質問:
A/Dコンバータのアンチエイリアス・フィルタがスプリアスとノイズをちゃんと除去してくれません。なぜでしょうか?

回答:
A/Dコンバータ(ADC)がいわゆる「低速」であっても、内部フロントエンド回路の帯域幅(フル・パワー帯域幅ともいいます)が相当広いことがあるということを知っておくのは大切です。コンバータは、次のサンプルに間に合うようにセトリングできるような内部フロントエンドの帯域幅を必要とします。こうして、設計者が取得してデジタル信号化しようとしている情報を保持するわけです。
アンチエイリアス・フィルタ(AAF)は一般にADCの前に置かれますが、簡単な単極RCネットワークから複雑な多極トポロジーまでさまざまなものがあります。いずれの場合も考え方は同じです。つまり、対象となる周波数帯域に折り返す(エイリアスする)可能性のある、不要なノイズやスプリアスを除去することです。AAFを設計したり、使用したりするときは、注意が必要です。フィルタ設計の対象となる帯域(パスバンド)だけでなく、帯域外(ストップバンド)の除去のことも理解しておくべきです。
ストップバンドでは、コンバータのアナログ内部フロントエンド回路の帯域幅をはるかに超える不要な周波数を連続的に除去するようにします(たとえば、ADCのサンプル・レートが100MSPS、入力帯域幅が1GHzの場合、AAFはナイキスト帯域(50MHz)ではなく1GHzまでもの周波数を除去しなければなりません)。さもないと、ストップバンド周波数応答が上昇し始めた場合に、フィルタ設計内に2番目のパスバンド領域ができてしまいます。この2番目のパスバンド領域はストップバンドに入るはずですが、まだコンバータのアナログ内部フロントエンド帯域幅内に残っていると、不要なノイズやスプリアスが本当の対象帯域に折り返される可能性があります。
これを回避するには、帯域内と帯域外の両方でフィルタ設計を理解することが大切です。コンバータのデータシートを調べて、その入力帯域幅も確認しておいてください。楕円、チェビシェフ、多段トポロジーなど、フィルタによっては、特にストップバンド除去性能が低下しやすいものがあります。フィルタ設計を選ぶ前に、このことを理解しておいてください。AAFの最終段に部品を数点追加して、簡単なローパス・フィルタを作成するのも効果的でしょう。ただし、部品数が増えるほど、対象帯域の減衰量が増加するというトレードオフがあります。
このような問題を防ぐ1つの方法は、フィルタの周波数応答を測定することです。1 周波数応答を測定すれば、フィルタの応答と減衰量の大きさがほぼわかります。対象帯域とコンバータの内部フロントエンド帯域幅をはるかに超えるフィルタの周波数応答を測定すれば、フィルタのストップバンド領域がどのように機能しているかわかるでしょう。 フィルタ、トポロジー、AAFの詳細については、下記のリンクをクリックしてください。
1AN-835: 高速A/Dコンバータ(ADC)のテストと評価について (pdf, 2.12 MB)