よくある質問(FAQ): オペアンプ・ノイズ

著者:Don Tuite (アナログ/パワー・エディタ)

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  1.  低ノイズ増幅は、なぜ新たに重要視されているのですか。
  2.   ここで扱うノイズとはどのようなものですか。
  3.   このノイズの発生源は何ですか。
  4.   ノイズはどう表されますか。
  5.   ノイズは、実際には全周波数にわたって一定ではありませんね。
  6.   「コーナー周波数」とは何ですか。なぜ重要なのでしょうか。
  7.   この情報は、低ノイズ・アンプの選択にどう活用できますか。
  8.   電流ノイズはどうなりますか。

 


オペアンプ(OPアンプ)

Q. 低ノイズ増幅は、なぜ新たに重要視されているのですか。
A. 理由の1つはS/N比(SNR)の問題です。現在、センサ電圧とデバイス動作電圧が以前よりも低下したため、信号レベルに比べてノイズが大きくなっています。もう1つの要因としては、使用されているデータ・コンバータの分解能が以前よりも高くなっていることがあります。このため、よりクリーンな入力が必要となります。

Q. ここで扱うノイズとはどのようなものですか。
A. 対象とするノイズは、アンプに固有のノイズ、あるいは接続された受動部品から発生するノイズで、いずれも増幅されるものです。外部ノイズに関してはシステム・レベルの問題となります。


Q. このノイズの発生源は何ですか。
A. 入力と帰還抵抗によって発生するジョンソン(熱)ノイズ(en,R2)、アンプの固有電圧ノイズ(en)、および電流ノイズ(in)です(図1)。図1の回路入力で参照されるノイズ(NoiseRTI)の式は、すべてのノイズ源の影響を示します。式の抵抗ノイズに含まれる係数「k」はボルツマン定数です。Tは絶対温度(ケルビン)、Rは抵抗(オーム)です。目安として、1kΩ抵抗は室温で4nV/√Hzのノイズを発生します。これは、一部の最新のオペアンプより高い値です。

LowNoiseAmpFAQ_1
図1.
ノイズ源(外部抵抗によって発生する熱ノイズ、固有の電圧/電流ノイズ)は、回路のノイズ・ゲイン(1+R2/R1)の分だけ増幅されます。

Q. ノイズはどう表されますか。
A. 接続されるすべてのノイズ源が簡単な2乗和の平方根に収まるように、nV(またはpA) / √Hz に換算してベースバンド・ノイズ仕様が与えられます。その前提条件として、ノイズ源は無相関であって、振幅の確率が周波数スペクトルの全域にわたって正規(ガウス)分布に従うことが必要です。


Q. ノイズは、実際には全周波数にわたって一定ではありませんね。
A. 一定ではありません。enとinには、いずれも2つの要素があります(図2a)。その1つは、低周波「1/f」ノイズであり、周波数の低下につれてスペクトル密度が3dB/オクターブで増加します。もう1つはスペクトルがフラットな「ホワイト」ノイズであり、高い周波数で現れます。1/fノイズが最も重要なアプリケーションに関しては、限られた範囲の帯域幅(たとえば、0.1~10Hz)でのピークtoピーク・ノイズがデータシートに記載されることもあります(図2b)。

 LowNoiseAmpFAQ_2_a  LowNoiseAmpFAQ_2_b
 図2a.
  Voltage noise density = 電圧ノイズ密度(nV√Hz
  Frequency = 周波数(Hz

  図2b.
  Amplitude = 振幅(nV)
  Time (seconds) = 時間(秒)


図2(a)(b).
コーナー周波数より上では、固有ノイズは基本的に一定の密度を持ちます。コーナー周波数と0Hzの間では、固有ノイズは3dB/オクターブで増大します(a)。1/fノイズが重要な場合には(b)、データシートに実際のピークtoピーク・ノイズが記載されることがあります。この2つのプロットは、アナログ・デバイセズのAD8599のデータシートから引用しています。



Q. 「コーナー周波数」とは何ですか。なぜ重要なのでしょうか
A. 1/fコーナー周波数(FC)とは、1/fノイズ・スペクトル密度がホワイト・ノイズと等しくなる周波数のことです。これを求めるには、ノイズ・プロットの1/fノイズ部分とホワイト・ノイズ部分を延長して、線が交差する点に注目します。これは性能指数として重要です。また、1/fコーナー周波数は、電圧ノイズと電流ノイズに対して必ずしも同じではありません。それにもかかわらず、一般には、電圧ノイズに対してのみ指定されます。

Q. この情報は、低ノイズ・アンプの選択にどう活用できますか。
A. 対象となる周波数帯域に注目して、その帯域幅内のRMSノイズをシステム条件に関連付けます。ノイズは周波数の2乗平方根に換算して指定されるため、さまざまなノイズ影響度を2乗和の平方根として計算できます。したがって、帯域幅FL~FHにおける合計RMS電圧ノイズ(en,rms)は、簡単に次式で表されます。


LowNoiseAmpFAQ_3


ここで、enwは広帯域ホワイト・ノイズ、FCは1/fコーナー周波数、FLとFHは対象となる測定帯域幅を定義します。一般に、他のノイズ成分よりも4~5倍高いノイズ成分が支配的になり、残りは無視することができます。したがって、高い周波数では、FC ln(FH/FL)は無視できます。そして、合計RMSノイズは、単にホワイト・ノイズ×(周波数差の2乗平方根)となります。FHがFLよりもはるかに高い場合には、合計RMSノイズは、事実上、単にホワイト・ノイズ×(FHの2乗平方根)となります。一方、1/f領域で運用している場合には、合計RMSノイズは、コーナー周波数でのノイズ・レベル(つまり、ホワイト・ノイズ・レベル)×(コーナー周波数の2乗平方根)×ln(FH/FL)です。


Q. 電流ノイズはどうなりますか。
A. 図1の式の第4項と第5項によれば、電流ノイズがあるインピーダンスの中を流れるときには、他のノイズ電圧との2乗和の平方根の分だけノイズ電圧が増大します。また、電圧ノイズは設計者が最初に調べるスペックですが、回路インピーダンス・レベルがen/in(アンプの「特性ノイズ抵抗」とも呼ばれます)を上回る場合には、電流ノイズが支配的になります。





これはElectric Design Magazineに掲載された記事を翻訳したものです。