DS1870ルックアップテーブルの構造
要約
このアプリケーションノートでは、DS1870 LDMOS RFパワーアンプバイアスコントローラの制御経路(入力から出力まで)について説明します。また、内部キャリブレーションについても説明します。
はじめに
DS1870は、RFパワーアンプにバイアスをかけるために使用します。このアプリケーションノートでは、例として2次元のルックアップテーブルが動作する仕組みを示します。
入力から出力への経路
図1は、入力検出から出力ポテンショメータのワイパ位置の設定までの経路を示しています。
図1.
入力はすべてシングルエンドであり、グランドを基準としています。この例で特に重要な2つの信号は、ID1とオンチップの温度センサです。これらのアナログ信号は多重化された後、プログラマブル利得ステージを経由してA/Dのアナログ側に供給されます。いったんA/Dによってディジタル化されると、オフセット補正がA/Dのディジタル側に適用されます。利得とオフセット補正(スケーリング)はどちらもプログラマブルであり、各信号には、後述するキャリブレーション処理を通じて、それぞれの利得とオフセットのスケールがあります。このようにして得られたディジタル値は、次の2つのルックアップテーブルを通じてインデックス設定するためのポインタとして使用されます。すなわち、一方のテーブルは温度値によってインデックスが設定され、他方のテーブルはID1値によってインデックスが設定されます。ポインタがある位置から別の位置に移動すると、ポイントされたレジスタの内容が加算器に移されます。これによって加算器は、温度変化とID1の変化に応じて、任意の時刻の2つのレジスタの内容を合計します。得られた加算器の値は、ポテンショメータのワイパ位置を示します。
ID1は、電流や外部温度またはその他のいずれの変数を表す場合であっても、任意の電圧信号にできることに留意してください。
スケーリングとキャリブレーション
あらゆる信号が、キャリブレーション中にプログラムされた利得とオフセットによってスケーリングされます。ID1、ID2、VD...などの信号は、これらが250mVという小さな値であろうと、あるいは2.5Vという大きな値であろうと、個別にスケーリングすることができます。これによってA/Dをより最適に利用できるようになります。
入力変数のキャリブレーションについては、データシートの12ページ「電圧モニタのキャリブレーション」を参照してください。ただし、キャリブレーションについては、さらなる検討が必要です。基本的にこれは、繰り返し実行される2点キャリブレーションであり(Lo、Hi、Lo、Hi)、各点のペア(低アナログ入力/低ディジタル出力、高アナログ入力/高ディジタル出力)にて、スケール(利得)レジスタ(17ページの表1のレジスタ)の1ビットが、連続した量子化を通じて固定されます。処理手順は次のとおりです。
オフセットレジスタを0hに設定する。ここでループを開始する{アナログ入力を0に設定し、ディジタル化したMeas1を読み取る。アナログ入力を0.225に設定し(例としてFS = 0.25とする)、
ディジタル化したMeas2を読み取る。(Meas2 - Meas1) > 予想デルタ値CNT2 - CNT1であれば、
スケールレジスタのMSBは0になり、そうでない場合は1になる。}次の有効ビットについてループを繰り返す。スケールレジスタの全ビットが設定されるまでこれを繰り返す。
最終的に、最後のスケールビットが設定された後、さらに処理を進めて、Meas1が0となる値にオフセットレジスタを設定する(入力が0と仮定)。
上記では、アナログ入力が0の場合、必ずしも入力電圧を基準とせず、測定される最小「有効」量(電流、温度)を基準としていることに留意してください。予想デルタは、ディジタルスケールをスケーリングするときに想定したデルタ値(CNT2 - CNT1)を基準としています(90%フルスケールのアナログ入力デルタであると仮定)。監視の規格が制限されていない限り、最大範囲を取り扱えるような勾配を選択することができ、LUT制御の場合に最良の状態で動作します(表6を参照。VDチャネルの最大値はFE00hであり、またID1とID2チャネルの最大値は7E00hです)。たとえば、電流が2Aを超えないことがわかっている場合、1.8A (2 × 0.9)に対して予想変化量を7166h (7E00h × 0.9)に設定することができます。