要約
このアプリケーションノートは、計測アンプ用のインダイレクト電流帰還アーキテクチャにおけるREF端子の機能について解説します。この記事では、3つのオペアンプによるアーキテクチャと差動アンプでのREFバッファの重要性をインダイレクト電流帰還アーキテクチャと比較します。この技法の例として、MAX4208、MAX4209、およびMAX9922/MAX9923の各アンプを取り上げます。
はじめに
従来の3つのオペアンプによる計測アンプ用アーキテクチャでは、入力コモンモード範囲に制限があるため、多くのアプリケーションでの使用に制約がありました。マキシムのインダイレクト電流帰還アーキテクチャは、入力コモンモード電圧範囲を負レールまで拡大することによって、これらの欠点を克服します。マキシムのインダイレクト電流帰還アーキテクチャの詳細については、アプリケーションノート4034 「計測アンプに3つのオペアンプは多すぎる」を参照してください。
計測アンプのMAX4208/MAX4209や電流検出アンプのMAX9922/MAX9923などの最近発表された製品は、インダイレクト電流帰還アーキテクチャを使用した高度なチョッパ技法とオートゼロ技法を内蔵しています。これらの新しいデバイスは、ゼロに近い入力オフセット電圧およびゼロに近い温度ドリフトを実現します。この高性能により、センサー回路や計測回路にとってのデバイスの価値がさらに強化されています。
低入力オフセット電圧の利点
超低入力オフセット電圧およびドリフトを備えた計測アンプは、小さいセンサー信号を増幅するとともにコモンモードノイズを除去する必要のあるセンサーインタフェースアプリケーションに最適です
超低入力オフセット電圧を備えた電流検出アンプは、電流監視およびパワーマネージメントアプリケーションでの非常に小さい検出電圧の使用を可能にします。小さい検出電圧によって電力変換効率が向上するとともに、これらのデバイスはPCBに多数のヒートシンクを必要とする検出抵抗に、より小型で低W数のものを使用することができるため基板レイアウトスペースが削減されます。
バイポーラ入力差動信号を処理するため、またはアンプの出力段のVOL (出力電圧ロー)の仕様の制限を克服するために、計測アンプと電流検出アンプの両方とも通常は出力電圧をグランド以上にオフセットさせる必要があります。
REFバッファを必要とする従来の差動アンプ
従来の3つのオペアンプによる計測アンプアーキテクチャは、入力コモンモード電圧の除去を出力差動アンプに依存します。この方式の有効性は、差動アンプの抵抗の整合によって大きく変化します。抵抗の整合を維持するために、これらの設計にはREF端子を駆動する外付けのオペアンプが必要です。抵抗ストリングを使用してこの出力オフセット電圧を生成すると、差動アンプの抵抗回路の不整合が発生し、コモンモード除去が大幅に低下します。
図1は、計測アンプMAX4194のREF端子が抵抗分圧器R3に接続された状態を示します。この設計では、REF端子に接続された抵抗R2と直列に、R3のテブナン等価抵抗(R3/2)が加わります。これにより、アンプA3周りの抵抗に不整合が発生し、コモンモード除去と計測アンプの利得誤差の両方に影響します。
さらに、外付けの高精度オペアンプを使用してREF端子を駆動すると、最終アプリケーションのコスト、基板スペース、および消費電流の増大につながります。
図1. 3つのオペアンプを使用する計測アンプ(MAX4194~MAX4197など)のREF端子に抵抗分圧器(R3)を接続した場合、CMRRが低下します。
常にREFバッファを必要としないインダイレクト電流帰還アーキテクチャ
革新的なインダイレクト電流帰還アーキテクチャは差動アンプを含んでいないため、コモンモード除去比が抵抗回路の整合に依存しません。その結果、コモンモード除去に影響を与えることなくREF端子を抵抗分圧器に接続することができます。
図2. インダイレクト電流帰還アンプ(MAX9922~MAX9923など)のREF端子に抵抗分圧器を接続した場合、CMRRは低下しません。
インダイレクト電流帰還アーキテクチャでは、FB端子とREF端子間の差動電圧はRS+端子とRS-端子間の差動電圧と等しくなります。そのため、R1を流れる電流は、実質的にRS+とRS-間の入力差動電圧および抵抗R1のみによって決定される電流ソースとなります。この電流ソースによって、さらに次のようにREF端子の電圧が変化します。
IREF = (VRS+ - VRS-)/R1 = VSENSE/R1
VREF = VDD/2 + IREF × R3/2
= VDD/2 + (VSENSE × R3)/(R1 × 2)
VOUT = (1 + R2/R1) × VSENSE + VREF
= (1 + R2/R1) × VSENSE + VDD/2 + (VSENSE × R3)/(R1 × 2)
= [1 + (R2 + R3/2)/R1] × VSENSE + VDD/2
ここから分かるように、予想された利得である(1 + R2/R1)の代わりに、新しい利得は単に(1 + (R2 + R3/2)/R1)となります。入力コモンモード除去比は、インダイレクト電流帰還アーキテクチャによって決定され、同様に高いままです。
しかし、抵抗分圧器回路に使用する抵抗(R3)の許容誤差が、入力基準のオフセット電圧として現れることに注意する必要があります。たとえば、利得 = 100、出力基準電圧 = 2.5V、VDD = 5Vの場合、許容誤差1%の抵抗を使用するとこの電圧が約1%変化する原因になります。実際には、出力基準電圧が±25mV変化する可能性があります。利得 = 100であるため、これは±250µVの入力オフセット電圧の変化に相当します。MAX4208/MAX4209およびMAX9922/MAX9923の入力オフセット電圧はこれに比べて大幅に低いため、この変化を増大させることはありません。
内蔵の高精度バッファによるREF端子の駆動
入力オフセット電圧の変化をアプリケーションで補正することができるように、MAX4208/MAX4209はREF端子を駆動するための高精度バッファを内蔵しています(<図3)。このバッファによって、REFの電圧が入力検出電圧による影響を受けないことが保証されます。したがって、ADCはいつでもREFの電圧を読み取ってファームウェアでその非理想的特性を補正することができます。
図3. バッファ内蔵のMAX4208/MAX4209
ユニポーラ入力差動電圧アプリケーションでは、多くの場合にREF端子がGNDに接続されます。しかし、ゼロ入力信号に近い測定を行う必要がある場合、(すべてのアンプアーキテクチャに存在する) VOL (出力電圧ロー)およびAOL (オープンループ利得)の仕様により、出力電圧はGNDよりわずかに高い値にオフセットする必要があります。この状況では、REF電圧の生成に使用する抵抗分圧器を不整合とし、適切な大きさにすることができます。例として、1kΩ||50kΩの抵抗分圧器とVDD = 5Vを使用することで、~98mVの出力オフセット電圧が発生します。この場合、許容誤差1%の抵抗を使用しても、出力オフセット電圧の変化はわずか±0.98mVです。入力基準の利得 = 100の場合、結果の入力オフセット電圧はわずか±9.8µVであり、MAX4208/MAX4209およびMAX9922/MAX9923に固有の低い入力オフセット電圧と同等になります。
設計のテスト結果
テスト構成では、図2に示したMAX9922によるサンプルデザイン用に、以下の値を選択しました。
R2 = 100kΩ
R1 = 1kΩ
REFの抵抗分圧器 = 1kΩと50kΩ
VDD = 5V
実際の利得 = (1 + (R2 + R3/2)/R1) = 1 + (100kΩ + 1kΩ||50kΩ)/(1kΩ) = 102
出力オフセット電圧 = 5V × 1kΩ/(1kΩ + 50kΩ) = 98mV
したがって、
VOUT = 102.17VSENSE + 96.75mV
実際の入力オフセット電圧(VOSおよび1kΩと50kΩの抵抗の許容誤差による影響を含んだ値) = (98mV - 96.75mV)/102.17 = 1.25mV/102.17 = 12.23µVになります。
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