キャッチ・ダイオードを使用する非同期方式の昇圧コンバータでは、高いEMI性能を実現することはできないのか?
概要
本稿では、キャッチ・ダイオード(フリー・ホイール・ダイオード)を使用する非同期方式のDC/DCコンバータにおいて、高いEMI性能を実現する方法について説明します。具体的には、様々な種類のDC/DCコンバータや、プリント基板のレイアウト、パッケージの実例を挙げ、エミッションの抑制に対してスイッチングに関する制御が有効である理由を明らかにします。また、各種製品の評価用ボードを例にとり、CISPR 25のクラス5で定められたEMI性能のテストを実施した結果も紹介します。
はじめに
アナログ・デバイセズは、Silent Switcher®技術を適用した同期方式のDC/DCコンバータを提供しています。それらの製品は、いずれも強力かつコンパクトです。それに加えて、ノイズを非常に小さく抑えられることから、DC/DC変換の分野で金字塔を打ち立てた製品群だと言えます。筆者らは、過去5年以上にわたり、そうしたEMI性能に優れる(エミッションが少ない)同期方式の降圧コンバータや昇圧コンバータを多数紹介してきました。実際、そうした製品を採用すれば、ノイズに敏感な環境において大電力を扱う場合でも、システム・レベルのEMC性能を損なうことなく簡素な設計を実現できます。代表的な例としては、自動車においてコールドクランクが発生したケースに対応するためのプリブースト、大電流を要するLEDストリングの駆動、音響システムにおいて高電圧を扱うパワー・アンプといったアプリケーションが挙げられます。パワー・スイッチを内蔵するモノリシック型の昇圧レギュレータを採用すれば、コントローラをベースとする設計よりも高効率でコンパクトなソリューションを実現できます。そうしたソリューションは、5V、12V、24Vの電源電圧を対象とする場合によく利用されています。
Silent Switcherを採用したコンバータの“秘伝のソース”は、同期方式で動作するスイッチとチップ内の独自のレイアウトです1。内蔵スイッチによって形成されるホット・ループの面積は非常に小さいので、エミッションを最小限に抑えることができます。但し、この種の製品ではコストが問題になる可能性があります。実際、すべてのアプリケーションに同期方式で動作するスイッチが必要なわけではありません。スイッチング方式のDC/DCコンバータとしては、次のように構成した方がコストを抑えられる可能性があります。すなわち、パワー・スイッチを1つだけ集積したDC/DCコンバータICを採用し、低コストの外付けキャッチ・ダイオードを2つ目のスイッチとして機能させるというものです。実際、これはコストを抑えたい場合に一般的に使われている手法です。ただ、ここで1つの疑問が生じます。その疑問とは、エミッションを抑えることが重要なケースでも、この手法を採用することができるのかというものです。
結論から言えば、ディスクリートのキャッチ・ダイオードを使用した非同期方式のDC/DCコンバータでも、エミッションを抑えることは可能です。ホット・ループのレイアウトとスイッチングのエッジ・レート(dV/dt)に注意を払うことで、非同期方式のDC/DCコンバータでも高いEMI性能を実現することができます。エミッションをより低減したい場合でも、SSFM(Spread Spectrum Frequency Modulation)を組み合わせることで対応できるケースが多いはずです。例えば、アナログ・デバイセズは、60V/1.5Aの出力に対応するLEDドライバ「LT3950」や、40V/5Aの出力に対応する昇圧コンバータ「LT8334」など、非同期方式でモノリシック型のスイッチング・レギュレータ製品を提供しています。これらの製品は、ローサイドのパワー・スイッチ(1個)だけを内蔵しています。そして、外付けのキャッチ・ダイオードを組み合わせる方法により、高いEMI性能を達成します。では、そうした性能は、どのような仕組みによって実現されているのでしょうか。
図1. 2種類のDC/DCコンバータ。(a)は、非同期方式のモノリシック型昇圧コンバータです。外付けのキャッチ・ダイオードを含むホット・ループが1つだけ形成されます。(b)は、Silent Switcherを適用したDC/DCコンバータです。必要なスイッチはすべて内蔵しており、2つの(逆磁界の)ホット・ループが形成されます。
キャッチ・ダイオードとデッド・タイム
パワー・スイッチを1個だけ内蔵するモノリシック型のDC/DCコンバータは、2個のパワー・スイッチを内蔵するものと比べてダイのサイズを30%~40%小さく抑えられます。ダイのサイズを削減するということは、材料のコストを削減できるということに直結します。また、より小型のパッケージにダイを実装できれば、2次的なコスト削減効果が得られます。一方、外付けのキャッチ・ダイオードを使う場合、プリント基板上である程度の実装スペースを消費することになります。ただ、ダイオード製品としては多種多様なものが提供されています。加えて、いずれも堅牢で安価です。昇圧コンバータでは、VFが小さいショットキー・ダイオードを高い出力電圧、低いデューティ・サイクル、高い効率で動作させることになります。このようなアプリケーションで使うものとしては、高電圧に対応する高価なパワーFETよりも、キャッチ・ダイオードの方が間違いなく優れています(図1)。
注目すべき1つの事柄としては、デッド・タイムが挙げられます。標準的な同期方式のDC/DCコンバータでは、あらかじめ設定されたデッド・タイムの間にパワー・スイッチのボディ・ダイオードが導通するようになっています。その目的は、シュートスルーによって生じる障害を防止することです。シュートスルーは、メインのスイッチが完全にターンオフする前に同期スイッチがターンオンする場合に発生します。その結果、(降圧か昇圧かに応じて)入力または出力がグラウンドに直接短絡してしまうことになります。デッド・タイムを確保すると、スイッチング・レギュレータのスイッチング周波数を高めることが難しくなります。また、デューティ・サイクルの最小値/最大値が制限される可能性があります。順方向電圧の小さい低コストのキャッチ・ダイオードを使用すれば、デッド・タイム用のロジックが不要になり、構成がシンプルになります。また、ほとんどの場合、パワー・スイッチのボディ・ダイオード(デッド・タイムの間に導通)で生じる順方向の電圧降下を考慮すると、キャッチ・ダイオードの性能はより優れていると言えます。
シンプルなレイアウトとパッケージ
続いて、プリント基板のレイアウトについて検討します。まずは基本的なレイアウトを示すために、シンプルなモノリシック型の昇圧コンバータを例にとることにしましょう。図2に示したのはLT3950を実装したプリント基板の例です。そのホット・ループは単純なものだと言えます。図3において黄色い線で示したこのホット・ループには、出力コンデンサ(小型のセラミック・コンデンサ)とサイズが同等のキャッチ・ダイオード(「PMEG6010CEH」)だけが含まれています。これらの部品は、基板上では、LT3950の16ピンのMSEパッケージ、スイッチング・ノードのピン、サーマル・パッドのグラウンド・プレーンの部分にぴったり収まります。では、ホット・ループがシンプルであれば、高いEMI性能は達成できるのでしょうか。それだけで十分というわけではありませんが、エミッションの低減に不可欠な要素であることは確かです。ワイヤ・ボンディングされた16ピンのMSEパッケージと小さなホット・ループに、SSFMならびに適切に制御されたスイッチング動作を組み合わせれば、エミッションを抑えられます。スイッチング動作の制御としては、非常に高い速度とパターンの寄生インダクタンスの影響によってリンギングが生じることがないよう、スイッチング・エッジが遷移するようにします。
図2. LT3950の評価用ボード「DC2788A」の基板レイアウト。非同期動作のホット・ループには、キャッチ・ダイオードD1が含まれています。同ダイオードと出力コンデンサは、LT3950のMSEパッケージ(16ピン)と密接した位置に納まっています。赤色の線で示した非同期動作のスイッチング・ノードも、ある程度小さくコンパクトに実装できています。スイッチング・ノードのレイアウトは、エミッションを抑えたい場合に非常に重要な意味を持ちます。
図3. LT3950の実用回路例。同製品は非同期方式のモノリシック型昇圧コンバータ(LEDドライバ)であり、60V/1.5Aの出力に対応します。黄色の線で示したホット・ループには、ディスクリートのキャッチ・ダイオードが含まれています。このループによって、周波数が高い領域のEMI性能が低下することはありません。
また、スイッチを1個だけ内蔵する非同期方式のDC/DCコンバータを使用する場合、SEPIC(Single Ended Primary Inductor Converter)のトポロジを構成することも可能です。つまり、トポロジを拡張することができ、本来の目的である昇圧機能を超える有用性が得られるということです。実際、内蔵スイッチが1つであることから、昇圧用のホット・ループを改変してSEPIC用のカップリング・コンデンサを簡単に追加することができます(図4、図5)。その際、カップリング・コンデンサ、キャッチ・ダイオード、出力コンデンサで構成されるループに十分に注意を払えば、その面積も小さく抑えられます。一方、同期方式の昇圧コンバータでは、ほとんどの場合、1つのスイッチ・ノードにトップとボトムのスイッチが恒久的に接続されることになります。したがって、このような改変は行えません。
図4. LT8334の実用回路例。同製品は、40V/5Aの出力に対応する非同期方式のモノリシック型昇圧コンバータです。この例ではSEPICトポロジを実現しています。黄色の線で示したホット・ループには、ディスクリートのキャッチ・ダイオードとカップリング・コンデンサが含まれています。このループによって、周波数が高い領域のEMI性能が低下することはありません。
図5. LT8334で構成したSEPICの基板レイアウト。評価用ボードであるEVAL-LT8334-AZの例を示しました。LT8334のスイッチ(1個)は、放熱性に優れた小型(4mm×3mm)、12ピンのDFNパッケージに収容されています。ホット・ループには、LT8334のパッケージ、カップリング・コンデンサ(セラミック・コンデンサ)、出力コンデンサ(セラミック・コンデンサ)、小型のキャッチ・ダイオードが含まれています。
LT8334は、40V/5Aに対応するスイッチを内蔵しています。このモノリシック型の昇圧コンバータICを採用すれば、12V出力のSEPICコンバータを構成できます。図4に示した回路では、カップリング・コンデンサと2つの誘導巻線から成る結合インダクタを使用して、12V/2Aの標準的な出力が得られるSEPICコンバータを構成しています。小型のキャッチ・ダイオードD1(PMEG4030ER)は、スイッチング・ノードに直接接続することはできません。ただ、同ダイオードとスイッチング・ノードの間には、0805サイズ、4.7µFのDCブロッキング用コンデンサ(カップリング用のセラミック・コンデンサ)を簡単に配置することができます。「EVAL-LT8334-AZ」はSEPIC構成の評価用ボードであり、ホット・ループのレイアウトは小さく抑えられています。スイッチング・ノードの銅パターンを可能な限り小さくし、スイッチング・ピンに可能な限り近づけることで、放射性エミッションを最小限に抑えることが可能になります。ホット・ループ全体はプリント基板の第1層を使って実装されています。スイッチング・ノードにも、カップリング・コンデンサの反対側のカップリングされたスイッチング・ノードにも、ビアを設けていない点に注目してください。最高の結果を得るためには、これらのスイッチング・ノードの面積を最小限に抑え、可能な限り近接させる必要があります。LT8334のパッケージは12ピンのDFNなので、ホット・ループを最小限に小さくし、エミッションを可能な限り小さく抑えることができます。
スイッチングの制御によって得られる効果
モノリシック(スイッチを内蔵)型のスイッチング・レギュレータICを使用する場合でも、2MHzの基本スイッチング周波数を使用し、SSFMと優れた基板レイアウトを適用して、スイッチングを適切に制御すれば、非常に効果的にエミッションを低減できます。これらの工夫によって十分な性能が得られる場合には、Silent Switcherを採用した製品を選択する必要はないかもしれません。Silent Switcherは、エミッションを小さく抑えるための技術としては最高レベルのものです。とはいえ、EMI規格に合格するためには、同技術が必須だというわけではありません。LT3950、LT8334において、SSFMは、基本周波数から約20%高い周波数まで上昇して元に戻る三角形のパターンで動作します。EMI性能の高いスイッチング・レギュレータでは、SSFMは一般的な機能だと言えます。ひと言でSSFMといっても様々な種類がありますが、それらには共通する目的があります。それは、エミッションのエネルギーを拡散し、エミッション(ピーク、平均)の最大値を低減し、求められる上限値よりも低く抑えることです。スイッチング周波数として2MHzを選択している理由の1つは、基本スイッチング周波数をAMラジオ帯(530kHz~1.8MHz)の上限よりも高く設定したいからです。それにより、基本波とその高調波が原因でエミッションが生じたとしても、電波の送受信が妨害されることはなくなります。AM帯についての配慮が不要な場合には、もっと低いスイッチング周波数を選択しても問題はありません。
スイッチング周波数の値に関わらず、内蔵スイッチとドライバは、EMI性能の低下を招く望ましくない動作をしないよう慎重に設計しなければなりません。超高速のスイッチング波形にリンギングが生じると、100MHz~400MHzの範囲で不要輻射が発生する可能性があります。その不要輻射は、放射性エミッションの測定時に最も目立つ成分になることがあります。ICが内蔵するスイッチを適切に制御することにより、エミッションを多量に放射する可能性は低くなります。すなわち、スイッチング・エッジを効果的に減衰させられるようになるはずです。パワー・スイッチを適切に制御することで、限界値よりも少し低いレートで高電圧/大電流が増減するようになります。ここで図6(b)をご覧ください。2V/ナノ秒のスイッチング・レート、リンギングのない波形が得られています。これは、モノリシック型のDC/DCコンバータで適切なスイッチング制御が行われたことを示す良い例だと言えます。IC内部で行われるスイッチングにおいて、ターンオン動作はソフトに行われて穏やかに0Vに到達しています。それ以降は、激しいリンギングは生じていません。このことは、LT3950のEMI性能に大きく寄与します(図9~図11)。通常、モノリシック型のスイッチング・レギュレータICでは、スイッチング速度を高めると、最大電力が増大して放熱性能が低下します。慎重に設計を行えば、低いスイッチング速度によって大きな効果が得られます。
図6. LT3950を使用した回路の信号波形。同ICによる制御の結果として、立上がりが2V/ナノ秒、立下がりが2V/ナノ秒のスルー・レートが得られています。このような特性は、例えばLEDドライバのアプリケーションにおいて高い効率と高いEMI性能を得たいといった場合に効果を発揮します。スイッチング・ノードではほとんどリンギングは発生していません。
ゲートのレート制御を実施可能な非同期方式の昇圧コントローラ
大電力を対象としてDC/DC変換を行いたい場合には、コントローラICと高電圧/大電流に対応可能な外付けスイッチを組み合わせなければならない可能性があります。その場合、外付けスイッチ用のゲート・ドライバはICの内部に集積できますが、ホット・ループ全体がICの外部に移ることになります。ホット・ループの構成やレイアウトの面で工夫を施せることもありますが、通常、ホット・ループ自体の面積はディスクリートのMOSFETのサイズに依存して大きくなります。
「LT8357」は、大電力に対応可能な非同期方式の昇圧コントローラです。この製品を採用すれば、エミッションを抑えつつ、24V/2A(48W)の電力を供給できます。サイズが3.5mm×3.5mmのMOSFETを低いスイッチング周波数で駆動することで、高い効率を実現することが可能です。ホット・ループが小さい(図7)ことに加え、ゲートの立上がりと立下がりを制御するためのピンを備えているので、エッジ・レートを制御してエミッションを低減することができます。必要なのは、GATEPピンに5.1Ωの抵抗RPを接続することだけです。それにより、パワーMOSFET(M1)がターンオンする際のエッジ・レートを低下させ、放射性エミッションを最小限に抑えることができます(図8)。もちろん、SSFMやEMI対策用のフィルタも、エミッションの低減に役立ちます。評価用ボード「EVAL-LT8357-AZ」には、EMI対策用のシールドを追加するための場所が設けられています。ただ、ほとんどのアプリケーションではシールドは必要ないはずです。非同期方式の昇圧コントローラであるLT8357は、モノリシックの製品と同様に、大電力を対象とし、高いEMI性能を実現しなければならない昇圧/SEPICアプリケーションに必要なすべての機能を備えています。
図7. LT8357の実用回路例。同製品は、高電圧に対応する昇圧コントローラです。スプリット・ゲート・ピン(黄色い線の部分)を使うことにより、大電力に対応するディスクリートのMOSFETがスイッチングする際の立上がりエッジと立下がりエッジを個別に制御することができます。
図8. 図7の回路のEMI性能。LT8357による昇圧処理においては、 RPが5.1Ω、RNが0Ωの場合に、最高の効率とEMI性能が得られます。独立したゲート・ドライブ・ピンにより、MOSFETがターンオンする際のエッジ・レートを制御しつつ、高速にターンオフさせることが可能になります。図中の各色は、以下に示す抵抗値の組み合わせに対応しています。赤色はRPが0Ω、RNが5.1Ω。黄色はRPが0Ω、RNが0Ω。緑色はRPが5.1Ω、RNが0Ω。青色はRPが5.1Ω、RNが5.1Ωです。
CISPR 25のクラス5で求められるEMI性能を達成する
図2では、高いEMI性能を実現しているものとして、LT3950の評価用ボードであるDC2788Aを例にとりました。この種の評価用ボードは、放射性エミッションと伝導性エミッションについて、広い範囲にわたってテストされています。図9~図11に示した評価結果は、入力電圧が12V、SSFMがオン、25VのLEDストリングに330mAの電流を供給するという条件下で取得したものです。伝導性エミッションについては、電流プローブ法と電圧法によってテストしています。それらの結果を見ると、どちらの方法でも厳しい上限値をクリアしていることがわかります。スイッチング・レギュレータでは、一般的にFM帯の伝導性エミッションが課題になります。しかし、LT3950の評価結果を見ると、FM帯において余裕を持って規格値をクリアしていることがわかります。
図9. LT3950の評価結果。電流プローブ法により、同製品の評価用ボードであるDC2788Aの伝導性エミッションを評価しました。(a)平均値、(b)ピーク値のいずれもCISPR 25のクラス5で定められた規格を満たしています。
図10. LT3950の評価結果。電圧法により、同製品の評価用ボードであるDC2788Aの伝導性エミッションを評価しました。(a)平均値、(b)ピーク値のいずれもCISPR 25のクラス5で定められた規格を満たしています。
図11. LT3950の評価結果。同製品の評価用ボードであるDC2788Aの放射性エミッションを評価しました。(a)平均値、(b)ピーク値のいずれもCISPR 25のクラス5で定められた規格を満たしています。
スイッチング周波数を2MHz(調整可能な範囲は300kHz~2MHz)に設定すると、基本スイッチング周波数が原因で発生するエミッションはAMラジオ帯(530kHz~1.8MHz)を超えた部分に現れます。つまり、AM帯を対象としてフロント・エンドにかさばるLCフィルタを配置することなく、トラブルを回避することができます。あるいは、LT3950に付加するEMIフィルタの代わりに、高周波に対応する小型のフェライト・ビーズを適用することも可能です。
LT8334を使用してSEPICを構成した場合にも、優れたEMI性能が得られています。しかも、ホット・ループにカップリング・コンデンサを追加し、結合インダクタの端子を増やした状態(スイッチング・ノードの数が2倍になる)でも問題は生じていません。また、12V出力、SEPIC構成の評価用ボードであるEVAL-LT8334-AZにおいても、スイッチング周波数を2MHzに設定し、SSFMを適用することで、エミッションを低く抑えることができています。昇圧コントローラの評価用ボードであるEVAL-LT8357-AZにおいても、同様の性能を達成することが可能です。エミッションの全評価結果や、回路図、テスト用のオプションの情報は、analog.com/jpに用意されている各デバイスの製品ページにアクセスすることで入手できます。表1は、非同期方式の昇圧/SEPICコンバータについてまとめたものです。これらの新製品ファミリは、いずれも高いEMI性能を発揮します。モノリシック型のコンバータICもコントローラICも、構造はシンプルであり、低コスト化を実現できます。また、複数のトポロジや大電力に対応しつつ、高いEMI性能を実現することができます。なお、極めて高いEMI性能が何よりも重要な場合には、Silent Switcherを適用した大電流対応の昇圧コンバータを利用するとよいでしょう。
VINの範囲 | 内蔵SW1 | 内蔵SW2 | fSW |
昇圧 | 昇降圧 | パッケージ | AEC-Q100 | 特記事項 | |
LT8336 | 2.7V~40V | 2.5A、40V | 2.5A、40V | 300kHz~3MHz、SSFM | ✔ | X | LQFN(16ピン)、3×3mm2 | ✔ | Iqは4µA、 Burst Mode、 PassThru™ |
LT8337 | 2.7V~28V | 5A、28V | 5A、28V | 300kHz~3MHz、SSFM | ✔ | X | LQFN(16ピン)、3×3mm2 | Iqは4µA、 Burst Mode、 PassThru |
|
LT3922-1 | 2.8V~36V | 2.3A、40V | 2.3A、40V | 200kHz~2MHz、SSFM | ✔ | 昇降圧モード、LED用 | QFN(28ピン)、4×5mm2 | ✔ | LEDドライバ、 HUD |
LT8386 | 4V~56V | 3.3A、60V | 3.3A, 60V | 200kHz~2MHz、SSFM | ✔ | 昇降圧モード、LED用 | LQFN(28ピン)、4×5mm2 | ✔ | LEDドライバ、 HUD |
LT8362 | 2.8V~60V | 2A、60V | X | 300kHz~2MHz、SSFM | ✔ | SEPIC |
DFN(10ピン)、 3×3mm2 MSOP16(12ピン) |
✔ | Iqは9µA、 Burst Mode |
LT8333 | 2.8V~40V | 3A、60V | X | 300kHz~2MHz、SSFM | ✔ | SEPIC | DFN(10ピン)、3×3mm2 | Iqは9µA、 Burst Mode |
|
LT8364 | 2.8V~60V | 4A、60V | X | 300kHz~2MHz、SSFM | ✔ | SEPIC | DFN(12ピン)、 4×3mm2 MSOP16(12ピン) |
✔ | Iqは9µA、 Burst Mode |
LT8334 | 2.8V~40V | 5A、60V | X | 300kHz~2MHz、 SSFM | ✔ | SEPIC | DFN(12ピン)、4×3mm2 | Iqは9µA、 Burst Mode |
|
LT3950 | 3V~60V | 1.5A、60V | X | 300kHz~2MHz、 SSFM | ✔ | 昇降圧モード、LED用 | MSOP(16ピン) | LEDドライバ | |
LT8357 | 3V~60V | なし(コントローラIC) | X | 100kHz~2MHz、SSFM | ✔ | SEPIC | MSOP(12ピン) | Iqは8µA、 Burst Mode、 スプリット・ゲート |
|
LT8356-1 | 5V~100V | なし(コントローラIC) | X | 100kHz~2MHz、SSFM | ✔ | 昇降圧モード、LED用 | SS.QFN(20ピン)、3×4mm2 | ✔ | LEDドライバ |
まとめ
本稿で説明したとおり、Silent Switcherを適用した同期方式のレギュレータでも、非同期方式のモノリシック型レギュレータでも、高いEMI性能が求められるアプリケーションに対応することができます。非同期方式の昇圧コンバータは、極めて高い性能が得られるSilent Switcher対応のDC/DCコンバータよりも低コストです。2つ目のスイッチを低コストのキャッチ・ダイオードで置き換えることにより、高電圧に対応する際にいくつかのメリットを得ることができます。また、SEPICとして再構成することが可能な柔軟性も得られます。各製品は、小型のプラスチック・パッケージを採用しています。また、プリント基板においてホット・ループの面積を小さく抑えるよう適切に設計すると共に、パワー・スイッチのエッジ・レートを適切に制御してリンギングを抑えることによって、エミッションを小さく抑えられます。その際には、SSFMやEMIフィルタといった一般的なEMI対策の手法も組み合わせるべきです。大電力を扱う昇圧コントローラにおいても、ゲート・ドライバによってスイッチング時のエッジを遅く滑らかにするよう制御することで、高いEMI性能が得られるようになります。エミッションを抑制するためには、できるだけ基板の最上層にホット・ループをレイアウトするよう特別な注意を払うべきです。もちろん、DC/DCコンバータICを慎重に選択することも重要です。アナログ・デバイセズは、EMI性能の高い昇圧コンバータを構成するための多種多様な技術/製品を提供しています。
著者について
この記事に関して
{{modalTitle}}
{{modalDescription}}
{{dropdownTitle}}
- {{defaultSelectedText}} {{#each projectNames}}
- {{name}} {{/each}} {{#if newProjectText}}
-
{{newProjectText}}
{{/if}}
{{newProjectTitle}}
{{projectNameErrorText}}