DN-243: 低入出力ノイズを実現する新型チャージ・ポンプ

チャージ・ポンプ(インダクタレス)DC/DCコンバータは、低~中負荷電流を必要とするスペースが制限されたアプリケーションでよく使用されます。これらのコンバータは、小型パッケージで供給され、非常に低い消費電流で動作し、最小限の外付け部品しか必要としません。ただし、ノイズの発生は大部分のチャージ・ポンプが持つ望ましくない特性の1つです。

ノイズからさまざまな問題が生じます。電源入力で発生するノイズが、ワイヤレス・アプリケーションのRF送信および受信を妨害することがあります。出力のノイズが敏感な回路に結合したり、可聴ノイズを発生させることもあります。新製品のLTC®3200昇圧チャージ・ポンプ・ファミリは、このような望ましくない作用を抑えるために、入力および出力でのノイズを最小化するように設計された最新アーキテクチャを採用しています。

バースト・モード動作対定周波数

ほとんどの安定化チャージ・ポンプDC/DCコンバータは、バースト・モード・アーキテクチャで動作します。このようなレギュレータ・アーキテクチャでは消費電流が最小化されていますが、最大レベルの入力ノイズおよび出力ノイズが発生します。チャージ・ポンプ・スイッチは、バースト・モード回路が付いていれば、出力に最大電流を供給するか完全にターンオフします。ヒステリシスを持つコンパレータおよびリファレンスは、チャージ・ポンプのターンオンおよびターンオフを制御して、出力を安定化します。低周波数リップルが出力に現れ(図1参照)、このリップルは安定化を行うのに必要です。このバースト・オン/オフにより大きな入力リップル電流も生じますが、これは入力ソースが供給しなければなりません。入力ソースにインピーダンスがあると入力に電圧ノイズが生じます。このノイズは、同じソースから給電される回路の残りの部分で除去しなければなりません。

図1. 標準的バースト・モード出力リップル

図1. 標準的バースト・モード出力リップル

LTC3200およびLTC3200-5は、入力ノイズと出力ノイズの両方を最小限に抑えるように設計されています。これらのデバイスは、最大100mAの出力電流を供給可能な安定化昇圧チャージ・ポンプです。LTC3200-5は安定化された5V出力を生成し、6ピンSOT-23パッケージで供給されます。LTC3200は可変出力電圧を生成し、8ピンMSOPパッケージで供給されます。

どちらのデバイスも、低周波数出力ノイズを除去する定周波数アーキテクチャを採用しています。チャージ・ポンプのスイッチングは(無負荷時でも)連続して行われ、リニア制御ループが各クロック・サイクルで出力に転送される電荷量を調整します。出力安定化ループは直線的なので、ピーク・ツー・ピーク出力リップルはVRIPPLE=(ILOAD/COUT)/(2 • fOSC)として近似でき、レギュレータのヒステリシスによってリップルは追加されません。

これらのデバイスの2MHz発振周波数により、たとえ出力コンデンサが小容量であっても、低出力リップルを実現します。図2に出力容量が異なる100mA負荷をサポートするLT3200-5で達成可能な出力リップルを示します。

図2. LTC3200-5の出力リップル

図2. LTC3200-5の出力リップル

入力ノイズ除去

定周波数生成だけでも入力ノイズが大幅に改善されますが、LTC3200ファミリはさらに一歩進んでいます。ユニークな内部制御回路がチャージ・ポンプ・クロックの両フェーズで入力電流を安定化します。このテクニックにより、チャージ・ポンプ発振器の一方または両方の半クロック・サイクルにおけるRC電流の減衰を防止し、入力電流の変化に起因する入力換算リップルを最小化します。図3に、LTC3200と標準的なバースト・モード・チャージ・ポンプの入力ノイズの違いを示します。どちらのデバイスも、3.6V入力から100mAの出力電流で安定化された5V出力を生成することが示されています。テスト用に0.1Ωの入力インピーダンスを使用しています。標準的なバースト・モード・デバイスは、入力と出力の両方に10µFのセラミック・コンデンサを使用しています。LTC3200は同じ誘電体の1µFセラミック・コンデンサを使用しています。図3に示すとおり、LTC3200は1/10のバイパス・キャパシタンスでも入力ノイズを大幅に改善します。

 

図3a. 入力ノイズのテスト回路

 

図3b. 入力ノイズのテスト回路

図3. 入力ノイズのテスト回路

標準的応用例

チャージ・ポンプは通常、セルラー電話やPDAなどの携帯機器内での低電力昇圧変換に使用されます。このようなデバイスは、特にRF通信機能が含まれる場合は、きわめてノイズに影響されやすい傾向があります。このような製品における低ノイズ・チャージ・ポンプの一般的な応用例として、小型カラーLCDディスプレイのバックライトに使用する白色LEDへの給電があります。図4の回路は、低ノイズ昇圧電源を生成し、最大6個の白色LEDをドライブします。LTC3200のFBピンは、各安定器付きLEDを流れるLED電流を安定化するのに使用されます。LTC3200を使用して、ユーザは厄介な低周波ノイズのフィルタリングの問題なしに、バッテリから昇圧電源を直接バックライト回路に提供することができます。

図4. LED電流制御付/Telerik.Web.UI.DialogHandler.aspx?DialogName=ImageProperties&renderMode=1&Skin=Metro&Title=Properties...&doid=358107ca-b615-4d28-be91-a372525c1635&dpptn=&isRtl=false#き低ノイズ白色LEDドライバ

図4. LED電流制御付き低ノイズ白色LEDドライバ

著者

Sam Nork

Sam Nork

Sam Norkは、1988年にシニア製品エンジニアとしてLinear Technology(現在は、アナログ・デバイセズに統合)に入社しました。1994年に、アナログICを担当するデザイン・センターの立ち上げ/管理を担当するためにボストン地区に転勤になり、今日に至ります。ポータブル・パワー・マネージメントの分野で多数の集積回路を自ら設計/リリースした経験を持ち、発明者/共同発明者として7件の特許を取得しています。現在はアナログ・デバイセズのボストン・デザイン・センターのディレクタとして、100人近い社員から成るチームを統括しています。対象としているのは、ポータブル・パワー・マネージメント、高速オペアンプ、産業用A/Dコンバータ、システム監視、エナジー・ハーベスティングなどの分野で使用される様々なアナログICです。現職の前は、マサチューセッツ州ウィルミントンにあるアナログ・デバイセズの拠点で、製品/テスト開発技術者として業務に携わっていました。ダートマス大学でA.B.とB.E.の学位を取得しています。