LT3790 240W高効率の並列昇降圧レギュレータ

2015年01月05日
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LT3790は4スイッチの同期整流式昇降圧DC/DCコンバータで、定電圧および定電流の両方を最大効率98.5%でレギュレーションし、使用するインダクタは1個だけです。数百Wの電力を供給可能で、入出力定格は60Vなので、昇圧と降圧の両方の変換が必要な場合のDC/DC電圧レギュレータやバッテリ・チャージャに最適です。

同期整流式スイッチング・トポロジを備えているため、1つのLT3790コンバータで大電力を供給できますが、大電力時のスイッチング損失や導通損失により基板が過熱され、1個のコンバータでは対応できなくなってしまう可能性もあります。熱は、体積の大きなヒート・シンク、外付けのゲート・ドライバ、強制空冷などにより緩和することができますが、単純に2つ以上のコンバータを並列に接続して負荷を分散させる方が良い場合もあります。LT3790昇降圧レギュレータを用いるとこれは簡単に行うことができます。

理想的には、並列化したスイッチング・コンバータは、全出力範囲において負荷を均等に分担します。定電圧でも定電流でも動作できるLT3790の能力により、1つのマスタ・コンバータで出力電圧を制御できますが、それと同時に、その電流モニタ出力(ISMON)は、その固有の出力レベルと一致させるために、1つまたは複数のスレーブ・コンバータに対しどの程度の電流をレギュレーションするかを指示します(CTRL入力)。複数のコンバータ間の電流の一致は、この手法を用いることでほぼ理想的なものになります。

図1. 2つのLT3790 24V電圧レギュレータは容易に並列化が可能で、ディスクリート部品の温度上昇を抑えながら出力を倍増できます。

マスタのCLKOUTピンをスレーブのSYNC入力ピンに直接接続すると、2つの並列コンバータの間で180°の位相インターリーブが可能となります。コンバータ間の180°の位相差により、コンバータの全体的な出力リップルは2倍にならず、むしろ減少します。3つ以上のコンバータを並列に接続する場合、外部クロック源またはデイジーチェーン接続したCLKOUTピンを使用して、これらのコンバータを同期し、位相シフト動作または同相動作をさせることができます。

図1の回路は、2つのLT3790を並列に動作させることで形成される24V、10A(特定の条件では25A、図参照)の電圧レギュレータを示します。2つの並列回路を用いることで、1つのディスクリート部品の最大温度上昇は、12V入力でのM3およびM7 MOSFETでわずか20°C、9V入力では50°Cです。上側のコンバータ(マスタ)は24Vの出力電圧をレギュレーションし、また、下側(スレーブ)のコンバータがレギュレーションする電流レベルを指示します。マスタのISMON出力はマスタが供給している電流量を示します。また、ISMONをスレーブのCTRL入力に直接接続することで、スレーブは強制的にマスタに従うことになります。LT3790のISMON出力レベルとCTRL入力レベルは同じ対応付けが行われているため、一方から他方への直接接続が可能で、そのようにすることで図2に示すように、合計出力電流を並列コンバータ間で均等に分担させることができます。なお、スレーブの出力電圧はわずかに高め(28V)に設定されているため、スレーブの電圧帰還ループがレギュレーション状態にならず、スレーブがマスタに従うことができるようになっている点に注意してください。

図2. 並列コンバータのインダクタ電流と出力電流の一致

過渡応答とネットワーク・アナライザのループ解析を用いて、安定性を測定できます。図3に示す50%から100%への電流の過渡応答は、補償が適切に行われたコンバータと均等に分担された負荷電流を実証しています。

図3. 並列コンバータの過渡応答では電流が均等に分担されます。

著者について

Keith Szolusha
Keith Szolushaは、アナログ・デバイセズ(カリフォルニア州サンノゼ)のアプリケーション・ディレクタです。2000年からIPSパワー製品グループに所属しています。主に降圧/昇圧/昇降圧コンバータ、LEDやGaNに対応するコントローラ/ドライバなどの製品を担当。また、電源製品向けのEMIチャンバの管理も担っています。マサチューセッツ工科大学で1997年に電気工学の学士号、1998年に同修士号を取得。テクニカル・ライティングの集中コー...

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