ビデオディスプレイ信号およびMAX9406 DP-HDMI/DVIレベルシフタ:パートI
要約
このアプリケーションノートは、2回シリーズの記事のパートIです。パートIでは、現行のTVおよびPCディスプレイケーブルインタフェースについて考察し、RGBHV、HDMI™、およびVGAの各特長を取り上げます。DVI™の詳細な背景と最適なディジタルディスプレイドライバとしてのMAX9406の使用方法については、このアプリケーションノートのパートII (アプリケーションノート4313)を参照してください。
はじめに
TVおよびPCディスプレイはいずれも、ディジタルケーブルインタフェース搭載のフラットスクリーンに移行しつつあります。フラットスクリーンTVは、HDMI (高画質マルチメディアインタフェース)ケーブルを使って、PCまたは高画質TV (HDTV)セットトップボックスに接続することができます。PCは、VGAまたはDVI (ディジタルビデオインタフェース)ケーブルによって、外部モニタに接続することができます。DVIは、VGAインタフェースのディジタル等価と見なすことができます。ここで留意すべき点は、HDMIのビデオ部分がDVIと同じであることです。
これは、アプリケーションノートのパートIです。このアプリケーションノートでは、現行のTVおよびPCディスプレイケーブルインタフェースについて考察し、RGBHV、HDMI、およびVGAの各特長について取り上げます。DVIの詳細な背景と最適なディジタルディスプレイとしてのMAX9406の使用方法については、このアプリケーションノートのパートIIであるアプリケーションノート4313 「Video Display Signals and the MAX9406 DP-HDMI/DVI Level Shifter—Part II」を参照してください。
RGBHV
RGBHVフォーマットは、高画質ディスプレイ用の高性能アナログビデオディスプレイインタフェースです。RGBHVビデオ信号は、5つの個別ペアケーブル(R、G、B、H、およびV)上を伝送されます。これらの各ケーブルは、BNCまたはRCAジャックによって終端されます。ケーブルR、G、およびBは、それぞれ赤、緑、および青信号を伝送します。ケーブルHは水平同期パルス、Vは垂直同期パルスを伝送します。
これらのRGBHVケーブルの一端をVGAプラグで終端することもできます。図1は、RGBHVビデオケーブルの標準カラーコードを示しています。Rは赤、Gは緑、Bは青、Hはグレー、およびVは黒にコーディングされています。終端インピーダンスはすべて75Ωです。
図1. コンポーネントビデオケーブルのカラーコード。
RGBHVは、画像品質をほとんど劣化させずにHDTVプログラムを伝送することができる最新型のアナログビデオ信号フォーマットです。図2は、RGBHVと他のアナログビデオ信号フォーマット間の関係を示しています。
図2. 各種ビデオ信号フォーマット間の関係。
図2の矢印は、このテクノロジの進化の方向を示しています。実際には、各種アナログビデオ信号はすべて、基本的な赤、緑、青、水平同期、および垂直同期の各コンポーネントを使用して作成されます。Y/Cセパレータ機能ブロックは、コンポジット信号を輝度信号と色信号に完全分離する概念です。この組合せは単純ですが、完全分離は実際には実現するのが困難です。カラーバーストからのキャリア回復は可能で、復調処理によって色信号のIとQコンポーネントを回復することができますが、IおよびQは一部の再組合せ前のPrおよびPbと等しくありません。また、コンポジット信号の同期パルスは、水平および垂直コンポーネントの単なる追加ではなく、垂直同期パルスの前後にイコライズ前/後パルスが追加され、水平同期回復の位相ロックループ(PLL)の連続動作を可能にします。
HDTVの導入によって、ビデオ情報はRF (無線周波数)キャリアからの復調後にディジタル領域で処理されます。ただし、フラットスクリーンディスプレイはディジタルネイティブです。ディジタルビデオ信号ケーブルを使用すると、HDTV側のディジタル-アナログ変換(DAC)とフラットスクリーンディスプレイ側のアナログ-ディジタル変換(ADC)の余分な手順を回避することができると同時に、変換処理によって生じるおそれがある劣化を解消します。
HDMI
HDMIは、4つの低電圧差動信号(LVDS)ペアで構成されます。赤、緑、および青の信号はそれぞれ、チャネル2~0 (LVDSペア)によって伝送されます。1つの専用のクロック(チャネル0~2上のデータビットに同期化) LVDSペアが、HDTVとフラットスクリーン間の高信頼の送信を提供するために使用されます。各カラーピクセルの振幅は、ADC機能によって8ビットの分解能にディジタル化されます。このカラー情報は、帯域幅の最小化とDCバランスのために、いわゆる遷移最小化差動信号(TMDS®)エンコーダによって、10ビットの分解能に拡張されます。エンコードされたカラービットはシリアル化され、LVDSドライバ回路に送られます。図3を参照してください。
図3. RGBHV-HDMI変換。
各LVDSチャネルのデータレートは高く設定することができます。60Hzのリフレッシュレートを持つ1920 × 1080のHDTVスクリーン分解能の場合、ピクセルレートは124.416MHzです。各ピクセルレートは、130MHzまたは143MHzで、同期化およびブランキングオーバヘッドは5%または15%です。ピクセルカラー当り10ビットでは、各LVDSチャネルのデータレートの範囲は、希望するオーバヘッド量に応じて、1.3Gbps~1.43Gbpsです。フラットスクリーンディスプレイの場合は、電子ビームを揺り戻すブランキングは不要です。そのため、同期化タイミングを正しく回復することができる限り、オーバヘッドは通常小さくなります。
アナログビデオ信号のタイミングシーケンスは、ディジタルビデオ信号フォーマットで正確に守られます。HDMIフォーマットでは、ピクセルは各ライン間の水平同期コードによって左から右へ送信されます。ラインは各スクリーン間の垂直同期コードによって上から下へ送信されます。各ライン間と各スクリーン間のアナログビデオ信号のブランキングに対応する時間の間、チャネル0で水平および垂直同期パルスがエンコードされます。4つの10ビットコードワードの場合、1101010100、0010101011、0101010100、および1010101011はそれぞれ、(H = 0、V = 0)、(H = 1、V = 0)、(H = 0、V = 1)、および(H = 1、V = 1)を表します。これらのコードを使用し、ピクセルクロックの精度によって時間領域で水平および垂直同期パルスを表すことができます。
同期パルスの開始点のみが最も重要であるため、アナログフォーマットでの定義のように、その全継続時間のこれらのパルスをコード化することは不要です。HDMIフォーマットでは、同期パルスの開始の定義後のブランキング時間の部分が、オーディオ信号を送信するために専用されます。アナログフォーマットのブランキング期間に対応する期間は、同期化の制御期間とオーディオ情報ビットを送信するためのデータアイランド期間に分割されます。
図4は、アナログビデオフォーマットで定義されたように、水平ブランク期間内の同期およびオーディオパケットビットのタイミングを示しています。水平同期ビットは、ビデオ情報ビットのすぐ後にチャネル0上で伝送されます。この同期情報専用期間は、138ピクセルの標準ブランキング期間で、62ピクセルクロック期間持続することができます。その後、64ピクセルがオーディオパケットの伝送に専用されます。オーディオパケットのヘッダは、同期情報とともに、チャネル0上を伝送され、オーディオパケットビットはチャネル1および2上を伝送されます。各チャネルのデータアイランド期間の間、4つの情報ビットの各グループはTERC4 (TMDS Error Reduction Coding)を使用し、10ビットにコード化されます。同じ期間の間、2つのオーディオヘッダビットと2つの水平同期ビットが、チャネル0のTERC4エンコーダへの入力として組み合わせられます。ブランキング期間は、少数の水平同期ピクセル(12)で終わります。
図4. HDMIビデオデータ、制御、およびデータアイランド期間。
60Hzのスクリーンリフレッシュレートでは、HDTV信号の場合、スクリーン当り1080ライン、ライン当り64ピクセル、およびピクセル当り8ビットとなり、次式を使用して最大オーディオ情報ビットレートを計算することができます。
RAudio = 60 × 1080 × 64 × 8 = 33.1776Mbps
このデータレートは、マルチチャネル高品質オーディオ信号を伝送するのに十分高いものです。
また、各ピクセルの情報は、HDMIでは1色8ビット以上によって表すこともできます。これらの高カラー解像度フォーマットの場合、ピクセルカラー当りのビット数は複数の8ビット8B10Bエンコードユニットにわたって広がります。たとえば、1色10ビットを持つことは、4ピクセルのデータビットが5つの8B10Bエンコードユニットにわたって広がるため、クロックレートが20%増加します。同様に、1色12ビットは2ピクセルを3つの8B10Bエンコーディングユニットにわたって広げ、クロックレートが50%増加します。フラットパネルディスプレイの高カラー解像度の能力は、そのEDID (拡張ディスプレイ識別データ)の内容によって示されます。
図5と表1は、HDMIタイプAプラグのピン割当てを示しています。SCLおよびSDAは、I²Cプロトコルを使用するHDTVセットのフラットパネルディスプレイ情報を取得するために使用されます。フラットスクリーンディスプレイ情報(EDID)はすべて、標準128バイトのEEPROMに0×A0のI²Cデバイスアドレスで格納されます。ホットプラグ検出ピンは、HDTVセットがフラットスクリーンディスプレイの存在を検出するのに役立ちます。オン状態のフラットパネルディスプレイは、ホットプラグピンを2.4V~5.3Vに設定します。CECは、Consumer Electronics Control (HDMIの規格)を示し、ユーザ制御をすべての相互接続された電子デバイスに渡すために使用されます。
図5. HDMIタイプAプラグピン番号。
Pin Number | Assignment |
1 | Data2+ |
2 | Data2 shield |
3 | Data2- |
4 | Data1+ |
5 | Data1 shield |
6 | Data1- |
7 | Data0+ |
8 | Data0 shield |
9 | Data0- |
10 | Clock+ |
11 | Clock shield |
12 | Clock- |
13 | CEC |
14 | Not connected |
15 | SCL |
16 | SDA |
17 | Ground |
18 | +5V |
19 | Hot-plug detect |
HDMI信号は、DVIの信号とダイレクトな互換性があります(DVIに関する詳細は、この連載アプリケーションノートのパートIIを参照)。図6は、HDMI-DVI変換ケーブルを示しています。DVI出力を持つPCは、このような変換ケーブルを使用し、HDMI入力を持つフラットパネルディスプレイに接続することができます。
図6. HDMI-DVI変換ケーブル。
VGA
図7は、VGAプラグインカードのファンクションブロック図を示しています。CPUにピクセル書込みタスク(動画など)の負担をかけないために、専用のGPU (Graphics Processing Unit)が利用されます。CPUは、一部または全スクリーンの特定のディスプレイの属性のみを送信することができ、GPUが、適切なピクセル内容をビデオRAMに入れます。ディスプレイタイミング発生機能は、GPUの一部として設定することができます。モニタの能力の自動検出をイネーブルするために、各VGAプラグ上で、DDC (ディスプレイデータチャネル)というI²Cチャネルを使用することができます。モニタのEDID情報(128バイト、アドレス0×A0)は通常、EEPROMに格納されます。
図7. VGAプラグインカードの機能。
VGAケーブルは、15ピンプラグで終端します。図8と表2は、VGA信号のピン割当てを示しています。赤、緑、青、水平同期、および垂直同期ピンの信号レベルは、0.7VP-Pです。これらのビデオ信号ピンの終端インピーダンスは75Ωです。この同じ15ピンVGAプラグは、スクリーンピクセル分解能がより高いSVGA (800 × 600)、XGA (1024 × 768)、SXGA (1280 × 1024)、UXGA (1600 × 1200)、WXGA (1366 × 768)、WSXGA (1680 × 1050)、およびWUXGA (1920 × 1200)信号フォーマットなどの拡張バージョンにも使用されています。
図8. VGAプラグピン配置。
Pin Number | Assignment |
1 | Red |
2 | Green |
3 | Blue |
4 | |
5 | Ground |
6 | Ground (red) |
7 | Ground (green) |
8 | Ground (blue) |
9 | +5V |
10 | Ground (shield) |
11 | |
12 | SDA |
13 | H |
14 | V |
15 | SCL |
結論
振り返って、我々は、コンポジットから、Sビデオ、コンポーネント、RGBHV、および最終的に高画質RGBHV信号のディジタルバージョンであるHDMIまでのTVディスプレイ信号の進化を見てきました。TVディスプレイ信号は、段階を追って分解能を向上させながら、アナログからディジタルに進化してきました。依然として人気高いPC VGAモニタディスプレイ信号はアナログフォーマットです。VGAは、初期のCGA (カラーグラフィックアダプタ)およびEGA (拡張グラフィックアダプタ)フォーマットから進化しました。どちらも、実質的にはディジタルフォーマットですが、帯域幅効率の良いビットエンコーディング機構がありません。DACを使用しないと、VGAの分解能にはケーブルプラグ上に多すぎるピンが必要となります。VGAのディジタルバージョン(このアプリケーションオートのパートIIで紹介予定)は、DACを帯域幅効率の良いビットエンコーダに置き換えたDVIです。