さまざまな差動アンプの違い

質問:

どうしてよいかわかりません。なぜ私のADC差動アンプ・ ドライバの出力電圧は、なるべきはずの値にならないのでしょうか?

RAQ:  Issue 36

回答:

おそらく、お選びになった差動アンプの種類に関係しているのではないでしょうか。お客様の回路図を調べてみると、アンプは設計通りに動作していることがよくあります。問題は、ただ差動アンプに慣れていないといった実に単純な原因によるものだったりします。

正しい差動アンプを選ぶことは、新しい自動車を選ぶのに似ています。たくさんのモデルの中から選ばなければなりませんが、どれにもさまざまなオプションや機能が搭載されています。どれもAの地点からBの地点へ移動するという基本的な働きには変わりありません。それなのにどれにも独自の微細な違いがあり、そこに問題の根っこが潜んでいることがあります。

差動アンプを選択するときは、オプションや機能が重要になります。差動アンプは、スポーツカー、ミッドクラス、エコノミーという3つの基本的なクラスに分けられます。クラスによって提供されるものは若干異なります。1

スポーツカー・クラスの差動アンプは、最高の周波数で動作します。このクラスの差動アンプには、ギガヘルツの帯域幅、1マイクロ秒当たり1万ボルトのスルーレート、入出力コモン・モード電圧を調整するVCMピン、超低歪み、シングルエンドまたは差動の入力駆動能力があります。こうしたアンプは、一般にブロードバンドやIF 通信アプリケーションで使用されます。

ミッドクラスの差動アンプは、数百メガヘルツのレンジで動作し、低歪み、高いDC性能、出力ゲイン・バランス、位相整合、偶数次高調波を抑制する機能、高スルーレート、シングルエンドまたは差動の入力駆動能力、出力コモン・モード電圧を簡単に調整するVOCMピンを備えています。デュアル・タイプのモデルもあります。このクラスのアンプの用途はたくさんありますが、通信システムや計測器などがあります。

エコノミー・クラスのモデルは、シングル・パッケージにゲイン設定抵抗、帰還抵抗およびアンプのペアを集積して構成されており、設計を簡素化し、基板面積を節約できます。このクラスでは、高い入力インピーダンス、低消費電力、低ノイズが得られます。一般にシングルエンドの入力で使用され、不平衡の差動出力を持ちます。動作レンジは数十メガヘルツで、主に低消費電力の高精度アプリケーションで用いられています。

そういうわけで、今度差動アンプを買いに行くときは、店に置いてあるモデルを一通り見て回り、タイヤを蹴っ飛ばしたり、試しに乗ってみたり(シミュレーション)してください。そうしておいてよかったと思うはずです。いつものように取扱説明書(データシート)を隅から隅まで読むことをお忘れなく。そうすれば、多大な時間を無駄にすることなく、購入された差動アンプを最大限活用することができるでしょう。

著者

John Ardizzoni

John Ardizzoni

John Ardizzoniは、アナログ・デバイセズの高速リニア・グループの上級アプリケーション・エンジニアです。 マサチューセッツ州ノースアンドーバーのメリマック・カレッジでBSEE(電子工学士)を取得し、2002年にアナログ・デバイセズに入社しました。エレクトロニクス業界で30年以上のキャリアがあります。