温度差を検出するセンサー回路

目的

今回の実習では、2個のダイオードを使って温度の差を検出するセンサー回路を設計します。

背景

ダイオードに一定の電流が流れている場合、ダイオードの順方向降下電圧VDは、温度が1℃上昇するごとに約2mV低下します。図1に示したのは、この特性を利用して温度の差を検出する簡単なセンサー回路です。2つのダイオードとしては、同じメーカーが提供する同じ品番の製品を使用します。両ダイオードには順方向のバイアスをかけ、値が同じ抵抗を使って、同じ温度のときに同じ値の電流が流れるようにします。ダイオードDSENSEは、温度を検出するセンサーとして使用します。一方のダイオードDREFは、一定の温度が維持される場所に配置し、リファレンスとして使用します。一定の温度としては、室温(25℃)を選択すればよいでしょう。このような構成により、両ダイオードには、温度の差に比例した電圧差VTEMPが生じます。

準備するもの

  • アクティブ・ラーニング・モジュール「ADALM2000
  • ソルダーレス・ブレッドボード
  • 抵抗:1kΩ(2個)
  • 小信号ダイオード:1N914またはその類似品(2個)

説明

2個のダイオードを使って図1の回路を構成します。本稿では、ダイオードとして「1N914」を使用することを前提とします(図2)。

図1. 温度の差を検出するためのセンサー回路
図1. 温度の差を検出するためのセンサー回路

ハードウェアの設定

VTEMPの片側の端子には、オシロスコープのチャンネル1の入力1+を接続します。もう一方の端子には入力1-を接続します。ソフトウェア・パッケージ「Scopy」の電圧計機能またはオシロスコープ機能を使用し、「True RMS」測定画面を使ってVTEMPの値をモニタします。電圧計のオートレンジ機能を使うか、オシロスコープの「Volts/Div」目盛を最高精度(10mV)に設定し、チャンネル1がイネーブルであることを確認します。Vpは5Vの電源に接続します。

図2. 図1の回路を実装したブレッドボード
図2. 図1の回路を実装したブレッドボード

手順

ステップ1

まず、両方のダイオードが同じ温度に達するようにします。つまり、TSENSE = TREFの状態を作るということです。その条件下で測定した値をオフセット電圧TAMPとして記録しておきます。このオフセット電圧は後ほど使用します。つまり、温度差のある条件で測定した値からTAMPの値を差し引くということです。

図3. TSENSE = TREF<の場合の電圧波形
図3. TSENSE = TREFの場合の電圧波形

ステップ2

センサーとして使用するダイオードDSENSEを指で挟み、強く押して暖めます。または、ストローを使ってDSENSEに直接暖かい息を吹きかけてもよいでしょう。VTEMPが安定するのを待ち、その値を記録します。

図4. TSENSE > TREFの場合の電圧波形
図4. TSENSE > TREFの場合の電圧波形
  • 可能であれば、ダイオードDSENSEを薄いビニール袋に入れて冷たくなるまで氷水に浸します。再び、VTEMPが安定するのを待ち、その値を「水の氷点」の電圧として記録します。
  • VTEMPの感度をmV/°Cで規定してください。

問題

  • ダイオードの性質を表す式から、感度(mV/°C)を導き出すことはできますか。
  • この構成におけるダイオードDREFの役割について説明してください。

答えはStudentZoneで確認できます。

著者

Doug Mercer

Doug Mercer

Doug Mercerは、1977年にレンセラー工科大学で電気電子工学の学士号を取得しました。同年にアナログ・デバイセズに入社して以来、直接または間接的に30種以上のデータ・コンバータ製品の開発に携わりました。また、13件の特許を保有しています。1995年にはアナログ・デバイセズのフェローに任命されました。2009年にフルタイム勤務からは退きましたが、名誉フェローとして仕事を続けており、Active Learning Programにもかかわっています。2016年に、レンセラー工科大学 電気/コンピュータ/システム・エンジニアリング学部のEngineer in Residenceに指名されました。

Antoniu Miclaus

Antoniu Miclaus

Antoniu Miclausは、アナログ・デバイセズのシニア・ソフトウェア・エンジニアです。Linuxやno-OSドライバを対象とした組み込みソフトウェアを担当。それ以外に、アナログ・デバイセズのアカデミック・プログラムやQAオートメーション、プロセス・マネージメントにも携わっています。2017年2月から、ルーマニアのクルジュナポカで勤務。クルジュナポカ技術大学で電子工学と通信工学の学士号、バベシュボヨイ大学でソフトウェア・エンジニアリングの修士号を取得しています。