ノイズに敏感なデバイスに対して超低ノイズの電力を供給する方法
要約
RF技術や計測などの分野におけるアプリケーションでは、極めて低ノイズの電源電圧が必要とされます。本稿では、ノイズに敏感な負荷のために超低ノイズの電源を形成するための従来の設計手法と最新の高集積化手法の違いを説明します。新たな技術が、よりコンパクトな設計と使いやすさを実現します。
はじめに
RF技術アプリケーション(およびその他のアプリケーション)では、極めて低ノイズの電源電圧が必要とされます。干渉の影響を受けやすい、フェーズ・ロック・ループ(PLL)、電圧制御発振器(VCO)、高分解能A/Dコンバータ(ADC)などの回路には、低ノイズの電源が必要です。電源ラインに干渉が生じれば、アプリケーションの信号に影響を与えかねません。極めて低ノイズの電源電圧を発生するには、図1に示すようなパワー・トレインを用いるのが一般的です。
図1 高効率スイッチング・レギュレータおよび下段のリニア・レギュレータで構成される電圧コンバータ
スイッチング・レギュレータは24Vなどの高電源電圧を3.5Vなどの低電圧に変換します。この電圧を用いて、出力部で非常に低ノイズの3.3Vを発生する超低ノイズ・リニア・レギュレータに電源電圧を供給します。リニア・レギュレータ自体のノイズ・レベルは0.8μV rmsの範囲と非常に低く、また、電源電圧変動除去比(PSRR)は76dB(1MHz時)と非常に高い値になっています。このセットアップにより、スイッチング・レギュレータが発生する電圧リップルが抑制されます。図1の設計は、超低ノイズの電圧を生成するために用いられる代表的なソリューションを表しています。
最適化の可能性
多段のディスクリート設計を行うのは容易ではありません。スイッチング・レギュレータは、最適化されたPCBレイアウトで実装する必要があります。そうでないと、スイッチング・レギュレータの高速スイッチング・トランジェントが出力電圧に結合し、干渉が追加されます。これを防ぐには、スイッチング・レギュレータから十分な距離を置いてリニア・レギュレータを配置する必要があります。その結果、大きなスペースを必要とする電源設計になってしまいます。そのようなアプリケーションに対し、スイッチング・レギュレータ回路とリニア・レギュレータを集積化しようとしても、スイッチング・ノイズが最終出力電圧に結合するためにうまくいきません。しかし、この問題に対する解決策があります。
図2 最小限のスペースでノイズを最小限に抑えて電圧を発生する、高集積μModuleレギュレータ
解決策
ノイズに敏感なアプリケーションに対してスイッチング・レギュレータとリニア・レギュレータを集積化することは、適切な設計を行えば可能です。アナログ・デバイセズのμModule®ファミリの1つであるLTM8080は、スイッチング・レギュレータ・セクションと集積化リニア・レギュレータ・セクションの間に電磁シールド機能を内蔵しています。この内蔵障壁は、スイッチング・レギュレータ・セクションで発生する高速スイッチング電流に起因した電磁干渉を吸収します。それによって、ノイズがなく高精度に安定化された電源電圧が、極めてコンパクトな設計で実現されます。LTM8080は、2種類の電圧を同時に発生でき、9mm × 6.25mmのパッケージを採用しています。スイッチング・レギュレータの他、インダクタ、2個の超低ノイズ・リニア・レギュレータが内蔵されています。
図3に、様々な出力電流に対するノイズ密度を示します。LTM8080は、1μV rms(10Hz~100kHz)未満の実効値(rms)ノイズ・レベルを実現できます。これと比較して、電圧安定化を行わないリチウムイオン・バッテリの電圧の場合、代表値は2.7μV rms(10Hz~100kHz)です。したがって、図2に示す電圧コンバータは、バッテリ電圧よりも低ノイズです。
図3 様々な出力電流に対するノイズ密度
まとめ
更に、このソリューションを使うと、回路設計が極めて簡単なものになり、スイッチング・レギュレータやそれに必要なPCBレイアウトの設計に関する詳しい知識は不要になります。
μModuleレギュレータのこの巧みな設計が、集積レベルが高くサイズが極めて小さい超低ノイズ電源を可能にしています。
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