低消費電力、ユニティ・ゲインのディファレンス・アンプ(差電圧アンプ)で低価格の電流源を実現

Difference Amplier Forms Heart of Precision Current Source」(Analog Dialogue、2009年9月)では、AD8276ユニティ・ゲイン・ディファレンス・アンプとAD8603マイクロパワー・オペアンプによる高精度電流源を提供する方法を示しています。図1に低コストな低電流源アプリケーション用回路が、いかに簡単に構成できるかを示します。

Figure 1
図1. 低価格、低電流アプリケーション向けの簡単な電流源

出力電流(IO)は、次式に示すように、差動入力電圧(VIN+ - VIN)をR1で割った値にほぼ等しくなります。

Equation 1
Equation 2
Equation 3

したがって、R1の両端には差動入力電圧が生じます。

 Equation 4

実験装置

  1. AD5750EVB(AD5750ドライバとAD5662 16ビットnanoDAC®)によって、AD8276にバイポーラ信号を入力します。)
  2. OI -857マルチメータによって、入力電圧、出力電圧、抵抗を測定します。
  3. R1とRLOADの公称値はそれぞれ280Ωと1kΩ、測定値はそれぞれ280.65Ωと997.11Ωです。
  4. 出力電流は、電圧測定値をRLOADで除算して計算します。
Figure 2
図2. 理想と実際の出力電流 対 差動入力電圧

実験結果

図2は、出力電流と入力電圧の関係を示しています。X軸は、-3.2Vから+3.2Vまで変化する差動入力電圧です。Y軸は、出力電流を示しています。4本の線は、電流の理想値と-40℃、+25℃、+85℃における実際の出力を示しています。

図3は、出力電流誤差と入力電圧の関係です。3本の線は、-40℃、+25℃、+85℃における誤差を示しています。

Figure 3
図3. 出力電流誤差 対 入力電圧

図4 に示すように、実際の出力電流はAD8276 の出力短絡電流によって制限されます。ここで、短絡電流は- 40℃で約8mAです。

Figure 4
図4. AD8276:出力短絡電流の温度特性

結論

(一般的な電流源回路の)外付けのブースト・トランジスタとバッファを省略し、抵抗を1 本追加すれば、AD8276 によって、-40 ~+85℃の温度範囲の総合誤差が約1.5%未満で低価格の低電流源を作成することができます。±15V電源で駆動した場合、温度範囲での出力電流は約- 11 ~+ 8mAになります。+5Vの単電源でユニポーラ・ソースを作成できます。

著者

David Guo

David Guo

David Guoは、アナログ・デバイセズのリニア製品に関する製品アプリケーション・エンジニアです。2007年にアナログ・デバイセズの中国中央アプリケーション・センターでアプリケーション・エンジニアとして勤務を始め、2011年6月にアプリケーション・エンジニアとして高精度アンプ・グループに異動しました。2013年1月以降は、アナログ・デバイセズのリニア製品部門のアプリケーション・エンジニアとして勤務しています。高精度アンプ、計測器アンプ、高速アンプ、電流センス・アンプ、逓倍器、リファレンス、実効値DC製品などの製品のテクニカルサポートを担当しています。北京理工大学から機械電子工学の学士号および修士号を取得しています。