ADC: アナログ-デジタル・コンバータ
ADCとは
意味
定義
アナログ・デジタル・コンバータ(ADCあるいはA/Dコンバータとも呼ばれる)は、実際の信号(温度、圧力、加速度、速度など)を測定して、それをデジタル形式の信号に変換する電子回路である。
ADCの動作
ADCは、アナログ入力電圧のサンプル(サンプル&ホールド回路を使って生成)を既知のリファレンス電圧と比較して、そのアナログ入力をデジタル形式にして出力する。ADCの出力はデジタル・バイナリ・コードである。
その性質上、ADCには量子化誤差が生じる。量子化誤差は、分かりやすく言うと、失われた情報のことを指す。この誤差が発生するのは、連続的なアナログ信号における電圧値の数が無限であるのに対し、ADCのデジタル・コードの数は有限であるためである。したがって、ADCがより多くのデジタル・コードを生成できれば分解能は向上し、量子化誤差として失われる情報の量も少なくなる。
ナイキストの原理(ナイキスト-シャノンのサンプリング理論から導かれる)によれば、A/D変換で信号を正確に再現するには、変換するアナログ信号の最大帯域幅の少なくとも2倍のレートでサンプリングをしなければならないとされている。信号の最大帯域幅(サンプリング・レートの半分)は、一般にナイキスト周波数(またはシャノンのサンプリング周波数)と呼ばれる。実際には、サンプリング・レートはこの周波数より大きくする必要がある(オリジナル信号の再生に使用するフィルタが完璧なものではないため)。一例として、標準的なオーディオCDの帯域幅は、理論的な最大値である22.05kHz(44.1kHzのサンプル・レートに基づく)をわずかに下回っている。
シングル・チャンネルADC
シングル・チャンネルADCは、1つのADCあたり1つのチャンネルでA/D変換を行う。マルチチャンネル・システムでは、マルチプレクシングまたは同時サンプリングを行うことによって変換を実行できる。
マルチプレクスADC
マルチプレクスADCは、複数の入力チャンネルを順番に変換することにより、1つのADCでマルチチャンネル・システムを構成することを可能にする。
同時サンプリングADC
同時サンプリングADCは、1つのパッケージ内に複数のADCを備えており、複数の信号を同時に変換して位相情報を保持することができる。
同時サンプリングという言葉は、以前は複数のADCを使用して各チャンネルを並行で処理するという意味で使われていたが、ここで言う同時サンプリングADCは、複数の入力を同時にサンプリングしてチャンネルごとに変換を行う。
内蔵ADC/特定用途用ADC
特定用途用ADCは、通信、エネルギー、ヘルスケア、計測器および測定、モータおよび電力制御、産業用オートメーション、航空宇宙および防衛など、そのアプリケーション専用のソリューションを提供する。
オーディオADC
オーディオADCは、オートモーティブ、ホーム・シアター、コンスーマ・オーディオ、PCなどのアプリケーション専用に設計されており、オーディオ・デジタル・シグナル・プロセッサ(DSP)と容易にインターフェースできる。
絶縁型ADC
絶縁型ADCは絶縁障壁越しにA/D変換を行い、障壁両側の信号が互いに干渉しないようにする。絶縁型ADCは、絶縁障壁のフィールド側入力電圧を連続的にデジタル化して、そのデータを障壁越しにデバイスのロジック側へ伝送する。
ディスプレイ指向ADC
ディスプレイ指向ADCは、7セグメント・ディスプレイで使用するために、データ・コンバータと内蔵LCDドライバ、電圧リファレンス、発振器、およびバイアス生成チャージ・ポンプを組み合わせたものである。