堅牢なコンタクトモニタが車体制御コンピュータの設計を簡素化する
要約
このアプリケーションノートでは車載スイッチモニタのMAX13362がECUレベル試験の間、どのように動作するかを検証します。このアプリケーションノートでは、実施された試験と得られた結果を説明します。
はじめに
MAX13362は24チャネルの車載用スイッチモニタです。多数の外付け部品を追加すると、アプリケーションのコストを増加させ、しかも信頼性のある接触抵抗の測定がさらに困難になる恐れがあり、このためこれらを不要にするために、MAX13362は堅牢に設計されました。このデバイスは車載の24個のリモートスイッチの状態を監視して、車載の過渡事象に耐え、多くの過酷な車載試験環境で良好に動作します。このデバイスは車両内のリモートスイッチに接続するために、車載のハーネス配線内に見られるすべての過渡事象を直接受けます。
このアプリケーションノートは、車載ECUレベルの試験で直面する多くの環境で、MAX13362がどのように動作するのかを説明します。ここで説明する状況は以下の各項で示されます。
- グランド/電源接続の欠落
- バッテリの逆接続状態
- グランドおよび電源のシフト
試験設計の設定
以下の試験データは図1の簡素化したアプリケーション回路で得られています。MAX13362は2つの外付けバッテリ接続スイッチと2つの外付けグランド接続スイッチに接続されています。リニアレギュレータのMAX15007がこのICのディジタル部分およびローカルマイクロコントローラに対してレギュレートされた電圧を提供しました。グランド接続スイッチに接続された各端子は47nFのコンデンサでグランドにバイパスしました。バッテリ接続されたスイッチに接続された各入力には100Ωの直列抵抗が加えられていますが、これはバッテリラインからの厳しいトランジェントの間の入力電流を制限するために必要です。SPI™情報を読み書きするために使用されるマイクロコントローラは3.3V電源で動作するMAXQ2000です。スイッチのSGNDとSVSは試験中の対応するMAX13362の端子が切断される役目をします。電源VSBとVSGによってそれぞれバッテリとグランドのシフトが可能になりました。
試験中は特別な注意が払われました。1) 電圧差による望ましくない漏れ電流の可能性、2) SPI通信が可能かどうか、3) スイッチの状態が正しく、または正しくなく通知されるか。試験はすべて14Vのバッテリ電圧で行われました。
図1. MAX13362の試験回路
1. グランド/電源接続の欠落
外部スイッチがオープンかクローズ(およびICの各入力端子がバッテリまたはグランドに接続されているか)に対応して、グランド/電源接続の欠落はさまざまなシナリオに導かれることになります。
1.1. グランドの欠落
グランドの欠落(例えば半田付けの不良による)が起こった場合、1つまたはそれ以上の外付けスイッチがバッテリまたはシャーシグランドに対してオープンまたはショートということになります。したがって、さまざまなグランドの欠落の事象を考える必要があります。
1.1.1. すべてのスイッチをオープン
通常の方法で電源をオンとした後、ICのグランド端子は切断され、GND端子がおよそ0.5Vに向かって上方に浮き上がるのが観測されました。このことによって、ロジックローのレベルが0.5Vになるにも関わらず、SPIインタフェースが正常に機能するように見えることが可能でした。プロセッサによって期待されるロジックレベルに対応して、この事態は誤った読取り値になることがあります。すなわち、プロセッサが0.5Vをロジックハイと解釈する場合です。このエラーはSPIインタフェースが正しい出力ワード(0xC0000000)を通知しても起こる可能性があり、したがって、すべてのスイッチが実際にオープンであると示されます(図2)。この試験中には電源電流の増加は観測されませんでした。グランド接続が回復したとき、MAX13362は正常に機能しました。
図2. SPIの読取りがグランドシフトを示しています。Ch1 = CS、Ch2 = CLK、Ch3 = SDO (データ)。
1.1.2. 最低1つの入力をシャーシグランドに接続
この試験もMAX13362に給電されて正しく設定された後でグランドを切断して実行されました。SPIの読取りは、スイッチがすべてオープンと通知されました。ロジックインタフェースのグランドレベルは正方向におよそ600mVシフトしました。これは前の試験で観測されたのと同じです。グランド接続が復旧したとき、MAX13362は正常に機能しました。
1.2. 入力をバッテリ電圧に接続したときに電源の欠落
この試験を実行するために、VS端子は電源から切断されてIN1はバッテリ電圧に短絡されました。IN1端子への電流は漏れ電流レベルに留まり、したがってVSノードはプルアップされなかったことが示されました。この構成によってMAX13362の電源投入の問題が回避され、または付加回路があった場合に未知または予測不能な状態が回避されました。VDD端子への電流は変化しなかったことが観測されました。このモードでSPIインタフェースから読み取ると結果は0x00000000でしたが、これはMAX13362の高電圧部の電源が切断されているためです。これらの結果が示しているのは、この状態でマイクロコントローラがMAX13362から読み取ると、マイクロコントローラは容易にフォルトが存在することが分かることを示しています。
1.3. 1つの入力がグランドされている場合のグランドと電源の欠落
この試験では、MAX13362のVSとGNDの端子は両方切断されて、入力の1つはスイッチでグランドに接続されました。明らかに、MAX13362はこの状態では正常には動作しませんが、漏れ電流以上に入力電流は増加しませんでした。SPIインタフェースによって読み取ると、その結果は0x00000000となり、それはマイクロコントローラにフォルトとして伝えられました。
1.4. 1つの入力をバッテリ電圧に接続したときのグランドと電源の欠落
MAX13362のグランドとVS端子はなお切断されているため、入力の1つはバッテリ電圧に接続されました。前述の1.2と同様に、入力電流に認められる増加はありませんでした。VS端子は0Vのままでした。予想されたように、SPIインタフェースからの読取り結果は0x00000000でした。
1.5. 1つの入力をバッテリに、もう1つの入力をグランドに接続した場合のグランドと電源の欠落
この試験は1つの入力をバッテリに、他方をグランドに接続されるとMAX13362の電源はオンにならないことを確認するために実行されました。この場合の望ましい出力結果は次のとおりでした。VSは0Vに留まり、MAX13362を読取ると、その結果は0x00000000でした。
2. バッテリの逆接続状態
車のバッテリが不正に接続された場合、車載システムはバッテリの逆接続状態にさらされます。車載の電子回路は、車の不運な所有者(またはメカニック)が何か良くないことが起こっていると気が付くまでの長い期間、この状態に耐えなければなりません。車載電子回路を保護する標準的な方法は逆バッテリダイオードを使用することで、これは単にバッテリが逆に接続されると電流を遮断するものです。MAX13362を使用する場合は、VS端子は実際にこの方法で保護されます。しかし、外付けスイッチの状態によって、MAX13362は負電圧にさらされることになります。MAX13362の弱い箇所を見出すために、実際にバッテリの逆接続を行い、多数の試験を実施しました。
2.1. すべてのスイッチをオープンにしたバッテリの逆接続
これは最も危険が少ない条件です。MAX13362は、これに容易に耐えました、それは異常な電圧は印加されなかったからです。
2.2. 1つの入力をグランドしたバッテリの逆接続
この試験も比較的危険ではなく、それは予想されない電圧がMAX13362の各端子には印加されなかったからです。MAX13362は機能しなかった、実際に機能することができなかった一方、損傷はされませんでした。
2.3. 1つの入力をバッテリに接続したバッテリの逆接続
これはMAX13362にとって危険な事態になる可能性がありますが、それは給電されない状態で、負電圧が1つの入力に印加されるからです。入力の絶対最大定格が-0.3Vの標準的なICではこの状態に耐えることができません。しかし、MAX13362は、グランドに接続する通常のダイオードを使用せずに、特別な入力構造を採用しています。この設計によってこの状態に損傷を受けないで存続することができます。入力を逆にした場合は「漏れ電流のような」入力電流のままでしたが、MAX13362は長期間この状態で生きながらえます。SPIの読取り値はこの試験結果では0x00000000です。
2.4. 入力の1つをグランドに、他方をバッテリに接続した場合のバッテリ逆接続
この試験が実行されて、前の試験(2.3項)に似た結果が期待されました。実際に、それがこのケースでした。入力電流の増加は測定されず、SPIの読取り値は0x00000000でした。
3. グランドおよび電源のシフト
MAX13362に接続されるスイッチは多くの場合がリモートです。したがって、ローカルとリモートグランド(スイッチの)間、またはローカルとリモート電源電圧間に差がある場合にこのICが正常な機能を続けることが重要です。これらの差は車両のグランドと電源配線の有限な抵抗(およびインダクタンス)を大電流が流れることによって生じます。多くの自動車メーカーはグランドと電源に1V以上のシフトがあっても正常な動作が維持されることを定めています。以下の試験はMAX13362のグランドおよび電源シフトに対する感度を決定するために実行されました。この試験は、どの位のグランドまたは電源のシフトによって、正しくないスイッチの読取り状態になるかを確定することであるとも考えられます。
3.1. 負のグランドシフト
この試験ではMAX13362とローカルマイクロプロセッサのグランドが、スイッチのグランドに対して500mVのステップで負にシフトされて、スイッチ状態に変化が起こるかを観測しました。試験は1つのグランド接続されたスイッチと1つのバッテリ接続された閉じられたスイッチで実行されました。-5Vもの大きいグランドシフトでも正しくないスイッチ状態は通知されませんでした。SPI動作のすべてがこの試験を通して問題なく動作しました。
3.2. 正のグランドシフト
この試験は1つのグランド接続された閉じられたスイッチと1つのバッテリ接続された閉じられたスイッチで実行されました。3.2Vのグランドシフトでグランド接続されたスイッチが「オープン」として間違って通知されました。このエラーが起こったのはこの試験で使用したMAX13362の入力スレッショルドが3.2Vに近かったからです。バッテリ接続されたスイッチの状態は5Vのグランドオフセットまで、正しく通知されました。SPI動作のすべてがこの試験では正常に動作しました。
3.3. バッテリ接続されたスイッチの正のバッテリ電圧シフト
この試験では、外部の(閉じられた)バッテリ接続スイッチの供給電圧は逆接続バッテリ保護ダイオードを通してMAX13362に供給されるバッテリ電圧に対して増加しました。この意図は影響を受ける入力へは異常な電流が流れず、スイッチの状態はMAX13362によって正確に決定されるということを保証することでした。電圧シフトは500mVのステップで最大5Vまで増加しました。障害は観測されませんでした。SPIによって読み取られるスイッチの状態は、常に正常でした。さらに、入力電流の増加も測定されませんでした。
結論
ここで、実施された試験ではMAX13362を損傷するものは何もありませんでした。データからMAX13362のICは、その設計が意図したとおり、非常に堅牢であることが確信されます。表1ではこのアプリケーションノートで述べた試験の結果を要約しています。
Test | VS/Input Current | MAX13362 State | SPI Read | SPI Write | Comment | |
1.1.1 | Loss of ground with all switches open | Current does not change | Appears to operate | C0 00 00 00 | Succeeds | SDO "low" output voltage is raised to 0.5V. |
1.1.2 | Loss of ground with at least one input connected to chassis ground | Current does not change | - | C0 00 00 00 | Succeeds | Switch not reported closed. All output bits 0, apart from DT and Rst. |
1.2 | Loss of power with an input connected to battery voltage | Current goes to 0 | - | 00 00 00 00 | Fails | |
1.3 | Loss of ground and power with one input grounded | Current goes to 0 | - | 00 00 00 00 | Fails | |
1.4 | Loss of ground and power with one input connected to battery voltage | Current goes to 0 | - | 00 00 00 00 | Fails | |
1.5 | Loss of ground and power with one input connected to battery and one input grounded | Current goes to 0 | - | 00 00 00 00 | Fails | |
2.1 | Reverse-battery with all switches open | Current goes to 0 | Inert | - | - | |
2.2 | Reverse-battery with one input grounded | Current goes to 0 | Inert | - | - | |
2.3 | Reverse-battery with one input connected to battery | None | Inert | - | - | |
2.4 | Reverse-battery with one input connected to ground and one to battery | Current goes to 0 | Inert | 00 00 00 00 | Fails | Set up with two power supplies so that SPI read was possible. |
3.1 | Negative GND shift at pin 18 | Current does not change | Normal operation | Succeeds | Succeeds with 5V offset | Tested with up to 5V offset and with no malfunction. |
3.2 | Positive GND shift at pin 18 | Current does not change | Normal operation | Succeeds | Succeeds with 5V offset | At 3.2V did not detect a closed ground-connected switch; it still worked at 3.1V. High-side switch detection still worked with 5V offset. |
3.3 | Positive battery voltage shift on battery-connected switch | Current does not change | Normal operation | Succeeds | Succeeds with 5V offset | No malfunction at up to 5V offset. |
追加のECU試験が行われ、MAX13362は期待通りに機能しました。その間、このデバイスは常に堅牢な車載スイッチインタフェースを提供していました。