非線形回路ハンドブック

第一章 基本動作

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この章では、歴史的および概念的な観点から非線形性の背景を簡単に述べるとともに、有用な非線形現象の主な特徴について、その概要を示します。

 

線形性と非線形性

理想的な線形デバイスとは、すべての状態で要因(入力値)と結果(出力値)が比例関係*にあるものを言います。多くのアナログ回路は、線形もしくは線形に類した形を求められます。しかし、何も手を加えていないデバイスは、一般に非線形です。ただ、範囲を限定すれば有用性が高いと言えるくらいに線形のデバイスは多数あります。線形性に特に優れたデバイスを見つけて使用することや、デバイスの線形範囲にマッチするように信号のコンディショニングと標準化を行うことに、多大な設計努力が払われます。

多数の課題に応じた十分な線形性を有するデバイスは見つけるのも設計するのも実に難しい場合が多いことから、非線形という言葉は、扱いにくい厄介なものという意味も持つようになりました。

しかし、デバイスと回路は、明確に定義され、制御可能で安定しているうえ、低コストで、何より有用な非線形関係を持つように設計することが可能です。このような関係の例には、乗算、二乗則、対数比、制御された不連続性などがあります。測定装置の非線形性に応じた変調、電力測定、信号整形、シミュレーションや修正を行うアプリケーションは、ごくわずかです。以下のページでより多くのアプリケーションについて説明します。

* IEEE 電気電子標準用語辞典(IEEE Standard Dictionary of Electrical and Electronic Terms、Wiley-Interscience、1972 年)は、線形性(linearity)を、「要因(入力値)と結果(出力値)が一定の割合で増加する際の比率を記述する特性」と定義しています。また、線形システムまたは線形素子(linear system or element)は、「y1 が x1 に対する応答で、y2 が x2 に対する応答である場合に、(y1 + y2)が(x1 + x2)に対する応答で、ky1 が kx1 に対する応答」であるようなシステムまたは素子と定義されています。

 

特性が改善された非線形デバイス(つまり、理想的な非線形関係を安定した状態で忠実に再現できる)が使用できるようになり、このようなデバイスへの理解が深まり、製造や使い勝手が良くなるにつれて、さらに低コスト化が図られています(特にモノリシック集積回路の使用を通じて)。その結果、これらのデバイスは電子回路設計者によって、より広く、かつ積極的に採用されるようになってきました。このハンドブックの目的は、この傾向を一段と加速させることにあります。

 

非線形デバイスとアナログ・コンピューティング

アナログ・コンピュータの最盛期に浮上したのが、乗算、除算、制限、ヒステリシス、校正曲線などの非線形性をシミュレーションするためにしばしば必要とされた、さまざまな非線形関係を忠実に再現するデバイスを探すという問題でした。これらの問題に取り組む最も一般的な方法は、サーボメカニズム、カーブ・トレーサ、およびダイオード・ファンクション・ジェネレータでした(この中で、普及し将来残る可能性が最も高かったのがダイオード・ファンクション・ジェネレータでした。現在はより優れた方法が利用されています)。

アナログ・コンピュータ回路技術が計装回路や一般的なアナログ回路に応用され、トランジスタ技術が成熟し集積回路として出現するようになると、高価で扱いにくいラックマウント・パッケージで処理していた構成を、モジュラー(最終的には集積回路)部品として利用できるようになりました。その先駆けとなったのがオペアンプです。乗除算器、対数回路、ダイオード・ファンクション・ジェネレータが加えられ、一層複雑な演算処理も行えるようになりました。乗算と対数回路の設計はトランジスタ本来の特性に基づいて行えるようになり、オペアンプを使ってダイオードの閾値を自由に設定することも可能になりました。そして、性能の優れた高速でシンプルなコンパレータや電子スイッチが出現しました。

コスト、シンプルさ、性能向上など、便利な非線形デバイスをいつでも使用できるといった大きな変革が起こったのは、ごく最近のことです。現在は、一歩下がった形で、非線形デバイス・ファミリーと豊富な機能の一部を整理すべき時期に来ています。

 

便利な非線形演算処理のリスト

回路、各種装置、精密機器、およびシステムのビルディング・ブロックとして便利な、いくつかの非線形演算回路を以下に示します。これらはトランジスタ回路やオペアンプ回路が持つ、いくつかの基本的特性のうち、その 1 つまたは複数によって機能的有効性が保証されている実際のデバイスがベースになっています。

  1. コレクタ電流の線形関数としてのトランスコンダクタンス(乗算器)
  2. コレクタ電流の対数関数としてのベース・エミッタ順方向電圧(対数デバイス)
  3. 印加電圧極性の関数としての電流の有無(スイッチとコンパレータ)
  4. デバイスのモノリシック・マッチングの結果としてのほぼ完璧な温度補償
  5. オペアンプ回路に内在するほぼ理想的なトランスコンダクタンスとトランスレジスタンス(電圧/電流変換と電流/電圧変換)
  6. オペアンプ回路およびコンパレータ回路が高ゲインである結果としての高速スイッチング

非線形デバイスは、非線形曲線の複雑さに従って分類することができます。関数がシンプルで微分可能である場合(通常その端点は除く)、その関数は連続関数に分類できます。関数が 1 つまたは複数の不連続点を持つ場合、あるいは「ジャンプ」する場合(コンパレータなど)、もしくはその一次導関数に不連続点がある場合(区分線形関数など)、その関数は不連続関数に分類されます。

基本的な連続関数演算

  • 乗算
  • 除算(比率)
  • 二乗
  • 平方根
  • 対数
  • 指数(逆対数)

基本的な不連続関数演算

  • 理想ダイオード
  • 制御スイッチ
  • コンパレータ

派生的な連続関数演算

  • 任意指数
  • 真の二乗平均平方根
  • 対数比(2 変数)
  • 双曲線正弦関数(Sinh-1)(「AC 対数」)
  • ベクトル和
  • 三角関数

派生的な不連続関数演算

  • 絶対値
  • 境界
  • 不感帯
  • 跳躍関数と窓関数
  • ヒステリシス

この章で取り上げるデバイスの大部分は、上にリストされた順番に従い、それぞれの理想的な「ブラック・ボックス」応答に関して述べられています。つまり、その入力と出力は電圧で表され、負荷誤差はないものとします。実際のデバイス特性については 2 章以降に述べます。これらの便利な関数は、オペアンプを使用しているかトランスコンダクタンスによって生成されるかのどちらかなので、電流が基本的な(そしておそらくはアクセス可能な)入力/出力になり得るという点に留意することが重要です。

 

乗算

2 つの入力電圧に応答する 2 入力乗算器は、2 つの入力の積に次元(V-1)定数を乗じた値を出力します。

数式1

一般的に使われる電圧範囲は、入力/出力ともに ±10V です。この場合は Vr = 10V です(10 × 10/10 = 10であることに注意してください)。

出力と 2 つの入力が正負両方の極性を取り得る場合で、その極性の関係に矛盾がない場合、その乗算器は「4 象限」乗算器と呼ばれます。一方の入力だけが両極性の場合は 2 象限乗算器、すべての信号が単極性である場合は 1 象限乗算器です。「象限」とは、出力軸を紙面に垂直に取った場合に V1 - V2 平面(紙面)上に形成される領域を言います。

図1

通常、乗算器には、出力アンプの帰還パスを外部的に形成することのできる、特別な端子が取り付けられています。この端子は、ゲイン調整を容易にすることだけでなく、以下に示すように、乗算器を除算器または平方根演算器として使用することを可能にします。多くの場合乗算器は、グラウンド以外の基準信号も扱うために 1 つまたは複数の差動入力を備えています。

乗算器は、アナログ・コンピューティングにおける乗算の他に、べき乗、変調、ダイナミック・ゲイン設定、および電力測定に使用することができます。これらの乗算器としては、 IC 形態のものと、コンパクトなモジュール形式のものがあり、バラエティに富んだ幅広い性能(および価格)でかつ低価格で提供されています。

通常、スケール・ファクタ 1/Vr は固定されていますが(トリム用の余裕を含む)、外部から電圧や電流を加えることによって変更できるものも少なくありません(一部のバージョン)。これらの電圧や電流は、実際には3 番目の入力と言えます。

乗算器には、さまざまな設計手法が取り入れられています。このハンドブックでは、トランスコンダクタンス、対数、およびパルス幅/高さ変調タイプの解説に重点を置いています。これらの乗算器の性能と能力は広い範囲に及んでおり、小型で低コストであるうえ、高い信頼性を備えています。二乗差掛け算、磁気、変調三角波、サーボ、ホール効果、および「スレーブ」型デザインなど、他のすべてのアナログ・タイプは歴史的には実現可能なデザインであり、特殊なアプリケーションに幅広く使われていますが、このハンドブックでは扱いません。D/A コンバータの乗算についてはA/D 変換ハンドブック(Analog-Digital Conversion Handbook)*に記載されているほか、さまざまな文献に記載があります。これらの D/A 乗算器についてもここでは扱いません。このハンドブックは、ほとんどのページを純粋なアナログ技術の解説に割いています。

市場には IC による疑似乗算器もありますが、これらを理想的な「ブラック・ボックス」乗算器として動作させるには、多くの外部回路が必要です。これらのデバイスや「平衡変調器」チップのような他の専用デバイスは、トランスコンダクタンス乗算の基本的原理を(不完全に)実現する回路素子に過ぎないと考えられています。

一見すると、多くの技術が任意に除外されているように見えますが、他の手法を検討しようと思ったときに、このハンドブックで取り上げた乗算器の理解と応用の実用的側面が大いに役立つと思います。

 

除算と比率

通常、除算器は 2 入力です。出力は、2 つの入力の比率に次元(V)定数を乗じたものです。

数式2

除算で通常使われる範囲は V2 が ±10V、V1 が 0+ ~ +10V(または 0- ~ -10V)、EO が +10Vです。これらのアプリケーションでは、Vr は 10V です。

実際の除算器は 2 象限か 1 象限で、これは分子が両極性かどうかによって決まります。除算には 3 つの手法が広く使われています。すなわち、帰還ループで乗算器を使用する方法、スケール・ファクタが変数である乗算器設計、対数素子を使用するオープンループ除算です。

* Analog Devices, Inc., 1972, 402pp. illustrated, $3.95.

 

高速で正確な乗算器を帰還ループ内で使用すると、分母の小さいダイナミック・レンジに対し、高速で正確な 2 象限除算を行うことができます。このアプローチは比例測定に有効です。比例測定では、例えばストレイン・ゲージなどのブリッジ型の測定基準に変動があると、測定値に小さい変動が生じるので、これを補正する必要があります。帰還アプローチの弱点は、誤差が分母の大きさに反比例する傾向があることで、高精度の乗算器を使ったとしても、約 30: 1 より大きいダイナミック・レンジを持つことはできません。

一方、可変スケール定数法や対数法のアプローチでは、分母を出力の制限範囲で変化させることが可能で、ゼロにかなり近付けることができます。この精度は中程度ですが、低レベルでは応答が遅くなる傾向があります。可変スケール定数乗算器は 2 象限デバイスですが、対数デバイスだけの場合、結果は単象限動作でのみ得られます。

図2

アナログ除算器が、ゼロ除算や両極性値による除算ができると考えてはいけません(切替えにより 4 象限除算が可能ですが、ゼロから離れた範囲に限られます)。一般的には、このような異常動作を解消するためにリセットができるようにします。もちろん、分子を適切な定数値に保持した場合、除算器は逆数を計算することができます。

多くの場合、除算と乗算は 1 つのデバイスで動作できます(つまり、Vr が可変入力信号)。

 

二乗

二乗演算器は、入力の二乗に比例する電圧に次元(V-1)定数を乗じた値を出力します。

数式3

2 象限二乗演算器の代表的範囲は、Vin が ±10V、EO が 0 ~ 10V、Vr が 10V です。1 象限二乗演算では、Vin の極性は 1 つだけです。絶対値回路(全波整流回路)を前段に持つ 1 象限二乗演算器は、2 象限二乗演算を行います。

二乗演算器は、電力測定、波形整形、周波数逓倍などの操作に便利で、帰還素子として使用した場合は平方根演算にも有効です。より簡単な乗算方法が使用できるようになるまでは、二乗演算器の最も重要なアプリケーションの 1 つが「二乗差掛け算*」でした。

2 つの入力電圧が同じ場合、トランスコンダクタンス乗算器は高い機能的再現性と低コストで広帯域 2 象限二乗演算を行うことができます。その他の二乗演算の方法には、区分線形ダイオード抵抗回路による近似、半導体特性による方法(FET など)、三角波による理想ダイオード特性の「ディザリング」の後段でフィルタリングを行う方法などがあります。

図3

「奇関数」の二乗演算 x|x| は入力の二乗に比例した値を出力します。ただし、極性は入力と同じです。この出力は、2 つの 1 象限二乗演算器といくつかのオペアンプで生成できます。あるいは、二乗演算器として使用する乗算器の 2 つの入力間に絶対値デバイスを挿入することによって生成できます。

図4

 

平方根

平方根演算器は、入力電圧の正または負の平方根を計算して、該当する極性の次元(V)定数を乗じる 1 象限デバイスです。

図5または数式4

10V フルスケール入力/出力の場合、Vr は 10V です。ゼロにおける平方根の傾斜は理論的には無限大なので、ゼロに近い範囲の誤差が最も大きいと予想され、応答速度が低下して一定のヒステリシスも伴うと考えられます。さらに、真の平方根は正の引数でのみ得られるので、入力信号の符号が変わる可能性があるときは、「ロックアップ」を防ぐために入力または出力(または両方)制限が必要なことがあります。除算器に帰還を行うことによって平方根を求める場合、このような制限は必須です。また、除算器に帰還を行う場合は乗算器にも帰還が必要です。

図6

平方根は、二乗平均平方根やベクトルの計算、物理的測定、および流体パラメータのシミュレーションに使われます。平方根演算の最も一般的な方法は、対数と逆対数間の変換図7と除算器の帰還(z = ky/z)です。対数変換方式は良好な精度、広いダイナミック・レンジ、およびゼロ前後での良好な動作を実現します。除算器による方法では、フルスケール付近と中間的なダイナミック・レンジ内でより高い速度と良好な精度が得られます。VAVB/VC デバイスに帰還を行うことによって計算される平方根は、幾何平均図8を得るために 2 つめの乗算入力を使用することができます。

「奇関数」平方根 図9の入力には極性があり、出力は入力の平方根に比例します。これは、帰還ループ内の奇関数平方根演算器によって作成できます。

 

対数回路

理想的な反転型電圧/電圧対数回路は、次の関数を生成します。

数式5

ここで Vr は正規化された統一リファレンスで、EO = 0 に対する Vin の値です。通常、Vr は、フルスケール入力、中間出力、またはそれ以外の位置に対して任意に設定されます。引数を正にするのは、正に対応する極性の値です。つまり、 Vin が正であれば Vr も正で、Vin が負であれば Vr も負です(実数値に関しては、負の引数の対数は定義されていません)。対数デバイスが電流入力 Iin を受け入れる場合、次元定数 Vr は電流リファレンス Ir で置き換えられます。

K(これも次元定数)はスケール・ファクタで、基準 B に等しい比率に相当する電圧値です。例えば B が 10 の場合、K は Vin/Vr = 10(つまり 1 ディケード)に相当する電圧値です。B が є の場合、K は比率 є に相当する電圧値です。B = 2 の場合、K はオクターブあたりの電圧値です。一般的な K の値は、1 Vまたは 2 V/ディケードです。その他の基準(B')に相当する K を計算するには、K に log10B' を乗じて K' を求めます。例えば、1 V/ディケード = 0.3010 V/オクターブ です。

対数は、信号圧縮、広いダイナミック・レンジを持つ量の測定、デシベル形式での情報の表示、対数データの直線化、べき乗とべき乗根の計算、範囲の広い除算などに役立ちます。

今日の対数回路は、ほぼ例外なく、オペアンプの帰還回路にあるトランジスタのコレクタ電流と VBE をダイオードに模した関係がベースになっています。このトランジスタは、2 端子ダイオード*(コレクタとベースに接続)、あるいは 1 端子(β非依存とするために通常はコレクタ)をオペアンプの(-)帰還端子電位に接続した 3 端子素子となります。

* 高 β のトランジスタを使う必要があります。

図10

ダイオードの Ir と K は、ともに温度に伴って大きく変化するので(電流基準で 8 %/°C と 0.8 %/°C)、実際のアプリケーションでは、温度の変化を補償することが重要です。Ir の変動は、マッチングされたダイオード(通常はモノリシック・チップ上に 1 対)の各々に同一の固定電流を流し、VBE の差を取ることによって、かなり解消することができます。K は、+27°C におけるその値の 1/3 %/°C で温度とともに直線的に増加します。対数演算では、通常、同じ温度係数を持つ抵抗分圧器によって補償されます。

対数素子としては、次のように、多様な柔軟性(およびコスト)を備えた数種類の形態の素子が市販されています。

  1. 完全補償された電流/電圧型または電圧/電圧型対数モジュール(モデル 755 など)
  2. 外付けオペアンプを必要とする、内部補償された電圧/電流型対数帰還素子(モデル 752)
  3. 補償用抵抗分圧器付きのマッチング・トランジスタ・ペア(モデル 751)、およびモノリシック・トランジスタ・ペア(AD818)

外付けオペアンプを過度に使用せずに適切な極性関係を保証するために、極性選択式の対数デバイスを使用できます。「P」型デバイス(-K が正、Vr と Vin が負)は PNP トランジスタを使用し、負入力が加わると加算点に正電流を供給します。「N」型デバイス(-K が負、Vr と Vin が正)は NPN トランジスタを使用し、正入力が加わると加算点に電流をシンクします。

 

逆対数回路

対数の逆関数、つまり指数関係は以下の形を取ります。

数式6

例えば、B = 10 で K = 1V/ディケードの場合は次のとおりです。

(a)Vin = 0 では、EO = Vr
(b)Vin = K では、EO = 10Vr
(c)Vin = -K では、EO = Vr/10
(d)Vin = 2K では、EO = 100Vr

実際の指数は常に正なので、EO は Vr と同じ極性です。反転オペアンプを使用する実際の回路では、K と Vr は同じ極性です。「P」型デバイスでは -K は正で、「N」型デバイスでは負です(対数回路の項を参照)。

逆対数デバイスは、通常、対数変数の演算との関連で使われます。例えば、入力変数の数値をべき乗し、乗算と除算を行う場合、通常は、これらの演算を個々に対数形式に変換し、それぞれの指数に応じた重みによって和または差を取り、その後に逆対数演算を行います。

図11

逆対数デバイスは、対数デバイスと同じ回路を使用します。両者の違いは回路の接続方法にあります。対数トランジスタとその温度補償回路は、印加電圧の逆対数に比例する電流を生成します。印加電圧が入力信号の場合は、帰還抵抗を接続したオペアンプが指数出力電圧を生成します。

印加電圧がアンプの出力の場合、電圧は、入力電流を平衡させるために必要な値に制限されます(つまり、出力は Iin と Ir の比の対数に比例します)。

 

「理想ダイオード」演算回路

スイッチングに使用する場合、「理想ダイオード」は、印加電圧がある極性のときに開き、反対の極性の時に閉じる一方向スイッチです。理想ダイオード演算回路は、理想ダイオードをスイッチング素子として使用する回路と同じ応答をする電圧/電圧回路です。一方の極性のときの出力電圧はゼロで、極性が変わると、出力電圧は入力とともに直線的に増加します。理想ダイオード演算回路は、「ゼロ境界」回路と見なすこともできます。

理想ダイオード演算回路は、高精度不感帯、境界、絶対値回路、および区分線形近似による関数フィッティングに便利です。以前は経済性の点から考えられなかったことですが、今やこれらの回路は、直線性、安定性、および IC オペアンプの非常に低いコストがその利点となっています。

図12

 

制御スイッチ

これは厳密には非線形デバイスではなく(スイッチを、外部からの影響により制御できる線形時間依存機能の素子と見なす人もいます)、その特性とアプリケーションについて詳しく説明するにはこの項の何倍もの紙面が必要ですが、便利な非線形機能に関連するデバイスなので、ここで簡単に説明しておきます。

スイッチは、多くの場合コンパレータによって操作され、入力電圧か出力電圧、または電流が閾値を超えた時点で新しい状態が確立するように、非線形回路で使用されます。例えば、スイッチは、ゲインの変更、極性の反転、新しい動作モードの開始などを行い、それにより全体として非線形応答を生成します。アナログ・スイッチは、例えばパルス高/幅乗算器や電圧/周波数変換器など、多くの非線形デバイスに内蔵されています。もちろん、マルチプレクサや、ほとんどのタイプの D/A および A/D コンバータにも不可欠です。

スイッチには、絶縁型スイッチング用の電気機械式、光電子式、ホール効果式のリレーから、単純なロジック動作型電子機器に至るまで、さまざまな形態があります。最終的に、これらには 2 つの基本的な種類があります。電圧スイッチと電流スイッチです。電圧スイッチは回路の開閉を行うもので、例としては MOS やその他の FET タイプ、および飽和バイポーラ・トランジスタがあります。電流型スイッチは電流の経路を変えることによってスイッチングを行うもので、通常は、線形領域で動作するダイオードやバイポーラ・トランジスタが必要です。これらのスイッチは高速で動作させることができます。

図13

 

コンパレータ

コンパレータは、2 つの安定した出力状態を持つデバイスです。これらは、入力電流か入力電圧が、他の 1 つ以上の電流または電圧で設定される閾値(固定または可変)を超えたかどうかを信号で知らせます。

コンパレータは極性センサー、アナログ制御ロジック・システムへのデジタル入力として使われ、スイッチの操作、急速な遷移、アナログ電圧の量子化などを行うほか、後段でスイッチングを行ったり高精度の境界を設けたりすることで、波形生成器の要素として機能します。

図14

コンパレータは一般に高ゲインである点、および高感度の低ドリフト差動入力回路を備えている点で、オペアンプに似ています。コンパレータは、基本的にオープンループ・デバイスです。したがって、閉ループ動作に対する内部周波数補償(オペアンプの重要な機能)は不要です。このため、オペアンプをコンパレータとして使用した場合よりも高いスイッチング速度が得られます。コンパレータは、ごくわずかな負帰還でも発振するので、入力回路と出力回路を、電気的、物理的、熱的に、また電源端子との間など、しっかりと分離する設計と実装配置が求められます。

コンパレータは差動デバイスですが、タイプによっては、許容される同相電圧範囲が非常に狭いことがあります。また、設計に応じて、二つの出力形態、標準デジタル・ロジック・レベル(TTL など)とフルレンジのオペアンプ出力レベル(±15V 電源で > ±10V)があります。さらにリレー駆動用の高電圧、高電流の振幅能力に適した出力にすることもできます。ノイズによりスイッチング・レベルが曖昧になるのを防ぐために、出力の一部を正入力端子に帰還させたヒステリシスを利用することもできます。さらに一部のコンパレータは、デジタル信号に応じてラッチすることができます。

コンパレータは電圧モードか電流モードで使用できます。電圧モードでは比較対象の 2 つの電圧が 2 つの入力に加えられ、電流モードでは 2 つまたはそれ以上の電流を受動的に加算することによって生成される電圧が、リファレンス・レベル(通常はグラウンド近く)と比較されます。

 

任意指数

逆対数デバイスは指数関数機能を備えたデバイスです。つまりこのデバイスは、入力信号によって決定される指数を使って一定の基準値をべき乗します。このセクションで説明するデバイスは、入力電圧比を任意の指数でべき乗して、次元(V)量を乗じます。3 つの入力 VY、VZ、VX(すべて >> 0)に対し、出力は次のようになります。

数式7

ここで、m は任意の固定値に設定できる定数で、通常は mMAX >> m >> 1/mMAX で指定される範囲です。m > 1 の場合は電圧比が指数 m でべき乗され、m < 1 では m 乗根(1/m 乗値)が得られます。負の指数によるべき乗(-m)を求める場合は、単純に Vz と VX が入れ替わります。

任意指数は、指数を伴うアナログ計算、すなわち一般的な整数乗や整数根、あるいは非整数乗(例えば 1.211、0.735)を使用する非線形データの線形化や、べき級数近似に有効です。

図15

任意指数デバイスの設計は単純です。電圧比(Vz/Vx)の対数が得られたら、その値に係数 m を乗じ、さらに逆対数を求めます。この機能は、対数/逆対数ビルディング・ブロックで構成できます。あるいは、この機能専用に設計された単一の低コストデバイス(アナログ・デバイセズのモデル 433 など)として購入することができます。便宜上、このようなデバイスには、必要となる一定入力を供給するために温度係数の小さいリファレンス電圧を使用することもできます。

デバイス全体のゲインは、この定数に連動します。例えば範囲を 10V、あらかじめ設定された*リファレンスを Vr とすると、次式が成り立ちます。

数式8

 

真の二乗平均平方根

理想的な二乗平均平方根(RMS)デバイスは、所定の時間範囲での二乗入力の平均値を計算し、その平均の平方根を求めます。すなわち、

数式9

RMSデバイスは、自動ゲイン制御などの制御ループ内の AC 信号(ノイズを含む)を評価したり、アナログおよびデジタル・パネル・メーターやデータ収集システムに AC 入力するためのフロントエンド・シグナル・コンディショニングとして有用です。

実際は定積分ではなく「移動平均」が取られ、通常は 1 次 RC 遅延回路によって近似されます。フィルタの時定数が十分に大きく、なおかつ出力が安定するまで十分な時間が確保される場合、この近似は定常波形に有効です。

従来型の AC 計測手法では、さらに、以下に示す近似が行われます。

数式10

後から行うこの近似(平均絶対値)は、主に正弦波に有効です。これをノイズ、矩形波、任意のデューティ・サイクルのパルス、さらに変動する DC を含む予測不能な特性を持つ各種波形に適用すると、大きな誤差につながります。この手法は広く用いられていますが、問題を招くおそれも多分にあります。

* メーカーによる。

 

RMS を計算する簡単な方法は、文字通りの順番で演算を行うことです。すなわち、二乗、平均、平方根の順番です。この方法には、複雑で高コストという欠点と、ダイナミック・レンジが 2 桁上がる [(100:1)2 = 10,000:1] ことによる分解能の低下という欠点があります。

2 象限 V1V2/V3 デバイスを、単純なローパス・フィルタとして接続されたオペアンプとともに使用するためのより良い方法は、陰関数方程式を解くことです。

数式11

定常波の場合、Eout は一定と仮定できるので、次式が成り立ちます。

数式12

したがって、

数式13

平均絶対値が既知の波形を妥当な範囲で表すことができる場合は(式 10、適切な乗数値を使用)、フィルタ出力の全波整流器を使用するか、フィルタの入力(つまり乗算器の出力)を式 11 の分母に使用して図16の平均値を計算することができます。後者の方法は少し回りくどく見えるかもしれませんが、RMS か MAV かの選択が必要な装置には有効です。

図17

対数比

対数比デバイスは、電圧または電流の比率を測定することができます。

数式14

これらのデバイスは、指数データを必要とする測定(光量測定など)で、入力または比率自体が広いダイナミック・レンジを有しているような場合に便利で、対数形式で表示されるゲインの測定(例えば dB)、べき乗値や平方根の生成、および信号圧縮などに適しています。

対数比デバイスは、例えばアナログ・デバイセズのモデル 756 のように、全機能内蔵型のエンティティとして提供されています。また、ログ・アンプや、対数回路のセクションに述べたように、もっと単純な対数デバイスから組み立てることもできます。

負の引数に対する対数の実数値は存在しないので、両極性信号(例えば AC 信号)の対数関数*は、信号自体ではなく信号の特性に関して求める必要があります。これらの特性の例としては、平均絶対値、RMS 値、およびピーク値による測定があります。

図18

 

逆双曲線正弦関数(SINH-1)または「AC 対数」

逆双曲線正弦関数(Sinh-1)は、帰還パスに並列に接続された 2 つの相補的逆対数トランスコンダクタを持つオペアンプ(例えば 752)の出力特性を示します。

* 対数比は対数の減算によって計算されます。しかし、最初に比が求められた場合でも、ゼロと両極性分母に関する規則に従う必要があります。

数式15

したがって、

数式16

この便利なデバイスは、広い +Vin 範囲と -Vin 範囲にわたって対数挙動を示しますが、ゼロ近辺では良好な線形挙動も示します。また、両極性信号を、対称的かつ予想可能な方法で対数的に圧縮します。

等級分類されたヌル・メーターとさまざまな両極性アナログ・パネル・メーターの 2 つは DC アプリケーションの例で、不飽和信号圧縮は代表的な AC アプリケーションです。 AC 信号における Ir の選択は、帯域幅とダイナミック・レンジの相反する要求のバランスによって行われます。

図19

入力パスに逆対数素子が接続されている場合は、逆関数、すなわち双曲正弦関数が生成されます。

このデバイスの最も単純な(ただし最も安定しない)形態における逆対数素子は、並列のバック・ツー・バック接続にした 1 対のダイオードです。

 

ベクトル和(大きさ)

ベクトル和デバイスは、入力の二乗和の平方根を計算します。

数式17

代表的なアプリケーションには、長さ、力、あるいは電圧ベクトルなどの直交測定値の和や、ランダム統計量の大きさが含まれます。面積の合計や、長方形型 n 次元図形の対角線などの幾何学的量を求めることもできます。

ベクトル和を計算するための一般的な方法には、直接的な方法と陰解法の 2 つがあります。直接法では、各入力を個別に二乗して合計し、結果の平方根を求める必要があります。この方法は単純ですが、EO が広いダイナミック・レンジにわたって変化する場合は、二乗計算に伴うダイナミック・レンジの拡大が精度に重大な制限をもたらします。変数が n 個ある場合は、二乗演算器が n 個、平方根演算器が 1 個、および加算アンプが 1 個必要です。

陰解法ではより正確な結果を得ることができますが、次の式を実装する必要があります。

数式18

これには、Va • Vb/Vc を計算するデバイスが n-1 個と、加算アンプが 2 個必要です。

n = 2 の特別な(なおかつ最も遭遇頻度が高い)ケースでは、Va • Vb/Vc デバイスが 1 個と、中程度の性能のオペアンプが 2 個必要です。これはコスト、複雑さ、性能の面で、2 個の二乗演算器、1 個の平方根演算器、および 1 個のオペアンプを使用する直接法に匹敵するものです。

図20

三角関数

便利な三角関数としては、A sinθ、A cosθ、r sinθ、r cosθ、和と積によるこれらの組み合わせ、およびtan-1(Vy/Vx)があります。

これらは、ベクトルの分解と合成、座標変換、波形整形、関数生成に使われます。

アナログ変数間の三角関係は、FET またはトランジスタの特性を備えた単純な回路によっておおむねシミュレーション可能で、さらに、区分線形ダイオードによる関数フィッティングやべき乗級数近似によって、精度を上げることができます。

べき乗級数近似における最近の著しい発展は、モデル 433 などの調整式指数デバイスによって計算される非整数乗の使用です。この方法では、所定のレベルの精度を得るために必要なべき乗項の数を大幅に減らすことができます。例えば、sinθ は、(x - x3/6.79)により 0 ~ π/2 の範囲で 1.35 % 以内に近似できますが、(x - x2.827/6.28)による近似の誤差は、同じ角度範囲で 0.25 % 未満です。

A/D 関数フィッティングでは、三角関係を読出し専用メモリ(ROM)に保存して、D/A 変換によりアナログ形式に戻すことができます。1

三角関数を伴う設計のコストと複雑さに最も影響を及ぼす重要な考慮事項(基本的な適合性以外)は、角度の範囲です。通常、sinθ デバイスの入力と出力はともに電圧なので、実際に最も適した関数は(例えば)VFS図21(Vin/Vr)です。VFS は 90° の正弦に相当する電圧で、Vr は 90° に相当する電圧です。

 

代表的な近似:

図22

1 アナログ・デバイセズの A/D 変換ハンドブック(Analog-Digital Conversion Handbook, Analog Devices, 1972)の I-65 ページ、および以下を参照

図23

最も簡単な設計は 1 象限だけに関わるもので、0° << Vin << Vr です。2 象限、例えば -Vr <<Vin << Vr を必要とするものも、それほど難しくはありません(線形項のみでは -14° まで 0.25 % 以内)。しかし、多象限が求められ場合、特に角度が無制限に増えていく場合は、関数を最初の象限(または最初の 2 象限)に連続的に変換して適切な極性関係を維持するために、何らかの形態のスイッチングと極性検出が必要です。

 

絶対値

「全波整流器」とも呼ばれる絶対値デバイスは、ゼロからの電圧立上がりの瞬時振幅を測定します。出力には、回路アプリケーションに応じて任意に正負の極性を割り当てることができます。

数式19

図24

高精度測定におけるアプリケーションには、AC 測定、関数フィッティング、1 象限デバイスへの入力(二乗演算器またはベクトル和)、三角波の周波数逓倍、および誤差測定が含まれます。

絶対値の最も有名な実装は従来型の「全波整流器」回路で、この回路では、端子を共有する 2 個のダイオードが、+Vin と -Vin により異なる位相で駆動されます。ダイオードの極性に応じて、出力には常に入力振幅がプラスまたはマイナスされ、ダイオード 1 個分の電圧降下が生じます。精密計測においては、ダイオードによる電圧降下(および電流と温度によるその変動)をなくすために、(考えられるいくつかの構成で)オペアンプを含む回路が使われます。

 

境界

境界回路の出力は、あらかじめ設定された値までは入力に対して直線的に変化し、その値を超えると変化しなくなります。多くの場合は上限および下限境界が同時に使われ、いずれもアプリケーションに応じて固定または可変とすることができます。入力 Vin に対し、上限境界が VU、下限境界が VL です。

数式20

図25

高精度の境界は、電圧または電流(またはその変化率)の限界の設定やシミュレーション、区間線形関数フィッティングにおける動作範囲の閾値の設定、および(前段にコンパレータを置いた)高精度電圧階段関数(つまり量子化関数)の設定に有効です。

境界は、ダイオードまたはトランジスタ、またはその両方を使って実装することができますが、1 次閾値を相殺するために整合のとれたペアを使用します。しかし、ダイオードをオペアンプとともに使用して「理想」ダイオード回路を形成すれば、より高い精度を実現することができます。この回路では、ダイオードが単なるスイッチとして機能し、閾値は、高ゲインのオペアンプ・ループ本来の特性によって補正されます。

 

不感帯

不感帯動作では、入力に反応しない領域を除き、通常、出力は入力の線形関数です。つまり、入力 Vin に対し次式の関係となります。

数式21

不感帯は境界に関係しています。

数式22

図26

境界同様、不感帯は、区間線形関数生成のための閾値設定に有効です。また、ヌル領域のノイズ抑制、「線形」ヒステリシス関数の生成、および「リミット・サイクル」振動の振幅安定化にも役立ちます。また、オシロスコープ輝度の速度変調や、(ディザを伴う)双曲関数のフィッティングにも使われてきました。

不感帯は境界に似ており、ダイオードとトランジスタで簡単に実装できますが、この場合の精度はそれほど高くありません。理想ダイオード回路を使えば、低周波数域で高い精度を得ることができます。

 

跳躍関数とウィンドウ関数

「跳躍」関数は、コンパレータの単純な出力です。

数式23

互いに「ハードワイヤード」接続された 2 つの TTL 対応コンパレータを使用すれば、共通の入力に応答して「ウィンドウ」を作り出すことができます。つまり、ある領域では出力が 1 つのレベルになり、それ以外の領域ではすべて別のレベルになります。

数式24

コンパレータの出力レベルは負荷と温度に依存しますが、高精度の境界を使うことにより、シフトさせて、極めて正確かつ安定した値にすることができます。

図27

跳躍関数は極性の検出、正確な閾値の特定、およびコンパレータの項に示すすべてのアプリケーションに有効です。ウィンドウ関数は、高精度の量子化、等級分類と並べ替え、パルス幅変調などに使用できます。コンパレータとウィンドウは、電圧の符号と量子化後の大きさに依存する関数を開始するために、組み合わせて使用することができます。

 

ヒステリシス

ヒステリシスのあるデバイスの出力は、入力範囲内に割当てられた、入力の 2 値関数となります。つまり、入力値に対する応答は 1 つだけではありません。また、応答は、その履歴によっても異なります。出力と入力のプロットは、「ループ」動作を有する特性を示します。

良く知られたヒステリシスの形式は、正のわずかなフィードバックを行う 2 レベル・コンパレータに見られます。一度出力が切り替わったら、デバイスをオリジナルの状態に戻すためには、その切り替え点を越えて入力を 2 番目の閾値に戻す必要があります。フリップ・フロップと「ラッチアップ」の組合せは、大きなヒステリシスを作れます。

図28

2 レベル・ヒステリシスの他にも、「線形」ヒステリシスがあります。これは、電気技術者には「残留磁気」として、機械技術者にはギア・トレインの「バックラッシュ」としてよく知られています。線形ヒステリシスを伴うデバイスは、一方向では入力に従います。入力方向の逆転時、出力は、次の動作の前に不感帯を越えた移動をさせる必要があります。

このヒステリシスの形態は、不感帯の後に積分器の帰還ループを閉じることによってシミュレーションすることができます。入力値が大きくなると、積分器はそれに従い(1 次遅延)、不感帯出力が順方向閾値の位置になります。入力の逆転時は、出力を逆方向にできるようになる前に、入力が不感帯を越えて移動しなければなりません(積分器保持)。

 

まとめ

この章では、基本的なビルディング・ブロックをベースに、役に立つさまざまな非線形現象を考察してきました。第 2 章では、実際のアナログ設計においてさらに多くの問題を解決するために採用する方法、採用できる方法、あるいは採用するべき方法を検討します。

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目次: 基本動作、非線形デバイスの応用、非線形回路を理解する、設計者のための技術情報

この技術書は、Analog Devices社の"Non-Linear Circuit Handbook"を和訳したものです。
非線形アナログ回路の原理、性能、仕様、テスト、応用に関する情報が1冊にまとまっています。50年以上前に考案された半導体の非線形特性を利用した回路は、最新の信号処理用の集積回路の中に隠れて、数多く使われています。
非線形回路の詳細を理解することで、それらを応用した新しい集積素子実現のもとになることを願っています。

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