DN-465: スタンバイ消費電流がわずか8.5μAの超低消費電力昇圧コンバータ
はじめに
産業用リモート・モニタ・システムやキープアライブ回路は、大半の時間をスタンバイ・モードで過ごします。また、これらのシステムの多くはバッテリ電力に依存するので、スタンバイ状態の電源の効率がバッテリ寿命を最大化するのに非常に重要です。LT®8410/-1高効率昇圧コンバータはこれらのシステムに最適で、スタンバイ・モードでは8.5μAの消費電流しか必要としません。デバイスは非常に大きな値の(12.4M/0.4M)出力帰還抵抗を内蔵しているので、無負荷で出力がレギュレーション状態のとき入力電流が大幅に減少します。他の特長には、内蔵40Vスイッチとショットキー・ダイオード、電流制限付き出力切断機能、内蔵ソフトスタート、過電圧保護および広い入力範囲が含まれ、全てが小型8ピンの2mm×2mm DFNパッケージに収められています。
応用例
2.5V~16Vの入力ソースから16V出力を発生するLT8410昇圧コンバータの詳細を図1に示します。LT8410/-1はピーク・インダクタ電流とスイッチのオフ時間の両方を変えることによって電力供給を制御します。この制御方式により、広い負荷範囲にわたって低出力電圧リップルと高効率を達成します。図1の回路の効率と出力ピーク・トゥ・ピーク・リップルを図2と図3に示します。回路の出力コンデンサは小さいが(0.1μF)、出力リップル電圧は10mV以下です。
図1.2.5V~16Vから16Vへの昇圧コンバータ
図2.図1のコンバータの効率と負荷電流
図3.図1の3.6Vコンバータの出力ピーク-ピーク間リップルと負荷電流
VREFピンに外部コンデンサを接続してソフトスタート機能を実装します。ソフトスタートが不要ならば、コンデンサを取り去ることができます。出力電圧はVREFピンからグランドに接続した抵抗分割器によって設定します。図1に示されているように、抵抗分割器のセンタータップはFBPピンに接続します。FBPピンは外部リファレンスで直接バイアスすることもできます。
LT8410/-1のSHDNピンは、オン/オフ・スイッチとして、またはVCCからグランドに接続した簡単な抵抗分割器を介した低電圧ロックアウトとして機能することができます。
出力切断機能付き超低消費電流昇圧コンバータ
LT8410/-1はスタンバイ・モードの消費電流が少なく、内蔵帰還抵抗の値が大きいので、約30μAの平均入力電流で、3.6V入力から無負荷の16V出力を安定化することができます。無負荷でレギュレーション状態の標準的消費電流と入力電流を図4、図5および図6に示します。
図4.消費電流と温度(スイッチング停止時)
図5.消費電流とVCC電圧(スイッチング停止時)
図6.無負荷でレギュレーション状態の平均入力電流
デバイスはシャットダウン時に出力負荷を入力から遮断する出力切断用PMOSも内蔵しています。PMOSを流れる最大電流はデバイス内部の回路によって制限されるので、デバイスは出力の短絡に耐えることができます。
高インピーダンスのバッテリに適応
コイン型電池など、内部インピーダンスの高い電源は電圧計では正常な出力を示していても、重い電流需要では電圧が低落することがあります。このため、高電流DC/DCコンバータには適合しなくなります。LT8410/-1はスイッチ電流制限が非常に低いので(LT8410では25mA、LT8410-1では8mA)、突入電流の問題を生じることなく、高インピーダンスのソースで非常に効率よく動作することができます。この機能はバッテリの寿命を保つのにも役立ちます。
まとめ
LT8410/-1は低いスタンバイ消費電流や低い入力電流を必要とするアプリケーションに適しており、ソース・インピーダンスの高い電源に特に適しています。超低消費電流と大きな値の内蔵帰還抵抗により、平均入力電流が非常に低く保たれ、バッテリの動作時間が大幅に延びます。LT8410/-1は性能や使いやすさを犠牲にすることなく多くの機能が組み込まれており、小型の8ピン2mm × 2mmパッケージで供給されます。