概要
設計リソース
評価用ボード
型番に"Z"が付いているものは、RoHS対応製品です。 本回路の評価には以下の評価用ボードが必要です。
- EVAL-CN0550-EBZ ($40.00) High Speed Isolated USB 2.0 Board
機能と利点
- 絶縁型ロー・スピード、フル・スピード、ハイ・スピードUSB 2.0
- USBインターフェース・スピードのオート・ネゴシエーション
- 絶縁型電源を使いホストから電力を供給
- 絶縁定格:最大1.75kV RMS
- 標準のUSBタイプAコネクタを搭載
マーケット & テクノロジー
使用されている製品
参考資料
-
CN0550 User Guide2023/06/23WIKI
-
CN0550: 絶縁型電源使用のロー/フル/ハイ・スピード USB 2.0 アイソレータ (Rev. 0)2023/06/23PDF1 M
回路機能とその特長
1996 年の登場以降、USB は標準的なポイント to ポイント・シリアル通信インターフェースとなり、ハンドヘルド・デバイス、試験装置および計測装置、組込み開発プラットフォームをはじめ、無数のアプリケーションに使われてきました。現在では、RS-232(シリアル)ポートとパラレル・ポートの大部分が USBに置き換えられています。
USB インターフェースでは、ホストとそのペリフェラル・デバイス間のシンプルかつ信頼性の高い接続が強調されており、複雑な部分のほとんどは USB コントローラと物理層が抽出しています。USB デバイスは自動設定式で、一般的なオペレーティング・システムがサポートしており、プラグ・アンド・プレイで使用できます。また、電源供給やホット・スワップも可能な他、標準化された低コストで挿入寿命の長いコネクタとケーブルを使用しています。
しかし、以下のような環境で USB デバイスを使用する場合は、ホストとペリフェラルの間に電気的な絶縁を追加しなければならないことがあります。絶縁条件はアプリケーションによって異なります。例えば医療用機器には、患者の安全を確保するために、5kV のサージ電圧に耐え得るデバイスが必要です。また、産業環境での絶縁に関する考慮事項には、静電放電、落雷、電源サージなどに対する感度や、電磁干渉やグラウンド・ループによる電気的ノイズへの感度も含まれます。
図 1 に示すリファレンス設計は、1.5kVACに 1 分間耐え、差動電圧 50V rms のシステムに基本的絶縁機能を提供することのできる USB 2.0 ガルバニック・アイソレータです。この USB アイソレータは 480Mbps の最大データ転送速度をサポートし、接続されたデバイスの能力に基づいて自動的に転送速度をネゴシエートします。
この回路は、フライバック・コンバータを介して絶縁型電源から USB ペリフェラルに電力を供給することもできます。一般的なアプリケーションでは USB ホストの 5V バスを入力電源として使用することができ、その場合は絶縁型電源から最大 440mAの負荷電流をペリフェラルに供給できます。

回路説明
※Rev.0 を翻訳したものです。最新版は英語資料をご覧ください。
USB デジタル・アイソレーション
CN0550 は、ADuM3165 デジタル・アイソレータを使って、ホストとペリフェラル・デバイス間にある USB データ・ラインのガルバニック絶縁を行います。ADuM3165 はロー・スピード(1.5Mbps)、フル・スピード(12Mbps)、およびハイ・スピード(480Mbps)の USB 2.0 をサポートし、3.75kV rms の絶縁電圧定格を備えています。
ADuM3165 はアナログ・デバイセズの iCoupler®技術を利用してデジタル・ラインの絶縁を行っており、ユーザが介在することなく適切なデータ転送速度を自動的にネゴシエートすることができ、外部回路も不要です。

ADuM3165 の回路を図 2 に示します。このデバイスは高集積なので、図では絶縁構造計が大幅に簡略化されています。USB コネクタからの信号を除いて、デバイスの動作に必要な唯一の外部回路は、内部フェーズ・ロック・ループ(PLL)用の 24MHzリファレンス・クロック源です。このクロック源は、XI ピンとXOピンの間に水晶発振器を接続するか、ホスト・コントローラからの24MHzクロック源を XIピンに接続してXO状態をフロート状態のままにすることによって実現できます。CN0550 では、XI ピンと XO ピンの間に、24MHz の水晶発振器と必要な負荷容量が接続されています。
ADuM3165 への電力は、VBUS1 ピンと VBUS2 ピンに+5V で供給されます。VBUS1は USB ホスト・コネクタに直接接続し、VBUS2 は絶縁型5V電源に接続します。内部低ドロップアウト(LDO)レギュレータは、内部回路に必要な+3.3V の VDD1および VDD2電源を生成します。LDO の消費電力により動作時の最大周囲温度はわずかに低下します。詳細については ADuM3165 のデータシートを参照してください。
ハイ・スピード USB が電気的条件を満たしていることを検証するために、CN0550 を使用して 2 つの信号品質テストを行いました。遠端のアイ・ダイアグラムを図 3 に、近端のアイ・ダイアグラムを図 4 に示します。


絶縁型 USB 電源
フォトカプラ不要の LT8301 マイクロパワー絶縁型フライバック・コンバータは、ペリフェラル側の 5Vバス電源を絶縁します。このデバイスは、入力電圧に応じて最大 6W の絶縁出力電力を供給できるので、ロー・パワーとハイ・パワー両方の USB 2.0デバイスに使用できます。図 5 に、CN0550 に使用する絶縁型フライバック回路構成の簡略図を示します。

CN0550 では、LT8301が、巻数比 3:1のフライバック・トランスと 40µH の 1 次側インダクタンスを使って絶縁型電源を構成しています。1 次巻線には、漏れインダクタンスによって生じる高電圧スパイクからデバイスを保護するために、ダイオード・ツェナー・スナバが接続されています。2 次側ではダイオードが整流を行い、5A の順方向電流と 30V の逆電圧に対して定格が定められています。また、出力電圧のリップルを減らすために、150µF のコンデンサが使われています。ホスト側の 5V バス電力を使用するロー・パワーUSB 2.0 デバイスには標準的な 100mAの最大負荷電流が流れますが、このコンポーネントの組み合わせが、この要求を満たす設計を可能にしています。
更にこの回路は、8V 以上の外部電源にハイ・パワーUSB 2.0 デバイスを接続した場合に流れる、500mA の最大負荷電流に対応できます。入力電圧を上げればこれ以上の負荷電流への対応も可能で、最大入力電圧 32V では 1.3A まで供給できます。これらのコンポーネントを選択する際の一般的な設計手順については、LT8301 のデータシートを参照してください。
ADuM3165 の絶縁電圧定格は 3.75kV rms で、LT8301 の最大入力電圧は 42V ですが、これらのパラメータは、このアプリケーションに使用するトランスの仕様によって制限されます。CN0550 に使用するフライバック・トランスは 1.5kV rms の絶縁でテストされますが、設計は IEC61558-2-16 に定める動作電圧50V rms における 1 次回路の基本絶縁のみに準拠しています。このトランスは、ほとんどの実験室用試験および計測アプリケーションの絶縁に適しています。
LT8301 の出力電圧は、SW ピンと RFB ピンの間に接続された外付けの帰還抵抗によって設定され、その値は式 1 を使って計算します。
ここで、
RFBは必要な帰還抵抗(単位:Ω)、
NPSはトランスの 1 次巻線と 2 次巻線の実効巻数比、
VOUTは出力電圧、
VFは出力ダイオードの順方向電圧です。
必要出力電圧が 5V、巻線比が 3:1、出力ダイオードの順方向電圧が 0.3V の場合は、式 1 から RFBの値が 159kΩ となるので、これに最も近い標準 1%抵抗値である 158kΩ のものを使用できます。しかし実際には、LT8301 固有のサンプリング方式によって出力電圧に誤差が生じる可能性があります。この場合は式 2 を使い、実際の出力電圧に基づいて帰還抵抗を調整することができます。
ここで、
RFB(FINAL)は調整後の帰還抵抗(単位:Ω)、
VOUT(MEAS)は実測出力電圧(単位:V)です。
目標 VOUTが 5.0V、実測 VOUTが 5.26V、RFBの初期値が 158kΩ の場合は、式 2 から抵抗値は 150.19kΩ となります。CN0550 には150kΩ ±1%の帰還抵抗が使われています。これらの値を使用して得られる負荷レギュレーションを図 6 に示します。

バリエーション回路
アプリケーションによっては、複数のデバイスを単一のタイミング・ソースに同期させなければならないことがあります。このような場合は、外部水晶発振器を使用するのではなく、システム・マイクロプロセッサから高精度の 24MHz クロック信号をADuM3165 の外部クロック入力へ直接供給します。システム・マイクロプロセッサとクロック信号がホスト側ではなくペリフェラル側にある場合は、代わりに ADuM3166 を使用することができます。このデバイスの仕様とピン配列は ADuM3165 と同じで、XI ピンと XO ピンの配置だけが異なっています。
ADuM3165の VBUS1および VBUS2の動作電圧範囲は 3.0V~5.5Vで、VDD1と VDD2の動作範囲である3.0V~3.6Vとオーバーラップしています。どちらかの側で 3.0V~3.6V の電源を使用できる場合は、VDDxピンを対応するVBUSxに接続して直接電力を供給できます。これは、デバイスの全体的な消費電力を減らして動作温度範囲を広げることにもなります。詳細については ADuM3165 のデータシートを参照してください。
CN0550 の絶縁電圧定格はフライバック・コンバータ回路に使用するトランスによって制限されますが、ADuM3165 の絶縁定格電圧である 3.75kV rms をフルに使用する必要のあるアプリケーションには、別の絶縁型電源を使用することができます。
より高い絶縁定格が必要なアプリケーションの場合は、ADuM4165または ADuM4166 を代替の USB デジタル・アイソレータとして使用できます。ADuM3165 と ADuM3166 の場合と同様、これらのデバイスの仕様は共通しており、ピン配列も XI ピンと XO ピンを除いて同じです。ADuM4165 と ADuM4166 はサージ絶縁電圧定格が 8kVPK、誘電体絶縁電圧定格が 5kV rms に強化されていますが、サイズは ADuM3165 と ADuM3166 より大きくなっています。
代替電源ソリューションとしては、5kV rms の絶縁定格を備えたADuM6020 絶縁型 DC/DC コンバータなどが候補として挙げられますが、供給できる電流が最大 100mA に止まります。
CN0419 回路ノートは、ハイ・スピード USB 2.0 を必要としないアプリケーション向けの、より小型で低消費電力のリファレンス設計です。
回路の評価とテスト
このセクションでは、CN0550 回路評価用ボードのセットアップと評価手順について説明します。詳細については、EVAL-CN0550-EBZのユーザ・ガイドを参照してください。
必要な装置
- EVAL-CN0550-EBZ
- ホスト PC(Windows/Linux/Mac)
- ハイ・スピード USB ペリフェラル・デバイス(例えば USBフラッシュ・ドライブ)
セットアップとテスト
EVAL-CN0550-EBZ の USB 2.0 機能をテストするには、以下の手順に従ってください。
- 図 7 に示すように、EVAL-CN0550-EBZ の USB ポートにペリフェラル・デバイスを接続します。

- ホスト PC の空いている USB ポートに EVAL-CN0550-EBZを接続します。評価用ボードの LED が点灯して、ホスト側とペリフェラル側の両方に 5V バスが存在することを示します。
- EVAL-CN0550-EBZ をホスト PC に接続すると、接続したペリフェラルが正常に動作するはずです。
- USB デバイス・ツリー・ビューア(Windows)、lsusb コマンド(Linux)、またはシステム・プロファイラ(macOS)を使い、接続したペリフェラルの速度を確認します。図 8は、ハイ・スピード USB デバイスのデバイス・ツリーの例です。
