質問:
絶対最大定格の表の中にある パラメータの1つだけ、ほんの ちょっと上回っても大丈夫でしょうか?

回答:
たいていの人には答えはわかりきっていると思いますが、それでもいくらか説明が必要かもしれません…。あ、そうそう、答えは「駄目!」です。
大部分のデータシートに記載されている情報の大多数は「代表値(typ.)」のデータです。グラフ、表、図面に示された性能は、推奨の動作条件を遵守する限り、予測可能なものであり、新しい設計で容易に再現できるものです。最小値と最大値もありますね。メーカーが指定するこれらの限度値は、徹底的なテストや歩留まり解析、あるいは設計によって保証されています。データシートには「絶対最大定格」(ABSOLUTE MAXIMUM RATINGS)という項目もあります。これは、デバイスが「許容することができる」絶対的な最大の定格であり、決してこの値で動作するという意味ではありません。絶対最大定格の限界値からは遠ざかって使うことがベストです。 火と同じで、近づくとやけどするかもしれません。
ここでABSOLUTE MAXIMUM RATINGSと大文字を使ったのは、なにも劇的な効果を狙ったからではありません(ちょっとはそれもありますが…)。データシートでは、このように大文字で表記されています。大文字を使う理由は、この表が非常に重要だからです。次に示す文章は、絶対最大定格の意味を説明しています。これは、当社のデータシートの絶対最大定格の表のすぐ下に記載されています。
「上記の絶対最大定格を超えるストレスを加えると、デバイスに恒久的な損傷を与えることがあります。この規定はストレス定格のみを指定するものであり、この仕様の動作セクションに記載する規定値以上でのデバイス動作を定めたものではありません。デバイスを長時間絶対最大定格状態に置くと、デバイスの信頼性に影響を与えることがあります。」
このままでかなりはっきりしていると思いますが、念のためにこの文章を言い換えるとこうなります。「デバイスは、絶対最大定格の表に記載された値で動作するように設計されているわけではありません。絶対最大定格値あるいはそれ以上の値で動作させた場合、デバイスに恒久的な損傷を与える可能性が非常に高くなります!」
皆さん、回路やシステムを設計するときは、私の忠告に従って、万が一にも絶対最大定格値に近づくような危険を冒さないように注意してください。一般的な設計の心得としては、設計に余裕を持たせることです。デバイスを絶対最大定格値のすれすれで動作させてみようなどという考えは捨ててください。そんなものは決してよいアイデアどころではなく、特に信頼性において将来に禍根を残すことになります。