可変抵抗器と温度インデックス付きルックアップテーブル(LUT)でレギュレータ出力を補償

要約

このアプリケーションノートは、統合され、設定可能な、温度インデックス付きルックアップテーブル(LUT)により制御される可変抵抗器がレギュレータの温度ドリフトをオフセットするために用いられる方法について示します。このアプリケーションでは、可変抵抗器はLUTに基づいて2℃毎に値が変化します。したがって可変抵抗器は電圧レギュレータ出力のどのような温度変化(-40℃~+85℃)も効果的に無効にして重要なシステムパラメータを改善します。デュアル可変抵抗器のDS1859をデバイス例として用います。

同様の記事が「EDN」の2009年7月9日号に掲載されています。

はじめに

レギュレータは連続して安定した電圧を下流素子へ供給します。いくつかのアプリケーションでは供給電圧スウィングに比較的大きな耐性があります。他のアプリケーションは電圧変動を決して許しません。これらの精密な回路は一定した電圧調節を必要とします。

このアーティクルは、標準的な構成の電圧レギュレータから生じる結果と、デュアル、温度制御抵抗器のDS1859を同じ電圧レギュレータと共に用いた場合の結果を比較します。DS1859は温度を一方の可変抵抗器と温度制御ルックアップテーブル(LUT)で補います。DS1859はこのように温度インデックス付きLUTがどのように重要なシステムパラメータを改善することができるかについて明確に説明しています。デュアル温度制御NV可変抵抗器のDS1847などより簡単なデバイスにも温度インデックス付きLUTが備わっており、同様に動作します。さらにまた、DS1859とDS1847はマイクロコントローラの必要なくク閉ループ制御を提供します。

補償されない電圧レギュレーション

調整エレメント、フィードバック抵抗デバイダ、キャパシタから成る一般的なレギュレータ回路はトランジェントまたはスイッチングロードコンディションに対してフィルタリングやロードレギュレーションを与えます。フィードバック抵抗器のネットワークは2つの抵抗器の比率に基づいてレギュレータの出力電圧をセットします。このアーティクルで、動作範囲内で3.3Vにプリセットまたはユーザー調節可能なあらゆる出力に調整することができるレギュレータMAX604を選びました。MAX604は、分圧された電圧をそのSET入力に供給することにより出力電圧を決定するようにデバイダの電圧を用います。多くのレギュレータ回路と同様に温度によるわずかな出力電圧変動があります。MAX604ではこの変動は公称出力電圧の97.6%~101.5%の範囲にわたります。図1に示される回路から得られたデータがこれを実証します。-45℃では出力は公称電圧値の98%、+85℃では出力は公称値の101%です。これらはかなりまともな数字です。しかし、これらの値をより一層改善するために何ができるか調べましょう。

図1. 調節可能な出力構成でのMAX604
図1. 調節可能な出力構成でのMAX604

温度インデックス付きLUTを用いた補償

図2は図1のR2と並列にディジタル抵抗を置くことにより電圧レギュレータ回路に組み込まれたDS1859を示します。DS1859のディジタル抵抗は内部の不揮発性メモリにある温度インデックス付きLUTによって制御されます。異なる抵抗値を2℃のウィンドウ毎にプログラムすることができます。この例では、DS1859の50kΩバージョンを選択しました。

図2. MAX604のための温度補償回路
図2. MAX604のための温度補償回路

これらのLUTはユーザーが望むいかなる抵抗値対温度プロファイルでも実現できるようプログラムすることができます。この例では、与えられたレギュレータの標準的温度曲線を平らにすることを目標とします。その結果、DS1859のLUTはディジタル抵抗が温度に対して正の勾配を持つようにプログラムされました。抵抗器には、256の設定可能な抵抗値設定(0~255 10進)があります。各ステップはそれぞれ192Ωにほぼ等しくなります。ディジタル抵抗の初期値は10進で152でした。-40℃のときの値は10進で143、そして+85℃では10進で158に設定されました。ディジタル抵抗の値は2℃毎に変化し、周囲温度が4または6℃毎にワンステップ増加するようにプログラムされました。

温度に対して安定化された特性の結果では、精度が大幅に向上しています。図3の中のデータが示すように、-45~+85℃の温度範囲で±2mVだけの変化に収められました。

図3. データプロットで非補償結果対補償結果を比較
図3. データプロットで非補償結果対補償結果を比較

結論

温度インデックス付きLUTは温度に対するシステム特性を改善するために簡単に使うことができます。ディジタルレジスタが不揮発性メモリに保存される個々の、独立したLUTによって制御されるので、各レジスタはユーザーのアプリケーションに合わせることができます。2つのレジスタの柔軟性のほかに、DS1859は外部電圧をモニタリングするために3つのADC入力も特長とします。

著者

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Jason Andrews