DN-216: ヒートシンクなしでAMD AthlonTMプロセッサの要求条件を満たすPolyPhase表面実装電源

はじめに

AMD Athlonプロセッサの発表により、デスクトップPCのプロセッサ用電源電流条件が初めて40Aの水準を超えました。このような高電源電流と低動作電圧(公称1.6V)および非常に厳しい過渡応答条件のために、従来の電源設計方式は限界近くになっています。LTC®1929 PolyPhase電流モード・コントローラは、従来とは手法が多少異なります。1個のレギュレータで40Aを供給しようとしないで、2個のレギュレータを並列にして、負荷を半分に分割しています。しかし、2個のレギュレータのクロックの位相関係がマジックなのです。

PolyPhaseアーキテクチャ

2個の同期式降圧レギュレータが並列に接続され、それらのクロックは180°逆相で同期しています。この一見簡単に見えるトリックが大幅な性能向上とコスト削減をもたらします。並列電圧モード・レギュレータに現れる可能性のある循環電流に付随する問題を軽減するために、電流モード・アーキテクチャが選択されました。競合する解決方法は、この問題を解決するために非同期レギュレータを使用していますが(ローサイド・スイッチ用に1個のダイオードを使用)、結果的に大きな効率損失が生じる場合があります。

降圧レギュレータのハイサイド・スイッチ電流波形は台形で、ゼロとほぼIOUT間で変動します。入力電流は直流なので、入力コンデンサは瞬間のスイッチ電流と平均入力電流との差を供給しなければなりません。これは入力コンデンサに大きなリップル電流の負担を課します。2個のレギュレータを交互に動作させることによって、ピーク電流は1つのステージが別のステージが残した「穴をふさぐ」ようにして半分になります。正味効果は入力コンデンサのリップル電流が劇的に減少することです。

出力リップルも同様な方法で低減されます。1つのインダクタの電流が増加している間、他方の電流は減少します。また必要なインダクタ・エネルギーの蓄積も大幅に(約75%)減少します。インダクタの体積、したがってコストも同様に削減されます。詳細については、リニアテクノロジーのアプリケーションノート 77を参照してください。

出力リップル電流の大幅な減少に加えて、電源の最大有効電流のスルーレートが劇的に増加します。負荷ステップの間、2つのインダクタは並列に接続されているかのように動作し、他方、定常状態動作中は直列に動作しているように見えます。その結果、非常に低いリップルできわめて高速なダイナミック性能が得られます。リップルが減少するため、全誤差マージンへの影響が少なく、過渡応答に対してより多くのマージンを残します。最終的に必要な出力容量が大幅に減少します。

図1はAthlonに最適化された回路です。この回路は非常に簡潔です。基本的には並列に接続された2つの同じ同期バック・レギュレータがあります。コントローラはそれらを180°逆相でドライブします。LTC1929は大型ゲート・ドライバを内蔵しているので、大型MOSFETを効率的にドライブ可能です。また出力電圧とグランドの両方を簡単にリモート・センスできるよう帰還路に精密な差動アンプがあります。2つのPWMステージは共通の誤差アンプを共有し、両チャネルが確実に負荷に対して同じ量の電流を供給するようにしています。したがって、負荷の共有は「開ループ」であり、他の方法で起こり得る共有回路での発振をなくします。

 Schematic for the AMD Athlon Processor Power Supply 図1. Athlonプロセッサ用電源の回路図

図1. Athlonプロセッサ用電源の回路図

図2に図1の回路の効率を示します。この基本設計は主入力源として12Vでも動作可能です。この例では効率は数ポイント低くなりますが、システム設計レベルで利点があり、これを考慮することが必要です。図3に3Aから30Aへの過渡負荷ステップに対するレギュレータの応答を示します。PCBの面積を小さくするために、この回路では4個の1000µF表面実装タンタル出力コンデンサを使用しています。コストが最優先目標の場合は、12個の3900µFアルミニュウム電解コンデンサで代用できます。VID制御が必要なときは、LTC1709はLTC1929と同じ性能を提供しながら出力電圧を1.3V~3.5Vにプログラムする5ビットVIDDACを内蔵していますので、それを利用できます。

Measured Efficiency 図2. 測定された効率

図2. 測定された効率

Load Transient Response with Active Voltage Positioning 図3. アクティブ電圧ポジショニングをともなう負荷過渡応答

図3. アクティブ電圧ポジショニングをともなう負荷過渡応答

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Craig Varga

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