TNJ-056:謎の電流帰還OP アンプ(第 1 回)「なんだ?このループ・ゲインの変化は!」

2019年10月07日
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はじめに

電流帰還OP アンプは高速な用途に適している」という話しはよく聞くところと思いますが、詳細なしくみまで調べてみたとか、その動作解析をしてみたという機会は、意外と少ないのではないかと思います。そういう私も昔から「電流帰還OPアンプを技術的に深堀りしてみたい」と思っておりましたが、最近、背中を押される「とあること」があり、このTNJ-056 以降でそのネタを考えてみることにしました。

この技術ノートは徒然草的に探究しているもの(嘘ついてません…。ホントです)なので、この電流帰還OPアンプ・シリーズも何回の技術ノートになるものか、現時点では皆目見当がつきません(汗)。

 

意外と世の中は同期している?

この記事を書き始めたころ、ちょうどある方(といっても弊社のお客様なのですが)とのメールのやり取りが始まりました。その方とは数年前に、アナログ技術セミナーの大阪会場でセッション終了後に名刺交換させていただきました。ご名刺には「技術士(電気電子部門)」と書いてあります。「ああ、技術士さんなのですね!これはお近い!今後もどうぞよろしくお願いします」とお話ししました。25 年ほど前に、会合に出るとよく聞かされた、感じたことが、「名刺にその文字があると親近感を感じる」ということでしたが、このときも同じだったのでした。

最近その方とあらためてメールのやり取りが始まったのですが、2018 年のアナログ技術セミナーでもお会いすることができ、技術談義を懇親会席上でさせていただくことができました。それ以降のメールのやりとりで、「セミナーも終わって、これまで手をつけたことがなかった電流帰還OPアンプを…」と差し上げたところ、「ほんとにちょうど同じところで悩んでいる」という返信をいただきました。懇親会席上での技術談義は全く別モノ(TNJ-054, 055でご紹介したミドルブルック法について)だったのですが、偶然というか、同じタイミングで同じところを悩みだしたということ、世の中は同期しているのでは?と思うところでありました…。

 

(おさらい)電圧帰還OP アンプでのループ・ゲインと信号増幅率周波数特性

まず手始めに、よく用いられる電圧帰還(Voltage feedback)OPアンプでのループ・ゲインと信号増幅率周波数特性をLTspiceでシミュレーションしてみましょう。

図1 は電圧帰還OP アンプAD8601 をG = +10 で設定した増幅系を、ミドルブルック法の電圧注入法を用いてループ・ゲインをLTspice でシミュレーションする回路図です。信号増幅率𝐺は

数式1

で当然きまりますが、帰還率𝛽は𝐺の逆数として、

数式2

です。𝑅1と𝑅2の比が等しければ、帰還率𝛽は同じになります。そのため抵抗値を変えても(比が等しいかぎり)ループ・ゲインは変わらないことになります。

図1 のシミュレーション回路では帰還抵抗𝑅2を.step コマンドで7 ステップ変化させ、それぞれのループ・ゲインをシミュレーションしてみました[V(VOUT)/V(VFB)を計算させます]。

シミュレーション結果を図2 に示します。ループの切れるクロスオーバ周波数以下では、どの抵抗値であっても同じループ・ゲインが得られていることが分かります。クロスオーバ周波数より上、つまりループ・ゲインが0dB より低いところではAD8601 の出力インピーダンスと帰還抵抗の関係などで(電圧注入法の誤差もあるようですが)ループ・ゲインの大きさが抵抗値によって変わってはいますが。これはこれまでの回路設計Web ラボの技術ノートをご覧いただいている方なら「そりゃそうだ」と頷(うなづ)かれる結果ではないかと思います。

図1. 電圧帰還OP アンプAD8601 のループ・ゲインをLTspice でシミュレーションする回路
図1. 電圧帰還OP アンプAD8601 のループ・ゲインをLTspice でシミュレーションする回路
図2. 図1のシミュレーション結果。異なる抵抗値であっても 同じループ・ゲインが得られている(RF = 100, 200, 500, 1k, 2k, 5k 10kΩ)
図2. 図1のシミュレーション結果。異なる抵抗値であっても 同じループ・ゲインが得られている(RF = 100, 200, 500, 1k, 2k, 5k 10kΩ)
図3. 電流帰還OPアンプAD811でのシミュレーション結果。帰還抵抗の抵抗値が変わるとループ・ゲインも変わる(RF = 100, 200, 500, 1k, 2k, 5k 10kΩ)。ただし電源電圧は±5V
図3. 電流帰還OPアンプAD811でのシミュレーション結果。帰還抵抗の抵抗値が変わるとループ・ゲインも変わる(RF = 100, 200, 500, 1k, 2k, 5k 10kΩ)。ただし電源電圧は±5V

 

電流帰還OPアンプAD811でループ・ゲインをシミュレーションしてみる

同じ条件で電流帰還OPアンプAD811 [1]を用いてシミュレーションをしてみました。AD811をご紹介しておくと、

 

AD811 高性能ビデオ・オペアンプ

https://www.analog.com/jp/AD811

【概要】

AD811は、放送品質のビデオ・システム向けに最適化された広帯域電流帰還オペアンプです。AD811は、ゲイン = +2かつRL = 150 Ωで-3 dB帯域幅 = 120 MHz、微分ゲイン = 0.01%、微分位相 = 0.01°であるため、すべてのビデオ・システムに対する優れた選択肢になっています。

(後略)

 

ということで、高速なビデオ信号用途で使われるOPアンプです。シミュレーション回路は図1と同じです。ただし電源電圧はAD811のスペックに合わせて±5Vにしました。シミュレーション結果を図3に示します。

な、なんと!、帰還抵抗の抵抗値が変わると、ループ・ゲインも変わるではありませんか。

その結果として、ループ・ゲインが1(0dB)となるクロスオーバ周波数も変化しています。この「クロスオーバ周波数も変化する」は非常に重要な話しで、以降の技術ノートのネタとして続いていくのでした…。

 

電流帰還OPアンプでは帰還抵抗でループ・ゲインが変わる

この技術ノートでは、まずはこのように、ループ・ゲインという切り口(入口)から電流帰還OPアンプを探究していきます。

図4に一番基本的な電流帰還OPアンプのブロック図を示します([2]のFigure 2から抜粋したもの)。さらにそれをループ・ゲインという視点でより簡潔なブロックにしたものを、図5に示します。

図4については、追ってあらためて説明をしていきます。図中にある𝑇(𝑠)は、反転入力端子に流れる電流量𝑖を𝑉𝑂𝑈𝑇出力の電圧量に変換するためのインピーダンスです。「トランス・インピーダンス」とも呼びます(なお入力電流量に対して極性が反転しています)。ともあれこの辺は、別途詳しく…。

つづいて図5をご覧ください。ループ・ゲインは、図4において𝑉𝐼𝑁= 0Vとして、𝑉𝑂𝑈𝑇端子から帰還抵抗𝑅2の経路を切断し、𝑅2を経由して 出力𝑉𝑂𝑈𝑇に戻ってくる一周のゲインを示すもので、

数式3

として定義されるものです。ここで𝐴は前方への(OPアンプ自体の)増幅率、𝛽は帰還率です。

電流帰還OPアンプの反転入力端子は、図4で×1と書いてある、バッファ出力となっているという面白い構造です。図5ではこのバッファは記述しておらず、𝑅𝑂がそのままグラウンドに接続されているものとして簡単化してあります(𝑉𝐼𝑁= 0Vであり、バッファ出力も同じ電圧になるため)。

一般的に𝑅𝑂は低抵抗で、帰還抵抗𝑅1,𝑅2よりだいぶ(𝑅𝑂 ≪ 𝑅1,𝑅2とは言えないので「だいぶ」にしました)小さいので、

図4. 一番基本的な電流帰還OPアンプのブロック図 ([2]のFigure 2より抜粋)
図4. 一番基本的な電流帰還OPアンプのブロック図 ([2]のFigure 2より抜粋)
図5. 図4のブロック図をループ・ゲインという視点で より簡潔にしたもの
図5. 図4のブロック図をループ・ゲインという視点で より簡潔にしたもの

この検討開始時点では、図5の𝑅𝑂は無視してしまいましょう。𝑅𝑂=0Ωで、グラウンドに𝑅2が直接接続されているものとして考えます。そうすると出力𝑉𝑂𝑈𝑇から反転入力端子(このモデルではグラウンドとしています)に流れる電流𝑖は

数式4

となり、これから帰還率𝛽として、電圧から電流への変換係数

数式5

が得られることになります。抵抗の逆数ですから、電流帰還OPアンプにおける帰還率𝛽とは、コンダクタンス(電気電導率。抵抗やインピーダンスの逆数)になるわけです。

電圧帰還OPアンプにおいては、帰還率𝛽は帰還抵抗𝑅1,𝑅2で得られる抵抗分圧率(減衰率)だったわけですが、面白いものですね。

前方への増幅率𝐴は、反転入力端子に流れる電流量𝑖が インピーダンス𝑇(𝑠)に流れ、𝑉𝑂𝑈𝑇出力の電圧量に変換されることで得られます。図4では−𝑇(𝑠)となっていますが、符号がマイナスというのは現実的ではありません。そのため図5において、コピーされる電流の極性を−𝑖として反転してみました。そうすると

数式6

となり、結果的にループ・ゲインは

数式7

となるのですね…(𝑅𝑂を無視した条件で)。つまり図3で見てきた「帰還抵抗の抵抗値が変わるとループ・ゲインも変わる」というのが、上記の式(7)からも、帰還抵抗𝑅2が小さくなるとループ・ゲインが上昇することとして理解できます。電圧帰還OPアンプと電流帰還OPアンプは「似て非なるもの」ということが分かるわけです。

図6. LT1252のデータシートに掲載されている電流帰還OPアンプの簡易等価回路
図6. LT1252のデータシートに掲載されている電流帰還OPアンプの簡易等価回路

 

電流帰還OPアンプの構造を見てみる

AD811のデータシートにはその内部構造の記載がありません。簡易等価回路が記載されているデータシートを探したところ、LT1252のデータシート [3]に図6のような回路が記載されているのを発見しました。LT1252もご紹介しておきましょう!

 

LT1252 ローコスト・ビデオ・アンプ

https://www.analog.com/jp/LT1252

【概要】

LT1252はビデオ・アプリケーション用の低コストの電流帰還型アンプです。LT1252は、ケーブルやフィルタなどの低インピーダンス負荷をドライブするのに最適です。このアンプは、バンド幅が広くスルーレートが高いため、PCやワークステーション間でRGB信号を容易にドライブできます。LT1252は直線性が優れているため、コンポジット・ビデオのドライブに理想的なICです。

 

て、この図は見事に図4と同じ構造になっています。とはいってもインピーダンス𝑇(𝑠)については記載がありませんが…。

そこでインピーダンス𝑇(𝑠)が接続されるべき箇所(ノード)を赤丸と矢印で示しておきました。各部の動作のしくみを追ってみましょう。

 

入力段の構造

図6の左側部分の入力段(赤枠)をみてみます。+INと記載のあるところが非反転入力で、PNP/NPN二つのトランジスタQ1, Q2のベースに接続されています。それぞれエミッタには電流源が接続されていますので、ベースから見たインピーダンスは十分に高いことになります。「電流帰還OPアンプの非反転入力端子の入力インピーダンスは高い」ということです。

つづいて反転入力端子(緑枠)ですが、ここは非反転入力に接続されたトランジスタQ1, Q2のエミッタがQ4, Q5のベースに接続されており、そのQ4, Q5のエミッタが-INと記載のある反転入力端子となっています。トランジスタのエミッタは出力インピーダンスが低いことから、電流帰還OPアンプの反転入力端子の入力インピーダンス𝑅𝑂は低くなります。「𝑅𝑂はQ4, Q5のエミッタ出力抵抗(低い抵抗値)が支配的」といえるでしょう。

 

入力段から電流がカレント・ミラーでコピーされる

Q4, Q5のエミッタ、つまり反転入力端子に流れる電流は、そのほぼすべてがコレクタ側に流れることになります。このようすは図6にも、緑色の太い矢印とiとして記載しておきました。

このコレクタ側に流れる電流は、さらにQ3, Q6に流れていきます。このQ3とQ6はそれぞれQ7, Q8とベース同士が接続されており、これによりカレント・ミラー(電流量をコピーする回路)が形成されます。

その結果、Q7とQ8のコレクタ同士が接続されている部分(図6にも赤丸で示した、インピーダンス𝑇(𝑠)が接続されるべき箇所/ノード)に、反転入力端子に流れる電流と同量の(極性は反転した)電流iが流れることになります。

 

𝑻(𝒔)が接続される箇所は

この赤丸の箇所、「インピーダンス𝑇(𝑠)が接続されるべき箇所/ノード」を考えてみます。ここはQ7とQ8のコレクタ同士が接続されています。トランジスタのコレクタは出力インピーダンスが高い端子です。つまりこのノードは出力インピーダンスが高く、Q7, Q8のコレクタは電流源であると考えることができるわけです。そこから反転入力端子に流れる電流と同量の電流iが流出するわけです。

 

電流源と𝑻(𝒔)で電圧が生じる

そうすると、ここに接続されたインピーダンス𝑇(𝑠)に、反転入力端子に流れる電流と同量の(極性は反転した)電流iが流れることで電圧降下が発生し、

数式8

がこのノード(Q7, Q8のコレクタ)に得られることになります。これが後段のドライバ段、出力段で×1倍でバッファされ、出力端子𝑉𝑂𝑈𝑇に現れることになります。

よくできていますね…。よく考えられているものですね…。

 

カレント・ミラーとインピーダンスにより生じる電圧をシミュレーションしてみる

それではこの図6の簡易等価回路に相当する回路をLTspiceで作ってみて、カレント・ミラーとインピーダンスにより生じる電圧をシミュレーションしてみましょう。

図7はこのシミュレーション回路です。図4の一番基本的な電流帰還OPアンプのブロック図では、インピーダンス𝑇(𝑠)は抵抗素子だけがモデル化(図示)されていました。しかし実際にはこの図7のように、ドミナント・ポール(オープン・ループ・ゲインが-3dBになる周波数)を形成するためにコンデンサ𝐶𝑇も接続されているのです。

DCゲインは抵抗𝑅𝑇の大きさで決まり、ドミナント・ポールの周波数𝑓𝑃は、𝑅𝑇と𝐶𝑇とで

数式9

と決まります。ドミナント・ポールが存在して、その周波数より上で-6dB/Octaveづつオープン・ループ・ゲインが低下するのは、電圧帰還OPアンプと同じになるわけです。

 

インピーダンス値を設定する

素子定数は図3でみたAD811の特性に合わせてみました(とくにドミナント・ポールについて)。データシート [1]では𝑇(𝑠)= typ 0.4MΩと記載されていますが、図7の定数は、図3のシミュレーションで𝑅2= 1kΩの条件で得られた結果から設定しています。また𝑅𝑂はゼロとして構成してあります。

電流源F1は、1次側のV1の回路に流れる電流量を、×-1の倍率の電流として流すカレント・ミラー相当となるものです(電流極性が反転するため-1にしています)。

図7. 図6のカレント・ミラーとインピーダンスにより生じる 電圧をシミュレーションしてみる
図7. 図6のカレント・ミラーとインピーダンスにより生じる 電圧をシミュレーションしてみる
図8. 図7のシミュレーション結果。図3と同じ条件 (RF = 100, 200, 500, 1k, 2k, 5k 10kΩ)で.stepコマンドで 抵抗値を変化させた(上から100Ω)
図8. 図7のシミュレーション結果。図3と同じ条件 (RF = 100, 200, 500, 1k, 2k, 5k 10kΩ)で.stepコマンドで 抵抗値を変化させた(上から100Ω)
図9. 図7のシミュレーション回路を図3のループ・ゲインの構成に変更してループ・ゲインをシミュレーションしてみる(RF = 100, 200, 500, 1k, 2k, 5k 10kΩで.stepコマンドで抵抗値を変化)。非反転入力はV1のマイナス側だが表記していない
図9. 図7のシミュレーション回路を図3のループ・ゲインの構成に変更してループ・ゲインをシミュレーションしてみる(RF = 100, 200, 500, 1k, 2k, 5k 10kΩで.stepコマンドで抵抗値を変化)。非反転入力はV1のマイナス側だが表記していない
図10. 図9のシミュレーション結果
図10. 図9のシミュレーション結果

シミュレーション結果を図8に示します。図3とほぼ同じ答えが得られていることが分かります。なお先の説明のとおり、図3の𝑅2が1kΩの条件、また𝑅𝑂もゼロとして回路を構成しているため、他の抵抗値では増幅率(変換率と言ったほうがいいかも)に差異が生じていることもプロットから確認できます。

 

AD811モドキのループ・ゲインを求めてみる

なんとここまでで、早速AD811の簡易モデル(AD811モドキ)が出来てしまいました…。早速とか言いながら、実は事前検討数日の結果なのですが…(汗)。

それではこの図7(AD811モドキ)の回路を図3で求めたループ・ゲインを得る構成に変えてみて、図3と同じループ・ゲインの結果が得られるかどうか、シミュレーションしてみましょう。この答えは、実は何ということはなく、図8の結果と当然ながらぴったり同じになるのですが…。

図9に、図3の特性に相当するはずの、AD811モドキのループ・ゲインを求める回路を示します。各素子の部品番号や回路図上のレイアウトは(比較しやすいように)図1と同じにしてあります。ここでも𝑅𝑂をゼロとして回路を構成しています。

図10にシミュレーション結果を示します。図3の結果とほぼ同様かつ図8の結果とぴったり同じになりました。

 

電流帰還OPアンプの簡易モデルができた

これで電流帰還OPアンプの単純な原理モデルを作ることができました。この原理モデルを基準として、以降でいろいろなシミュレーションができるようになりました。

AD811などホンモノの電流帰還OPアンプで解析検討を進めていってもよいのかもしれませんが、やはりそれでは説得力にかけるので(結果と説明の間に緩衝材があるようなかたちなのでクリアではないため)あまりよろしくありません。

原理モデルがあれば、明確に理論検討ができるわけです。

 

最後におまけ「Fモデルの使い方」

最後におまけというか、LTspiceを使ううえで少しひっかかりがちなところの解決方法をご紹介しておきましょう。

今回はカレント・ミラーを実現するためにFモデル(Current Dependent Current Source)を用いました。一般的なSPICEではCurrent Controlled Current Source; CCCSと呼ばれています(「Fモデル」という記号定義は同じですが)。

LTspiceのFモデルは図7や図9で見たように、シンボルとしては2端子しかありません。これをLTspiceのSchematic Editor上でどのように設定すればよいか、少し戸惑ってしまいます。LTspiceのヘルプでは

Syntax: Fxxx n+ n- <Vnam> <gain>

と記載がありますが、これでは分かりません…。

Fシンボルを右クリックすると、図11のようなダイアログ・ボックスが表示されます。ここでValueとValue2というフィールドが見えます。このValueに電流量を参照する電圧源(つまりカレント・ミラーの電流検出側)の部品番号(Syntaxでは<Vnam>)を記述し、Value2に変換倍率(Syntaxでは<gain>)を記述すればよいのです。

なおSchematic上でValue, Value2が表示されるように、一番右側のVis.(VisualizeもしくはVisibleの意味だと思われますが)に「X」のチェックを入れておきます。

図11. Fモデルのパラメータ設定方法
図11. Fモデルのパラメータ設定方法

著者について

石井 聡
1963年千葉県生まれ。1985年第1級無線技術士合格。1986年東京農工大学電気工学科卒業、同年電子機器メーカ入社、長く電子回路設計業務に従事。1994年技術士(電気・電子部門)合格。2002年横浜国立大学大学院博士課程後期(電子情報工学専攻・社会人特別選抜)修了。博士(工学)。2009年アナログ・デバイセズ株式会社入社、現在に至る。2018年中小企業診断士登録。
デジタル回路(FPGAやASIC)からアナログ、高周波回路まで多...

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