近接センサーの到達範囲拡大
要約
このアプリケーションノートでは、MAX44000近接センサーで赤外LEDに流すことができる電流を増加させる方法をいくつか説明します。非常に単純な方法からかなり複雑な方法までさまざまですが、これらの方法によって、ユーザーは近接センサーから遠く離れた物体も検出することができます。
背景
MAX44000は、2mm × 2mm × 0.6mmの小型パッケージに強力な機能を集積し、コンパクトで効果的な赤外線近接センサーソリューションを実現します。このセンサーは、赤外線放射ダイオードにパルスを送り、その反射信号の強さを観測することによって機能します。この信号が強ければ、対象物はそれだけセンサーの近くにあります。
標準的な構成(図1)で、センサーの前にガラスがない場合、デバイスの有効範囲は反射率18%グレーカードで約13cmです。この状況における制約要因の1つは、LEDに電流を流した際にICに発生する電力損失です。これは、センサーの認識可能な範囲を縮小させ、(人の)存在検出など特定の機能の実現を妨げます。幸い、MAX44000の性能を向上させる簡単な方法があります。
図 1. MAX44000の標準的な構成
電力出力の増加
LEDの電力出力を増加させる最も簡単な方法は、FETやその他のトランジスタを介してLEDを駆動することです。図2は、その方法を示しています。この単純な例では、MAX44000のDRVピンでpMOSFETをオン/オフすることによって、エミッタに通す電流を駆動しています。電流の値は、R5によって設定します。
図2. LED電流を増加させる最も簡単な方法
この回路は、エミッタに通す目的の電流をより精密に設定することによって、さらに改善することができます(図3)。この場合、単純なオペアンプの電流ソースでLEDに通す電流を設定します。この図にあるオペアンプの正入力に電圧が印加され、それが電流に変換されます(この場合、検出抵抗R5が1Ωとなっているため、1Vで1Aが生じます)。この電圧は、電圧リファレンスなどの固定ソースや、デジタル-アナログコンバータ(DAC)から供給することができます。
しかし、MAX44000との最適な連携のためには、赤外線LEDにパルスを送る必要があるため、もう1つ段が追加されています。この回路で、設定した電圧をオペアンプの電流ドライバに供給しているのは、アナログスイッチです。NC入力はグランドに接続され、NO入力は目的の電圧に接続されています。制御ピンにプルアップ抵抗を接続することによって、アナログスイッチをNC入力からNO入力に切り替えることが可能です。
図3. 電流調整回路によるLED電力の増加
この方式は、LEDの出力電力を増加させる方法の1つにすぎません。他の類似したマキシム製部品も使用することができます。他の方式には、DRVでプルアップを使用して電圧信号をコントローラに送り、DACの出力を0Vと目的の電流に対応した電圧の間で切り替えるなどの方法があります。
LEDの電力増加の結果は明らかです。LEDに流す電流が増加すれば、検出範囲の拡大が可能になります。図2の回路を使用して実現した検出範囲拡大の様子を、図4に示します。30cm (約1フィート)では、400mA以下の場合、10カウント程度の信号で、ノイズフロアとさほど変わりません。電流を750mAに引き上げると、レンズやその他の光学焦点調整器具を使用しなくても、同じ距離で32カウントの信号が得られます。
図4. 電流の増加に伴う検出範囲の拡大