要約
CATVシステムは75Ωの特性インピーダンスをベースとしていますが、標準の実験用機器は50Ωの特性インピーダンスを備えています。75Ωから50Ωへの最小損失パッド(MLP)は電圧および電力を正確に測定するためのブロードバンド方式です。このアプリケーションノートは、このようなMLPに必要な抵抗器ネットワークについて説明します。一般情報および負荷インピーダンスとともにMLP用の計算式も入手できます。
参照
はじめに
最小損失パッドによって、50Ωテスト機器を使って、CATVチューナIC、ケーブルアップストリームアンプ、および衛星DBSチューナICのような75Ωのブロードバンド回路の測定が可能になります。MLPで作動させる場合、MLPの電圧損失または電力損失を使うべきか否かを知るのは大変重要なことです。MLPでの電力損失量は、インピーダンス変換のため電圧損失とは異なります。特に電力測定用に使用される電力損失は、いずれの方向に変換したとしても同じです。電圧測定用に使用される電圧損失は、インピーダンスの変換方向に依存して異なります。
75Ωから50ΩへのMLP特性の概要
図1. 75Ωから50Ωへの最小損失パッド
図1は75Ωと50Ω間の変換用MLPを示しています。75Ω終端には75Ω等価抵抗ネットワークがあります。同様に50Ω終端には50Ω等価抵抗ネットワークがあります。
表1は75Ωから50Ωへあるいは50Ωから75Ωへ変化させるときにも電力損失が同じままであることを示しています。しかし、電圧損失は、50Ωから75Ωへ変化させるときよりも、75Ωから50Ωへ変化させるときの方が大きくなります。
MLP impedance transformation (Ω to Ω) |
Power loss (dB) | Voltage loss (dB) |
75 to 50 | -5.72 | -7.48 |
50 to 75 | -5.72 | -3.96 |
(50 to 75) + (75 to 50) | -11.44 | -11.44 |
一般的なMLP抵抗値の計算式
図2. 最小損失パッド
図2はソースインピーダンス(RS)および負荷インピーダンス(RL)付きMLPを示しています。LセクションパッドはハイインピーダンスRSをローインピーダンスRLに整合させるために使われます。(図2ではRS > RLと想定)このMLPの抵抗値は式1 (Eq. 1)および式2 (Eq. 2)によって決定されます[1]。
ハイからローへのインピーダンス信号経路
図3は信号経路がハイからローへ(すなわち回路の左側から右側へ)のインピーダンスであるMLPを示しています。
図3. ハイからローへのインピーダンス信号経路付きMLP
電圧損失
CATVシステムでは、信号レベルは通常dBmVという電圧単位で測定されます[2]。この単位は1mVに対して1デシベルです。信号レベルが電圧単位で表現されるとき、MLPの電圧損失が使用されます。MLP電圧損失の一般式が下記で得られます。図3を基にしており、ここでもRS > RLであると想定しています。
図3の考察による:
dBでの電圧損失は下記のようになります:
式4 (Eq. 4)を式5 (Eq. 5)に代入して:
式6.1はRSとRLに関してのみの代替電圧損失計算式で、式1 (Eq. 1)と式2 (Eq. 2)を式6 (Eq. 6)に代入して得られます。
電力損失
例えばdBmといった電力単位で定義される信号レベルで動作させる際にMLPの電力損失が使用されます。dBmは1mWの電力に対して1デシベルです。典型的なテスト機器はdBmで信号レベルを測定します。
MLP電力損失の一般式は下記で得られます。図3および図4を基にしており、再びRS > RLと想定しています。ここにある計算式は、電力損失は電圧損失とインピーダンス比からなっていることを示しています。電力損失は、有効な電力へ分配される電力比として計算されています[3][4]。
図4. 完全に整合された負荷へ供給可能な電力
PAは、図4で示されているように完全に整合された負荷へ供給可能な電力です。
図3の考察から、負荷に分配される電力PDは次のようになります:
V2 は次のように表現されます:
式10 (Eq. 10)を式9 (Eq. 9)に代入して:
dBでの電力損失は次のように表現されます:
式8 (Eq. 8)と式11 (Eq. 11)を式12 (Eq. 12)に代入して:
図3の考察から、完全に整合されたMLPのためには:
式16 (Eq. 16)を式15 (Eq. 15)に代入して:
式18 (Eq. 18)と式6 (Eq. 6)を比較すると電力損失と電圧損失の違いが分かります。電力損失は、電圧損失にインピーダンス比を加えたものとして示されます。
式18.1 (Eq. 18.1)は、RSおよびRLに関してのみ、代替電力損失の計算式で、式1 (Eq. 1)と式2 (Eq. 2)を式18 (Eq. 18)に代入して結果が出ます。
ローからハイへのインピーダンス信号経路
ローからハイへのインピーダンス信号経路について述べる際に一貫性を保つために、信号は逆方向でMLP上で流れていますが、図5は図3にあるような同回路位置でのRSおよびRLを示しています。
図5. ローからハイへのインピーダンス信号経路付きMLP
電圧損失
図5の考察によって:
dBでの電圧損失は次のように表現されます:
式20 (Eq. 20)を式21 (Eq. 21)に代入して:
代替電圧損失計算式は、RSおよびRLに関してのみ、式1 (Eq. 1)と式2 (Eq. 2)を式22 (Eq. 22)に代入して結果が出ます。
電力損失
図5から、整合されたソースおよび負荷インピーダンスの電力損失は:
式20 (Eq. 20)を式24 (Eq. 24)に代入します。
代替電力損失計算式は、再びRSおよびRLに関してのみ、式1 (Eq. 1)と式2 (Eq. 2)を式25 (Eq. 25)に代入して結果が出ます。
式25 (Eq. 25)と式22 (Eq. 22)を比較すると電力損失と電圧損失の違いが分かります。再び、ローからハイへのインピーダンス信号経路について、電力損失は電圧損失にインピーダンス比を加えたものとして示されます。
75Ωから50ΩへのMLP例
75Ωから50ΩへのMLP用抵抗値を決定するには上記図2にある一般MLPを参照してください。RSとRLをそれぞれ75Ωと50Ωになるように選択してください。これによってRS > RLの想定が満たされます。式2 (Eq. 2)から:
式1 (Eq. 1)から:
75Ωから50Ωへの信号経路の電圧損失を決定するには式6 (Eq. 6)を使ってください。
75Ωから50Ωへの信号経路の電力損失を決定するには式18 (Eq. 18)を使ってください。
50Ωから75Ωへの信号経路の電圧損失を決定するには式22 (Eq. 22)を使ってください。
50Ωから75Ωへの信号経路の電力損失を決定するには式25 (Eq. 25)を使ってください。
電圧損失は信号方向によって異なるのに対して、電力損失は、信号がどちらの方向に動いても同じである点に注意してください。また、電力損失と電圧損失の違いはインピーダンス比によって生じることに注意してください。
結論
MLPの電力損失と電圧損失は異なるソースおよび負荷インピーダンスによって異なります。電力損失は電圧損失にインピーダンス比を加えたものに等しいです。
電力損失は信号がいずれの方向に流れても同じです。しかし、電圧損失は信号がハイインピーダンスソースからローインピーダンス負荷へ流れると大きくなります。
dBmV、dBµV、またはdBVで測定する場合、またはどの電圧に関する測定でも電圧損失を使用してください。dBmで測定する場合、またはいかなる電力測定でも電力損失を使用してください。
参考資料
- Bruno O. Weinschel著「Reference Data for Engineers: Radio, Electronics, Computer, and Communications」第7版、第11章
- マキシムのアプリケーションノート「CATVのdBm、dBmV、及びdBµV間の変換」
- Ziemer、Tranter共著「Principles of Communications」第3版、付録A、759~760ページ
- Krauss、Bostian、Raab共著「Solid State Radio Engineering」第2章
{{modalTitle}}
{{modalDescription}}
{{dropdownTitle}}
- {{defaultSelectedText}} {{#each projectNames}}
- {{name}} {{/each}} {{#if newProjectText}}
-
{{newProjectText}}
{{/if}}
{{newProjectTitle}}
{{projectNameErrorText}}