DN-445: インダクタを含む全回路を表面実装パッケージに一体化したµModule LEDドライバ

はじめに

LEDは低コストの表示灯のような注目されない分野に一時追いやられていましたが、照明の分野で再びスポットライトを浴びています。LED照明は、自動車のヘッドライトからUSB駆動のラバランプまで、今や至るところで使われています。自動車のヘッドライトはLEDの明らかな長所(確固とした高品質光出力、鋼鉄のような堅牢さ、本来的な高い効率)を活かしたアプリケーションのよい例であり、USBラバランプはLEDでしか実現できないアプリケーションのよい例です。これらの明らかな長所にもかかわらず、安定化された電圧と電流が必要とされるため、電球とは異なり、LEDはドライバ回路が複雑になりますが、新しい製品がそのギャップを埋めつつあります。たとえば、LTM®8040 µModuleLEDドライバはドライバ回路全体を単一のパッケージに一体化していますので、設計者は製品の売れ行きに決定的に重要な照明のデザインの細部に時間と労力を集中することができます。

優れたLEDドライバ

LTM8040は完全な降圧DC/DCスイッチング・コンバータ・システムで、最大1AでLEDストリングをドライブすることができます。入力電圧範囲が4V~36Vなので、2セル・リチウムイオン・バッテリ・パック、整流された12VAC、産業用24Vなど広い範囲の電源に適しています。LTM8040はアナログ調光とPWM調光の両方を備えており、400:1の調光範囲が可能です。14Vの出力電圧クランプが内蔵されており、LEDストリングが万一オープンしても損傷を防ぎます。LTM8040のスイッチング周波数は既定で500kHzですが、RTピンからGNDに抵抗を使って2MHzまでの周波数に設定可能です。

使いやすい

LTM8040は高度に集積化されているので、外部部品が最少に抑えられ、基板のレイアウトが簡単です。図1に示されているように、最大1AまでLEDストリングをドライブするのに必要なのは、LTM8040と入力のデカップリング・コンデンサだけです。これらの機能全てが内蔵されていても、LTM8040自体は小さく、わずか15mm×9mm×2.82mmです。

Driving an LED String with the LTM8040 Is Simple—Just Add the Input Capacitor and Connect the LED String 図1. LTM8040でLEDストリングをドライブするのは簡単ー入力コンデンサを追加してLEDストリングを接続するだけ

図1. LTM8040でLEDストリングをドライブするのは簡単ー入力コンデンサを追加してLEDストリングを接続するだけ

豊富な機能セット

LTM8040は精密なLED電流振幅制御のためのADJピンを備えています。ADJピンは0V~1.25Vのフルスケール入力電圧範囲を受け入れ、出力LED電流を0A~1Aにリニアに調整します。ADJ電圧に対する出力LED電流のレシオメトリックな応答を図2に示します。ADJピンは内部で5.11k精密抵抗を介して内部1.25Vリファレンスにプルアップされていますので、図3に示されているように、ADJからグランドに1個の抵抗を接続して出力LED電流を調整することもできます。

Drive a 0V to 1.25V Voltage into the ADJ Pin to Control the LED Current Amplitude 図2. 0V~1.25Vの電圧をADJピンに与えてLED電流振幅を制御

図2. 0V~1.25Vの電圧をADJピンに与えてLED電流振幅を制御

Control the LED Current with a Single Resistor from ADJ to Ground 図3. ADJからグランドに接続した1個の抵抗でLED電流を制御

図3. ADJからグランドに接続した1個の抵抗でLED電流を制御

PWM制御ピンは高い調光比を可能にします。図4に示されているように、LEDストリングに直列に外部MOSFETを使うと、LTM8040は400:1を超える調光比を実現することができます。図5に示されているように、わずか10Hzの低い周波数でもPWM LED電流にはほとんど歪みがありません。LTM8040の能力を実証するため10Hzの性能が示されていますが、この周波数は人の目で明滅が十分認められる範囲なので、実際のパルス幅変調には低すぎます。

The LTM8040 Can PWM its LED String with an External MOSFET 図4. LTM8040は外部MOSFETを使ってLEDストリングをPWM変調可能

図4. LTM8040は外部MOSFETを使ってLEDストリングをPWM変調可能

The LTM8040 Can PWM LED Current with Minimal Distortion, Even at Frequencies as Low as 10Hz 図5. LTM8040はわずか10Hzの周波数でも最小の歪みでLED電流をPWM変調可能

図5. LTM8040はわずか10Hzの周波数でも最小の歪みでLED電流をPWM変調可能

LTM8040は低消費電力のシャットダウン状態を備えています。SHDNピンがアクティブ“L”のとき、入力消費電流は1µA以下です。

Only 9mm × 15mm × 4.32mm, the LTM8040 LED Driver is a Complete System in an LGA Package 図6.わずか9mm×15mm×2.82mmのLGAパッケージに収まった完全なLTM8040 LEDドライバ・システム

図6.わずか9mm×15mm×2.82mmのLGAパッケージに収まった完全なLTM8040 LEDドライバ・システム

まとめ

LTM8040 μModule LEDドライバはLEDのドライブを容易にします。高度に集積化されており、オープンLED保護、アナログ調光、PWM調光など豊富な機能セットを備えているので、設計に要する時間と基板スペースを大幅に削減します。

著者

David Ng

David Ng

カリフォルニアのアナログ・デバイセズで電源システム・マネージャを務める。産業、航空宇宙、およびヘルスケア・アプリケーション向けの高性能ADC、DAC、トランシーバー、アンプ、その他のシグナル・チェーン・デバイス用電源ソリューションの開発を管理。LTM8000 µModule®製品ラインを開発し、収益性の高い優秀な事業部門に育成。

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