効率を高めてバッテリ寿命を延長し、システムのグリーン化を進める低損失LEDドライバ

要約

高輝度LED (HB LED)の駆動方法は数多く存在します。最近のシステムはバッテリ駆動が多いため、充電効率とシステムの動作時間を最大化するためには、エネルギー効率が鍵となります。バッテリ効率の改善は、システムの「グリーン」化にもつながります。バッテリの寿命はある一定の充電サイクルの回数で尽きるため、1回の充電による動作時間が長くなれば同じバッテリを数百時間も長く使える可能性があることになります。これはつまり、埋め立て地や有害廃棄物の処理場に持ち込まれるバッテリの数の減少につながります。

このアーティクルは「マキシムのエンジニアリングジャーナルvol. 65」 (PDF、2.64MB)にも掲載されています。

低電力照明に対する一般的なアプローチは、定電流モードで動作するシンプルなリニアレギュレータです(図1a)。リニアレギュレータは、設計がシンプルである点がメリットです。これに対してデメリットは電力損失が大きいことです。これは、余分なヘッドルーム電圧が電流測定用抵抗とレギュレータそのものから熱として放散されるからです。発熱が大きいということは、システムの「グリーン」性能にも悪い影響を与える可能性があります。発熱量が大きくなるとしっかり冷却しなければならなくなり、(冷却ファンや大型の金属製ヒートシンクに必要な)エネルギー、スペース、および重量などの面で不利になるとともに、材料費や製造時間も余計にかかるようになります。

別の方法として、バックレギュレータなどのスイッチモードレギュレーション方式があります(図1b)。このようなレギュレータはLEDに流す電流を制御するために、0.8V~1.3Vのフィードバック電圧が必要になります。この電圧を得るための電流測定は一般的にLEDと直列に接続した抵抗値の小さな抵抗を用います。この抵抗の両端に発生する電圧はLEDへの定電流電源を維持するフィードバック電圧を提供します。このようにしてレギュレータ本体における損失を小さくすることができますが、電流測定用抵抗で、ある程度のシステムの電力が失われる状況は変わりません。

図1a. シンプルなリニアレギュレーション方式では、レギュレータと電流設定用抵抗で電力損失が発生します。シンプルでEMIが発生しないというメリットがある半面、電圧を下げる形でしか使えない、発熱があるというデメリットを持ちます。
図1a. シンプルなリニアレギュレーション方式では、レギュレータと電流設定用抵抗で電力損失が発生します。シンプルでEMIが発生しないというメリットがある半面、電圧を下げる形でしか使えない、発熱があるというデメリットを持ちます。

図1b. 基本的なスイッチモードレギュレーション方式では、電流検出用抵抗から放出されるエネルギーが電力損失の大きな原因となります。この設計は効率が高く、昇圧に再構成可能であるという特長を持つ半面、回路が複雑になり、EMIを発生するおそれがあります。
図1b. 基本的なスイッチモードレギュレーション方式では、電流検出用抵抗から放出されるエネルギーが電力損失の大きな原因となります。この設計は効率が高く、昇圧に再構成可能であるという特長を持つ半面、回路が複雑になり、EMIを発生するおそれがあります。

抵抗を流れる電流による電力損失を小さく抑えるためには、抵抗とアンプを組み合わせるなどして低損失の電流測定方法を用い、必要となるフィードバック電圧をスイッチングコンバータへ与えることができます。このような1つの方法としては直列の電流測定用抵抗で25V/Vが検出されるMAX9938Tのような専用の高精度電流検出アンプを採用することです。このアプローチでは、回路のフィードバック部分における損失をわずか数十ミリワット程度に抑えます。

図2に示す回路では、ブーストコンバータ構成は電流検出アンプMAX9938Tを特長とし、ステップアップコンバータMAX8815Aを使用し、2つのNiMHを直列に接続したセルから給電されます。MAX8815Aは最大2MHzのスイッチング周波数で動作し、効率は最大で97%に達します。このようにスイッチング周波数が高いと、外付け部品を小型化することができます。また補償回路が内蔵され、外付け部品点数が少なくてすむため、コストやスペースの制限が厳しいアプリケーションに最適です。このコンバータは、2セルのNiMHから、3.3V~5Vの範囲で任意の電圧を出力することができます。

図2. 図1bにMAX9938Hなどの電流検出アンプが追加された回路で、電流検出抵抗の電力損失を小さくすることができ、図1に示す回路では電力損失が数百ミリワット以上となるのに対し、この回路では電力損失をわずか数十ミリワットに抑えることができます。
図2. 図1bにMAX9938Hなどの電流検出アンプが追加された回路で、電流検出抵抗の電力損失を小さくすることができ、図1に示す回路では電力損失が数百ミリワット以上となるのに対し、この回路では電力損失をわずか数十ミリワットに抑えることができます。

電流検出アンプMAX9938TはLEDへの電流フローを制御します。このアンプは入力に利得設定抵抗を内蔵しており25V/Vの利得が得られます。さらに、このアンプは500µV (max)以下のVOS、±0.5% (max)以下の利得誤差という高精度仕様を実現します。MAX8815Aのフィードバック電圧は1.265Vであるため100mΩの検出抵抗は(1.265V/25)/0.1Ω ≈ 0.5AのLED電流になります。

10Ω/100nFの組合せでつくられた入力コモンモードフィルタが、MAX9938Tの入力におけるコモンモード電圧を回避するために必要です。これらは、MAX8815Aの出力における高周波リップルによって引き起こされます。MAX9938Tの出力にある200nFコンデンサはアンプの帯域幅を減らし、発振を防止します。

この設計アプローチは、レギュレータと制御ループの両方で電力損失が最小限に抑えられるので、少ない部品点数のソリューションでありバッテリの動作寿命が最大化されます。

著者

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Keith Welsh