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評価用ボード

型番に"Z"が付いているものは、RoHS対応製品です。 本回路の評価には以下の評価用ボードが必要です。

  • EVAL-CN0313-SDPZ ($91.81) EMC Compliant RS-485 Transceiver Protection Circuits
在庫確認と購入

機能と利点

  • EMC 準拠 RS-485 トランシーバ・インターフェース
  • ESD、 EFT、サージ耐性試験評価済み

回路機能とその特長

図 1に示す回路は、ADM3485Eトランシーバを使用した汎用通信ポートRS-485に対して、それぞれ3つの保護レベルを実現した評価/実証済みの電磁適合性(EMC)準拠回路です。各々の回路はADM3485Eトランシーバと保護回路が正しく動作し、IEC 61000-4-2、 IEC 61000-4-4、 IEC 61000-4-5に規定されている静電気放電(ESD)、電気的ファースト・トランジェント(EFT)、サージ耐性に対する保護性能確認のための試験と特性の評価がされました。これらの回路は厳しい環境で生じるESD、 EFT、サージの各レベルに対して有効な、ADM3485Eを用いたRS-485インターフェース向けの実証済み保護回路です。

図 1. 3種類のEMC準拠ADM3485E保護回路(簡略化した回路、全ての接続や保護回路は示されてはいません)

回路説明

バス規格RS-485は、産業用アプリケーションで最も広く使用されている物理層バス規格の1つです。RS-485は複数システム間で非常に長い距離にわたって差動データ伝送を行います。RS-485のアプリケーションには、プロセス制御回路、産業オートメーション、リモート端末、ビル・オートメーション(暖房、換気、空調(HVAC)など)、セキュリティ・システム、モーター・コントロール、モーション・コントロールなどがあります。

これら実際のアプリケーションにおけるシステムでは、雷、電源変動、誘導性スイッチング、静電気放電などにより大きな過渡電圧が発生して通信ポートに損傷を受けることがあります。設計者は装置が理想条件下で動作する事だけでなく実世界の条件下でも確実に動作するかどうかを確認する必要があります。これらの回路が電気的に激しい環境でも確実に動作するには、EMC規定を満足する必要があります。

EMC問題は多くの場合、単純でも明白でもないので、製品開発サイクルの初期段階で考慮されなければなりません。適切なソリューションと保護回路設計は必要な設計工程の一部として考えるべきであり、最後に残すべきではありません。保護回路は設計の一部としてトランシーバの入/出力回路に組み込まれなければなりません。

一連のEMC耐性の条件は規格IEC 61000に規定されています。この一連の規格の中で、設計者はデータ通信線の次の3つのタイプの高電圧トランジェントを考慮する必要があります:

  • IEC 61000-4-2 静電気放電(ESD)
  • IEC 61000-4-4 電気的ファースト・トランジェント(EFT)
  • IEC 61000-4-5 サージ耐性

ESD と EFTの立ち上り時間、パルス幅、エネルギー・レベルはほぼ同じです。過度サージの立ち上がり時間とパルス幅はより長くなっています。結果として、過度サージ・エネルギーはESDやEFTのトランジェントのエネルギーより3桁から4桁大きくなる可能性があります。ESDとEFTのトランジェントはほぼ同じなので、回路保護は同じような設計にする事ができます。しかし、過度サージは高エネルギーなので、それらは別に扱う必要があります。

図1の各回路は8kV接触のESD電圧、15kV空中放電、2kVのEFT電圧に対してデータ・ポートを保護します。回路を変更すれば最大6kVまで高いレベルのサージ電圧に対して保護します。表1は各保護回路の保護レベルの一覧です。

表1. 図 1に示す3種類の保護回路の各々によって保護されるレベル

保護回路構成
ESD  EFT (kV)   Surge (kV)
 1. TVS  8 kV 接触、
15 kV 空中放電
 2  1
 2. TVS/TBU/TISP  8 kV 接触、
15 kV 空中放電
 2  4
 3. TVS/TBU/GDT  8 kV 接触、
15 kV 空中放電
 2  6

 

図 2はEVAL-CN0313-SDPZボードの写真です。ボードに3個のデバイスADM3485E(各保護回路に一個ずつ)が搭載されています。先に述べたように各々の保護回路はESDとEFTの保護とサージ保護(回路により異なるレベル)を行います。

回路、パターン・レイアウト、部品表を含むEVAL-CN0313-SDPZボードの完全なデザイン・サポート・パッケージはwww.analog.com/CN0313-DesignSupportから入手できます。


図 2. EVAL-CN0313-SDPZボード

ADM3485Eはマルチ・ポイント、半二重通信に適した3.3 V、低電力RS-485/RS-422 データ・トランシーバです。ADM3485Eの最大データレートは12 Mbpsで、バス・ピン(AとB)の同相電圧範囲は−7 V ~ +12 Vです。データ・ポート側はDIピンが送信で、ROピンが受信です。ドライバ出力とレシーバ出力は、それぞれDEピンとAREEAピンのロジックレベルを変更する事によりイネーブル又はディスエーブル(すなわちハイ・インピーダンス状態)にする事ができます。

EVAL-CN0313-SDPZ基板の電源とグラウンド(VCC と GND)はターミナル・コネクタを介して供給されます。このコネクタを介して基板上の全てのADM3485Eトランシーバに電源を供給します。

ロジック入力DEとAREEAはLK1 ~ LK6を使用して設定されます。各ADM3485Eの、LK2、 LK4、LK6はDEピンに、LK1、 LK3、LK5はAREEAピンに関連しています。各リンクにおいて、ポジションAはこれらのロジック・ピンをVCCに接続し、ポジションBはロジック・ピンをGNDに接続し、ポジションCはロジック・ピンを4端子ターミナル・コネクタに接続します。入力DIピンと出力ROピンは直接4端子ターミナル・コネクタに接続されています。

EVAL-CN0313-SDPZは又アナログ・デバイセズ社のezLINX™ボード(EZLINX-IIIDE-EBZ) やSDP(システム開発プラットフォーム (EVAL-SDP-CB1Z)との接続互換性があります。コネクタJ8はSDPやezLINXボードのUARTやGPIOインターフェースとADM3485EのロジックI/Oとを接続します。各I/Oピンの接続とジャンパーの設定を表2に示します。


表2. ezLINXとSDP I/Oの接続とジャンパー設定

ADM3485E   I/O Pin  SDP/ezLINX Connector Selection 
 TVS RO
RE
DE
DI 
UART_RX
GPIO_0
GPIO_3
UART_TX
LK7 (A)
LK1 (C)
LK2 (C)
LK8 (A)
 TVS/TBU/TISP R RO
RE
DE
DI 
UART_RX
GPIO_1
GPIO_4
UART_TX
LK7 (B)
LK3 (C)
LK4 (C)
LK8 (B)
 TVS/TBU/GDT R RO
RE
DE
DI 
UART_RX
GPIO_2
GPIO_5
UART_TX
LK7 (C)
LK5 (C)
LK6 (C)
LK8 (C)

ADM3485Eのトランシーバとレシーバは同じ差動信号バス・ピン(A と B)を共有しています。これらの信号バス・ピンを保護するために保護回路が使用されています。

図 1に示した最初の保護回路“TVS”は1個の部品(ボーンズ社のCDSOT23-SM712)を使用しています。この部品でEVAL-CN0313-SDPZでは過度電圧サプレッサ(TVS)アレイが構成されています。このアレイは双方向TVSダイオードで構成されており、RS-485システムにかかるオーバーストレスを最小限に抑えながら、フル・レンジでRS-485の信号と同相電圧変動が可能になるように最適化されています。TVSは通常動作条件下ではグラウンドに対して高インピーダンスです。過電圧が生じた時、TVSはアバランチェ・ブレークダウン・モードに入り、ピンにかかる電圧を安全な既定のレベルにクランプします。次に過度電流をADM3485Eから逸らしてグラウンドに流します。

この保護回路は最大8 kVの接触ESD、15 kV 空中放電ESD、2 kV EFT、1 kVサージに対して保護します。

CDSOT23-SM712のデータシートに記述されているように、部品はRS-485デバイス用に特別に設計されております。次の2つの保護回路は、サージに対してより高いレベルの回路保護を実現するために、このCDSOT23-SM712に加えて別の部品を追加しています。

図 1に示す二番目の回路“TVS/TBU/TISP”では、CDSOT23-SM712 TVSは二次的な保護で、主に保護の役目を担うのはTISP4240M3BJR-S(ボーンズ社)です。

TISP4240M3BJR-Sは完全に集積された サージ・プロテクタ(TISP)で、半導体サイリスタです。既定の電圧を超えた時、TISPはグラウンドに対する低インピーダンス経路になり、ほとんどの過度エネルギーがADM3485Eを迂回して流れます。

トランジェント・ブロッキング・ユニット(TBU)のTBU-CA065-200-WH(ボーンズ社)は一次保護デバイスと二次保護デバイスの間の非直線性過電流保護素子で、これらのデバイスが連携して動作するのを確実にします。TBUは過電流保護デバイスで、既定の電流になると回路がオープンになります。阻止モードでは、TBU は非常に高いインピーダンスになり過度エネルギーを阻止します。この二番目の保護回路は最大8 kVの接触ESD、15 kV 空中放電ESD、2 kV EFT、4 kVサージに対して保護します。

図 1に示す三番目の保護回路“TVS/TBU/ GDT”は2番目の保護回路に似た方法で動作します。この回路ではTISPの代わりにガス放電チューブ(GDT)が使用されます。GDTは二番目の保護回路で述べたTISPよりも高い過電圧、過電流に対して保護します。GDTは過電圧トランジェントに対して保護するためにグラウンドへの低インピーダンス経路になるガス放電プラズマ・デバイスです。選択したGDTは2038-15-SM-RPLF(ボーンズ社)です。

この保護回路は最大8 kVの接触ESD、15 kV 空中放電ESD、2 kV EFT、6 kVサージに対して保護します。

ADM3485Eの信号バス・ピンには終端抵抗120 Ωが接続されています。

回路の評価とテスト

EVAL-CN0313-SDPZボードに電源を供給するためにVCCに3.3 Vを印加します。電圧は各ADM3485E付近のVCCテスト・ポイントで確認できます。送信経路と受信経路はADM3485E回路の1つを図 3に示すように接続する事によりテストできます。信号発生器あるいはパターン・ジェネレータをDIに接続できます。ドライバの出力はA/Bテスト・ポイントでモニタでき、レシーバの出力はROテスト・ポイントでモニタできます。図 3にはジャンパー設定も示してあります。このテスト・セットアップはボード上の3つの回路のいずれにも適用できます。

図 3. 送信と受信のテスト・セットアップ

IEC 61000-4-2によればESDテストは2種類の結合方法(接触放電と空中放電)が実施されます。接触放電は放電ガンを被テスト・ポートに直接接続して置く事を意味します。空中放電の場合、放電が起こり空中をアークが発生するまで、被テスト・ポートに対して充電された放電ガンの電極を移動させます。各バス・ラインのターミナル端子コネクタに放電を行ってください。

IEC 61000-4-4 EFTテストには、バス・ラインに接続したケーブルにEFTバーストを結合するために容量結合クランプが使用されます。クランプの結合容量はケーブルの直径、ケーブルの材料、ケーブル・シーリングに依存します。

IEC 61000-4-5のサージ・テストでは過度サージをバス・ピンに印加するために結合/非結合回路(CDN)を使用します。規定に従い、これは2つのポート・テストのために2個の80Ω抵抗を使用して行う必要があります。図 4はサージ・テストのためのテスト・セットアップです。CDNをA端子とB端子に接続し、サージ発生器のコモンを4端子ターミナルコネクタのグラウンド接続に接続してください。


図 4. IEC 61000-4-5 サージCDN のADM3485Eに対するセットアップ

前述したすべての保護回路はラボでADM3485Eを使って特性評価され、外部の独立したEMCコンプライアンス・テスト・ハウスで確認されました。


ezLINX iCoupler®絶縁型インターフェース開発環境についての詳細は http://wiki.analog.com/resources/eval/ezlinxをご参照ください。

他の重要なEMC問題は http://www.analog.com/CN0268-DesignSupportをご覧ください