DN-334: 2フェーズDC/DCコントローラによる高速高効率の小型電源の実現

電源の設計において、高効率、高速過渡応答、および小型化は多くの場合相容れません。幸い、2フェーズLTC®3708PWMコントローラはこれら3つをすべて同時に実現することを可能にします。過渡応答のすぐれた高効率デュアル出力の小型電源に使われたLTC3708を図1に示します。このデバイスにはこれらすべてを可能にするデザイン上の特長が組み合わされて使われています。

図1a.VOUT2がVOUT1をトラッキングするデュアル電源

図1a.VOUT2がVOUT1をトラッキングするデュアル電源

図1b.負荷ステップに対するVOUT1

図1b.負荷ステップに対するVOUT1

図1c.負荷ステップに対するVOUT2

図1c.負荷ステップに対するVOUT2

図1d.効率

図1d.効率

高効率は、No RSENSE電流検出、2フェーズ動作モード、内蔵高電流同期MOSFETゲート・ドライバ、さらに軽負荷時にスイッチング損失とゲート・ドライビング損失を減らすパルス・スキッピング機能の特長を組み合わせて実現されています。高速過渡応答は、非常に狭いパルス幅(最小tON < 85ns)の一定オン時間制御アーキテクチャによって実現されています。ソリューションの小型化は、LTC3708の高周波数能力、要求される入力と出力の容量が小さいこと、および回路の高集積化によって実現されます。すべての制御回路とMOSFETゲート・ドライバが小型の5mm×5mm QFNパッケージに内蔵されています。さらに、LTC3708はランプアップとランプダウンの両方の過渡時に全出力範囲にわたって正確な電圧トラッキングを実現します(図2)。これらの機能の詳細は表1にまとめてあります。

図2a.同時トラッキング(R1 = R2 = 12.1k)

図2a.同時トラッキング(R1 = R2 = 12.1k)

図2b.比例トラッキング(R1 = 19.1k、R2 = 6.04k)

図2b.比例トラッキング(R1 = 19.1k、R2 = 6.04k)

表1.LTC3708のデザイン機能
特長 機能 利点
 出力トラッキング トラッキングとシーケンシングの多様なモードをプログラム可能:同時、比例など 複数電源のシステムのタイミング設計を簡素化
No RSENSE 出力電流は同期MOSFETを使って検出される 低出力アプリケーション(VOUT≤5V)の効率を改善
2フェーズ動作 2つの出力チャネルは同じ周波数で位相を180度ずらして動作する 入力RMS電流とEMIノイズを減らす;入力容量を最小に抑える
一定オン時間制御アーキテクチャ トップMOSFETはクロックの待ち時間なしに直ちにオン可能 過渡応答を早め、出力容量を減らす
最小tON < 85ns  トップMOSFETがオンしている必要のある最小時間 過渡応答を早め、高周波数デザインを可能にする
周波数同期 スイッチング周波数は外部クロックに同期可能 定周波数動作を維持し、システム内のすべてのスイッチング・レギュレータを同期させる
 軽負荷時のパルス・スキッピング  スイッチング周期は軽負荷時に長くなり、逆電流を禁止 最小のスイッチング損失とゲート・ドライビング損失により軽負荷時の効率を改善

LTC3708は他の機能も備えており、高性能パワー・マネジメント・アプリケーションに最適です。入力電圧は最高36Vまで可能で、出力は最低0.6Vまで安定化されます。MOSFETのRDS(ON)の値の変化に対応するため、電流制限はユーザーがプログラムすることができます。保護機能にはサイクルごとの電流制限、過電圧クローバ、およびオプションの短絡タイマがあります。どちらかの出力が安定化状態から外れると、(過渡時のグリッチやノイズが誤ってシステムの保護機能をトリガするのを防ぐ手法である)100μsのマスキング後にパワーグッド・インジケータが“L”に下がります。

著者

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David Chen