第2のLCフィルタを追加した電流モードの降圧コンバータ、そのモデリングと制御

はじめに

最新の信号処理システムには、消費電力を抑えつつ、高い性能を発揮することが求められます。代表的な例としては、A/Dコンバータ(ADC)、フェーズ・ロック・ループ(PLL)、RFトランシーバーを使用する信号処理システムが挙げられます。ノイズに敏感なそれらのデバイスにとって最適な電源を選択するのは、システム設計者にとって難易度の高い作業です。高い効率と高い性能の間には、必ずトレードオフの関係があるからです。

従来、ノイズに敏感なデバイスの給電には、LDO( 低ドロップアウト) レギュレータがよく使われていました。LDOレギュレータを使えば、ADC、PLL、RFトランシーバーに対して、システム電源に含まれる低周波のノイズを排除して電力を供給できるからです。しかし、一般にLDOレギュレータの効率は高くありません。特に、LDOレギュレータによって、電源レールより数Vも降圧しなければならないケースでは、効率の低さが顕著になります。このような状況では、LDOレギュレータの効率は、一般に30%~50%程度にしかなりません。それに対し、スイッチング・レギュレータを使用すれば、90%以上の効率が得られます。

スイッチング・レギュレータは確かにLDOレギュレータよりも効率に優れます。しかし、ノイズが大きいため、ADCやPLLに直接給電すると、それらの性能が大きく劣化してしまう可能性があります。スイッチング・レギュレータのノイズ源の1つは出力リップルです。その影響は、ADCの出力スペクトルに大きなトーンやスプリアスとして現れる場合があります。S/N比やスプリアスフリー・ダイナミック・レンジ(SFDR)の低下を防ぐには、スイッチング・レギュレータの出力リップルと出力ノイズを最小限に抑えることが非常に重要です。

高い効率と高いシステム性能を両立するには、図1に示すように、スイッチング・レギュレータの出力に第2のLCフィルタ(L2とC2)を追加する方法が有効です。それにより、リップルとノイズを低減することができます。しかし、2段構成のLCフィルタには欠点もあります。この電力段の伝達関数は、不安定になりやすい4次システムとしてモデル化されます。電流ループで取得する値(サンプル・データ)に対する影響1も考慮すると、制御から出力までを網羅する伝達関数は5次関数になります。代替策は、第1のLCフィルタ(L1とC1)からの出力電圧を検出し、システムの安定化を図ることです。しかし、この方法を採用すると、負荷電流が多い場合に第2のLCフィルタにおける電圧降下が大きくなり、出力電圧のレギュレーションが低下します。そうすると、一部のアプリケーションには適用できなくなります。

本稿では、スイッチング・レギュレータに第2のLCフィルタを追加する手段として、新たなハイブリッド型の帰還方法を提案します。その方法を採用すれば、ADC、PLL、RFトランシーバー向けに、高効率で高性能な電源回路を構築することができます。しかも、アプリケーションのあらゆる負荷条件に対し、十分な安定性と出力精度を得ることが可能になります。

第2のLCフィルタを追加したDC/DCコンバータについては、いくつかの研究結果が報告されています25。具体例を挙げると、「Control Loop Design for Two-StageDC-to-DC Converters with Low Voltage/High CurrentOutput( 低電圧/ 大電流出力の2 段DC/DCコンバータの制御ループ設計) 」と「Comparative Evaluation ofMultiloop Control Schemes for a High Bandwidth ACPower Source with a Two-Stage LC Output Filter(2段LC出力フィルタを備える広帯域幅AC電源用のマルチループ制御機構の比較評価)」というものがあります。これらの文献では、電圧モードの2段コンバータのモデリングと制御について論じられています。しかし、その手法を電流モードのコンバータに直接適用することはできません。第2のLCフィルタを追加した電流モードのコンバータについては、「Secondary LC Filter Analysis and DesignTechniques for Current-Mode-Controlled Converters(電流モード制御のコンバータに適用する第2 のLCフィルタの解析/設計手法)」と「Three-Loop Control forMultimodule Converter Systems(マルチモジュール・コンバータ・システム用の3ループ制御)」の2つが挙げられます。これらの文献では、電流モードのコンバータの解析/モデリングについて述べています。しかし、どちらの文献も、第2のインダクタのインダクタンスが第1のインダクタよりもはるかに小さいと仮定しています。この仮定は、現実のアプリケーションにおいて必ず成立するとは限りません。

図1 . 第2のLCフィルタを追加した電流モードの降圧コンバータ
図1 . 第2のLCフィルタを追加した電流モードの降圧コンバータ

本稿では、以下のように解説を進めていきます。

まず、第2のLCフィルタを追加した降圧コンバータの小信号モデルを対象として解析を行います。そのために、制御から出力までに対応する新たな5次の伝達関数を示します。その伝達関数は、周辺のインダクタやコンデンサのパラメータに依存しない非常に正確なものです。

次に、新たなハイブリッド型の帰還方法を提案します。その方法を採用すれば、出力電圧のDC精度を良好に保ちつつ、安定性を得るための十分なマージンを確保することができます。実用的な回路の基本的な基準にできるように、帰還パラメータに関する制限についての解析結果を初めて示すことにします。

続いて、電力段の小信号モデルと新たなハイブリッド型の帰還方法に基づき、補償回路を設計します。クローズドループの伝達関数の安定性を、ナイキスト・グラフを使って評価します。

更に、アナログ・デバイセズのスイッチング・レギュレータIC「ADP5014」を用いた簡単な設計例を示します。同ICに第2のLCフィルタを付加することにより、高い周波数範囲においてLDOレギュレータを使う場合よりも更に高い出力ノイズ性能が得られることを示します。

最後に、付録1と付録2のセクションを設けました。それぞれには、電力段と帰還回路の伝達関数(小信号に対応)を示しておきます。

電力段の小信号モデリング

図2は、図1の回路図を小信号ブロック図として描き直したものです。制御ループは、内側の電流ループと外側の電圧ループで構成されます。電流ループのサンプル・データの係数He( s )は、Raymond B. Ridley氏が「A New,Continuous-Time Model for Current-Mode Control(電流モード制御のための新たな連続時間モデル)」で提案したモデルに基づいています。なお、本稿では、入力電圧と負荷電流に関連する伝達関数については考慮しません。そのため、図2の簡素化された小信号ブロック図では、入力電圧と負荷電流に対する外乱はないと仮定しています。この点には注意してください。

図2 . 第2のLCフィルタを追加した電流モードの降圧コンバータの小信号ブロック図
図2 . 第2のLCフィルタを追加した電流モードの降圧コンバータの小信号ブロック図

降圧コンバータの例

本稿で例にとる電流モードの降圧コンバータは、以下のパラメータを備えるものとします。この条件下で、新たな小信号モデルを示します。

  • Vg:5V
  • VO:2V
  • L1:0.8µH
  • L2:0.22µH
  • C1:47µF
  • C2:3 × 47µF
  • RESR1:2mΩ
  • RESR2:2mΩ
  • RL:1Ω
  • Ri:0.1Ω
  • Ts:0.833マイクロ秒

電流ループのゲイン

最初に着目する伝達関数は、デューティ・サイクル変調器の出力で測定した電流ループのゲインです。ここで得られる電流ループの伝達関数は(付録1の式(16)を参照)、2つの複素共役極の対を持つ4次システムです。このシステムでは、2つの周波数ω1、ω2で共振が生じます。これらの共振周波数は、L1、L2、C1、C2で決まります。ドメイン・ゼロは、負荷抵抗RL、C1、C2によって生成されます。1つの複素共役ゼロの対(ω3)は、L2、C1、C2で決まります。これ以外に、電流ループのサンプル・データの係数He(s)により、右半平面(RHP:Right Half Plane)の複素ゼロの対が、スイッチング周波数の1 /2の周波数に生成されます。

第2のLCフィルタを持たない電流モードの降圧コンバータと比べて、この新たな電流ループのゲインでは、複素共役極の対と複素共役ゼロの対が1つずつ多くなります。両者は互いのすぐ近くに位置します。

図3 . 電流ループのゲイン
図3 . 電流ループのゲイン

図3は、様々な外部ランプ値に対する電流ループのゲインのグラフです。外部スロープ補償を適用しない場合(Mcが1の場合)、電流ループには位相余裕がほとんどないことが見てとれます。それが原因で、サブハーモニック発振が生じる可能性があります。外部スロープ補償を適用すると、ゲインと位相のグラフの形状は変わりませんが、ゲインの振幅が減少し、位相余裕が増加します。

制御から出力までのゲイン

電流ループが閉じている場合、制御から出力までの部分に伝達関数が新たに生成されます。その伝達関数(付録1の式(19)を参照)は、1つのドメイン極(ωp)と2つの複素共役極の対(ωlとωh)を持つ5次システムです。ドメイン極は、主に負荷抵抗RL、C1、C2によって決まります。周波数が低い方の共役極の対は、L2、C1、C2で決まり、周波数が高い方の共役極の対は、スイッチング周波数の1/2の周波数にあります。また、2つのゼロは、それぞれC1のESR(等価直列抵抗)とC2のESRによって生成されます。

図4に示したのは、制御から出力までのループのゲインです。外部ランプ値を様々な値に変更した結果を示しています。通常の電流モードの降圧コンバータと比べると、第2のLCフィルタを追加した電流モードの降圧コンバータは、制御から出力までのゲインにおける複素共役極の対( ωl) が1つ多くなります。また共振極が追加されることにより、最大で180°の位相の遅れが加わります。位相余裕が大きく減少するので、タイプIIIの補償を適用しても、システムは不安定になる恐れがあります。図4を見ると、もう1つ確認できることがあります。スロープ補償の強化に伴い、電流モード制御から電圧モード制御へ移行する様子がはっきりと現れています。

図4 . 制御から出力までの伝達関数
図4 . 制御から出力までの伝達関数

ハイブリッド型の帰還方法

本稿で提案するのは、図5(a)に示した新たなハイブリッド型の帰還回路です。その基本的な考え方は、第1 のLCフィルタにコンデンサによる帰還経路をもう1つ追加することで、制御ループを安定化させようというものです。以下では、抵抗分圧器を介した出力からの電圧帰還を「リモート帰還」、コンデンサCFを介した内側の電圧帰還を「ローカル帰還」と呼ぶことにします。リモート帰還とローカル帰還は、周波数領域においてそれぞれ異なる情報を伝送します。リモート帰還は、周波数の低い信号を検出して出力のDC調整が適切に行われるようにします。一方のローカル帰還は、周波数の高い信号を検出し、システムがAC的に良好な安定性を確保できるようにします。図5(b)は、図5(a)に対応する小信号ブロック図です。このブロック図は一部簡素化してあります。

図5 . ハイブリッド型の帰還方法を適用した電流モードの降圧コンバータ( a )。( b)はその小信号ブロック図です。
図5 . ハイブリッド型の帰還方法を適用した電流モードの降圧コンバータ( a )。( b)はその小信号ブロック図です。

帰還回路の伝達関数

ハイブリッド型の帰還回路の等価伝達関数( 付録2の式(31)と式(32)を参照)は、従来の抵抗分圧器による帰還回路の伝達関数とはかなり異なります。ハイブリッド型の帰還回路の伝達関数は、ゼロが極よりも多くなります。ゼロが追加されることで、L2とC2で決まる共振周波数において、位相が180°進みます。つまり、この新たな帰還方法では、制御から出力までの伝達関数で生じる位相の遅れが、帰還回路の伝達関数に追加されるゼロによって補償されるということです。これにより、制御から帰還までの伝達関数に対する位相補償の設計が容易になります。

帰還パラメータの制限

帰還回路の伝達関数には、電力段のパラメータの他に2つのパラメータがあります。1つは、パラメータβ(付録2の式(30)を参照)です。これは出力電圧の増幅率としてよく知られています。一方のパラメータα(付録2の式(29)を参照)は全く新たな概念です。

この帰還パラメータαを調整することにより、帰還回路の伝達関数の振る舞いを理解することができます。図6は、αの変化に応じて伝達関数のゼロが変化する様子を表したものです。αを小さくしていくと、1つの共役ゼロの対が左半平面(LHP:Left Half Plane)からRHPに移動する様子がはっきりと見てとれます。

図6 . 帰還パラメータα が帰還回路のゼロに及ぼす影響
図6 . 帰還パラメータα が帰還回路のゼロに及ぼす影響

図7 は、帰還回路の伝達関数をグラフで示したものです。αを様々な値に設定し、それに応じた結果をプロットしています。α を10-6まで小さくすると( 例えば、RAを10kΩ 、CFを1nFとする) 、帰還回路の伝達関数には180°の位相遅れが生じ、複素ゼロはRHPのゼロになります。なお、帰還回路の伝達関数は新たな形に簡素化されています(付録2の式(33)を参照)。ゼロをLHPに維持するには、帰還パラメータαが以下の条件を満たす必要があります。

数式 0

式1から、帰還パラメータαの最小値がわかります。この条件を満たす限り、回路を容易に安定化させることができます。ただし、RAとCFは、負荷過渡応答において出力電圧の変化に対するRCフィルタとして機能します。したがって、αが非常に大きい場合には、負荷過渡応答の性能が低下します。したがって、αを過度に大きくしてはなりません。実用的な設計においては、パラメータαを、最小値よりも20%~30%程度大きい値にすることが推奨されます。

図7. 本稿で提案するハイブリッド型の帰還回路の伝達関数。パラメータα の値を変化させた結果を示しています。
図7. 本稿で提案するハイブリッド型の帰還回路の伝達関数。パラメータα の値を変化させた結果を示しています。

ループの安定性を補償するための設計

補償に向けた設計

制御から帰還までの伝達関数GP(s)は、制御から出力までの伝達関数Gvc(s)と帰還回路の伝達関数GFB(s)の積によって導出できます。補償用の伝達関数GC(s)は、1つのゼロと1つの極を持つように設計することになります。図8に、制御から帰還までの伝達関数、補償用の伝達関数、クローズドループの伝達関数TV(s)の漸近ボーデ線図を示しました。補償用の伝達関数を設計する手順は、以下のようになります。

まず、クロス周波数fcを定めます。帯域幅はfz1によって制限されるので、fcはfz1よりも小さい値にすることが推奨されます。

fcにおけるGP(s)のゲインを計算します。GC(s)の中心周波数帯域のゲインは、GP(s)の逆数とします。

電力段のドメイン極(fp1)に補償用のゼロを配置します。

出力コンデンサC1のESRによって生成されるゼロ(fz2)に、補償用の極を配置します。

図8 . 制御から出力までの伝達関数とハイブリッド型の帰還回路の伝達関数に基づいて設計したループ・ゲイン

ナイキスト・グラフによる安定性の解析

図8を見ると、クローズドループの伝達関数TV(s) は0dBと3回交差しています。図9に示すように、ナイキスト・グラフを使用して、クローズドループの伝達関数の安定性を解析します。グラフを見ると( -1 , j0 )から離れているため、クローズドループは安定しており、十分な位相余裕があることがわかります。ナイキスト・グラフの点A、B、Cが、ボーデ線図の点A、B、Cにそれぞれ対応していることに注意してください。

図9 . クローズドループの伝達関数のナイキスト・グラフ
図9 . クローズドループの伝達関数のナイキスト・グラフ

設計例

ADP5014では、低い周波数範囲における出力ノイズを低減できるように、多数のアナログ・ブロックにおいて最適化が図られています。ゲインが1の電圧リファレンス構造は、VOUTがVREFよりも低い電圧に設定されている場合に、出力ノイズが出力電圧の設定に依存しなくなるという効果をもたらします。第2のLCフィルタを追加することにより、高い周波数範囲にまでわたって出力ノイズを低減することができます。この特性は、特にスイッチングに起因するリップルの基本周波数とその高調波に対して有効に働きます。図10に、ADP5014に第2のLCフィルタを付加した回路例を示しました。

図10 . RFトランシーバー用の電源回路。ADP5014に第2のLCフィルタを追加しています。
図10 . RFトランシーバー用の電源回路。ADP5014に第2のLCフィルタを追加しています。

図11は、ADP5014を使用した場合と、出力電流が2Aで低ノイズの従来型LDOレギュレータ「ADP1740」を使用した場合の出力ノイズ性能を比較したものです。10Hz~10MHzの周波数範囲で測定したノイズ・スペクトル密度と、10Hz~1MHzの周波数範囲で測定した積分RMSノイズを示しています。高い周波数範囲におけるADP5014の出力ノイズ性能は、ADP1740よりも更に高くなります。

図11. ADP5014とADP1740 のそれぞれを使用した場合の出力ノイズ性能。(a)はノイズ・スペクトル密度、(b)は積分RMSノイズの測定結果です。
図11. ADP5014とADP1740 のそれぞれを使用した場合の出力ノイズ性能。(a)はノイズ・スペクトル密度、(b)は積分RMSノイズの測定結果です。

まとめ

本稿では、第2のLCフィルタ段を備える電流モードの降圧コンバータについて、そのモデリングと制御のための一般的な解析方法を紹介しました。特に、制御から出力までの伝達関数については、正確な説明を試みました。また、新たなハイブリッド型の帰還回路を提案すると共に、帰還パラメータの制限についても明らかにしました。

設計例としては、第2のLCフィルタを追加したスイッチング・レギュレータの実用的な回路を紹介しました。ハイブリッド型の帰還方法を採用することにより、LDOレギュレータと同等か、それ以上にノイズを抑えつつ、安定した電源回路を実現できることを示しました。

本稿では、電流モードの降圧コンバータを対象として、そのモデリングと制御に関する説明を行いました。その内容は、電圧モードの降圧コンバータにも適用できます。

付録1

図2に示した電力段の伝達関数は、以下のようになります。

数式 1
数式 2
数式 3

各変数は、それぞれ以下のような式で表されます。

数式 4
数式 5
数式 6
数式 7
数式 8
数式 9
数式 10
数式 11

各変数の意味は以下のとおりです。

  • L1:第1のインダクタの値
  • C1:第1のコンデンサの値
  • RESR1:第1のコンデンサの等価直列抵抗
  • L2:第2のインダクタの値
  • C2:第2のコンデンサの値
  • RESR2:第2のコンデンサの等価直列抵抗
  • RL:負荷抵抗

電流ループのゲイン・ブロックは、以下のように表されます。

数式 12
数式 13

ここで、mcとωhは以下の式で表されます。

数式 14
数式 15

各変数の意味は以下のとおりです。

  • Ri:電流検出用の等価抵抗
  • Se:スロープの補償用のランプ波(鋸波)
  • Sn:電流検出波形におけるオン時間のスロープ
  • Ts:スイッチング時間

電流ループのゲインは、以下のようになります。

数式 16

ここでD'は以下の式で表されます。

数式 17

ここでDは、デューティ・サイクルです。

図2から、ゲイン・ブロックkrは、次の式で求められます。

数式 18

制御から出力までの伝達関数は、以下の式で表されます。

数式 19

ここで、各関数や変数の詳細は次のとおりです。

数式 20
数式 21
数式 22
数式 23
数式 24
数式 25

付録2

図5のローカル帰還とリモート帰還の伝達関数は、以下のように表されます。

数式 26
数式 27

式(1)~(27)から、制御から帰還までの伝達関数は次のようになります。

数式 28

α、βの詳細はそれぞれ以下のとおりです。

数式 29
数式 30

各変数の意味は以下のとおりです。

  • RA:帰還用抵抗分圧器の上側の抵抗
  • RB:帰還用抵抗分圧器の下側の抵抗
  • CF:ローカル帰還のコンデンサ

帰還回路の等価伝達関数は、次のようになります。

数式 31

上式は以下のように近似できます。

数式 32

ここで、Δの詳細は以下のとおりです。

数式 33

低ノイズであることを求められる一般的なアプリケーションには、通常、ゲインが1の電圧リファレンス構造が適用されます。つまり、パラメータβの値は1です。その場合、帰還回路の伝達関数は、次のようになります。

数式 34

参考資料

1Raymond B. Ridley「A New, Continuous-Time Modelfor Current-Mode Control(電流モード制御のための新しい連続時間モデル) 」IEEE Tr ansact ions on PowerElectronics、Vol. 6、No. 2、1991年

2Julie Yixuan Zhu、Brad Lehman「Control Loop Designfor Two-Stage DC-to-DC Converters with Low Voltage/High Current Output(低電圧/大電流出力の2段DC/DCコンバータの制御ループ設計)」 IEEE Transactions onPower Electronics、Vol 20、No. 1、2005年

3Patricio Cortes、David O. Boillat、Hans Ertl、JohannW. Kolar「Comparative Evaluation of Multiloop ControlSchemes for a High Bandwidth AC Power Source witha Two-Stage LC Output Filter(2段LC出力フィルタを備えた広帯域幅AC電源用のマルチループ制御機構の比較評価)」International Conference on Renewable EnergyResearch and Applications、IEEE、2013年

4Raymond B. Ridley「Secondary LC Filter Analysisand Design Techniques for Current-Mode-ControlledConverters(電流モード制御のコンバータに適用する第2のLCフィルタの解析/設計手法)」IEEE Transactionson Power Electronics、Vol. 3、No. 4、1988年

5Byungcho Choi、Bo H. Ch、Fred C. Lee、Raymond B.Ridley「Three-Loop Control for Multimodule ConverterSystems(マルチモジュール・コンバータ・システム用の3ループ制御)」 Power Electronics IEEE Transactionson Power Electronics、 Vol. 8、No. 4、1993年

著者

Ricky Yang

Ricky Yang

Ricky Yangは、2008年4月にアナログ・デバイセズに入社しました。中国上海を拠点とするパワー・マネージメント・グループのアプリケーション・エンジニアを務めています。上海交通大学を卒業し、情報/制御工学の学士号とパワー・エレクトロニクスに関する修士号を取得しています。様々なスイッチング・レギュレータとそれに関連するシステム設計に10年間従事してきました。