ADALM2000による実習:これまでに学んだ回路を組み合わせてオペアンプを構成する

目的

今回は、これまでのStudentZoneの記事で取り上げた回路ブロックを組み合わせて高いオープンループ・ゲインを備えるオペアンプを構成します。いくつかのディスクリート部品を使用することで、オペアンプを実現できることを確認してみましょう。

準備するもの

  • アクティブ・ラーニング・モジュール「ADALM2000
  • ソルダーレス・ブレッドボード
  • ジャンパ線
  • 抵抗:8.2kΩ(1 個。1.5kΩ と 6.8kΩ の抵抗を直列接続しても可 )、47kΩ(1 個 )、100kΩ(1 個 )、470kΩ(2 個 )、10kΩ(1 個)、1kΩ(1 個)
  • コンデンサ:22µF(2 個)、1µF(1 個)、47nF(1 個)
  • 小信号 PNP トランジスタ:「2N3906」(1 個)
  • 小信号 NPN トランジスタ:「2N3904」(3 個)/「SSM2212」(マッチングのとれたトランジスタ・ペア、2 個)

説明

図1に示したのが、今回取り上げるオペアンプ回路です。ソルダーレス・ブレッドボードを使用して、この回路を実装してください(図2)。

図1. 高いゲインを備えるオペアンプ回路
図1. 高いゲインを備えるオペアンプ回路

ハードウェアの設定

図1において青色で示したノードは、ADALM2000に接続します。オシロスコープの負入力を使用しない場合には、グラウンドに接続するようにしてください。Q1とQ2としては、できるだけマッチングのとれたNPNトランジスタを使用する必要があります。これらについては、SSM2212のような製品を使用するとよいでしょう。

手順

任意波形ジェネレータ(AWG)は、ピークtoピークの振幅が400mV、オフセットが0V、周波数が1kHzの正弦波を生成するように設定します。オシロスコープのチャンネル1によって入力信号(AWGのW1)を観測し、同チャンネル2によってオペアンプ回路の出力(抵抗RL)を観測します。入力と出力の間の振幅と位相の関係を記録してください。

オシロスコープのチャンネルは500mV/divに設定し、入出力信号の数周期分が表示されるようにします。

取得した波形の例を図3に示しました。

図2. 図1の回路を実装したブレッドボード
図2. 図1の回路を実装したブレッドボード
図3. 図1の回路の入出力信号波形
図3. 図1の回路の入出力信号波形

ユニティ・ゲインのアンプ

続いては、ユニティ・ゲインのアンプを取り上げます。

目的

これまでの記事で取り上げた回路ブロックを組み合わせることにより、ユニティ・ゲインのアンプ(バッファ・アンプ)を構成することができます。差動段の負荷としてカレント・ミラーを追加することにより、シンプルなアンプ回路を大きく改良することができます。

準備するもの

  • アクティブ・ラーニング・モジュール「ADALM2000
  • ソルダーレス・ブレッドボード
  • ジャンパ線
  • 抵抗:15kΩ(1個。10kΩ と 4.7kΩ の抵抗を直列接続しても可)
  • 小信号 PNP トランジスタ:2N3906(2 個)または「SSM2220」(マッチングのとれたトランジスタ・ペア、1 個)
  • 小信号 NPN トランジスタ:2N3904(6 個。Q1 と Q2 にはSSM2212 を使用することを推奨。2N3904 が足りない場合、Q5 は「TIP31C」で代用してもかまわない)

説明

図4に示したのが、ユニティ・ゲインのアンプ回路です。青色で示したノードはADALM2000に接続します。オシロスコープの負入力を使用しない場合には、グラウンドに接続するようにしてください。

図4. ユニティ・ゲインのアンプ回路
図4. ユニティ・ゲインのアンプ回路

ハードウェアの設定

図4の回路を実装したブレッドボードを図5に示しました。

図5. 図4の回路を実装したブレッドボード
図5. 図4の回路を実装したブレッドボード

手順

W1に接続しているAWGの出力は、ピークtoピークの振幅が2V、オフセットが0V、周波数が1kHzの正弦波を生成するように設定します。オシロスコープのチャンネル1によって入力信号(W1)を観測し、同チャンネル2によってアンプ回路の出力を観測します。入力と出力の間の振幅と位相の関係を記録してください。

オシロスコープのチャンネルは1V/divに設定し、入出力信号の数周期分が表示されるようにします。

取得した波形の例を図6に示しました。

図6. 図4の回路の入出力信号波形
図6. 図4の回路の入出力信号波形 

問題

  • 図 1 の回路では、入出力間(W1 と RL)のゲインはいくつに設定されていますか。また、そのゲインはどのコンポーネントによって設定されているのでしょうか。
  • 補償用のコンデンサ C3 の値を変更してみてください。C3 の値の増減は、アンプ回路の周波数応答にどのような影響を及ぼしますか。

答えはStudentZoneで確認できます。

付録:プリント基板に実装された、より高度な回路

図7に示したのは、ディスクリート部品を使用して構成したより高度なアンプ回路です。これをプリント基板に実装したものを図8に示しました。この基板の設計ファイルと、それを拡張するための情報には、ADI GitHubの教育用ツール・リポジトリからアクセスできます。このリポジトリには、実験用のボードの設計ファイルが格納されています。

図7. より高度なオペアンプ回路
図7. より高度なオペアンプ回路
図8. 図7の回路を実装したプリント基板
図8. 図7の回路を実装したプリント基板

図7のプリント基板は、オペアンプで標準的に使われている8ピンのDIPを採用しています。そのため、ソルダーレス・ブレッドボードに挿入して使用することができます。

著者

Doug Mercer

Doug Mercer

Doug Mercerは、1977年にレンセラー工科大学で電気電子工学の学士号を取得しました。同年にアナログ・デバイセズに入社して以来、直接または間接的に30種以上のデータ・コンバータ製品の開発に携わりました。また、13件の特許を保有しています。1995年にはアナログ・デバイセズのフェローに任命されました。2009年にフルタイム勤務からは退きましたが、名誉フェローとして仕事を続けており、Active Learning Programにもかかわっています。2016年に、レンセラー工科大学 電気/コンピュータ/システム・エンジニアリング学部のEngineer in Residenceに指名されました。

Antoniu Miclaus

Antoniu Miclaus

Antoniu Miclausは、アナログ・デバイセズのシニア・ソフトウェア・エンジニアです。Linuxやno-OSドライバを対象とした組み込みソフトウェアを担当。それ以外に、アナログ・デバイセズのアカデミック・プログラムやQAオートメーション、プロセス・マネージメントにも携わっています。2017年2月から、ルーマニアのクルジュナポカで勤務。クルジュナポカ技術大学で電子工学と通信工学の学士号、バベシュボヨイ大学でソフトウェア・エンジニアリングの修士号を取得しています。