目的
今回は、再びオペアンプについて検討することにします。オペアンプの基本については以前の記事「シンプルなオペアンプ回路」で説明しました。今回は、可変ゲイン・アンプ(VGA)と電圧制御アンプに焦点を絞ることにします。
ほとんどのオペアンプ回路のゲインの値は固定されています。ただ、そのゲインの値を変更できると便利なケースは少なくありません。この機能は、ゲインの値が固定されたオペアンプ回路の出力にポテンショメータを適用するだけで簡単に実現できます。しかし、オペアンプ回路自体のゲインを変更できるようにする方が都合が良いことも多いはずです。
可変ゲイン・アンプや電圧制御アンプは、制御用の電圧の値に応じてゲインの値が変化するアンプ回路です。その用途は、オーディオ信号のレベルの圧縮、シンセサイザ、振幅変調など多岐にわたります。可変ゲイン・アンプ/電圧制御アンプを実現するためには、まず電圧で制御できる抵抗回路を用意します。この電圧制御抵抗は基本的な回路の1つであり、バイアスをかけた単純なトランジスタを使用することで構成可能です。この電圧制御抵抗を適用すれば、アンプ回路のゲインを変更できます。また、ポテンショメータを使用して可変ゲイン・アンプ/電圧制御アンプを実現することも可能です。つまり、アンプのゲインを設定する可変抵抗としてポテンショメータを使用するということです。
準備するもの
- アクティブ・ラーニング・モジュール「ADALM2000」
- ソルダーレス・ブレッドボード
- ジャンパ線キット
- 抵抗:1kΩ(2個)、4.7kΩ(1個)、10kΩ(3個)
- ポテンショメータ:10kΩ(1個)
- オペアンプ:「OP97」(1個)
- NPNトランジスタ:「2N3904」(1個)
トランジスタによって実現した電圧制御アンプ
まずは、トランジスタを使用して構成した電圧制御アンプについて検討します。
背景
ここでは、図1に示す回路について考えます。
アンプ回路そのものの構成は、基本的な非反転アンプに似ています。その基本的な回路に対し、抵抗R2と並列に接続されたトランジスタと抵抗を追加しています。トランジスタQ1は、そのときの状態(オンまたはオフ)に基づいて2種類のゲインの設定を可能にするスイッチとして機能します。
ハードウェアのセットアップ
トランジスタや抵抗などを使用して、実際に電圧制御アンプを構成しましょう。図1の回路をソルダーレス・ブレッドボード上に実装してください(図2)。
手順
この例では、ADALM2000の任意波形ジェネレータ(AWG)を信号源として使用します。1つ目の出力(W1)によってアンプ回路に正弦波信号を入力します。ソフトウェア・ツール「Scopy」を使用し、正弦波のピークtoピークの振幅を2V、周波数を1kHzに設定してください。2つ目の出力(W2)はQ1の制御に使用します。こちらは、振幅が2V、周波数が1Hzの方形波を出力するように設定してください。オペアンプには、ADALM2000によって正の電源電圧(5V)と負の電源電圧(-5V)を供給します。オシロスコープ機能を使用し、入力信号がチャンネル1、出力信号がチャンネル2に表示されるように設定してください。
以上のような設定により、オシロスコープ機能の画面に図3のような信号波形が表示されるはずです。図1の回路では、トランジスタの動作を制御し、その状態に基づいてゲインを設定します。ゲインが2種類の値をとるので、出力信号の振幅も2種類の値をとる(変化する)ことになります。
ポテンショメータによって実現した可変ゲインの反転アンプ
続いて、可変ゲインの反転アンプの例を紹介します。その回路はポテンショメータを使用することで構成します。
背景
図4に示した回路をご覧ください。
この反転アンプでは、標準的な帰還抵抗の代わりにポテンショメータを使用しています。このように回路を構成すれば、マニュアル操作(手作業)によって出力電圧を制御することができます。
ハードウェアのセットアップ
図4の回路をソルダーレス・ブレッドボード上に実装してください(図5)。
手順
AWGを使用して、アンプ回路に正弦波信号を入力します。ピークtoピークの振幅は2V、周波数は1kHzに設定してください。オペアンプには、ADALM2000を使用して±5Vの電源電圧を供給します。オシロスコープ機能により、入力信号がチャンネル1、出力信号がチャンネル2に表示されるように設定してください。
オシロスコープ機能の画面には、図6のような信号波形が表示されるはずです。この回路では、ポテンショメータによって決まる帰還抵抗の値に基づいて反転増幅された信号が出力されます。
ポテンショメータによって実現した可変ゲインの反転/非反転アンプ
最後に取り上げるのは、ポテンショメータを使用して構成した可変ゲインの反転/非反転アンプです。
背景
ここでは、図7の回路について考えます。
この回路では、ポテンショメータをマニュアル操作することで出力電圧を制御することができます。ポテンショメータを適切に調整すれば入力信号を反転した出力が得られます。
ハードウェアのセットアップ
図7の回路をソルダーレス・ブレッドボード上に実装してください(図8)。
手順
AWGを使用し、図7のアンプ回路に正弦波信号を入力します。ピークtoピークの振幅は2V、周波数は1kHzに設定してください。オペアンプには、ADALM2000を使用して±5Vの電源電圧を供給します。オシロスコープ機能を使用し、入力信号がチャンネル1、出力信号がチャンネル2に表示されるように設定してください。
オシロスコープ機能の画面には、図9のような波形が表示されるはずです。この構成を使用する場合、出力信号は入力信号の振幅の範囲で変化します。
問題
可変ゲイン・アンプが役に立つアプリケーションの例をいくつか挙げてください。
答えはStudentZoneで確認できます。