、IoTの時代に対応します。

水道メーターの長期的状況

数分前に聞こえた水滴の音を無視してはいけません。むしろ、恐らく今この瞬間もあなたの家に広がっている基礎の傷みやカビのことを考えてください。一方、水道メーターは明らかにその水滴を無視します。

現在の水道メーター規格は数十年に渡って変化しておらず3、システム内でかなりの量の無駄が許容されます。水道メーターは、1日当り360ガロン以下の損失率については測定を要求されません。それが現在の機械式メーターの実用限界であるためです。また、何らかの期間に渡ってそれらのメーターの精度を保証することも困難です。ここで、1日当り360ガロンというのが実際にはどのくらいの量の水なのか想像してみてください。この「水漏れ」によって、2万ガロンのスイミングプールを2か月以内に満水にすることが可能です。1日当り400~700人の成人男性に飲料水を供給することもできます。1日に60回トイレを流すこと、あるいは1日に10分間のシャワー4回をまかなうことも可能です。

これは恐怖商法でしょうか?政府機関の仕様を見て、恐怖心、不安感、および疑念を生み出しているだけでしょうか?いいえ。水漏れによってきれいな水が無駄になっているのは現実です。米国では、水漏れが原因で年間1兆ガロン以上の水が家庭で失われています。全家庭の10%で、1日当り少なくとも90ガロンの水漏れが発生しています4。慎重な研究に基づく推計によって、「発展途上国では、システム内の水の半分近くが水漏れ、盗難、および全体的な管理の貧弱さ、あるいは汚染のせいで失われている」5ことが示されています。全世界で、きれいな水全体のかなりの割合が、意図した目的地に届く前に失われています。

悲惨な状況が進行中です。それほどの量の水がどこに消えているかを知らない限り、きれいな水をより効率的に配送する方法を考えることはできません。1つの建物でスイミングプールに相当する量の水漏れがあるかどうかを高精度で判定することができないとしたら、水に関する適切な決断を下すことは不可能です。なぜこんな状況になっているのでしょうか?

機械式メーターによる水量の測定

誰かの陰謀ではありません。水流の測定は実際に難しいのです。水流を測定するための最も自明な方法は、何十年にも渡って行われてきた、機械式メーターによるものです。通過する水の量に比例して水道メーター内部の羽根車が回転することによって、水の流れを検出します。これによって供給会社は個々の顧客におよその使用量に対する料金を請求することができますが、この方法にはいくつか欠点があります。その結果、機械式メーターの不正確さによって、どこで水が浪費されているかを高精度で判断する能力が制限されます。また、IoTを含む最新の時代に水の管理が参加する能力も制限されます。

現在広く使用されている従来の機械式水道メーターには、2つの重大な欠点があります。第1の欠点は、純粋に物理学的なものです。メーター内のローターを回転させるには、最小限の流量が必要です。ローターにはある程度の基礎抵抗があり、水流が存在するときに回転することを保証するためには、その抵抗を克服する必要があります。このことが陰の要因となって、今日の水道メーター流量測定規格では、精度の下限が毎分1/4ガロン(つまり、1日当り360ガロン)に事実上制限されています。

機械式メーターの第2の重大な欠点は、異物の付着です。台所や風呂場の蛇口を想像してください。新しく設置されて以来、本当にきれいな状態を見たことがありますか?恐らく、見苦しい水垢が付着しているはずです。次に、機械式ローターを使用した水道メーターの場合についてその問題を想像してください。一般に水道メーターは、予期される流量の範囲に渡って精度が1%であることを試験されます。しかし、この水垢や、水に含まれるその他の腐食成分によって、あらゆる機械式メーターの精度は急速に低下します6。実際に、機械式メーターに関する最近の調査で、さまざまな形式のメーターの実に89%が不正確であることが分かりました7。機械式メーターは、わずか2年で較正ずれを起こします。メーターが狂う場合、通常は「鈍感」になり、供給会社は水がどこで消費されているかを高精度で測定していないことになります。長年に渡って、水道供給会社各社は課金されない一定量の損失を許容しています。前述した収支を合わせて利益を維持するためには、その無駄になる、失われる水のコストを、全消費者に分散させる必要があります。

ソリッドステートメーターによる管理精度の向上

機械式メーターにそれらの欠点があるなら、代わりにどのようなソリューションが存在するでしょうか?明らかに、ソリッドステートソリューションは異物付着の問題に役立ちます。現在、2種類の標準的なソリッドステートソリューションが水流測定に使用されています。

第1のソリッドステートソリューションは、磁気によるものです。基本的には、導電性の液体を介して磁場が生成され、検出されます。磁場は液体の流れに比例します。実際には、磁気流量計は非常に高精度にすることが可能ですが、測定の分解能を実現するために非常に高精度のADCを必要とするため、より大きな電力を消費し、一般により高コストです。この種の分解能(と電力およびBOMコスト)は、配水流量計や基準流量計用としては実用性がありますが、住宅用の水道メーターや遍在的な流量計に使うのは現実的ではありません。

第2のソリッドステートソリューションは、超音波パルスを使って水の流れを測定します。この場合の一般的原理は、水道管内の2つの圧電素子が水を介して超音波パルスの送信と受信を行います。メーター内を流れる水によって、超音波パルスの速度が増大(または減少)します。次に、パルスのいずれかの側のセンサーがパルスを読み取って分析することによって圧電トランスデューサで受信されたアナログ信号の位相差分を決定し、それに基づいて水の流速を計算します。現在は、超音波パルス信号の受信、相間計算、および水の流量の決定に高精度、高速のADCおよびDSPプロセッサが使用されるため、この種のパルス測定を管理する従来の手法は、高コストで消費電力が大きくなります。この方式も、コストと消費電力のために水流測定用としては不適切です。

このような状況のため、住宅用水道メーターが未だにほぼすべて機械式である理由は明らかです。さらに、流量測定があらゆる場所に普及していないのも不思議ではありません。より低電力で低コストの流量測定が可能になるまで、給湯器などの器具、スプリンクラーシステム、シャワー、天然ガス、プロパンタンク、その他の民生機器に流量測定が導入されることはないでしょう。

量産品での高精度、低コストの水流測定の実現

ソリッドステート水道メーターが大電力を消費し高コストでは、水流の測定が20世紀のままになり、IoTに参加することができないのも当然です。明らかに、流量を高精度で測定可能な、コスト効率と電力効率に優れたソリッドステート技術が必要です。

ここで、時間-デジタルコンバータ(TDC)について説明する必要があります。TDCは、スタートおよびストップ信号を受信し、時間差を高精度で報告する回路です。非常に単純なようですが、THz (1,000GHz)のクロックを必要とせずにピコ秒単位の時間差を高精度で測定すると言ったらどうですか?消費電流はわずか数µAだと言ったら?

TDCベースの超音波流量メーター(図1)の場合も、圧電素子を使用して信号を上流および下流に送信し、時間差を測定します(ここでTDC回路が使用されます)。しかし、高精度の測定を実現するためには、圧電用ドライバ、受信信号の増幅、温度補償など、「スタート」および「ストップ」信号の大幅な調整が必要です。さらに、複数のパルスの発信と測定、最初の圧電信号での高信頼性のトリガ、履歴データのロギング、較正データの処理、およびシステムマイクロコントローラをウェイクアップする前の複数エントリの保存など、いくつかの機能を実行するカスタム制御ロジックの追加によって、システム精度の大幅な向上が可能です(図2)。

図1. 流量計内部のスプール本体は、液体が通過するパイプです。超音波流量計の場合、スプール本体に圧電素子とミラーが含まれており、超音波を生成、吸収、および反射します。

図1. 流量計内部のスプール本体は、液体が通過するパイプです。超音波流量計の場合、スプール本体に圧電素子とミラーが含まれており、超音波を生成、吸収、および反射します。

図2. 高集積流量計SoCのMAX35101のブロック図。TDC測定回路およびアナログ信号調整機能がアナログフロントエンド(AFE)に内蔵されています。

図2. 高集積流量計SoCのMAX35101のブロック図。TDC測定回路およびアナログ信号調整機能がアナログフロントエンド(AFE)に内蔵されています。

流量計システムオンチップ(SoC)のMAX35101は、ソリッドステート流量計の電力とコストの問題を解決し、非常に高精度の流量計を遍在的なものにするために役立ちます。このデバイスは、TDC測定回路、アナログ信号調整機能、および非常に高精度の計測を提供するために必要なマイクロDSPとロジックを内蔵しています。このデバイスは、これまで水道メーターによる無駄な水の追跡や21世紀のコネクテッドIoTへの参加を阻んできた問題をすべて解決します。

この技術の具体的な利点は何でしょうか?多くの利点があります。

  • 精度の向上。今日のメーター規格で求められるのは、毎分1/4ガロンの低流速時の精度です。MAX35101は、毎分1/16ガロン時に1%の精度を実現可能で、これは現在提案されている新しい測定レベルであり8、大幅に低い流速で水漏れを検出することができます(水漏れがあることの検出に1%の精度は不要です)。
  • 寿命の延長。超音波ソリッドステート流量計には可動部分がないため、機械式メーターが急速に較正ずれを起こす原因となる腐食や残留物堆積の影響を受けにくくなります。これらのメーターは、精度を維持したまま大幅に長期間に渡ってフィールドに配備しておくことが可能です。
  • 所有コストの低減。機械式メーターの場合、精度が低下するか、または数年ごとにメーターの交換が必要になります。ソリッドステートメーターはそれより遥かに長寿命です。保守やメーター交換のための出動回数が大幅に減少するため、供給会社の運用コストが低下します。
  • BOMコストの削減。超音波流量計SoCは、他にほとんど部品を必要とせずに高精度のエネルギー測定を実行することができます。これは、DSPプロセッサや高精度ADCを必要とする他のソリッドステートメーター技術と非常に対照的です。
  • 消費電力の低減。この流量計SoCによって流量測定システムに追加される消費電力はわずか数µAのため、バッテリのコストは増大しません。また、供給会社によるバッテリサイズの小型化が可能になり、新たなコスト削減につながります。

従来の水道メーターを超えて

私は、シャワー、食器洗い機、または洗濯機で自分がどれだけのお湯を使っているかを知りたいと思います。スプリンクラーシステムの水漏れや流水量過多を検出したいと思います。先日、私はパイプから外れたスプリンクラーのヘッドを交換しました。それを見つけて修理するまでに、どれだけの期間そのパイプから毎朝水が流れ出ていた(水を無駄にし、植物をだめにしていた)のでしょうか?

流量計SoCのMAX35101は、これらの課題に対応します。低電力と長寿命を備えているため、低コストで配備可能です。小型で高集積のため邪魔にならない形状に実装可能で、今後策定される低流量水漏れ要件の検出に十分な精度を備えています。これで、水流測定はIoTに参加することができます。

近い将来における遍在的な流量計の実現を想像することは現実的でしょうか?私はそう確信しています。21世紀にようこそ。

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