MAX2392を使用してTD-SCDMAハンドセットのT3R4要件に適合
要約
TD-SCDMA規格のT3R4要件に適合するために、MAX2392の設定変更のタイミングを調整する手法とガイドラインについて説明します。
背景
TD-SCDMAシステムの仕様では、1つのサブフレームは、7つの標準スロットと1つの特別スロットで構成されています。最初の標準スロット(TS0)はダウンリンク専用、2番目の標準スロット(TS1)はアップリンク専用に割り当てられています。特別スロットはTS0とTS1の間に割り当てられています。これは、ダウンリンクとアップリンクの周波数同期のためであり、またダウンリンクからアップリンクへのガードギャップを設けるためです。TS1の後、送信されるデータ長に応じて、いくつかのスロットの後、システムが再度ダウンリンクに戻る場合があります。ときには、図1に示すように、アップリンク後、直ちにハンドセットを元のダウンリンクに切り替える必要があります。この場合、アップリンクとダウンリンク間に12.5µsのガード期間しかないため、ハンドセットには極めて高速な切り替えが必要となります。このスイッチング要件を満たすためには、以下の課題を解決する必要があります。
- Txスロット終了後にレシーバがオンになった場合、ゼロIFレシーバのDCオフセットをガード期間の間に除去することができない。
- Txスロット内でレシーバがオンになった場合、Tx/Rxスイッチのアイソレーションの制限のためTx信号によってレシーバが飽和する。
図1. TD-SCDMAシステムにおけるT3R4シナリオ
The MAX2392 Solution
MAX2392は、綿密に考案された制御タイミングによってT3R4システム要件に的確に適合したゼロIFレシーバです。
MAX2392のDCキャセンルアーキテクチャは、2段階のハイパスフィルタに相当します(図2の回路図を参照)。ミキサの後に続くフィルタは、ミキサのDC成分の除去を目的としています。また、VGAの後のフィルタは、VGAで発生したDCオフセットを相殺します。これらのフィルタのハイパスコーナは、通常動作時では8.6kHzですが、高速セトリングには1MHzに設定することができます。
ハイパスフィルタを1MHzに設定してLNAを無効にした場合、Txスロットの間、レシーバの飽和を避けることができます。ただし、これはTx/Rxスイッチのアイソレーション次第です。Tx/Rxスイッチのアイソレーションが十分に大きくなければ、Tx信号によるRxの飽和を避けるために、LNAの前にスイッチが必要になる場合があります。
図2. MAX2392のハイパスフィルタ段の回路図
Txスロットの終了時に、LNAは高利得モードになります。つまり、DCオフセットが処理された後、ハイパスコーナは8.6kHz (公称)に復帰します。
MAX2392を使用したT3R4シナリオの制御タイミング図を図3に示します。
図3. MAX2392を使用したT3R4シナリオの制御タイミング図
結論
前述の制御シーケンスを使用することで、MAX2392がTD-SCDMA T3R4のシステム要件に問題なく適合することが実験で証明されました。