利得ステップを備え、GPSアプリケーション用に再チューニングされたMAX2653 LNA

要約

このアプリケーションノートでは、GPSバンド(中心周波数1575MHz)用にチューニングされた、MAX2653 SiGe LNA用の代替RFマッチングネットワークについて説明します。高利得と低利得の両方のモードについて、および2.7Vと3.0Vの供給電圧について、性能(消費電流、順方向利得、NF、IIP3、逆アイソレーション、および入出力リターン損失)の評価結果を示します。VCC = 2.7Vで高利得モードの場合、このアプリケーションは、5.6mAの消費電流で19.2dBの利得、1.6dBのNF、および-5.2dBmのIIP3を実現しています。

MAX2653 SiGe低ノイズアンプ(LNA)は、US PCS (1930MHz~1990MHz)及び欧州DCS (1805MHz~1880MHz)の受信帯域において最小ノイズ性能が得られるように内部的に最適化されています。これらのLNAは、20dBの利得制御ステップ、外部から調整可能な利得と直線性(単一の外付け抵抗による)、2.7V~3.3Vの動作、及び0.25µAのシャットダウンモード等の機能を持ちます。マキシムでは、利得ステップの含まれたGPS (中心周波数1575MHz)バンド用のスタンドアロンLNAを取り扱っていませんが、この帯域に合わせてMAX2653を再チューニングすることで、優れたソリューションを供給いたします。これらの代替マッチングの値(表1)は、0.5dB以上の利得、0.1dB未満の雑音指数、及び2dB以上のIIP3を達成しています(値はすべてほぼ同一の消費電流についての値です)。

マキシムは、利得ステップを必要としないアプリケーション用として、MAX2654MAX2655 SiGe GPSのLNAを用意しています。これらのLNAは、利得と直線性の最適点を設定するための(外付け抵抗による)バイアス電流制御、0.1µAのシャットダウンモード、及び内蔵の50Ω出力マッチング等の機能を持ちます。このデータシートはウェブサイト(https://www.analog.com/jp/products/max2654.html)でご利用いただけます。

図1. 新しいマッチング部品(C2、L1、L3、C4)を搭載したMAX2653 EVキット。PCB自体の修正は不要。

図1. 新しいマッチング部品(C2、L1、L3、C4)を搭載したMAX2653 EVキット。PCB自体の修正は不要。

図2. 1575MHz GPSバンド用に新しいマッチング部品を搭載したMAX2653 EVキットの概要図

図2. 1575MHz GPSバンド用に新しいマッチング部品を搭載したMAX2653 EVキットの概要図

表1. 1575MHz GPSバンド用に再チューニングする場合のMAX2653 EVキットの交換部品
Designation Value Description
C2 1.3pF shunt-C (to GND) matching component for LNA input0402 ceramic capacitor Murata GJ61555C1H1R3CB01B
L1 3.9nH series-L matching component for LNA input0603 printed inductor Toko LL1608-FS series
L3 3.3nH shunt-L (to VCC) matching component for LNA output0603 printed inductor Toko LL1608-FS series
C4 0.75pF series-C matching component for LNA output0402 ceramic capacitor Murata GJ61555C1HR75CB01B

EVキット上のマッチング部品を交換した後、主要な性能を室温にて再テストしました。表2は、再チューニング済みのMAX2653のベンチテストの結果を示しています。これらの値は、EVキットのSMAコネクタ端での値です。マッチングネットワークの出力に適用される値を得るには、出力と入力のそれぞれについて約0.2dBの損失を想定してください。この方法では、回路のNFは実際には約1.57dBで、利得は約19.2dBとなります。また、周波数に対する利得とNFのデータを表3に示します。

表2. MAX2653 GPSの性能一覧。結果は、EVキットのSMAコネクタ端からのものです。
Parameter Symbol Conditions Test Result Unit
Supply Current ICC High Gain Mode VCC = 2.7V 5.61 mA
VCC = 3.0V 5.62
Low Gain Mode VCC = 2.7V 2.23
VCC = 3.0V 2.24
Gain G High Gain Mode VCC = 2.7V 19.0 mA
VCC = 3.0V 19.0
Low Gain Mode VCC = 2.7V -2.3
VCC = 3.0V -2.2
NF NF High Gain Mode VCC = 2.7V 1.77 dB
VCC = 3.0V 1.79
Low Gain Mode VCC = 2.7V 6.36
VCC = 3.0V 6.37
Input 3rd-order Intercept IIP3 High Gain Mode VCC = 2.7V -5.2 dBm
VCC = 3.0V -4.9
Low Gain Mode VCC = 2.7V +0.2
VCC = 3.0V +0.2
Reverse Isolation |S12| High Gain Mode VCC = 2.7V -33.8 dB
VCC = 3.0V -33.6
Low Gain Mode VCC = 2.7V -22.2
VCC = 3.0V -22.3
Input Return Loss |S11| High Gain Mode VCC = 2.7V -7.7 dB
VCC = 3.0V -7.7
Low Gain Mode VCC = 2.7V -10.9
VCC = 3.0V -11.0
Output Return Loss |S22| High Gain Mode VCC = 2.7V -12.6 dB
VCC = 3.0V -12.5
Low Gain Mode VCC = 2.7V -8.1
VCC = 3.0V -8.2
表3. 周波数に対するMAX2653のGPS利得とNF性能。結果は、EVキットのSMAコネクタ端からのものです。
Frequency High-Gain Low-Gain
VCC = 2.7V VCC = 3.0V VCC = 2.7V VCC = 3.0V
Gain (dB) NF (dB) Gain (dB) NF (dB) Gain (dB) NF (dB) Gain (dB) NF (dB)
1400 15.4 1.71 15.3 1.69 -5.4 6.36 -5.5 6.32
1450 18.4 1.74 18.4 1.74 -2.9 7.18 -2.9 7.40
1500 18.6 1.75 18.5 1.77 -2.6 6.45 -2.6 6.59
1550 18.6 1.78 18.6 1.75 -2.9 5.70 -2.7 5.51
1575 19.0 1.77 19.0 1.79 -2.3 6.36 -2.2 6.37
1650 18.7 1.86 18.7 1.82 -2.2 6.67 -2.3 6.66
1700 17.3 1.84 17.4 1.87 -3.5 5.64 -3.5 5.56
1750 16.3 1.88 16.3 1.92 -4.3 6.26 -4.1 6.21

図3. 高利得(アクティブトレース)及び低利得(メモリトレース)の場合のMAX2653のGPS性能 - 入力リターンロス(S11)

図3. 高利得(アクティブトレース)及び低利得(メモリトレース)の場合のMAX2653のGPS性能 - 入力リターンロス(S11)

図4. 高利得(アクティブトレース)及び低利得(メモリトレース)の場合のMAX2653のGPS性能 - 順方向利得(S21)

図4. 高利得(アクティブトレース)及び低利得(メモリトレース)の場合のMAX2653のGPS性能 - 順方向利得(S21)

図5. 高利得(アクティブトレース)及び低利得(メモリトレース)の場合のMAX2653のGPS性能 - 逆アイソレーション(S12)

図5. 高利得(アクティブトレース)及び低利得(メモリトレース)の場合のMAX2653のGPS性能 - 逆アイソレーション(S12)

図6. 高利得(アクティブトレース)及び低利得(メモリトレース)の場合のMAX2653のGPS性能 - 出力リターンロス(S22)

図6. 高利得(アクティブトレース)及び低利得(メモリトレース)の場合のMAX2653のGPS性能 - 出力リターンロス(S22)