携帯用ディスプレイで安定的な検出を可能にする新世代のタッチスクリーン・コントローラ

表示領域での物理的なタッチの発生と位置を検出するタッチスクリーン・ディスプレイは、機械式なボタンなどに代わってスマートフォン、MP3プレーヤ、GPSナビゲーション・システム、デジタル・カメラ、ラップトップ・コンピュータ、ビデオ・ゲーム、ラボ用機器などさまざまな機器でさかんに使用されるようになっています。第1世代の機器はあまり正確でなく、誤検出が多く、電力も消費し過ぎていました。AD78791などの新世代のタッチスクリーン・コントローラは、精度が向上し、消費電力も少なく、測定結果の選択機能もあります。さらに、温度、電源電圧、タッチ圧力も検出できるため、最新のタッチスクリーン搭載ディスプレイでタッチの安定的な検出が容易にできます。

タッチ・スクリーンはどのように動作するか?

まず、抵抗膜方式タッチ・スクリーンの動作を考えてみましょう。図1は、タッチ・スクリーンの構造と動作の基本図です。

Figure 1
図1. 抵抗膜方式タッチ・スクリーンの構造

スクリーンは2枚のプラスチック・フィルムで構成されています。それぞれのプラスチック・フィルムは金属導電層(通常は酸化インジウム―ITO)でコーテングされ、互いにエアギャップで分離されています。2枚のうち1枚のプレート(上図ではXプレート)に電源電圧を加え励起します。スクリーンをタッチすると、2枚の導電プレートがタッチ点で接触し、Xプレートに沿って抵抗分割が生じます。タッチした点の電圧がXプレート上の位置になりますが、これは図2に示すようにY+電極で検出されます。続いて、同じプロセスが繰り返され、Yプレートを励起し、X+電極によってY位置を検出します。

Equation 1
Figure 2
図2. X軸位置の測定

次に、Y+とX-の間に電源電圧を印加し、さらにスクリーン上で2種類の測定を行います:X+での電圧をZ1として測定し、Y-での電圧をZ2として測定します。これらの測定値を使用して、次の2つの方法のうちいずれかの方法でタッチ圧力を見積もることかできます。Xプレートの抵抗が既知であれば、次式によってタッチ抵抗を求めます。

Equation 2

XプレートとYプレートの両方の抵抗が既知であれば、次式によってタッチ抵抗を求めます。

Equation 3

タッチ抵抗が大きいほど、タッチ圧力はより弱いことを意味します。

AD7879タッチスクリーン・コントローラ

AD7879タッチスクリーン・コントローラは、4線式抵抗膜方式タッチ・スクリーンをコントロールする目的で設計されています。タッチの検出だけでなく、温度と補助入力の電圧も測定します。温度、バッテリ電圧、補助入力電圧の測定とともに、4つのタッチ測定のすべてを内蔵シーケンサにプログラムすることができます。広い電源電圧範囲(1.6~3.6V)、小さいサイズ(1.6mm×2mmの12ピンWLCSPまたは4mm×4mmの16ピンLFCSP)、低消費電力(変換時に480μA、シャットダウン・モードで0.5μA)により、AD7879は広範な製品に柔軟に使用できます。

タッチによるウェイクアップ

AD7879は、スクリーンのタッチによって起動してAD変換を始め、手を離すとパワーダウンするように設定できます。この機能は、節電が重要なバッテリ駆動の機器に効果的です。AD7879は各変換シーケンスが終わるとホスト・マイクロコントローラに割込み(Interrupt)を送信します。その割り込みによりホストのマイクロコントローラは低消費電力モードからウェイクアップし、データ処理を開始します。したがって、スクリーンがタッチされるまでマイクロコントローラもほとんど電力を消費しません。図3は、タッチによるウェイクアップ機能の設定です。

Figure 3
図3. タッチによるウェイクアップの設定

スクリーンにタッチすると、XプレートとYプレートが接続し、デグリッチ入力がローになり、AD7879がウェイクアップして変換を開始します。変換の最後に、割込みがホストに送信されます。

測定結果のフィルタリング

標準的なディスプレイでは液晶ディスプレイ(LCD)の上に抵抗プレートが配置されるので、位置測定に際しその液晶から多くのノイズの影響を受けます。これはインパルス・ノイズとガウス・ノイズが混合したノイズです。AD7879の中心値フィルタと平均値フィルタは、このノイズを低減します。位置測定用にサンプル1個ではなく、2個、4個、8個、あるいは16個のサンプルをとるようにシーケンサを設定できます。これらのサンプルを分類し、中心値フィルタをかけ、平均値をとることで、ノイズが低く、精度の高い結果が得られます。図4は、この原理をもっとわかりやすく示したものです。16個の位置を測定し、その値を最低値から最高値までランク付けします。インパルス・ノイズの影響を低減するために最大測定値から下4つまでの値と最小測定値から上4つまでの値を取り除きます;ガウス・ノイズの影響を低減するために残りの8個のサンプルの平均値をとります。これには、必要なホストの処理量の低減とさらにホスト/タッチスクリーン・コントローラ間の通信量が低減するという利点もあります。

Figure 4
図4. 中心値/平均値フィルタリング

参考資料

Pratt, Susan. Ask The Applications Engineer—35, "Capacitance Sensors for Human Interfaces to Electronic Equipment." Analog Dialogue. Volume 40, Number 4.

Kearney, Paul. "The PDA Challenge—Met by the AD7873 Resistive-Touch-Screen Controller ADC." Analog Dialogue. Volume 35, Number 4.

著者

Gareth Finn

Gareth Finn