リニア電圧レギュレータの出力電圧ノイズ測定

2014年09月20日
myAnalogに追加

myAnalog のリソース セクション、既存のプロジェクト、または新しいプロジェクトに記事を追加します。

新規プロジェクトを作成

リニア電圧レギュレータは、部品数が少なく、小型のフットプリントで、出力電圧ノイズが低いシンプルな非スイッチングDC/DCコンバータ・ソリューションを提供します。こうした特長を持つリニア電圧レギュレータは、電源ノイズに制約のあるアプリケーションやボード面積が限られているソリューション、磁気の影響を受けやすい場合に最適です。アプリケーションには、高電圧システムや低電圧システム、ミリアンペア・レベルやアンペア・レベルの電流が必要な負荷、ならびに両者の間に存在するあらゆるものが含まれ、その数は膨大なものになります。

コンポーネントを選択する際、ユーザはアプリケーションやシステムに応じて特定の周波数帯域に着目します。リニア電圧レギュレータのユーザにとって、0.1Hz~10Hzという低周波数は、通常ほぼ関心外です。他方、計測器の電圧リファレンスのユーザは、主にこのレンジの周波数帯域を扱います。次のレベルの周波数帯域である10Hz~10kHzは、オーディオ機器やオーディオ周波数のユーザが検討対象としています。さらに次の帯域は10Hz~100kHzとなりますが、この100kHzの上限は、慣習的なスイッチング・レギュレータ周波数に基づいたもので、やや幅があります。多くのアプリケーションのシステム帯域幅は、この範囲に含まれています。さらに、1MHzを超える高周波ノイズを問題とするユーザもいますが、ユーザ全体から見ると少数です。このレベルの周波数では、ノイズ測定値は100kHzより若干高くなります。こうした高周波数では、LDOがユニティゲインの帯域幅ポイントを超えて動作するので、LDOはノイズを増加させるというより、むしろ高周波数ノイズを減衰させることになります。

ユーザの設計ニーズに対応し、検討対象となる全ての周波数帯域でのノイズ性能を把握できるように、アナログ・デバイセズはリニア電圧レギュレータの出力ノイズ・スペクトル密度を10Hz~100kHzの周波数範囲で仕様規定しています。ノイズはこの帯域で積分されるため、この規定値はデバイスのノイズ性能の期待値を正確に反映します。しかし、競合他社の中には、電圧ノイズのスペクトル密度を実際よりも良く見せるために、出力電圧ノイズ密度をより狭い周波数範囲で仕様規定しているところもあります。

アナログ・デバイセズのノイズ値は、より広い周波数範囲で試験を行った場合でも、他社より低いあるいは同等の値となります。アナログ・デバイセズでは周波数の下限は10Hzですが、メーカーによっては下限を100Hz~500Hzに規定している場合もあります。その理由の1つとして、メーカーの多くが、LDOの製造に微細配線構造のCMOSまたはBiCMOSプロセスを採用しているため、1/fコーナーが高めになることが挙げられます。この場合のノイズを10Hz~100kHz範囲で規定しようとすると、下限値を高くする必要があります。アナログ・デバイセズのリニア電圧レギュレータの多くは、一般に1/fノイズのより低いバイポーラ・プロセスを採用しています。

リニア電圧レギュレータの出力電圧ノイズの改善

スイッチャと異なり、リニア電圧レギュレータにはスイッチング・ノイズがありません。プロセス以外で、リニア電圧レギュレータの出力電圧ノイズの主な要因となるのは、リファレンス電圧とエラー・アンプです。

下記のプロットは、1.5AのLDOレギュレータLT1963Aの中間周波数(10Hz~100kHz)でのノイズを示したものです。なお、ピークtoピークのノイズは、約2.6ディビジョン、つまり約260µVです。ガウス・ホワイト・ノイズを仮定すると、RMSノイズはピークtoピーク・ノイズの約1/6(この場合43µV)で、この値は、データシートに記載されている40µV RMSに非常に近い値となっています。

出力電圧ノイズを減らす方法として、内部電圧リファレンスを外部にバイパスできるリニア電圧レギュレータを用いるやり方があります。アナログ・デバイセズでは、この機能を持つリニア電圧レギュレータをいくつか用意しています。下記のプロットを見ると、リファレンスのバイパス・コンデンサの値をどのくらい大きくすればLT3062出力電圧ノイズを効果的に減らせるかがわかります。

エラー・アンプからのノイズの影響を減らすには、エラー・アンプの制御ループのゲインを下げるという方法があります。帰還抵抗をR2:R1が減少するように変更すると、ゲインが下がります。この例は、LT3062のデータシートにある以下の図に見ることができます。出力ノイズがVOUTの減少に伴って小さくなっていることがわかります。 

しかし、設計においてノイズを下げるために常に出力電圧値を変更できるとは限りません。そこで、ノイズを削減する別の手法として、上側の帰還抵抗の両端にフィードフォワード・コンデンサを付加することができます。これによりループのACゲインが低下するので、高周波ノイズが減衰します。1MHzより高い周波数では、制御ループのゲインは1未満なので、ノイズは増加することなく減衰します。

検討すべき低ノイズ・リニア電圧レギュレータ・ファミリの最後の1つは、1.2V~36V入力、1.5A出力のLT3081のような、電流源リファレンス・リニア電圧レギュレータです。このファミリは、電圧リファレンスではなく、電流源と外付け抵抗を用いてリファレンス電圧を生成するため、周波数全域で一定の出力電圧ノイズ・スペクトル密度が得られます。

電圧リファレンスLDOと電流源LDOのどちらを選択する場合でも、アナログ・デバイセズには、低ノイズ・アプリケーションに適した出力電圧ノイズの低いリニア電圧レギュレータ・ファミリが用意されています。これらのデバイスは、10Hz~100kHzの周波数範囲で仕様規定されており、20µV/√Hzという低い出力電圧ノイズ・スペクトル密度を提供します。

著者について

Kevin Scott
Kevin Scottは、アナログ・デバイセズのパワー製品グループでプロダクト・マーケティング・マネージャを務めています。昇圧、昇降圧、絶縁型コンバータに加え、LEDドライバとリニア・レギュレータを担当しています。以前は、シニア・ストラテジック・マーケティング・エンジニアとして、技術トレーニング用コンテンツの作成、セールス・エンジニアのトレーニング、各種製品の技術的な優位性を紹介するウェブサイト向け記事の執筆を行っていました。半導体業界で2...
Tony Bonte

最新メディア 20

Subtitle
さらに詳しく
myAnalogに追加

myAnalog のリソース セクション、既存のプロジェクト、または新しいプロジェクトに記事を追加します。

新規プロジェクトを作成