高精度リアルタイムクロックに強誘電体ランダムアクセスメモリを搭載した(RTC + FRAM) DS32X35の利点
要約
このアプリケーションノートでは、DS32X35製品ファミリの概要を説明します。これらのデバイスは、高精度リアルタイムクロックに強誘電体ランダムアクセスメモリを搭載しており(RTC + FRAM)、内容を保持するためのバッテリが不要です。
概要
DS32X35製品ファミリの発表とともに、マキシムは、バッテリを必要としない不揮発性メモリを提供します。これらのデバイスは、強誘電体ランダムアクセスメモリ(FRAM)技術を使用しています。FRAMは不揮発性で、RAMと同様に読出し/書込みサイクルを実行します。また、EEPROMや他の不揮発性メモリがもたらす複雑性、オーバヘッド、およびシステムレベルの信頼性に関する問題を解消しつつ、10年以上にわたる信頼性の高いデータ保存を実現します。この技術は、デバイスが入手可能となった1992年以来、確立されたものです。
不揮発性メモリ
主要な不揮発性メモリ技術は、バッテリバックアップ付きSRAM、EEPROM、およびフラッシュです。FRAMは、これまでのSRAMとほぼ同じ速度の不揮発性記憶デバイスです。機能的な動作はシリアルEEPROMと同じですが、大きな違いは、書込み性能と耐久性が優れているという点です。メモリは、I²Cインタフェースの速度で読出し/書込みが行なわれます。書込み時に、ポーリングしてレディ状態かどうかをデバイスに確認する必要はありません。
表1は、1 (最高)~4 (最低)の段階で不揮発性メモリ技術を格付けしたものです。
表1. 不揮発性メモリ技術の格付け
Features | Battery-Backed SRAM | EEPROM | Flash | FRAM |
Read Speed | 1 | 4 | 2 | 1 |
Write Speed | 1 | 4 | 4 | 1 |
Power Consumption | 3 | 4 | 4 | 1 |
Memory Density | 2 | 4 | 1 | 4 |
Ease of Use | 2 | 3 | 4 | 1 |
Endurance | 1 | 3 | 4 | 1 |
EEPROMに勝るFRAMの利点
FRAMには、同等の機能を持つEEPROMに比べて数多くの長所が備わっています。第1の長所は、いったんデータが転送されたら、FRAMは書込みの遅延を生じることなく、バスの速度で書込み動作を行うという点です。さらに、書込みページを使用しないため、連続データを容易に書き込むことができます。転送データサイズの制限や遅延はありません。希望すれば、システムは、1回のバーストですべてのメモリアレイを書き込むことができます。
第2の長所は、書込みの耐久性です。最大100億回の書込みサイクルが可能です。ほとんどのEEPROMでは、最大100万回の書込みサイクルしか許されていません。FRAMの書込みサイクルは事実上、無制限であるため、データ収集には理想のタイプのメモリです。
第3の長所は、電力とエネルギの消費です。FRAMは、強誘電性のメカニズムを使用しているため、VCCをそのまま使用して書込みを実行しています。EEPROMの技術では、チャージポンプまたは電圧ブーストが必要です。結果として、FRAMに必要な電流は、同等構造のEEPROMよりも大幅に少なくなります。
DS32X35—高精度のRTCにFRAMを搭載
DS32X35は、32.768kHzの内蔵水晶と不揮発性メモリバンクを単一パッケージに収めた、温度補償クロック/カレンダーです。不揮発性メモリは、2048 x 8ビットまたは8192 x 8ビットの2種類の記憶容量で提供されます。また、このデバイスは、300milの20ピンSOPパッケージで提供されます。DS32X35には、FRAMバンクが搭載されており、メモリ内容を保持するためのバックアップ電源が不要です。さらに、読出しや書込みのサイクルに制限がありません。製品寿命の間、最大サイクルレートでメモリアレイにアクセスすることが可能で、メカニズムが摩耗することはありません。
デバイスのその他の特長として、2つの時刻アラーム、割込み方形波またはプログラム可能な方形波のいずれかを選択可能な出力、較正済みの32.768kHz方形波出力があります。リセット入力/出力ピンによって、パワーオンリセットが可能です。また、リセットピンは、外部リセットを生成する押しボタン入力として監視されています。RTCおよびFRAMは、I²Cシリアルインタフェースを介してアクセスされます。
アドレス要件
シリアルFRAMメモリは、2048 x 8ビットまたは8192 x 8ビットのメモリアレイとして論理的に構成されており、I²Cインタフェースを使用してアクセスされます。記憶容量が異なるため、I²Cアドレス指定の方法は、DS32X35のバージョンごとに異なります。表2は、DS32X35の各バージョンのアドレス要件を詳しく示しています。
表2. メモリスレーブアドレス
Part | Memory (kB) | Slave Address | Address Cycle 1 | Address Cycle 2 |
DS32B35 | 2 | 1010 A10A9A8R | A7A6A5A4 A3A2A1A0 | N/A |
DS32C35 | 8 | 1010 000R | XXXA12 A11A10A9A8 | A7A6A5A4 A3A2A1A0 |
R = 読出し/書込み選択ビット、X = 任意、AN = アドレスビットN
結論
新しいDS32X35製品ファミリは、4つの個別の部品を1つに集積することによって、高精度な計時を実現しています。図1は、RTC、小型不揮発性メモリバンク、システムリセット、および32.768kHzの水晶を集積したDS32X35の構造を示しています。
図1. DS32X35の集積化の利点