質問:
できるだけシンプルな回路によって、2つの光源の強度の差を測定したいと考えています。何か良い方法はありませんか?
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回答:
計装アンプのゲイン設定用の抵抗を2つのフォトレジスタに置き換えれば、ご希望の測定を実現できます。
照明に関するアプリケーションの中には、2つの光源を対象とするものがあります。そうしたアプリケーションでは、多くの場合、個々の光の強度(光度)を測定することよりも、両者の相対強度を測定することの方が重要です。2つの光源が同等の強度で光っていることを保証したいというケースが多いからです。例えば、1つの建物内にある制御室(部屋1)の内部の明るさを別の部屋(部屋2)の内部の明るさと比較するといったことが行われます。それにより、昼夜を問わずいつでも調整を実施できるようにするわけです。あるいは、建物内に生産システムが存在する場合、照明の状態が変動しないことを保証したいケースもあるでしょう。そのようなニーズに対応するために、相対強度の測定を利用することもできます。
光の相対強度を測定する方法の1つに、2つの光検出器を用意して、それらの出力の差を測定するというものがあります。その出力の差は、グラウンドを基準とするシングルエンドの電圧信号に変換されます。この点が問題になるケースもあるはずです。
図1の回路はシンプルなものですが、前述した問題を解決する有効な手段となります。ここでは、外付けの抵抗によってゲインを設定できる計装アンプ「AD623」を使用しています。
この回路では、2つの特殊な抵抗R1とR2を使用しています(以下、それぞれの抵抗をLDR1、LDR2と表記する場合があります)。2つの光源の明るさはR1で測定します。
LDRとは、「Light Dependent Resistor(光依存性抵抗)」の略です。フォトレジスタという呼び方の方が馴染みがあるかもしれません。フォトレジスタは、入射された光の強度によって値が変化する抵抗を備えた受動部品です。フォトレジスタには様々な形状、様々な色の製品があります。警報器やスイッチング・デバイス、時計、街路灯といった多くの電子機器で効果的に使われています。
一般に、フォトレジスタの抵抗は、暗闇の中では約1MΩといった非常に高い値になります。フォトレジスタに光が当たると、その抵抗値は数kΩのレベルまで低下します。10ルクスの場合に10kΩ ~ 20kΩ、100ルクスの場合に2kΩ~4kΩといった具合です。
この回路で使用しているフォトレジスタは、RadioShackから入手しました(品番は「276-1657」)。
図1の回路は、1個のAD623と2個のフォトレジスタで構成されています。メインのセンサーであるフォトレジスタR1は、光源のリファレンス・ポイントとなります。つまり、光の強度の基準として使用されるものです。上述したアプリケーションの例で言えば、制御室に配置されることになります。2つ以上の光源を対象とするのであれば、比較を行っている最中は、常にR1側の光源を基準として使用する必要があります。実際、この比較は日中も夜中にも行われる可能性があります。抵抗値の変化が完了するまでには、8ミリ秒から12ミリ秒かかることを頭に入れておいてください。また、抵抗値が初期値に戻るまでには数秒かかります。
この回路は非常にシンプルなものです。システムの電源電圧は±5V、両入力の入力電圧はVINです。各フォトレジスタの一端には同じ値の電圧がかかり、もう一端はグラウンドに接続されています。両フォトレジスタに同じ強さの光が当たった場合、両者の抵抗値は等しくなり、電流値の差もゼロになります。その結果、出力電圧は0Vになります。2つの部屋の明るさに差がある(2つの光源の強度に差がある)場合、この回路からは0Vではない電圧が出力されます。その電圧の符号は、どちらの部屋が明るいかを表します。出力電圧が正の値であれば、フォトレジスタR2により多くの光が当たっているということです。出力電圧が負の値の場合には、その逆ということになります。
図3に、オシロスコープによる入力電圧、出力電圧の観測結果を示しました。入力電圧は周波数が1kHzで振幅が1Vp-pの矩形波です。約2Vが出力されている部分は部屋2の光源の方が明るいということを表しています。
ここで、図1の回路を使用し、AD623の出力側に2個のLEDを接続しているとします。1つはアノードをAD623の出力に接続した赤色LEDで、もう1つはアノードをグラウンドに接続した黄色LEDです。赤色LEDは、部屋2の方が明るい(AD623の出力電圧が正の値である)場合にターンオンします。一方、黄色LEDは、部屋1の方が明るいときにターンオンします。LEDの明るさは、その部屋の相対強度のレベルを表します。
両方の部屋が同じ明るさである場合、光の強度は等しくなります。そうすると、AD623の出力は0Vになり、LEDは両方ともオフになります。
回路の出力側の電圧は、次式で求められます。
出力の実効値は、2つの光源の強度を表します。
図1の回路を少し変更すると、別の機能を実現できます。まず、LDR1の値を調節し、ある明るさのときの正確な抵抗値を割り出します。その上で、LDR1を通常の固定抵抗に置き換えます。置き換え後の回路の機能は、LDR2の値を常にある一定の明るさと比較するというものになります。固定抵抗は、基準になる既知の光に対するリファレンスの役割を果たします。この種の回路は、光源を追尾するシンプルなデバイスであるソーラー・シーカーとして使用できます。ソーラー・シーカーは、太陽電池パネルが常に太陽と一直線になるようにするために使われます。あるいは、どこか暗い場所に閉じ込められた人を光の射す方向に誘導する探索/救助ロボットで利用することも可能です。より高度なソーラー・シーカーとして、フォトレジスタを回転させるためにサーボ・モータが使われることもあります。
AD623を使用し、2つの電球をそれぞれLDR1、LDR2と共に異なる部屋に配置することにより、それらの効率を把握することができます。この回路は消費電力が少なく、2個の単3電池だけで駆動できます。したがって、消費電力が重視されるアプリケーションにも適用可能です。